沓脱タケ子の発言 (本会議)

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○沓脱タケ子君 私は、日本共産党を代表して、老人保健法等改正案について、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
 私は、まず冒頭に、緊急な問題として、伊豆大島の三原山の災害に関し、我が党は、全島民の皆様方に心からお見舞いを申し上げ、同時に、政府に対して、被害者の皆様方に対し適切かつ十分な緊急対策をとるように、まず強く御要望を申し上げるものであります。
 さて、私は、本法案が会期末になって本院に送付され、しかも、委員会の審議日もないままで本日の本会議に付されたことに対し、参議院改革の本旨にももとるものとして強く抗議するものであります。
 総理、あなたの最も親しいレーガン政権のもとで、近年、未熟児の出産が激増していることを御存じですか。その原因は、核軍拡の一方で、小さな政府の名で進められた社会保障費のカット、特に、貧困層に対する食糧援助の打ち切りによる妊婦の栄養不足やヘルスセンターの多数の閉鎖の結果がもたらしたものであります。この事実は、社会保障の切り下げが社会的に弱い人々にどれほど大きな打撃を与えることになるかを示しております。総理、あなたもこのわだちを歩みつつあります。あなたは、戦後政治の総決算の名のもとに大軍拡と大企業優先の政治を推し進める一方で、社会保障制度の全面的な改悪を進めているからであります。
 老人保健法について言えば、政府は三年前、自助と連帯、すなわち自分の健康は自分で守れ、必要な費用は国民が連帯して負担せよという、憲法二十五条と老人福祉法を空洞化する理念を持ち込み、老人医療の有料化を強行いたしました。そして、さらに本法案による改悪を突破口にして、健保本人への二割負担の強行、国民健康保険の改悪と解体など、いわゆる福祉切り捨ての第二ラウンドを進めようとしているのであります。
 お年寄りを福祉切り捨ての矢面に立たせ、過酷な負担を押しつける本法案の強行は、お年寄りの医療と年金を大事にする福祉社会を建設するという、さきの選挙での総理自身の公約をも真っ向から踏みにじるものではありませんか。明確な御答弁を求めます。
 この中曽根内閣の政治姿勢は、本法案の内容にも明確にあらわれております。その第一は、お年寄りの負担を大幅に引き上げる問題であります。
 今日の老人世帯の暮らし向きは、政府の調査を見ましても、横ばいないしは低下しており、老齢福祉年金や国民年金受給者の大部分が月額三万円前後というもとで、年金や恩給を主な暮らしの糧としている老人世帯が実に六割にも上っているのが実態であります。政府は必要な受診を抑制するものではないと答弁しておりますが、このようなもとで患者負担を大幅にふやすということは、所
得の低いお年寄りなど、本来、最優先に福祉の手を差し伸べなければならない人たちほど医療から遠ざけられるのは当然であります。まさに弱者切り捨ての政治姿勢を端的に示したものと言わざるを得ないではありませんか。御見解をお伺いしたいと思います。
 患者の負担増によって力ずくで受診を抑えようとするようなやり方ではなく、老人医療費の無料化を復活させ、早期受診の機会を保障するとともに、リハビリや保健事業を拡充することこそが、国民の健康を守り真の医療費支出の軽減につながる道ではありませんか。
 さらに、長時間超過密労働と遠距離通勤が働く人々の心身をむしばみ、慢性化した疾病が老後にまで及んでいる現状から見ましても、週休二日制の実現や労働時間の短縮が、今国民の健康を守る上でも国民医療費の軽減にとっても緊急の課題となっていると思いますが、あわせて御所見をお伺いしたいのであります。
 第二は、加入者按分率を変更し、被用者保険の拠出金を大幅にふやそうという問題であります。
 この本質は、国の負担だけは大幅に削りつつ、国民同士による痛み分けの形で財政調整を押しつけるものであります。これでは到底労働者の納得が得られないのは当然であります。制度の長期的安定の確保を口にするのであるならば、まず国庫負担を大幅に増額し、老人医療への国の責任を果たすとともに、他の先進資本主義諸国に比べてみましても、国内の中小企業の負担比率に比べてみましても、著しく低い大企業の社会保障費負担を適正に引き上げることによって制度の安定を図るべきではありませんか。この点について明確な答弁を求めます。
 第三は、老人保健施設の新設についてであります。
 寝たきりのお年寄りは年々増加の一途をたどっており、特別養護老人ホームなど入所のできる施設の増設は広範な国民の願いとなっているのであります。しかし、本法案に言う「老人保健施設」は、このような国民の期待を逆手にとった安上がりの施設づくりをねらったものであり、お年寄りの人間的尊厳を保障するにはほど遠い施設になるでありましょう。
 加えて、問題は、高額の自己負担の上にさらに基準以上のサービスを望むときには、自由契約でさらに高額の差額を支払わせ、処遇に格差を持ち込むということを公認することになっているわけであります。これでは、政府みずから我が国の社会福祉・社会保障制度を変質、崩壊させる道を開くことになるではありませんか。断じて許せないと思うのです。御答弁を求めます。
 第四に、国民健康保険料滞納者への保険証の取り上げ、保険給付の一時差しとめという制裁措置についてであります。
 そもそも、国保財政への国庫負担を大幅に切り下げ、九割もの自治体に国保料の引き上げを余儀なくさせ、滞納者を急増させてきた政府の責任を棚上げにして滞納者に制裁措置を強行するとは、全く不当なやり方ではありませんか。政府は、制裁措置は悪質滞納者のみにとどめると答弁しておりますが、現在でも既に少なくない自治体で国保料収納率の引き上げを名目にいたしまして滞納者への保険証送付が不当にも差しとめられており、専ら低所得の方々がその対象とされているのであります。新しい保険証が手元にないために受診がおくれ、通院即入院という事例も各地にあらわれているのであります。このような国民の生命を脅かすような制裁措置を法的に認めるということは、国民皆保険制度を突き崩すことになるではありませんか。明確な御答弁を求めます。
 総理、あなたは今、百円玉を四つしっかりと握りしめて病院を訪れるお年寄の心情がおわかりになりますか。長年社会に貢献されてきたお年寄りには、それにふさわしい政治の光を当てるのが当然ではありませんか。この立場から見ても、本法案は憲法第二十五条と老人福祉法の理念を踏みにじる許しがたい悪法であります。今こそ軍事費を削って医療福祉を守るときです。私は、断固として本法案の廃案を実現するために奮闘することを申し上げて、質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 110715254X01019861126_018

発言者: 沓脱タケ子

speaker_id: 32029

日付: 1986-11-26

院: 参議院

会議名: 本会議