山田精吾の発言 (予算委員会公聴会)
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○山田公述人 山田です。公述の機会をいただきましたことをお礼申し上げたいと思います。
我が国の進路につきましては、先行き不透明の中であれこれと議論を呼んでおりますけれども、どちらにしましても、国民生活の質を高めるための内需拡大をどう進めるのか、このことが大方の国民の気持ちではないかというぐあいに私どもは受けとめております。それだけに、今回の通常国会に対しましては大きな期待も寄せておりますし、私たちはあえて、勝手な言い方ですが、生活国会だというような名づけもしております。
ところが、先週の予算委員長の辞任をめぐる国会の動きなんかを見ておりますと、果たしてこれで国民の期待にこたえられるのかどうか、率直に言いましてこれで大丈夫なのか、大きな不安なり疑問を持っております。このようなことで、ますます政治への不信を強めていくことを大変危惧していると率直に申し上げておきたいと思います。
先ほど、きょうは予算委員長ではございませんけれども、ごあいさつをいただきましたが、きょうの公聴会も一体どうなるんだろうかということを大変気にしておりまして、何か一言触れられるのかなと思いましたが、全然ございませんでした。ぜひ、国民生活に密着しました、そしてわかりやすい国会論議を展開して、政治の信頼の回復に、ひとつ全力を挙げていただきたいということをお願いを申し上げたいと思います。
それから、世の中全体が寄らば大樹の陰というような、各界全体を通しましてその風潮が大変強くなっていることも気になります。このことも、今日のいろいろな問題を引き起こしている大きな要因にもなっているように思います。これは、国会の皆さん方だけではなしに、我々労働界に所属する人間としても、実は極めて反省をしているわけなんですが、端的に言いまして、経済界にしましてもうちの会社は、うちの会社は、労働界にしましてもうちの組合は、政界もうちの選挙区は、といったミクロ的な選好という、こういう傾向が非常に、余りにも強くなっているんではないかな。もちろん、私は生意気なことを言っていますけれども、うちが大切であるということは、言われるまでもなく十分承知の上で実は申し上げているわけであります。
昨年は、「塀の中の懲りない面々」というのが大変流行語になりましたが、その背景にはいろんな意味合いが含まれているように思えてなりません、私の勝手な思いかもしれませんけれども。今最も大切なことは、マクロ的な視点を大事にすることが我が国の進路を切り開く重要なポイントになっているのではないかと反省もし、今最も求められているものではないかと思っております。
予算審議に当たりましては、釈迦に説法かもわかりませんが、前回この場でも私は申し上げましたけれども、まず第一に、中流意識論に浮かれ、国民生活の実態が見失われているのではないか、このことも大変気になっております。前川レポートの指摘を待つまでもありません。経済成長の成果が生活の質の向上に反映されてないということです。
最近各省庁が発表しました各種の生活調査、消費調査、貯蓄調査などにも見られますように、目標とは裏腹に、逆の方向に向かっているとしか思えないわけです。生活水準が人並みを中流意識と考えた場合、中流意識も前回、三年前の調査から二・四ポイントも下がっております。将来の暮らしに否定的な見方をする人は、同じく前回の五七・一%から六五・一%とふえております。十人に七人が将来に対して悲観的な見方をしている。また貯蓄の所得間格差を見ますと、貯蓄高よりも負債高の方が多いサラリーマン世帯は二〇・七%。サラリーマン世帯の五分の一が負債超過の世帯というような現状です。
さらに、昭和六十二年十一月総務庁家計調査報告によりますと、全世帯の実質家計消費支出は前年同月比二・〇%増で堅調でありますけれども、勤労者世帯に限りましては実質〇・八%減。これは二カ月連続のマイナスを記録しておるということです。一方、自営・自由業など一般世帯は八・三%増と、十カ月連続のプラスとなっておる。消費面の格差がこういう面でも顕著にあらわれている。このようなことを挙げますと数限りなくあると思います。
昨年、この場で、公聴会でも、国税庁発表による昭和六十年度の民間給与の実態の一部を御紹介いたしました。昭和六十一年度は、一年を通して勤務した給与所得者は三千七百二十九万人です。平均給与は三百六十三万円です。これは残業手当を含む諸手当、ボーナスを入れてのすべての収入という額であります。平均年齢は四十・八。勤続年数は十一・〇年。事業所の規模を見ますと、本当に驚くような実態であります。一人から九人の規模、八百八十八万人、全体の二一%を占めておりますけれども、平均の収入給与は二百六十七万円です。五千人以上の規模が二百二十三万人おりますが、五・三%を占めて五百二十三万円というような状況です。
両者の格差を見ますと、給与面では一〇〇対六五、ボーナスの面では一〇〇対一七。仮に三十人から九十人で比較しますと、一〇〇対七七、一〇〇対四四というふうに、むしろ年々格差が大変開いているというような状況だということも十分知っておいてほしいと思います。全体に占める規模五百人以上、二二%ですから、圧倒的に中小零細企業で働いている人たちが多いということなんです。年収三百万以下は四九・三%、三百万円から五百万円以下は三〇・七一%、中堅サラリーマンがよく話題になりますが、五百万円以上という人は二〇・一%しかいないということなんです。六百万円以上はそのうち一一・九%というのです。
税制問題とか社会保障の問題を議論する際に、ぜひこういう実態についても念頭に置きまして議論をしていただくことが非常に大事なことではないかということで、私はあえて冒頭に申し上げたわけです。
第二に、円高と購買力平価、そして労働時間の短縮の問題です。
円高メリット・差益還元につきましては、政府は六〇%以上の効果を明らかにしていますが、生活の実感から見ればそんな気持ちには到底なれません。消費者物価の動向から見ましても、そのことを物語っていると思います。横ばいからやや最近は上昇の機運にあるというようなことがそれを示していると思います。殊に円高の急騰によりまして、我が国の名目賃金は世界のトップ水準だと言われておりますが、さらさらそういうような実感は持てません。そういう実態でもありません。
私ども連合は、家庭の幸せを中心にして、総合生活の改善を進めるために欧米並みの生活を目指すことにしております。このことは、欧米との購買力の差が余りにも大きいということです。昨年、経済企画庁が発表しました物価レポートに紹介されていますように、OECD調査、これは五年に一回なんですけれども、一九八五年時点の為替レートが一ドル二百三十九円、購買力平価は二百二十五円、物価水準はアメリカの〇・九四倍でありました。
二年を経過しました。連合でOECDの方式で試算をしてみました。それによりますと、八七年為替レートは百三十八円に上がり、この二年間で消費者物価上昇はアメリカで七・〇%、日本で一・一%をもとにしますと、購買力平価は二百十三円、物価水準は一・五四倍、これはアメリカの一・〇〇に対してであります、大都市における地価高騰を加味しますと、格差は一層拡大をすることになることは皆さん御承知のとおりです。従来の物価対策の強化とともに、ぜひ物価構造にメスを入れ、抜本的な見直しが緊急な課題であります。まずOECDの調査を待つだけでなく、政府としても独自の調査体制をつくり、実態を明らかにしてもらいたいと思うわけです。我が国の経済力と社会生活環境の余りにも大きな開きが、このようなゆがみを生み出していることは言うまでもありません。
特に、労働時間の欧米との差はそれを象徴的に示しております。多くの問題を含みながらも労基法の改正が四月一日からスタートします。一九九〇年代の初めには完全週休二日、週四十時間の実現をしなければなりません。その環境づくりのためにも、経済力の社会への還元を政策的に検討する段階に具体的に来ていると思います。時短促進の決め手は、政府の責任で実行できます公務員の土曜閉庁による週休二日制の実施を直ちに行うべきだと思います。金融機関についても言うまでもありません。
第三に、土地住宅対策であります。
土地住宅対策を思い切って進めてほしいわけですが、一時期に比べ、国会の議論のトーンが非常に落ちているような気がして心配です。その理由は、値下がり傾向にあるという見方が何か左右しているようでありますが、そんなことでは困ります。連合では、首都圏サラリーマンを対象として本年一月十七日から二十日間、緊急な調査を行いました。その内容は、既にきのうからきょうにわたってマスコミを通じて報道されているとおりであります。
時間がございませんから多くを紹介するわけにはいきませんが、下がっていない、まだ上がっているというのが、二十三区では七五・五%、六十キロ圏外でも七九・四%、その間はほとんど八〇%以上の人が、土地は下がってはいない、むしろ上がっているというようなことを端的に私どもに表明をしております。原因と責任につきましては、もう圧倒的に、何もしてこなかった政府にある、六〇・七%。不動産業者による土地転がし、一四・七。金融機関による土地融資の行き過ぎ、一一・五。東京の国際都市が非常にその理由になっておりますが、サラリーマンの受けとめ方ではわずかに五・〇%というような見方ですから、ちょっと国会で議論される面とサラリーマン、国民が受けとめる面と、土地が暴騰した理由についての見方にかなりな差があるなということを、この際率直に申し上げておきたいと思います。
対策についても触れたいわけですけれども、時間の関係で省略しますが、一言だけ申し上げたいと思うのです。
本当に涙ぐましいような調査の結果が出ているのですが、サラリーマンは、大都市での住宅、持ち家についてはもうあきらめたと言われるのが一般的なのですが、年収四、五年分でまだ入手できれば、生活を切り詰めても何としてでもマイホームを持ちたいという方が、やはりこの大都市には依然として六〇%おるということが明らかになってきました。もうだめだ、もうあきらめ切っている人は三〇%、どうしていいかわからぬという人が一〇%以上おられるというような実態ですから、ひとつ国会でも大いに私たちの気持ちを受けてもらいましてやってほしい。憲法論議がよくございますが、土地につきましては四人のうち三人までが、土地私有制度のもとで社会的、公共的制約を容認いたしますというような気持ちもこの調査で明らかにされてきております。
さらに、第四には雇用対策であります。どのような対策を進めるにいたしましても、四%から五%程度の実質経済成長率を定着させることが何よりも大事なことだと思います。
環境の暖かでないところでは、産業構造の転換も大変な犠牲を出すことになります。それに、適正為替レートの安定化、産業空洞化を避けるための適切な産業調整等、雇用ミスマッチの厳密なチェックが大事だと思いますし、中高年者の雇用対策、企業海外進出、外人労働者の受け入れの問題など、たくさんの課題が雇用問題を通じまして山積をしております。雇用は全体として明るくなったと言われておりますけれども、産業、業種、地域、年齢といった現状のばらつきに加えて構造転換に伴う先行き不安があります。
昨年十二月、完全失業者百六十一万人、失業率二・六%、有効求人倍率〇・八五倍、全国平均に比べ時点のとり方は若干ずれておりますけれども、九州では失業率は四・〇%、有効求人倍率は〇・五二倍です。北海道は失業率三・六%、有効求人倍率はわずかに〇・三倍というような実態です。全国的に見ましても、年齢の面では五十五歳以上有効求人倍率は〇・一、仕事をしたくても仕事がないという実態にあります。特定地域、特定産業に対する助成政策の実施による地域活性化、とりわけこれらの地域は農産物の自由化の影響を大変大きく受けておるということも新しい問題として一つ加えながら、十分な雇用対策を進める必要があると思います。さらに、産業、地域の構造転換を先取りした環境づくりは言うまでもありません。
最後になりましたが、第五に税制改革と減税についてであります。
税制改革、減税は今や天の声でありまして、総理府の世論調査でも不公平、重税感は昭和四十六年で五四%でしたが、昭和六十一年ではどの課題も抜きまして八一・三%になっております。これは圧倒的にサラリーマンの声といいますか、怒りだというぐあいにぜひひとつ受けとめてもらいたいと思いますし、私どもも、もちろんその主張を今日まで続けてまいりました。昭和五十二年から事実上据え置かれてきたということです。
昭和四十年から五十年の十年間で、減税は三兆六千九百二十五億円です。昭和五十一年から六十二年、昨年までの十二年間で、わずかに二兆六千二百七十億円の減税しかなかったということなのです。殊に昭和四十九年の一兆七千二百七十億円の減税は、当時の政府予算規模で見直しますと、約五兆円に匹敵する金額であります。このようなことが、もともとの不公平税制に対する強い不満がある上に、さらに火を注いだ結果が税制に対する不満を一層増大させているということです。もちろん減税だけではなく、税制改革に手をつけなかったことにも大きな原因があります。また今日までのわずかな減税は、減税というよりも、物価上昇による極めて部分的な是正措置だというぐあいに私どもは受けているわけであります。
昨年十一月から私も税制調査会のメンバーに参加しております。竹下総理は、所得、資産、消費の均衡のとれた改革と二十一世紀高齢社会に備えての財源確保を諮問されました。その際に、確かに一切の予見を与えないものとして——だが実際は、予見どころか自民党の首脳の皆さん方は、新型間接税秋口に結論を公然と発言をしておられますし、ちまたでは、政府税調はしょせん自民党税調の隠れみのだということを言われております。もしそういうことであれば、政府税調の責任も問われることになると思います。ぜひこの点は、政府税調が自由にまじめに議論ができるような環境づくりにひとつ御協力をいただきたいと思います。まあ、小倉会長の言うことかもわかりませんけれども……。
私の所属します連合の基本的な態度を率直に申し上げますが、新型間接税秋口に結論を前提とした税制改革は絶対に進めるべきではありませんし、もしその導入を目指すならば、まず国民の信を問うことが議会制民主主義のルールであるということを、連合は一体何を考えているのかなんということをよく問われるのですが、この席で明確にひとつ申し上げておきたいと思います。
本来の税制改革をぜひやってほしいという私たちの気持ちを申し上げたいと思いますが、税制改革は、制度と財政を切り離して、まず制度の不公平税制の是正を中心に徹底した改革をひとつ進めていただきたいということ。特にサラリーマンの立場から四つの不公平。一つは、名目賃金がふえることによる実質大幅増税。二つは、執行上の不公平、いわゆるクロヨン。三つには、資産課税の骨抜きを初めとする制度上の不公平。四つ目、税金の使われ方に対する不公平などが私たちの税制改革に当たっての原則であります。
一番目の所得の問題についてですが、公平の原則はサラリーマン源泉徴収納税を基本としてぜひ考えてもらいたいということです。申告納税者すべてを指すわけではありませんけれども、所得捕捉率にいわゆるクロヨン問題が存在していることは紛れもない事実であります。昭和五十二年から六十二年、十一年間の所得税の推移を私どもは試算をしてみました。サラリーマン給与は三七・九%ふえておりますけれども、税金は九八・五%ふえておりまして、一%に対して二・六%の増です。申告所得者の所得は三〇・一%ふえまして、三六・一%の税金の増ですから、一%に対して一・二%であります。これは間違いのない数字でございますから、こういうことを私どもはクロヨンの背景として実は申し上げているということであります。
制度面からの不公平もあります。記帳義務と総収入申告制の強化。みなし法人税、専従者給与制度、医師優遇税制、こういう制度についてはひとつなくしてもらいたい。推計課税、挙証責任の見直し、悪質脱税の罰則強化、時効の延長、こういうことについて私どもは所得の問題について強調しているということです。具体的にはインデクセーション、物価調整の制度をぜひひとつ導入してほしいということです。
今回、私どもは昭和六十三年度の減税としまして一兆一千億円の所得税減税、四千八百億円の住民税減税を主張しております。この理由は極めて簡単であります。昭和五十二年から消費者物価上昇が三四・六%ございました。そのうち二回にわたりまして減税が行われまして、ちょうどその差し引き残高が一兆一千億円になりますから、ぜひ一遍税制改革の前に整理をつけていただきたいというような考え方であります。
税率構造の見直しにつきましても一〇%から六〇%、このことにつきましては、キャピタルゲインが一体どうなるのかということを見ながら税率の段階についてはさらに我々の見解を明らかにしたいと思います。
資産についても、時間がありませんから簡潔に申し上げます。資産については、キャピタルゲインについてはぜひ原則課税ということを明確にしてほしい、そして漏れがないように。キャピタルゲインについては我々はクリーンカードというような言い方をしておりますが、マル優に対して根こそぎやっちゃったのですから、キャピタルゲインについてほっておくというのは極めて問題だということが一言で言えば私どもの言い分であります。
さらに、アメリカの国税庁では四つの武器を政府に与えております。自民党の皆さん、これは聞いてください、大事なことです。一つは、社会保障番号の導入の問題です。巨大なコンピューターシステム、それから株式の売買によるキャピタルゲインに対する取り扱い、悪質な脱税の罰則強化。ということで時間がなくなりまして、後でまた御質問にお答えする形で申し上げたいと思います。
えらい済みませんでした。(拍手)
〔奥田(敬)委員長代理退席、野田委員長代理着席〕