中沢健次の発言 (本会議)

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○中沢健次君 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、ただいま提案されました老人保健法等の一部を改正する法律案について質問をいたします。
 まず第一に、本案に関連する現状認識と政府の基本姿勢についてお伺いをいたします。
 国民医療費の伸び率は、五十九年度以来国民総生産の伸び率とほぼ同じレベルになりましたが、その四分の一を占める老人医療費だけを見ますと、おおむね二けたの伸び率で推移し、本格的な高齢化社会を控え、その増加が避けられないことは明らかでございます。政府は、今回の法改正により老人医療費の伸びを抑え、世代間の公正を図るとしておりますけれども、過去の実績から見て、患者の一部負担の引き上げは、医療費増高の一時しのぎの効果しかなく、抜本的解決策とはなっておりません。しかも、老人世帯の生活実態を無視し、老人の医療を受ける権利、人間らしく生きることを著しく侵害するものであります。
 また、按分率につきましても、世代間の公平という美名のもとに、政府は政治責任を回避し、その財政負担を大幅に削減し、いわゆる現役組のサラリーマンや企業に対し、実質的な増税に等しい負担を強いるものであります。さらに、寝たきり老人対策としての老人保健施設の新設は、病院よりも医療サービスが低下をし、特別養護老人ホームよりも生活介護サービスが悪くなる、そして入居者の負担だけが増大をするという、極めて矛盾をはらんだ内容でございます。
 既に全国的に、高齢者の各団体はもとより、健保連、医師会、弁護士会などの関係団体、さらに経済界も挙げて本法案反対に立ち上がり、国保の財政問題を抱える地方自治体だけがひとり早期成立に期待をかけ、加えて自民党内部にも慎重論があると伝えられておるわけでございます。日本世論調査会の最新の全国世論調査によりますと、自民党にこれだけはやってほしくない政策の一番目に、増税の七九%、そして福祉、年金の切り捨てが五八%と発表されておりまして、客観的にも,このことが裏づけされておると考えるわけでございます。つまり、国民の圧倒的多数は本法案に大きな抵抗と強い拒否反応を示し、いわゆる民意は本法案反対に大きく傾いている事実を総理はどのように認識をされておられるか、まずお聞かせいただきたいと思います。(拍手)
 さて、老人保健法は、もともと戦後医療保障に対する反改革として、歴史に逆行するものであることは明確でございますが、本法案はこれに拍車をかけるものであります。老人福祉法第二条に「老人は、多年にわたり社会の進展に寄与してきた者として敬愛され、かつ、健全で安らかな生活を保障されるものとする。」という、憲法第二十五条の趣旨を踏まえた老人福祉の原点からも大きく逸脱するものであることも明白でございます。
 人間はだれでも老いを迎えます。老後の最大の不安は健康にあることも事実であります。本法案によりまして最大の被害を受ける高齢者の方々が、身を震わせて国の政治の非を鳴らし、強い憤りを込めて血も涙もない仕打ちに抗議する声を聞き、その姿を見るにつけ、私は、そこに政治そのものの存在を基本的に問われる思いがしてなりません。総理の御見解を重ねてお伺いをいたします。
 次に、各論にわたり具体的に質問を申し上げます。
 まず第一に、患者の一部負担の引き上げについてでございます。
 政府は、外来を四百円から千円に、入院を一日三百円、二カ月限度から一日五百円で退院するまでとしておりますけれども、これでは一年間入院した場合、入院費だけで一万八千円のものが十八万円と一挙に十倍にはね上がり、本人負担は大幅に増大をいたします。政府は、一部負担の引き上げが老人医療費抑制に有効との理由を挙げておりますけれども、五十八年二月から施行されました老人保健法に基づく一部負担の導入によりまして、その年と翌年のわずか二年間だけが伸び率一けたにおさまった事実、また、かつてサラリーマンの医療費も一割自己負担の導入がありましたが、この具体的な経緯についても同じような状況でございます。したがって、医療費抑制の政策効果、特に抜本的な解決策にはなり得ないということは、過去の事実が示しておるわけでございます。もはや一部負担の増大はだれが見ても一番こそくな方策であり、医療政策の原則である病気の早期発見、早期治療の観点からの政策提起を具体的に示すべきだと考えます。
 もともと高齢者は有病率が高く、したがって、受診率が入院で五倍、通院で二倍と、他の世代より高くなっております。もちろん、家計に占める医療費を含む保健衛生費は、老人世帯は約四%を占め、その他の世帯の一・五倍にも達し、収入の乏しい老人世帯にとって死活問題となっております。また、入院時には保険外負担も莫大になっておりまして、厚生省の調査でも、一人一カ月の全国平均は二万七千五百円であり、関東地区では五万円に迫っております。さらに、東京の中野区が調査したところによりますと、入院中の半数が十万円以上、四人に一人が二十万円以上の入院費用を払っていることが明らかになっておりまして、患者サイドの情報調査もこの際必要ではないかと思います。
 こうした実態をつぶさに見ますと、世代間の公平負担は高齢者の一部負担を引き下げることによってのみ保たれると考えるべきではないでしょうか。今回の一部負担の引き上げは、こうした観点から見ますと、老人福祉の切り捨てであり、典型的な老人いじめと断定せざるを得ません。(拍手)厚生大臣並びに大蔵大臣の御見解をお聞かせいただきたいと存じます。
 第二は、按分率の問題でございます。
 政府は、国保の財政援助のため各制度間の助け合いを強要し、加入者按分率を現行約四五%を六十一年度八〇%、六十二年度一〇〇%に引きげ、政管健保、健保組合、共済組合からそれぞれ拠出額を大幅にふやそうとしておるわけでございます。加入者按分率を一〇〇%にした場合、政管健保では一千三百八十九億円、組合健保で一千九百五十二億円の持ち出しがふえ、保険料のはね返りは一人それぞれ年間三千四百八十円、そして五千八百八十円の引き上げになります。しかも、こうした拠出額の引き上げにより、国保への国庫負担が年間で約二千五百億円軽減されることが明らかになっておるわけでございます。
 老人の多い国保を老人の少ない各制度が応援することで世代間の公平を説く政府案は、その美名のもとにサラリーマン階層や企業に実質的な増税を押しつけ、みずからその政治責任を回避をし、その負担を引き下げるということは政治の常道とは言えません。負担の公平化を言うのであれば、国の負担もふやし、各制度の協力を求めるのが当然と考えますが、この点に関しまして厚生大臣、大蔵大臣の御見解をお伺いをいたします。(拍手)
 さて、国保の赤字は六十年度一千七百七十億に達し、自治体は窮地に陥っております。これは退職者医療制度導入の際、加入者の見込み違いや、その後の財政的な手当てが不十分なこと、加えて老人保健法改正の判断の誤りから、一月おくれるごとに百四十五億円の赤字が雪だるま式にふえる結果となっております。しかし、こうした事態に対して政府は何らの手を打とうとはしておりません。政府みずからの判断の誤り、指導上の不適切が直接の原因となって生じた自治体の歳入欠陥について、政府みずからそれを償うことが原則ではないでしょうか。かつて国保特別交付金として手当てをした例もありまして、この際、厚生、自治大臣にお答えをお願いいたします。
 また、国保は、他の制度から見て自已負担は三割と高く、加入者の支払う保険税ほどの制度よりも高いという矛盾があり、国保加入者四千万を超える一人一人の国民共通の悩みでございます。この改正案が仮に実施されたとしても、国保の赤字の穴埋めに吸収されてしまい、高くなり過ぎた保険税の引き下げに果たして有効に働くのか、今後の国保財政の見通しについてもお示しをいただきたいと思います。
 さらに、国保は、他の制度に比べ老人をたくさん抱え、必然的に医療給付が増大をする構造になっております。したがって、高齢者や難病者にはいわゆるナショナル・ヘルス・サービスを対応させ、保険料よりも所得の再配分機能の高い一般会計の財源をもって充てることが理論的にも正しく、政治の常道ではないでしょうか。こうした観点に立つならば、国保を応援するために他制度からの保険料の拠出を求める以上、政府としても、国の負担をふやす努力と、全制度を通じての給付と負担の公平化についても抜本的に検討すべきと考えますが、あわせて厚生大臣並びに自治大臣の御答弁をお願いをいたします。
 第三は、老人保健施設についてお尋ねをいたします。
 政府は、寝たきり老人などの介護を必要とする老人に対し、その心身の状況にふさわしい医療サービスと日常サービスの提供をする施設を創設しようとしております。現在でも寝たきり老人は全国で六十万人に達し、今後人口の高齢化に伴い、この数は確実に増大をし、しかも、その介護者の約九割が女性であり、老人問題は女性問題だと言われる理由もここにあるわけでございます。
 こうした観点と事実認識に立つならば、広い意味での老人保健施設の必要性は十分認められますけれども、政府提案の内容は、医師や看護婦などの医療スタッフは老人病院より少なく、寮母などの生活サービス担当者は特別養護老人ホームよりも少なく、しかも、その費用の負担は、食費を含め多くの自己負担を強いるという、極めて矛盾に満ちた内容でございます。さらに、昭和七十五年までにこの施設を三十万床にするというのでございますから、これは明らかに老人医療費と施設措置費の漸減をねらったものであり、しかも、五十八年二月老人保健法が施行され、前後、一般病院からの老人の追い出しが多発をし、一挙に社会問題となりましたが、今回は、老人病院からこの施設へ意図的に移しかえることも考えられ、公的福祉の退却路線以外の何物でもないと断ぜざるを得ません。(拍手)
 さて、今回は老人保健法の定めるもう一つの柱である医療以外の保健事業について明らかにされておりませんが、それは老人医療費にも直接影響し、老人保健施設のあり方とも密接に関連する問題でありますので、簡単にお尋ねをいたします。
 厚生省は、老人保健法制定に当たり、老人保健事業は基本的には保健所、公的医療機関など公的施設とすると答弁をしておりますけれども、実情は半数以上が民間医療機関に委託をしており、大変問題でございます。第一次五カ年計画の実施状況とあわせ、六十二年度からスタートをする第二次計画の骨格をお尋ねいたします。

発言情報

speech_id: 110705254X00619861017_019

発言者: 中沢健次

speaker_id: 26453

日付: 1986-10-17

院: 衆議院

会議名: 本会議