板垣正の発言 (内閣委員会)
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○板垣正君 今長官も触れられましたが、人命救助の問題について申し上げたいと思います。
「なだしお」と第一富士丸の衝突事故をめぐって「なだしお」たたき、自衛隊たたきの決定的、致命的な打撃となったのは、事故直後第一富士丸の乗組員から出たという、おぼれている人を助けもしないで見殺しにした等の一言であります。それが新聞やテレビを通じ、全国的にまさにあらしを巻き起こしました。
以下は当時の新聞の見出しの一例であります。
「助けて!」の叫び黙殺 「なだしお」乗組員に批判次々 「何人も沈んでいった」
救助遅れた潜水艦に怒り 「助けて」叫んだのに 艦員何もしなかった
腕組みして眺めるだけ 救命ボート投げ入れず 目前で二人力尽き沈む 衝突直後潜水艦上”波間の叫び”見殺し
「十数人、見てるだけ」
潜水艦、救助後回し「助けて…乗組員無視」
等々であります。
また、救助が終わった後の潜水艦の艦上の乗組員の写真、これが掲載されあるいはヘリコプターで写されてテレビで放映され、あたかも船員が傍観をしておったというふうなイメージを与えたわけであります。ある外国の特派員が、これは報道ではなくドラマの手法であると指摘したと言われております。
しかし、この報道は、自衛隊員は非人間的で冷血漢でひきょう者で無責任で、自衛隊は有害な存在であるという誤解すら国民に与える結果となり、まだ犠牲者の遺体の上がらない段階で心痛と不安に沈む遭難家族が激高したと伝えられるのも当然であります。また、事故直後から連日連夜、文字どおり不眠不休で救難捜索作業に挺身した延べ千名を超す自衛隊の潜水隊員らの必死の行動等についてはほとんど無視されたわけであります。
この自衛隊たたきのあらしは、権威あるべき国会審議の場にも吹き荒れたわけであります。七月二十八日、衆参両院において第一富士丸事故に関する緊急の連合審査が行われました。
衆議院側の議事録を見ると、次のような発言が記録されております。
その一。
沈没する第一富士丸から投げ出された乗客が必死で救助を求めているにもかかわらず、「なだしお」の乗組員がデッキでただ茫然と眺めているだけで即座に救助を行わなかったということが報道されております。(中略)被害者の家族や関係者からは、海の男として恥ずかしくないのか、なぜすぐ飛び込んで救い出してはくれなかったのか、だれのための自衛隊なのか、こういう強い怒りと自衛隊に対する不信の声が上がっていることも事実であります、救助がおくれたというよりも、手をこまねいていたというのが適切な表現であるかのような今回の状況について、その理由をお伺いしたい
その二。
とりわけ許しがたいのは人命軽視の問題、ここに今国民的な感情、怒りも集中していると思うのです。多くの証言もお聞きをしましたが、海中にほうり出された、そして必死に救助を求める人々に対してこれを放置する。新聞でも報道されていましたが、余り反応がないので、アメリカの潜水艦かと思ってへルプミーと声をかけたという証言も報道されています。
その三。
救助された人々の証言が新聞やテレビで報道されています。子供が助けてくれと言って声を限りに叫んでいる、しかし、それに手をかしてくれなかった、あるいは何とかしてくれと言っても、見ていながら何の行動もなかったというようなことも言われています。生々しい証言です。これは新聞で見たのだから、私は事実かどうかわかりません。しかし、そういう人たちが自分の生命が本当に危なくなるときに思っている気持ちというのは、私は誇張がそれほどあるとは思われない。
その四。
助けを求めておるのにかかわらず、十数名潜水艦の上から傍観をしておったという。一、二名何か飛び込んで助けられたようでございますが、こういった、目の前に溺者が助けを求めておるあるいは悲鳴を上げておるというのに、民間人だって見ておれば飛び込んで助けようという気になるんだ、少なくとも海上自衛隊自衛官と称される皆さんが、一般の民間人がまさにおぼれる寸前の悲鳴を上げておるのに、なぜ飛び
込んで助けるぐらいの機転をきかさないのか。今回は海上自衛隊でございますが、自衛隊の皆さんはそんな度胸のないことでよくもまあしゃあしゃあと自衛官でございますと言って、私は国民の血税をもらっておると思うのです。精神的な訓練は一体どういう訓練が日常やられておるのか、
以上が例であります。
以上によってもこの影響がいかに大きかったかがうかがえるわけであります。
冷静に考えるならば、見殺しにするなどあり得べからざることであります。発言者は第一富士丸のアルバイトの女子ということですけれども、マスコミが事実の裏づけもなしに飛びついたとすればアンフェアであり、不見識のそしりを免れないと思います。
このことについて、全く事実無根であったことが既に防衛庁側から、また一部月刊誌、週刊誌等々で明らかにされております。海に投げ出された人々は全員救助されたし、「なだしお」は潜水艦のいろんな特殊の制約下で救助に当たり、三名を救助しております。
しかし、事柄は自衛隊の名誉と信頼にかかわる、その体質すら問われる重大問題であります。一度植えつけられた国民の疑念はなかなか消えない。
そこで、今回この事故の調査や原因究明に当たられてきた海上保安庁の長官、この件について記者会見でも具体的に触れておられるようですけれども、率直に御見解を伺いたいと思います。