西川寿子の発言 (税制問題等に関する調査特別委員会)
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○参考人(西川寿子君) 御紹介をいただきました西川でございます。
私は、税制改革法案について、消費者の立場から幾つかの問題と思うところを述べさせていただきたいと思います。
まず、何と申しましても、消費者が関心を持っているのは消費税の問題です。この税制改革は、国民が公平感を持って納税し得る税体系の構築を目指しているとのことでございます。消費税はその税体系の三本の柱の一つになっております。消費税を実際に納税なさるのは事業者ですが、真の納税者はほかならぬ私ども消費者です。そこで、この消費税が公平感を持って納税し得る税金かどうかが、消費者にとっての最大の関心事になっております。
課税の仕組みを見ますと、メーカーから末端の消費者に至るまで、各段階で既に納付された税額を次々に差し引き、最終的に消費者に転嫁されることになっております。けれども、御承知のように、我が国の流通経路は非常に複雑で、仕組みの説明に用いられておりますような単純な経路というのはむしろ珍しいのではないかと思われます。さらに、事業者の課税免税点が年間売上高三千万円、簡易課税適用の上限が五億円というのは、余りにも緩やか過ぎるのではないでしょうか。
昭和六十一年度ベースの試算によりますと、年間売上高三千万円未満の企業数はおよそ四百十四万社、全企業数の六八%に達します。簡易課税が適用される五億円未満の企業まで入れますと五百八十七万社で、何と九六・七%になるわけです。これを消費者が最もなじみのある小売業に限ってみますと、免税される業者が七四%、つまり四軒のうち三軒までが納税しない業者なんです。もちろん理屈の上では、この小売業者の手に渡るまでに課税された分は小売価格に含まれますが、業者が免税されている分については、たとえ少額といえども安くなることになっております。
しかし、こんなことが現実になるとは考えられません。あちらの大型店は三%の消費税がかかるが、こちらの一般小売店ではそれがかからないからといって、じゃどれだけ安くなるでしょうか。しかもあらゆる業種、流通のすべての段階に免税の事業者、簡易課税の事業者は存在しています。消費者、すなわち国民のすべてですけれども、そのだれでもが識別できるよう大きなマークでもつけてくださるのなら別ですけれども、そうすれば私どもでも見分けることができますけれども、それは今の皆さんが考えていらっしゃるお話では見分けることができませんし、まして、きちんと納税しているかどうかわかるはずもございません。
事ほどさように、末端の消費者からこの制度をさかのぼってというか、逆の流れでもって見てみますと、この消費税は全く不透明な税制です。私どもが払った税金をだれがいつ、どこで幾らぐらい払ってくれているのか、私どもには一切わからない、そういう仕組みです。初めにも申しましたように、真の納税者は私たち消費者です。その納税者にわからない課税の仕組みでも、なおかつ納税者は信頼して払うとお考えになっていらっしゃるのでしょうか。
世の中、善人ばかりではないのと同様、事業者もまた善良な事業者ばかりではありません。この消費税の脱税は消費者が払った税金の横領であり着服です。しかし、制度そのものがこのように不透明であれば、脱税する事業者が出かねないと私どもは危惧いたしております。脱税についてはかなり厳しい罰則を設けてありますが、何しろ企業数は六百万社以上、仮に免税点以下の企業を除いても二百万社近い数字になるんです。現在の税務行政体制はこれに対応できるんでしょうか。もしその対応というのも、取りやすい事業者だけ厳しく捕捉して、結果的にまた新たな不公平を生むことがないように対応することができるんでしょうか。なぜなら、そのような不公平が生じると、小売価格の上昇という形で結局その被害は私ども消費者にはね返ってくるという可能性があるんです。
もう一つここで心配なことは、今回の税制改革全体の収支のつじつまが合わないということなんです。所得税、住民税、相続税、贈与税、法人税などの減税分と、消費税、有価証券譲渡益課税などによる増税分との収支を締めてみますと、二兆六千億円のマイナスになってしまいます。来年の経済予測を見ますと、まだ好景気が持続するという楽観的な見通しが出ており、税収が自然増収を見込むということはできるかもしれませんが、これがいつまでも続くものと当てにするのは少し見通しが甘過ぎるのではないかと思います。しかも、このような新しい税制を取り入れればそのための行政コストもかかってくるはずです。総理は、竹下内閣では税率を上げないと答弁されていますが、この竹下内閣ではというのは客観的な時間を示す言葉ではありません。したがって、私はこの税率がいつ変更され、つまりその変更というのは値上げしかないと思いますけれども、そういう値上げされるという不安をぬぐうことはできません。
さて、もし消費税が実施されたとすると、まだ懸念されることは幾らもあります。既存間接税の廃止によって下がるはずの小売価格、これが本当に下がるだろうかということです。これまでの物品税などが、消費者から要求されていたにもかかわらず、税額を明示したものが極めて少なかったので、多くの消費者はどれだけ間接税を払っていたのか知らない場合が多いのです。政府にすれば、国民の知らないうちに税金を取れるというところが間接税の魅力なのかもしれませんけれども、この税制を今変える、あるいは税率も変わるとなると、消費者にとっては知らないということが大変不利なことになってまいります。便乗値上げもさることながら、値下げされたのを知らぬ顔の半兵衛を決め込んで値下げしないという事態が恐らく起こるでしょう。これまでにも円高差益還元について、あれやこれやの理由づけによって消費者に還元されないでいるという腹立たしい経験を私どもはしております。さらにこれから、広く導くかもしれませんけれども、消費税を負担して、その上に税制改革差益というようなものが事業者にひとり占めされるようなことは、到底私どもは容認できません。
そして、これだけ不安材料がそろっているものを、なぜ来年四月から実施することにこだわっておられるのか、どうしても納得ができません。政府の方々は、こんな短期間ですべての消費者、つまり納税者に理解させる自信がおありになるんでしょうか。いわんや事務手続をする事業者の理解と実行がスムーズにいくと本気で考えていらっしゃるんでしょうか。
税制改革というのは大変大事なことで、それをやらなくていいとは私は考えておりません。しか、し土地問題、教育制度問題、農産物の自由化問題など焦眉の問題が山積している中で、消費税だけがなぜ、十分な合意も、納税者の納得もないまま、かくも慌ただしく実施されようとしているのでしょうか。これが、私たち消費者が持っている大変素朴な疑問でございます。
以上、私の意見を述べさせていただきました。