本会議

1986-10-17 衆議院 全43発言

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会議録情報#0
昭和六十一年十月十七日(金曜日)
    ─────────────
  昭和六十一年十月十七日 
    正午 本会議
    ─────────────
○本日の会議に付した案件
 議員請暇の件
 宇宙開発委員会委員任命につき同意を求めるの件
 公正取引委員会委員任命につき同意を求めるの件
 公害健康被害補償不服審査会委員任命につき同意を求めるの件
 公安審査委員会委員任命につき同意を求めるの件
 運輸審議会委員任命につき同意を求めるの件
 日本放送協会経営委員会委員任命につき同意を求めるの件
 労働保険審査会委員任命につき同意を求めるの件
 北方領土問題の解決促進に関する決議案(加藤万吉君外八名提出)
 老人保健法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
    午後零時十二分開議
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原健三郎#1
○議長(原健三郎君) これより会議を開きます。
     ────◇─────
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原健三郎#2
○議長(原健三郎君) この際、新たに議席に着かれました議員を紹介いたします。
 第三番、大阪府第一区選出議員、大矢卓史君。
    〔大矢卓史君起立、拍手〕
     ────◇─────
 議員請暇の件
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原健三郎#3
○議長(原健三郎君) 議員請暇の件につきお諮りいたします。
 河野正君から、十月二十日から二十八日まで九日間、谷洋一君から、十月二十一日から二十九日まで九日間、右いずれも海外旅行のため、請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
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原健三郎#4
○議長(原健三郎君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも許可するに決しました。
     ────◇─────
 宇宙開発委員会委員任命につき同意を求めるの件
 公正取引委員会委員任命につき同意を求めるの件
 公害健康被害補償不服審査会委員任命につき同意を求めるの件
 公安審査委員会委員任命につき同意を求めるの件
 運輸審議会委員任命につき同意を求めるの件
 日本放送協会経営委員会委員任命につき同意を求めるの件
 労働保険審査会委員任命につき同意を求めるの件
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原健三郎#5
○議長(原健三郎君) お諮りいたします。
 内閣から、
 宇宙開発委員会委員に曽山克巳君を、
 公正取引委員会委員に伊従寛君を、
 公害健康被害補償不服審査会委員に太田壽郎君、榊孝悌君及び首尾木一君を、
 公安審査委員会委員に中谷瑾子君を、
 運輸審議会委員に降矢敬雄君及び柳井乃武夫君を、
 日本放送協会経営委員会委員に大塚正士君、竹見淳一君及び前田四郎君を、
 労働保険審査会委員に北村孝生君を
任命したいので、それぞれ本院の同意を得たいとの申し出があります。
 まず、宇宙開発委員会委員、公害健康被害補償不服審査会委員、公安審査委員会委員、運輸審議会委員及び日本放送協会経営委員会委員の任命について、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
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原健三郎#6
○議長(原健三郎君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えるに決しました。
 次に、公正取引委員会委員及び労働保険審査会委員の任命について、申し出のとおり同意を与えるに御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
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原健三郎#7
○議長(原健三郎君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも同意を与えるに決しました。
     ────◇─────
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谷垣禎一#8
○谷垣禎一君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。
 加藤万吉君外八名提出、北方領土問題の解決促進に関する決議案は、提出者の要求のとおり、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。
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原健三郎#9
○議長(原健三郎君) 谷垣禎一君の動議に御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
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原健三郎#10
○議長(原健三郎君) 御異議なしと認めます。
    ─────────────
 北方領土問題の解決促進に関する決議案(加藤万吉君外八名提出)
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原健三郎#11
○議長(原健三郎君) 北方領土問題の解決促進に関する決議案を議題といたします。
 提出者の趣旨弁明を許します。加藤万吉君。
    ─────────────
 北方領土問題の解決促進に関する決議案
    〔本号末尾に掲載〕
    ─────────────
    〔加藤万吉君登壇〕
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加藤万吉#12
○加藤万吉君 ただいま議題となりました北方領土問題の解決促進に関する決議案につきまして、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合を代表し、提案の趣旨を御説明申し上げます。
 まず、案文を朗読いたします。
    北方領土問題の解決促進に関する決議案
  本年は、日ソ両国間の外交関係回復を実現した日ソ共同宣言締結三十周年という記念すべき年にあたる。この機会に本院は、あらためて、三十年前、日ソ国交回復のために先人の払った労苦を想起し、これに敬意を表する。日ソ共同宣言には、日ソ関係を律する諸原則が謳われているところ、今後日ソ関係はこれらの諸原則を基礎に発展させるべきである。
  今後更に、ソ連邦との間の政治対話を強化・拡大していくことは重要であり、この意味で、ゴルバチョフソ連邦共産党書記長の訪日による両国最高首脳間の直接対話が極めて有意義である。
  然るに、戦後四十年余を経た今日もなお、我が国固有の領土である歯舞、色丹及び国後、択捉等北方領土の問題が依然として未解決であり、平和条約が締結されていないため、日ソ両国間の基本関係が未だ真の正常化を見るに至っていないことは、誠に遺憾なことである。更に近年、北方領土においては、ソ連の軍備増強が続けられている。
  北方領土の返還実現は、日本全国民の長年の悲願である。
  かかる国民の総意と心情に応えるため、政府は、北方領土におけるソ連の軍事的措置の撤回を求めるとともに、北方領土の返還を実現して、平和条約を締結し、日ソ間の真に安定的な平和友好関係を確立するよう全力を傾注すべきである。
  右決議する。
以上であります。
 戦後四十一年を経過をいたしましたが、我が国民の悲願であります北方領土の返還がいまだに実現しないばかりか、さらに我が国固有の領土である北方領土において、ソ連の軍備増強が続けられていることはまことに遺憾であります。領土問題の解決なくして真の日ソ間の平和友好関係はあり得ないことは、改めて申すまでもありません。
 今や国民の間には、この問題の早期解決を望む声が一段と高まってきております。この北方領土問題を解決するためには、ソ連邦との間の対話を強化拡大し、相互理解を深めることが重要であります。この意味でも、ゴルバチョフ・ソ連邦共産党書記長の訪日による両国首脳間の直接対話が極めて有意義であると存じます。
 また、本年は、一九五六年、日ソ共同宣言が署名され、両国間に国交が再開されてからちょうど三十周年に当たります。この機会に日ソ国交回復のために多くの先人が払われた労苦を想起し、これに敬意を表するとともに、北方領土問題の解決促進のため、政府に対し格段の努力を求めるものであります。
 以上をもって本決議案の趣旨の説明といたします。何とぞ議員各位の御賛同をお願いいたします。拍手
    ─────────────
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原健三郎#13
○議長(原健三郎君) 採決いたします。
 本案を可決するに御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
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原健三郎#14
○議長(原健三郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。
 この際、外務大臣から発言を求められております。これを許します。外務大臣倉成正君。
    〔国務大臣倉成正君登壇〕
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倉成正#15
○国務大臣(倉成正君) ただいまの御決議に対して所信を申し述べます。
 政府といたしましては、ただいま採択された御決議の趣旨を十分に体しまして、今後とも粘り強く対ソ折衝を進めるべく、引き続き最大限の努力を払ってまいる所存でございます。拍手
     ────◇─────
 老人保健法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
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原健三郎#16
○議長(原健三郎君) この際、内閣提出、老人保健法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。厚生大臣斎藤十朗君。
    〔国務大臣斎藤十朗君登壇〕
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斎藤十朗#17
○国務大臣(斎藤十朗君) 老人保健法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
 人口の高齢化が急速に進む中で、老人医療費の増加は避けられないところでありますが、最近著しい伸びを示しております老人医療費を適正なものとし、国民がいかに公平に負担していくかということは、老人保健制度を長期的に安定したものとしていく上で不可欠の課題であります。
 また、人口の高齢化に伴い、今後急増すると予想される寝たきり老人等の要介護老人に対し、保健、医療、福祉を通じた総合的な施策の展開が求められております。
 こうした状況等を踏まえ、老人保健制度を幅広く見直すこととし、老人保健法等の一部を改正する法律案を第百四回国会に提出し、御審議を煩わしたのでありますが、継続審議となった後、第百五回国会において衆議院の解散に伴い廃案となり、成立を見るに至らなかったものであります。
 しかしながら、老人保健制度の改正は、今後の本格的な高齢化社会において、国民が安心して老後を託せる制度を確立するという観点から極めて重要なものでありますので、ここに再度この法律案を提案し、御審議を願うこととした次第であります。
 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。
 第一は、一部負担の改正であります。
 現在、外来の場合一月四百円、入院の場合二カ月を限度として一日三百円となっておりますが、これを改め、外来については一月千円に、入院については期限を撤廃して一日五百円に改定することといたしております。増大し続ける老人医療費の負担の現状にかんがみ、健康に対する自覚と適正な受診、さらには世代間の負担の公平という観点から、被用者保険本人や在宅療養者とのバランスも勘案して、定額制を維持しつつ、一部負担金の額の引き上げをお願いするものであります。
 第二は、加入者按分率の引き上げであります。
 昭和六十一年度の十一月一日以降は八〇%、昭和六十二年度以降は一〇〇%に引き上げることとしております。老人医療費につきましては、一人当たりで他の世代の五倍となっているため、老人加入率の高い保険者ほど老人医療費の負担は重いものとなっており、各保険者間の老人医療費の負担の不均衡は一層拡大しております。このため、加入者按分率を引き上げ、どの保険者も同じ割合で老人を抱えるようにし、負担の一層の公平化を図ることとしております。
 第三は、老人保健施設の創設であります。
 寝たきり老人等の要介護老人にふさわしい医療サービスと生活サービスを提供する施設として、老人保健施設を創設するとともに、この施設を利用する老人に対する新たな給付として、老人保健施設療養費を支給することとしております。これらの施策を講ずることにより、国民が安心して老後を託せる老人保健制度を確立しようとするものであります。
 以上のほか、医療保険各法に準じて特定療養費制度を導入するとともに、老人保健施設の創設に伴う医療法、社会福祉事業法の改正なども行うこととしております。
 また、医療保険各制度を通ずる老人医療費の公平な負担を図るため、国民健康保険法を改正し、正当な理由がないのに保険料を滞納している者に対し、給付を一時差しとめる等の措置を講ずることとしております。
 なお、この法律の施行期日は、本年十一月一日としておりますが、老人保健施設に関する事項は、公布の日から起算して一年六カ月を超えない範囲内において政令で定める日とし、また、関係審議会への諮問に関する事項は公布の日としております。
 以上が老人保健法等の一部を改正する法律案の趣旨でございます。拍手
     ────◇─────
 老人保健法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
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原健三郎#18
○議長(原健三郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。中沢健次君。
    〔中沢健次君登壇〕
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中沢健次#19
○中沢健次君 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、ただいま提案されました老人保健法等の一部を改正する法律案について質問をいたします。
 まず第一に、本案に関連する現状認識と政府の基本姿勢についてお伺いをいたします。
 国民医療費の伸び率は、五十九年度以来国民総生産の伸び率とほぼ同じレベルになりましたが、その四分の一を占める老人医療費だけを見ますと、おおむね二けたの伸び率で推移し、本格的な高齢化社会を控え、その増加が避けられないことは明らかでございます。政府は、今回の法改正により老人医療費の伸びを抑え、世代間の公正を図るとしておりますけれども、過去の実績から見て、患者の一部負担の引き上げは、医療費増高の一時しのぎの効果しかなく、抜本的解決策とはなっておりません。しかも、老人世帯の生活実態を無視し、老人の医療を受ける権利、人間らしく生きることを著しく侵害するものであります。
 また、按分率につきましても、世代間の公平という美名のもとに、政府は政治責任を回避し、その財政負担を大幅に削減し、いわゆる現役組のサラリーマンや企業に対し、実質的な増税に等しい負担を強いるものであります。さらに、寝たきり老人対策としての老人保健施設の新設は、病院よりも医療サービスが低下をし、特別養護老人ホームよりも生活介護サービスが悪くなる、そして入居者の負担だけが増大をするという、極めて矛盾をはらんだ内容でございます。
 既に全国的に、高齢者の各団体はもとより、健保連、医師会、弁護士会などの関係団体、さらに経済界も挙げて本法案反対に立ち上がり、国保の財政問題を抱える地方自治体だけがひとり早期成立に期待をかけ、加えて自民党内部にも慎重論があると伝えられておるわけでございます。日本世論調査会の最新の全国世論調査によりますと、自民党にこれだけはやってほしくない政策の一番目に、増税の七九%、そして福祉、年金の切り捨てが五八%と発表されておりまして、客観的にも,このことが裏づけされておると考えるわけでございます。つまり、国民の圧倒的多数は本法案に大きな抵抗と強い拒否反応を示し、いわゆる民意は本法案反対に大きく傾いている事実を総理はどのように認識をされておられるか、まずお聞かせいただきたいと思います。拍手
 さて、老人保健法は、もともと戦後医療保障に対する反改革として、歴史に逆行するものであることは明確でございますが、本法案はこれに拍車をかけるものであります。老人福祉法第二条に「老人は、多年にわたり社会の進展に寄与してきた者として敬愛され、かつ、健全で安らかな生活を保障されるものとする。」という、憲法第二十五条の趣旨を踏まえた老人福祉の原点からも大きく逸脱するものであることも明白でございます。
 人間はだれでも老いを迎えます。老後の最大の不安は健康にあることも事実であります。本法案によりまして最大の被害を受ける高齢者の方々が、身を震わせて国の政治の非を鳴らし、強い憤りを込めて血も涙もない仕打ちに抗議する声を聞き、その姿を見るにつけ、私は、そこに政治そのものの存在を基本的に問われる思いがしてなりません。総理の御見解を重ねてお伺いをいたします。
 次に、各論にわたり具体的に質問を申し上げます。
 まず第一に、患者の一部負担の引き上げについてでございます。
 政府は、外来を四百円から千円に、入院を一日三百円、二カ月限度から一日五百円で退院するまでとしておりますけれども、これでは一年間入院した場合、入院費だけで一万八千円のものが十八万円と一挙に十倍にはね上がり、本人負担は大幅に増大をいたします。政府は、一部負担の引き上げが老人医療費抑制に有効との理由を挙げておりますけれども、五十八年二月から施行されました老人保健法に基づく一部負担の導入によりまして、その年と翌年のわずか二年間だけが伸び率一けたにおさまった事実、また、かつてサラリーマンの医療費も一割自己負担の導入がありましたが、この具体的な経緯についても同じような状況でございます。したがって、医療費抑制の政策効果、特に抜本的な解決策にはなり得ないということは、過去の事実が示しておるわけでございます。もはや一部負担の増大はだれが見ても一番こそくな方策であり、医療政策の原則である病気の早期発見、早期治療の観点からの政策提起を具体的に示すべきだと考えます。
 もともと高齢者は有病率が高く、したがって、受診率が入院で五倍、通院で二倍と、他の世代より高くなっております。もちろん、家計に占める医療費を含む保健衛生費は、老人世帯は約四%を占め、その他の世帯の一・五倍にも達し、収入の乏しい老人世帯にとって死活問題となっております。また、入院時には保険外負担も莫大になっておりまして、厚生省の調査でも、一人一カ月の全国平均は二万七千五百円であり、関東地区では五万円に迫っております。さらに、東京の中野区が調査したところによりますと、入院中の半数が十万円以上、四人に一人が二十万円以上の入院費用を払っていることが明らかになっておりまして、患者サイドの情報調査もこの際必要ではないかと思います。
 こうした実態をつぶさに見ますと、世代間の公平負担は高齢者の一部負担を引き下げることによってのみ保たれると考えるべきではないでしょうか。今回の一部負担の引き上げは、こうした観点から見ますと、老人福祉の切り捨てであり、典型的な老人いじめと断定せざるを得ません。拍手厚生大臣並びに大蔵大臣の御見解をお聞かせいただきたいと存じます。
 第二は、按分率の問題でございます。
 政府は、国保の財政援助のため各制度間の助け合いを強要し、加入者按分率を現行約四五%を六十一年度八〇%、六十二年度一〇〇%に引きげ、政管健保、健保組合、共済組合からそれぞれ拠出額を大幅にふやそうとしておるわけでございます。加入者按分率を一〇〇%にした場合、政管健保では一千三百八十九億円、組合健保で一千九百五十二億円の持ち出しがふえ、保険料のはね返りは一人それぞれ年間三千四百八十円、そして五千八百八十円の引き上げになります。しかも、こうした拠出額の引き上げにより、国保への国庫負担が年間で約二千五百億円軽減されることが明らかになっておるわけでございます。
 老人の多い国保を老人の少ない各制度が応援することで世代間の公平を説く政府案は、その美名のもとにサラリーマン階層や企業に実質的な増税を押しつけ、みずからその政治責任を回避をし、その負担を引き下げるということは政治の常道とは言えません。負担の公平化を言うのであれば、国の負担もふやし、各制度の協力を求めるのが当然と考えますが、この点に関しまして厚生大臣、大蔵大臣の御見解をお伺いをいたします。拍手
 さて、国保の赤字は六十年度一千七百七十億に達し、自治体は窮地に陥っております。これは退職者医療制度導入の際、加入者の見込み違いや、その後の財政的な手当てが不十分なこと、加えて老人保健法改正の判断の誤りから、一月おくれるごとに百四十五億円の赤字が雪だるま式にふえる結果となっております。しかし、こうした事態に対して政府は何らの手を打とうとはしておりません。政府みずからの判断の誤り、指導上の不適切が直接の原因となって生じた自治体の歳入欠陥について、政府みずからそれを償うことが原則ではないでしょうか。かつて国保特別交付金として手当てをした例もありまして、この際、厚生、自治大臣にお答えをお願いいたします。
 また、国保は、他の制度から見て自已負担は三割と高く、加入者の支払う保険税ほどの制度よりも高いという矛盾があり、国保加入者四千万を超える一人一人の国民共通の悩みでございます。この改正案が仮に実施されたとしても、国保の赤字の穴埋めに吸収されてしまい、高くなり過ぎた保険税の引き下げに果たして有効に働くのか、今後の国保財政の見通しについてもお示しをいただきたいと思います。
 さらに、国保は、他の制度に比べ老人をたくさん抱え、必然的に医療給付が増大をする構造になっております。したがって、高齢者や難病者にはいわゆるナショナル・ヘルス・サービスを対応させ、保険料よりも所得の再配分機能の高い一般会計の財源をもって充てることが理論的にも正しく、政治の常道ではないでしょうか。こうした観点に立つならば、国保を応援するために他制度からの保険料の拠出を求める以上、政府としても、国の負担をふやす努力と、全制度を通じての給付と負担の公平化についても抜本的に検討すべきと考えますが、あわせて厚生大臣並びに自治大臣の御答弁をお願いをいたします。
 第三は、老人保健施設についてお尋ねをいたします。
 政府は、寝たきり老人などの介護を必要とする老人に対し、その心身の状況にふさわしい医療サービスと日常サービスの提供をする施設を創設しようとしております。現在でも寝たきり老人は全国で六十万人に達し、今後人口の高齢化に伴い、この数は確実に増大をし、しかも、その介護者の約九割が女性であり、老人問題は女性問題だと言われる理由もここにあるわけでございます。
 こうした観点と事実認識に立つならば、広い意味での老人保健施設の必要性は十分認められますけれども、政府提案の内容は、医師や看護婦などの医療スタッフは老人病院より少なく、寮母などの生活サービス担当者は特別養護老人ホームよりも少なく、しかも、その費用の負担は、食費を含め多くの自己負担を強いるという、極めて矛盾に満ちた内容でございます。さらに、昭和七十五年までにこの施設を三十万床にするというのでございますから、これは明らかに老人医療費と施設措置費の漸減をねらったものであり、しかも、五十八年二月老人保健法が施行され、前後、一般病院からの老人の追い出しが多発をし、一挙に社会問題となりましたが、今回は、老人病院からこの施設へ意図的に移しかえることも考えられ、公的福祉の退却路線以外の何物でもないと断ぜざるを得ません。拍手
 さて、今回は老人保健法の定めるもう一つの柱である医療以外の保健事業について明らかにされておりませんが、それは老人医療費にも直接影響し、老人保健施設のあり方とも密接に関連する問題でありますので、簡単にお尋ねをいたします。
 厚生省は、老人保健法制定に当たり、老人保健事業は基本的には保健所、公的医療機関など公的施設とすると答弁をしておりますけれども、実情は半数以上が民間医療機関に委託をしており、大変問題でございます。第一次五カ年計画の実施状況とあわせ、六十二年度からスタートをする第二次計画の骨格をお尋ねいたします。
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原健三郎#20
○議長(原健三郎君) 中沢君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。
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中沢健次#21
○中沢健次君(続) さらに、六十二年度予算の概算要求で、この事業の中心を担っている保健所に対しその交付金を大幅に減額しておりますが、その理由を厚生大臣にお尋ねをいたします。
 さて総理大臣、あなたは日本民族の道徳心にしばしば言及されますが、公徳心という親への孝行心は、時代がどう変わろうとも美徳の大きな柱であることは変わらないはずでございます。総理、政治がきばをむいて、社会的に弱い立場にある高齢者への加害者であってはなりません。改めて政治家の公徳心という原点に立ち返り、高齢者のお一人お一人が祈りにも似た思いでこの法案の成り行きを見守っている事実を、そして、高齢者の命と健康を守ることが国政の最大の使命であることをみずから問い直されたらいかがでしょうか。
 総理、あなたの政治哲学からすれば、あるいは本意でないかもしれませんが、この際、異常なまで突出をし、聖域化している防衛費を抑え、あなたの心の扉を開き、高齢者の悲痛な叫びと国民の声を受けとめ、本法案の撤回の御決断をされるよう強く訴えまして、総理の御見解をお尋ねし、私の質問を終わります。拍手
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
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中曽根康弘#22
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 中沢議員にお答えをいたします。
 まず、老人保健法の趣旨に対する認識でございます。
 私は、中沢議員が今おっしゃいましたように、公徳心は非常に大事であると思います。我々も心から老人をいたわりまして、老後をせめて安穏に生活できるようにこれからも最大の努力をしてまいりたいと思っております。
 人口の高齢化が急速に進む間におきまして、老人の医療費も非常に増高してきております。大体平均して年一〇%から一二%ぐらい最近の統計ではふえております。老人医療費が大体四兆二千億円から三千億円の間でありますから、したがいまして、一〇%といいましても四千億円以上のお金が毎年毎年余計要ってくるというわけであります。そういうような情勢を見まして、老人医療の体系を世代間の公平を維持しつつ長期・安定的に持続していくということは大問題であります。そういう観点から、政府は、世代間の公平を図り、長期・安定を行うためにこのような改革を行おうとしておるのでありまして、この点については国民の皆様方にもぜひ御理解を得るように努力してまいります。したがいまして、法案撤回の考えはございません。
 次に、長寿社会への対応という問題は政治の最も重大な課題であると思います。政府は、総合的な観点から、六月六日に長寿社会対策大綱を決定いたしまして、それを各省挙げて努力しておるところでございます。この長寿社会対策大綱におきましては、まず第一に雇用・所得保障システム、健康・福祉システム、学習・社会参加システム、住宅・生活環境システム、それから研究開発の推進等々の項目を盛りまして、一つ一つ着実にこれを実行してまいりたいと思っておるわけでございます。このようなビジョンを持ちまして今後とも鋭意努力してまいります。
 次に、六十二年度概算要求における医療費の問題でございますが、国民の医療費負担を適正な水準にしていくためには、医療費自体の適正化作業というものをやはり推進せざるを得ません。今後の医療費適正化対策及び各種関連施策の拡充強化作業については、ただいま幅広く検討中でございまして、六十二年度の対策についても予算編成時までに関係各省との協議及び政府・与党との協議を行うつもりでおります。
 防衛費との問題でございますが、医療費は医療費としての価値があり、防衛費は防衛費としての価値がございます。我々は、防衛費については、他の諸施策との調和を図りながら必要最小限に計上して、節度ある防衛体系を持っておるのでありまして、この点についても御理解を得たいと思います。
 残余の答弁は関係大臣がいたします。拍手
    〔国務大臣斎藤十朗君登壇〕
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斎藤十朗#23
○国務大臣(斎藤十朗君) お答えをいたします。
 まず、一部負担についてでございますが、今回の一部負担の引き上げは、世代間の負担の公平化、健康に対する自覚と適正な受診という観点からお願いしているものでありまして、医療費の抑制を目的とするものではございません。また、病気の早期発見、早期治療の観点から、健康診査等の保健事業を計画的に進めてきたところであり、引き続き昭和六十二年度を初年度とする第二次五カ年計画の策定等により、その一層の推進を図る所存であります。
 次に、老人医療の世代間の負担につきましては、現在、四兆円を超える老人医療費のうちお年寄りの一部負担は約一・六%であり、残りの大部分は若い世代の負担に負っている実情にあります。このため、増加の避けられない老人医療費をお年寄りも若い世代も公平に負担するという観点から今回の改正をお願いしているものであります。
 一方、保険外負担の問題につきましては、従来からその負担を適正な範囲のものとするなど指導、是正に努めてきており、今後ともその徹底を図ってまいります。また、保険外負担について、昨年、全国の老人病院に対する調査を行ったところであり、その調査結果は実態を反映したものと考えておりますが、今後ともこの調査結果を踏まえ、さらに実態の把握に努めてまいる所存であります。
 次に、国保との関連についてのお尋ねでございますが、退職者医療の影響については、政府としてはあらゆる努力を重ね、六十年度に国保持別交付金千三百六十七億円を措置したところであり、今後とも市町村国保の安定的な運営が行われるよう配慮してまいる所存であります。また、老人保健法改正法の実施時期のおくれにより市町村国保財政に大きな影響が生じておりますので、一日も早い改正法の成立をお願いいたしますとともに、市町村国保の安定的な運営が図られるよう十分誠意を持って対応してまいる所存であります。
 次に、国保の保険料については、高齢者を国保が多く抱える結果、比較的負担が高くなっておりますが、今回の老人保健制度の改革により老人医療費の公平な負担が図られる結果、負担の軽減が図られるものと考えております。給付が低く保険料が高いという中沢議員の御指摘の問題につきましては、六十年代後半のできるだけ早い時期に実施を予定しているいわゆる医療保険制度の一元化の中で解決してまいりたいと考えております。
 他制度から拠出を求めるのであれば国の負担をふやせとの御指摘でありますが、今回の改正は、老人医療費を各制度で公平に負担することを目的とするものであります。また、現行の国保の国庫負担については、事業主負担がないことや低所得者が多いこと等を勘案し、他制度に比べ高率の負担を行っているところであります。なお、全制度を通ずる給付と負担の公平化については、六十年代後半のできるだけ早い時期に実施する方向で引き続き検討してまいる所存であります。
 次に、老人保健施設についてのお尋ねでありますが、この施設は寝たきり老人等の医療と生活の両面のニードに積極的に対応するために創設するものであり、単なる財政対策として御提案申し上げたものではありません。施設創設後も、特別養護老人ホームにつきましては、着実にその整備を推進していく考えであります。また、入院治療の必要な方は病院において、入院治療は必要がないが在宅での療養が困難な方は老人保健施設において、それぞれの心身の状態にふさわしいサービスを提供できるようにいたしたいと考えております。
 次に、保健事業についてのお尋ねでありますが、保健事業は市町村が必要な要員、施設を確保してみずから実施することが原則でありますが、これが困難な場合等は地域の関係機関に委託できることとしております。委託先については、保健所等の公的機関を原則とするよう指導してきておりますが、住民の利便や公的機関の配置状況等も踏まえ、民間医療機関への委託も一部認めております。なお、この場合においてもその水準が適正に保たれるよう配慮いたしてまいります。
 老人保健事業の実施状況につきましては、これまで第一次計画に基づき計画的に実施してまいりました結果、ほぼ全市町村で事業が実施され、また、脳卒中や胃がん等の死亡率の減少が見られるなど、着実に成果を上げてきております。第二次計画においては、第一次計画の実績も踏まえ、地域住民の多様なニーズにきめ細かく応じられるよう循環器疾患、がん等について魅力ある健診づくりを図るなど、質的な工夫、改善を凝らし、保健事業の一層の充実を図ってまいりたいと考えております。
 最後に、保健所運営費交付金についてのお尋ねでありますが、地域保健対策について、人口の高齢化等に伴い、二十一世紀を見通した体系の見直が必要となっており、保健所業務については、当面老人保健対策、精神保健対策、医療計画の推進等の重要施策の充実を図ることが必要と考えており、そのための予算要求を行っているところであります。一方、近年の行財政改革推進の趣旨から、国庫補助金についての厳しい見直しが要請さているところであります。このため、来年度の予算要求においては、保健所運営費交付金について、老人保健事業等に要する経費以外の一部の経費について、国庫補助の対象から除外して一般財源化することといたしております。
 以上でございます。拍手
    〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
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宮澤喜一#24
○国務大臣(宮澤喜一君) 加入者按分率の問題でございますが、御承知のように、老人の加入割合が各医療保険制度の間に大変に大きな格差があるわけでございますので、その格差から生じます負担の不均衡と申しますか、それを是正しまして、国民経済の中でできるだけ老人医療費を公平に負担をするようにしたいという観点から御提案を申し上げておりまして、単に財政対策といった観点からのみ考えておるわけではございません。
 それから次に、老人医療費の一部負担の見直しでございますが、厚生大臣からもお答えがございましたが、世代間の費用の負担の公平化を図っておきたいということ、それから、御老人でありましても、やはり御自分の健康については絶えず自覚を怠らないようにしていただきたいという観点も含めまして、まあ無理のないと思われます範囲内での引き上げをお願いをいたしておるわけでございます。
 なお、老人医療費でございますが、現在、国庫補助が一兆六千億円を上回っておりまして、これは、全体の老人医療費が四兆三千億円でございますので、かなりの国庫助成を行っておるということを申し上げておきたいと思います。拍手
    〔国務大臣葉梨信行君登壇]
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葉梨信行#25
○国務大臣(葉梨信行君) 改正法案の成立時期のおくれ等による国保財政への影響についてお答えいたします。
 退職者医療制度の創設に伴う加入者数の見込み違い等による国保財政への影響及び老人保健法改正案の成立のおくれによる影響については、今後とも市町村国保の安定的な運営が行われるよう適切に対処する必要があると考えております。
 次に、国民健康保険の保険料に対する効果についてお答えいたします。
 今回の改正法案では、加入者按分率の引き上げにより、各医療保険制度を通ずる負担の一層の公平化を図ることとされておるわけであります。現在、老人の加入率が他の医療保険より高いため、老人医療費の負担が過重となっております国民健康保険について見ますと、負担が軽減され、保険料についても引き上げを抑制する効果があるものと考えておるわけでございます。拍手
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原健三郎#26
○議長(原健三郎君) 沼川洋一君。
    〔沼川洋一君登壇〕
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沼川洋一#27
○沼川洋一君 私は、公明党・国民会議を代表し、ただいま提案されました老人保健法等の一部を改正する法律案につきまして、総理並びに関係各大臣に質問を行うものであります。
 まず、本題に入ります前に、さきの自民党講習会における総理の発言は、アメリカの各界各層、国民から厳しい批判を受け、また、国内からもひんしゅくを買ったことは当然のことであります。国際社会とともに生きていかなければならない我が国が、総理の発言によって大きく信頼を失墜させたことは極めて重大であり、私は、日本国民に多大な迷惑をかけた以上、総理はこの本会議場において国民に陳謝すべきであると考えるものでありますが、総理の御答弁を求めるものであります。拍手
 さて、今や我が国の高齢化は世界に類を見ない速さで進んでおり、厚生省の推計でも、老年人口率は昭和九十五年には二一・八%となり、まさに世界一の超高齢化社会を迎えると言われております。既に平均寿命では男女とも世界第一位を誇る我が国が、一方では国民総健康不安時代などと言われるこの矛盾をどのように考えるべきなのでありましょうか。このことは、現在の医療が人間の寿命を延ばし得ても、そのことによって幸せではなく、不安を与えているにすぎないことを示しております。すなわち、長寿化が進むにつれて、今、国民の間には、果たして長い人生を有意義に過ごせるだろうか、長生きしてよかったと回顧できるだろうかなどの老後の不安が広がりつつあることは、紛れもない事実であります。したがって、この急速な高齢化に対応し、今こそ国民が安心できる充実した老後を保障することは国政の責務であり、緊急課題であります。
 そこで、まず最初に、中曽根総理にお尋ねをいたします。
 この老人保健法の改正案は、さきの国会で各方面より強い反対を受け、廃案となったものであります。その内容について厳しい批判と指摘がなされ、改善すべき多くの問題を抱えたこの法案を、何ら見直すことなく、同じ内容のまま再提出されましたことは、まことに無責任な行為であり、まさに福祉切り捨ての中曽根政治の実態を見る思いがいたします。選挙に勝ったからといって、そのすべてが支持されたわけではありません。総理、あなたの言葉をおかりすれば、今こそ謙虚に国民の声に耳を傾けるべきであります。国民の好まざる法案を何の反省もなく再提出された理由をお聞かせください。
 第二には、老人保健法は、本来は健やかに老い行くための壮年期からのいわば健康対策法であり、疾病予防の充実、老人医療の質的向上がその目的であります。したがって、これが軌道に乗り効果が上がれば、増高が心配される老人医療費もおのずから解決されるということで、保健事業の展開に大きな期待が寄せられたのであります。しかしながら、この三年間の実績を見るとき、質的面で問題が多く、その目玉である健康診査の受診率は計画を下回り、国の予算もその負担割合や健診単価の見積もりの低さなどに問題があり、そのため自治体のやる気をなくさせる結果になっております。国は本気で取り組む姿勢があるのかと疑いたくなります。この三年間の保健事業について、総理はどう評価されているのか、今後の対応をどうするのか、御見解をお伺いいたします。
 また、保健事業の実施主体は市町村であり、その意味で、この点についての自治大臣の見解もお聞かせいただきたいと思います。
 第三には、改正案の中身は、一部負担の強化と加入者按分率の引き上げだけが突出したもので、明らかにマイナスシーリングに対応するための目先の財政対策であります。しかも、いかにも取りやすいところから取るという発想は、ビジョンのない我が国の医療政策を如実に物語っています。診療報酬の合理化や医療機関の指導監査の強化、保健事業の拡充など、打つべき対策を後回しして、医療費の帳じり合わせだけが先行するやり方では、根本的解決にはなりません。これではもはや老人保健法ではなく、まさに巷間言われるような老人費用徴収法になってしまうではありませんか。総理の御所見をお聞かせください。
 第四には、これからの老人保健のあり方を考えるに当たっては、老後の生活で最も大切な保健、医療、福祉の施策を有機的に結合させながら、総合的かつ大胆に拡充していく中での対策でなければなりません。したがって、この法案の審議に当たっては、二十一世紀を展望し、安定した老後保障のための基本方針を明らかにすべきであると考えます。その意味で、既に我が党では保健、医療、福祉の総合対策を策定しておりますが、政府にはその考え方と用意があるのかどうか、所信を承りたいと思います。
 第五には、法案の中身の具体的な点に関し、厚生大臣にお尋ねをいたしたいと思います。
 第一点は、老人医療費の一部負担金の引き上げについてであります。
 本法案では、外来自己負担が現在一カ月四百円であるのを千円に引き上げ、入院自己負担については、現在一日三百円で二カ月間だけ支払えばよいものを、今度は入院全期間にわたって一日五百円にしようというものであります。これは、通院の場合では月二・五倍の大幅引き上げであり、入院の場合はさらに厳しく、一年間の入院生活では、現在の一万八千円から十八万円と一挙に十倍に負担がふえることになり、まさに異常としか言いようがありません。
 政府の説明では一カ月千円の負担は決して重くないと言われますが、日本医師会の調査によりますと、老人の医療機関受診は二つ以上の医療機関に通っている人が七一・七%もおり、千円で済む老人は少なく、実際には二千円、三千円と支払う人が多くなると述べています。この件に関し、厚生省では老人の診療科目は一人平均一・五であると反論をされております。仮に一・五としても平均値で千五百円であり、四倍の値上げになるわけであります。したがって、このような高い一部負担は、国民の医療保障の権利を制限し、初期診療を抑制する結果、効果的な治療の機会を失い、かえって医療費の増大を招くことになると心配するものであります。
 また、昭和五十九年の厚生行政基礎調査によると、高齢者世帯主は六五%が無職であり、四〇%が年金だけの生活であります。年老いて収入の道が閉ざされている老人の負担については、その生活実態、特性に対する配慮について十分検討すべきであります。さらに、入院について二ヵ月限りという限度を外したことについては、政府は在宅の寝たきり老人とのバランスがとれないことなどを理由に挙げておりますが、在宅寝たきり老人とのバランスを言うならば、まず一番に訪問看護やホームヘルパーの充実など、在宅の医療レベルを上げることこそ優先されるべきであります。さらに、入院の場合は正規の入院料のほかにお世話料と称する多額の保険外負担を強いられており、負担の公平論を盾に一部負担を求めるのであれば、その前にこの問題の解決こそ急ぐべきであります。したがって、このようなお年寄りに過酷な負担を強いる改悪案は撤回すべきであると考えますが、大臣の所見をお伺いいたしたいと思います。
 第二点は、加入者按分率の引き上げについてお尋ねいたします。
 改正案では、加入者按分率を現行の四四・七%から二年間で一〇〇%にしようとするものであります。老人医療費を国全体で公平に負担するとの趣旨そのものは理解できますが、現状を無視した急激でしかも大幅な引き上げには問題があり、反対であります。
 政府は、引き上げの理由として、医療保険各制度間の老人加入率の不均衡を見直し、老人医療費の公平な負担を図るためと説明されておりますが、その本当のねらいは、赤字の国民健康保険を黒字の健保組合等の負担増によって救済させるという財政対策が見え見えであります。国民健康保険は、多くの老人を抱え、財政的に困窮しているのは事実でありますが、国保の財政赤字をさらに増大させた要因は、退職者医療の見込み違いによる国庫補助の削減であり、明らかに国の失政によるものであります。国保がみずからの手でその経営を立て直す努力は当然のことであり、また、外部からの援助の必要性も認めるものですが、しかし、それを保険制度間の財政調整のみに求め、国庫負担を削減するのは論外のことであります。したがって、加入者按分率の引き上げを言う前に、退職者医療制度の見込み違いについては国が責任を持って措置すべきであり、また国保への国庫補助についても、少なくとももとの水準に戻す努力を行うべきであります。あわせて、今後の国保の問題をどうするのか、御見解をお聞かせください。
 また、老人保健制度の創設の際の経緯を振り返ってみると、一〇〇%の財政調整の適否については、費用負担に急激な変動が生じ過ぎるとして見送られ、当時の厚生省の担当審議官は、医療費の実績の要素が反映されない按分の仕方は、保険者の経営努力を失わせ、逆に負担の不公平をもたらす結果になると明確に述べています。これが今日において正しくないというのであれば、今回の見直しの根拠となっている老人保健法附則第四条の「法律施行後の諸事情の変化」、すなわち加入者按分率を四四・七%から一挙に一〇〇%に拡大させねばならない「諸事情の変化」とは一体何なのか、納得のいく御説明をいただきたいと思います。
 第三点は、老人保健施設、いわゆる中間施設についてであります。
 高齢化社会を迎える中で、寝たきり老人その他介護を要する老人の増大を考え、新しい施設体系をつくるという政府の構想は、我が党として理解できるし、また、その必要性を認めるものであります。しかしながら、その具体的内容については極めて不明確であり、制度化論が先行して、果たしてどういうものができるのか心配されるのであります。
 厚生省の整備計画では、本年は十カ所のモデル事業を行い、将来構想として二十六万床から三十万床を考えているようですが、その具体的な手順と、医療費適正化という点でどういう効果があるのか、明らかにしていただきたいのであります。また、専門家の中から、この発想は、特養ホームを増設するには莫大な公的費用が必要であることから、その代替施設をつくるということと、医療費と措置費の削減策が絡んで中間施設を考え出したのではないかという批判がありますが、この点どうお考えになっているのか、あわせて、現在特別養護老人ホームの待機者が二万人と言われますが、この問題はどう解決するのか、御意見をお聞かせください。
 さらに、老人保健施設の整備計画は各県の医療計画の中にあって、一般病床としてカウントされることになっているようですが、このことは医療の量的削減と医療の質の低下につながる問題であります。また、後期高齢患者の一般病床からの締め出しになるのではないかと懸念されますが、どうお考えになっているのか、お伺いしたいと思います。さらにまた、いわゆるぼけ老人は老人保健施設では対象外とされているようであります。この問題についてはどう対処するつもりなのか、お伺いしたいと思います。
 また、最近の全国社会福祉協議会の在宅痴呆性老人の介護実態調査によりますと、在宅介護は予想以上に厳しく、中でも介護者の中心は嫁であって、結婚してからずっと介護している人が六六%もいるという実態は容易なことではありません。中間施設での対応もさることながら、当面の緊急課題として、家族の介護負担を軽減するため、我が党が前々から主張しています在宅寝たきり老人介護控除制度を創設し、大幅な減税を行うべきであります。日本の福祉の中で一番おくれているのが老人福祉だと言われますが、年金課税を検討し、年金積立金の自主運営にブレーキをかける大蔵省は福祉の心がわからないと言われているときだけに、大蔵大臣の前向きの誠意ある御答弁をいただきたいと思います。
 以上、何点かにわたって質問をいたしましたが、本法案は、財政対策だけが先行し、抜本的な対策は何もなく、お年寄りに過酷な負担を押しつけ、サラリーマンにとっては実質増税となるものであります。したがって、このような改悪案には我が党は断固として反対であることを強く主張し、私の代表質問を終わります。拍手
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
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中曽根康弘#28
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 沼川議員にお答えいたします。
 まず、老人保健法改正法案を再提出する理由でありますが、これは先ほど来申し上げましたように、人口の高齢化が急速に進む中で、長寿社会にふさわしい高齢者の長期的な安定した保健医療制度を確立するためにこの提案をしておるわけでございます。今回も同じ趣旨に沿って行っておるものであります。
 次に、保健事業の評価の問題でございますが、やはり壮年期からの健康づくりを行う保健事業が重要であると思っております。そのことは、長期的には老人医療費の適正化にも資するものであります。こういう意味におきまして、例えば健康手帳であるとか健康教育、健康相談あるいは健康診断あるいは機能訓練あるいは訪問指導、こういうような諸般の面について保健事業を積極的に推進してまいりたいと思っております。
 次に、これは単なる財政対策ではないかという御質問でございますが、一面におきましては今の保健制度を長期的に安定化させようというものでありますが、一面においては適正なものにするという意味もあり、あるいは公平に負担していくという面もあるのでございます。さらにこれを推進していくために、レセプト審査の充実、医療機関に対する指導監査の強化、診療報酬の合理化等医療費適正化対策を推進するということも大事であると思います。
 さらに、保健、医療、福祉の総合的展開の基本方針いかんという御質問でございますが、これは先ほど申し上げましたように、長寿社会対策大綱を六月六日に策定いたしまして、これを懸命に推進してまいろうと思うものであります。
 最後に、自民党講習会における私の発言によりまして、米国民より誤解を受け、御心配をおかけいたしましたことについては遺憾の意を表します。私には人種差別とかアメリカ社会を批判する考えは毛頭なかったことをここで申し添えます。
 残余の答弁は関係大臣がいたします。拍手
    〔国務大臣斎藤十朗君登壇〕
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斎藤十朗#29
○国務大臣(斎藤十朗君) 沼川議員にお答えいたします。
 まず、一部負担の引き上げについてのお尋ねでありますが、人口の高齢化が急速に進む中で、老人医療費の増加は避けられない状況にあります。この老人医療費をどのように適正なものとし、国民全体がいかに公平に負担していくかが緊急の課題であると考えております。現在、四兆円を超える老人医療費のうちお年寄りの一部負担は一・六%であり、残りの大部分は若い世代の負担に負っている実情にあります。このため、増加の避けられない老人医療費をお年寄りも若い世代も公平に負担するという観点から、今回の改正をお願いしているものであります。今回の改正では、お年寄りが払いやすい定額制を維持し、外来については月の初めに一回だけ支払えばよいという現在の仕組みは変えないこととしており、また、年金や高齢者世帯の所得の実態から見て無理なく負担していただけるものと考え、また、必要な受診を抑制するものではないと考えております。ぜひ御理解のほどお願いを申し上げたいと思います。
 入院時一部負担との関連で御指摘の在宅対策の充実でございますが、本格的な高齢化社会の到来を控え、可能な限り、家庭を中心とした日常生活の場で必要な医療や看護、介護が行われるよう訪問看護、ホームヘルプサービス等在宅サービスの充実を図ってまいる考えでございます。また、保険外負担の問題につきましても、従来からその負担を適正な範囲のものとする等指導、是正に努めており、今後ともその徹底を図ってまいります。
 次に、加入者按分率についてのお尋ねでございますが、今回の加入者按分率の引き上げは、保険者間の老人加入率の格差を是正し、どの保険者も同じ割合で老人を抱えるようにすることにより老人医療費の負担の公平を図るものであります。これは国庫負担の削減を目的とするものではなく、長寿社会にふさわしい公平な負担のシステムを確立するための改正であり、ぜひとも御理解をいただきたいと考えております。
 次に、加入者按分率に関連しての国保の問題についてお答えいたします。
 まず、退職者医療の影響につきましては、先ほど中沢議員にお答えしたとおり、今後とも市町村国保の安定的な運営が行われるよう配慮してまいる所存であります。国保の国庫補助については、事業主負担がないことや低所得者が多いことなどを勘案して、他制度に比べ高率の補助となっており、また、現下の厳しい国家財政から見ても補助率の引き上げは困難でございます。
 次に、老人保健法施行後の諸事情の変化についてのお尋ねでございます。
 まず、老人の加入が国保に集中し、医療保険の間の老人加入率の格差がさらに拡大してきております。このため、老人保健制度を支える医療保険制度の財政状況は大きく変化してきております。また、先般、健康保険法の改革が行われ、給付と負担の公平化を目指す医療保険制度の一元化が方向づけられ、老人保健制度もその方向に沿って見直しをする必要が生じております。このような状況の変化を踏まえ、老人加入率の違いによる負担の不均衡を是正し、老人医療費を公平に負担するという制度の基本理念の徹底を図る観点から、加入者按分率を引き上げることといたしたものでございます。
 次に、老人保健施設についてのお尋ねであります。
 その整備につきましては、昭和七十五年を目途に二十六万ないし三十万床程度の整備を計画的に進めていく考えであります。このため、法改正後モデル事業を実施することとしており、また、昭和六十二年度予算概算要求においては、本格実施のため百カ所の施設整備のための補助金と低利融資制度の創設を要求しているところでございます。また、その医療費への影響でありますが、在宅対策等の推進とあわせて老人保健施設を計画的に整備した場合には、老人医療費の伸び率は、現在のまま推移する場合に比べ約二ポイント程度低下するものと見込んでおります。
 また、老人保健施設は医療費と措置費の削減策ではないかとの御批判でありますが、この施設は寝たきり老人等の医療と生活の両面のニードに積極的に対応するため、今回の老人保健法の改正案に盛り込んだものであり、単なる財政対策として御提案申し上げたものではございません。
 また、特別養護老人ホームにつきましては、ここ数年間毎年度八千人程度のペースで整備を進めてきているところであり、今後とも着実にその整備を推進し、待機者の段階的解消に努めてまいる所存であります。
 老人保健施設は、生活サービスとともに医療サービスを提供するものであり、医療計画上、地域の病床数を算定する際は、その入所定員数を一定の割合をもって一般の病床数として扱うこととしているものであります。老人保健施設の創設により、老人に対する医療の提供は、入院治療の必要な方は病院で、入院治療の必要はないが在宅療養の困難な方は老人保健施設で対応することとなるわけであります。このため、これまで入院していた方もその状況により老人保健施設への入所が適切な方であれば老人保健施設へ移られることが予想されるなど、それぞれの状態に適合したサービスが提供されることになると考えており、必要な医療の量的削減や医療の質の低下をもたらすものではないと考えております。
 痴呆性老人につきましては、精神病院において専門的な医療等が必要な方を除きまして、老人保健施設においても対象者として考えられると考えております。
 以上でございます。拍手
    〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
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