村山達雄の発言 (予算委員会)
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○村山(達)委員 村山でございます。
私、この間、国に帰りまして、いろいろ今度の根本的税制改革、消費税の話を地元でしたのでございます。そのとき驚いたことに、例えば所得税の配偶者控除の引き上げの問題、あるいは十六歳から二十二歳までの人の割り増し控除の話、こういう話もちょっといたしましたら、そんなことがあったのかと、こんなことをやっているならなぜ我々に知らせてくれぬのだ、こういうことを多くの人から聞かされたわけでございます。
したがいまして、今まで我々の国、あるいは恐らく全国でもそうでございましょうけれども、今度の税制改革というものの全貌あるいはその趣旨、こういうものがほとんどわからないで、その中の一つのポイントである消費税だけが切り離されてやはり喧伝されたのではないか。しかも、その消費税というのがなぜこれからの日本にとって必要なのかという観点ではなくて、消費税は好きですか嫌いですかというような観点で論議された嫌いが非常にあると思うのでございます。このことは、単に我々国民にとって本当に正確な判断を求める意味で困ったことだけではなくて、やはり将来の日本にとって非常に大事なことである、改めてこう思ったのでございます。
そしてよく考えてみますと、これは前回の通常国会における国会の論議のあり方をそのままやはり反映したのではないだろうか。考えてみますと、あのときも確かにいろいろな議論を行いましたけれども、ほとんど全貌に対する質問というものがなかった。ほとんど消費税だけであった。しかも消費税の欠陥という点に多くの論議がささげられた。このことは、当然でございますけれどもやはりマスコミも国会論議を中心にして報道するわけでございますので、そのことが私が行った国元における人々の認識につながったのではないだろうか、こういう感じがするのでございます。
したがって、今度の国会では消費税廃止法案、その代替財源法案、それから我が自由民主党、政府においては見直しの問題等が大きな問題になるわけでございます。しかし、この前の税制改正の全貌というものがわからなければ、これはこれらの問題を判断する上にも至大の影響があると私は思いますので、きょうは改めてその問題、税制改革全体の問題の全貌とその趣旨、こういったものを明らかにしてまいりたいと思います。
なお、私は実は大蔵省に二十六年おりまして、ほとんど税の仕事をやっておりました。そのうち大体十五年ぐらいは立法に、そして十一年ぐらいは国税庁で実務に携わった者でございます。それからまた、国会へ出ましてから今日まで二十六年になるわけでございますが、終始税調に属しておったわけでございます。そして今まで私の経験した税制改革と言われるものが三つありました。昭和十五年の大改革、それから二十五年のシャウプ税制、これにも関係いたしました。それから今度の税制改革に党の税調におきまして関係させていただいたのでございます。
時間が非常に限られておりまして一時間でございます。それで、今度の税制改革の意義、それから各税がそれらを含んでどういうふうに変わっていったかということを中心にしながら、私の考えを中心に述べながら、政府のお考えも確かめてまいりたいと思うのでございます。
最初に、今度の税制改革の骨格といたしまして、一つは直接税の減税なのでございます。所得税、個人所得課税が三兆三千億の減税、法人課税で一兆八千億の減税、それから相続税で七千億の減税、合わせて五兆八千億の減税でございます。しかしながら、課税適正化措置によりまして一兆二千億の直接税の増税を図っておりますので、差し引き四兆六千億の減税になっているのでございます。したがいまして、今後の租税体系上、直接税は四兆六千億減額することを意味しているということでございます。片や間接税でございますけれども、五兆四千億見積もられる消費税を導入いたしました。しかしながら、この身がわりといたしまして八つの間接税を廃止し、七つの間接税の一部吸収を行っているのでございます。それらの廃止による、あるいは吸収による減税額が三兆四千億でございますから、したがって、間接税の増税がネット二兆円ということになるわけでございます。そういたしますと、直接税、間接税のネット減税は、四兆六千億マイナス二兆円でございますから二兆六千億のネット減税ということになるわけでございます。
問題は、その租税体系の改革というのはどこにあるかと申しますと、言うまでもなく今申し上げました所得税のネット四兆六千億の減税、それから間接税が、消費税という形で五兆四千億入ってくるのだが、ネットで言いますと二兆円の増税になっている。つまり消費税という形の間接税が二兆円ふえる。片方は四兆六千億マイナスで、二兆円ふえる。ここに実は租税体系の変革という問題があるわけでございます。
それから、今度の税制改革が家庭に対してどのように影響を及ぼしたかということを見る場合には、所得課税のマイナス三兆三千億とそれから間接税のネット増税分の二兆円で計算されるべきものであることは当然なのでございます。したがいまして、減税超過が一兆三千億になりますので、ほとんどの家庭はやはり減税の恩典を受けまして負担が減るはずなのでございます。ここをはっきりつかめていただきませんと、今度の税制改革の本当の意味がわからないだろうと思いますので、あえて申し上げておきます。
それから、これから各税の問題に入りますが、したがって各税の問題というものは同時に税制改革と関連しているということをやはり、そしてまた各税が持っておる固有の問題も同時に解決していく、こういう問題としてお聞き願いたいと思うのでございます。
まず、所得課税でございます。
従来言われております問題点は、一つは水平的公平の問題でございます。すなわち、所得種類間における公平の問題、特に給与所得対例えば事業所得の関係でございます。
普通このときにクロヨンというようなことをよく言いますが、あれは納税者割合を言っているのでございまして、それ自身は不公平ということを直ちにあらわしているわけではないのは当然でございます。しかもそのときの、例えば農業所得者の兼業所得者は、税務統計上ほとんど給与所得者としてあらわれてくるはずでございますので、あの税務統計から見た主たる業種によって、それが納税割合をあらわしているわけでございますので、これではなかなかわからぬのでございます。
我々が本当の問題というのは、やはり所得捕捉の格差にあると私は思っておるのでございます。国税庁の年報をずうっと見てまいりますと、大体個人の営業者に対しまして一割ぐらい実額調査をやっております。その結果の平均でございますけれども、大体二割ぐらい所得が後で更正されておる、あるいは増加申告している状況でございます。これは平均でございます。必ずしも事業者がみんな悪いことをやっているということではないかもしれません。やはり、いろんな家計と事業の経費の分類ということは難しいから、おのずからそういうところもあるかと思います。
しかし、くしくも我々は戦前の経験を持っている者でございますが、昔、主税局長通達というのが出ておりまして、主秘第一号、これは何と書いてあるかというと、「収支実調したものについては二割減額することを得。」こういう規定でございます。これは何を意味しているかといいますと、当時の所得決定は、公選から成る所得調査委員会に諮るわけでございますが、そしてそこの諮問を経て、そして初めて決定する制度でございました。その所得調査委員会に諮るときに、収支実調したものについては二割引きで提案してもいいですよ、こういう意味でございます。
ですから、考えてみますと、やはりこの所得捕捉の格差問題というものは昔からある問題である。この問題を詰めるということはなかなか難しいのでございます。一割の実調だから税務官僚を十倍にして全部調べたらどうか、これはまた恐らく財政原則に反すると思います。したがって、何をやるかと申しますと、やはり調査能力の向上あるいは納税者の協力をお願いするという形、あるいは納税環境に関するもろもろの制度を完備していくということ、この絶えざる積み重ねによりましてこの開差をできるだけ縮めるように今努力しているというのが本当ではないかと思っております。
それから次の問題は、垂直的公平の問題でございます。
所得税は非常にすぐれているというのは、その垂直的公平、これが保たれているところが非常に長所と、応能負担を満足させると言われております。すなわち、給与所得者は給与所得者の仲間同士で、所得が多くなれば負担能力に応じて税額がふえますよ、こういう意味ですね。事業所得者は事業所得者の仲間同士で、所得がふえるとふえますよ、こういう問題なんです。水平的格差の問題は、絶えず努力はしておりますけれども、実情はそのようなものであろう、こういうことでございます。
ただ、我々が考えておりましたその垂直的公平のところで二つ従来問題が指摘されております。一つは、余りにも累進税率の税率が高過ぎるじゃないかという問題でございます。かつては住民税を合わして八八%と言っておりましたのが、ようやく旧法、改正前の旧法におきまして七六%まで下がったわけでございますが、それにしても世界の最高税率を見るときに圧倒的に高いということ、余りにもそれは過重ではないであろうか、むしろその過重であることが負担のバランスを崩しているのではないだろうか、こういう指摘でございます。
それからもう一つは、その税率の刻みが余りにも多過ぎるために簡明性を欠いておる。特に日本の慣行といたしまして、毎年毎年ベースアップがあります。それが小さな刻みでどんどん累進税率で取ってまいりますので、やはりベースアップの実感がほとんどない、そういう意味の不平が随分多かったわけでございます。だから、旧法におきましては、所得税の方では十二段階、十五から十二に減らしました。そうして今度は、住民税の方は七段階、これはかつての十四段階を半分にしました。それにしても、十二プラス七でございますから十九段階あるわけでございます。しかもそのブラッケットの置き方によりまして非常に変わってくるのでございます。これが非常に累増感を招きまして、やはり事業所得者にしてもあるいは給与所得者にしても非常な累増感をもたらしておった。こういう弊害があったと思っておるのでございます。
この問題は今度の税制改革で見事に私は解決したと思います。今度の税制改革は、今度新しい発想でございましたが、サラリーマンの生涯収支というものを計算いたしました。従来は家計の生涯収支なんというのは計算したことありません。およそ収入がふえたらどれくらいにしたらいいのか、こういうやり方でやったのでございますが、今度は生涯収支を計算いたしますと、そうすると、ちょうど四十歳の後半から五十歳の前半、このときに一番収入が入るのでございますが、家計は赤字になる。なぜかというと、やはりそのときに子供を学校に上げる金がかかるあるいは住宅ローンの返済が始まる、こういうことでそのときにやはり家計がマイナスになるということ。大体家計調査は、今度は就職してから五歳置きのずうっと家計調査をいたしました。それをもとにしてやはり家計の実感に合うように課税最低限の引き上げあるいは税率の刻み方、数、こういうのを全部盛ったということは今度初めてだろうと思うのでございます。
もとより所得税の累進構造につきまして決定的なものは、一つは人的控除の問題であり、もう一つは今言ったような税率の盛り方でございます。
結論から申しますと、今度の改正によりまして、それぞれ人的控除はもう思い切って引き上げました。しかもその引き上げの中に、やはり学齢適齢者の人については割り増し控除をやるとかあるいは寝たきり老人の在宅介護については今まで八十万控除というものを百二十万控除にするとか、非常にきめの細かいものを織り込みながら人的控除を引き上げておるのでございます。
課税最低限は三百十九万八千円、世界でもう最高の課税最低限を設定することになったわけでございます。
税率の方はと申しますと、今度は所得税は五段階、そうして一〇、二〇、三〇、四〇、五〇、そうしてブラッケットを全く改正いたしましたから、大部分、サラリーマンの九割は最初の一〇%で済むように工夫されておるということを注目しなくちゃならぬと思います。そしてまた住民税につきましては、七段階を三段階、五、一〇、一五と非常にわかりやすい数字にいたしたのでございます。その結果といたしまして、当然のことでございますけれども、中小零細の方々は課税最低限の引き上げが非常に効くわけでございます。それから高額所得者の方は税率の改正の方が響くはずでございます。これのコンビネーションで決まっているのでございます。
そして結果を見ますと、これは減税率で見る以外にはないと思いますけれども、減税率で見ますと、やはり下の者ほど多くの減税を受けている形が出ております。そして従来余り影響のなかった、ちょうど中堅サラリーマン、収入ベースで七百万とか八百万とかいうあたりでございましょうが、この辺も二割ぐらいの減税率が出るようになっているわけでございます。なお、全体の累進構造から申しますと、減税は非常に多いほど額は大きいわけでございますが、率で申しますともちろん下の方が圧倒的に大きい、そして全体の累進税率はと、こう申しますと、やはり累進構造はかなりふえているという結果になっているのでございます。
それで、累進構造というのは何で決まるかと申しますと、あるいは累進というのはどういう意味か、これをやはりはっきり定義しておかなければなりません。それは、所得がふえるほど所得に対する負担率がふえますという意味でございます。額がふえるのではございません。率で計算するわけでございます。そして、累進構造がきつくなったかどうかという意味は、例えば五分位の階層に属する者の負担割合とそれから第一分位に属する者の負担割合を、倍数を計算いたしまして、その倍数がふえるということになれば累進構造がふえたということになりましょうし、これが減った場合にはややそれが減退したということを意味するわけでございます。私の計算によりますと、改正前は六・五倍でございましたが、今度は二十五倍でございますから、明らかに累進構造は上がっているということが言えます。
なお、課税最低限と累進税率とのその累進構造に対する影響度を考えてみますと、問題なく課税最低限の引き上げの方が余計響くのでございます。それは当然のことでございまして、これは総所得の伸びに対して課税所得の伸び、これが圧倒的にふえるわけでございますので、当然そうなるのでございます。私の計算では、大体、課税最低限、人的控除の方の響く割合が累進構造に対して八割、それから税率の方がほぼ二割ぐらいだと私は試算しているのでございますが、そういうことが見事に今度は貫かれているということでございます。
そのほかに、今度の改正におきまして配偶者特別控除、この引き上げをやったわけでございます。これも大きな問題だと思います。これはもう言うまでもなく、その問題の発足というものは、事業所得者の方はその奥さんなり子供さんに所得を分割することが合法的にもちろんできるわけでございます。それが悪いということではございません。青色申告になることによりまして所得を分割する。そうすると、所得税の構成は稼得者単位ですべて計算することになっておりますので、給与所得の控除あるいは累進税率というものの適用が分割されていくこと、しかし、給与所得者は奥さんに分割することができない、しかし奥さんの貢献度を考えるときにそれはいかがなものであろうかと、そういった発想から、例えばアメリカは二分二乗という制度をとっておる、これを日本的に一つ消化したのが配偶者特別控除であるわけでございます。二分二乗という場合は、夫婦はともに働いている場合と格差がほとんどつかない、いかがなものであろうか、逆の公平論がございまして、配偶者特別控除制度ができたのでございますが、六十二年の改正でございますが、これが初めてでありました。しかし、所得税の方で十六万五千円、それから住民税で十四万円、これはまあいかにもひどいな、こう思っておりましたら、今度は物の見事に三十五万円まで上げていただいたのでございますので、これもやはり大変な負担軽減になります。この問題は、あわせていわゆるパート問題を同時に解決しておるということも申し上げておきたいと思います。
そのほか、内職者に対して最低経費率を設けたらどうか、こういう話もありました。これは与野党のいわゆる実務者会議におきまして皆さんとお諮りして、それで満場一致やった方がいい、こういうことで、これは与野党協議で満場一致で入れることになりました。これは問題は、当然のことなのでございますが、受注者が内職者と雇用契約を結べば何の問題もないのでございます。ただ、雇用契約を結びますと仕事を出す方の側に社会保障負担が伴うわけでございますので、どうしてもやってくれない。この辺の矛盾を今度の税制の方で最低経費という形で補ったと、こういう種類のものでございます。
そのほか、いわゆる不公平税制の問題といたしまして、医師の診療報酬の法定経費率の問題、今度五千万円以上の者については適用しない、こういうことにしたのは御承知のとおりでございます。
また、キャピタルゲインについて、原則非課税から原則課税に持っていった。しかしその場合、分離二〇%の申告とそれから源泉における選択を認め、それで、ことしの四月一日から実施しているということもあわせて御了解願います。
それからもう一つ、今度の減税でなかなかわかりにくいところは、これは実は三年間かかって平年度化するわけですね。つまり、所得税の減税というのは、税率の方は昭和六十三年から始まっておるわけでございます。控除は平成元年度から始まっております。それから住民税の方は、税率の改正はこの平成元年度から始まっておる。これも六—五の住民税年度でやっておるわけでございます。そして控除の引き上げは平成二年度の六月から実施になるわけでございます。だから、今度の税制改革の平年度が来るのは実は平成二年度であるわけでございます。そういうことで、これはいろいろな財政収支の関係等がございましてやむを得ずそうしたと思うのでございますが、それだけにまたわかりにくくなっておるということも事実でございます。
次は、法人税でございます。——だから、所得税におきましては、一般の家庭につきましてはネット三兆三千億の減税、こういうことをひとつ頭の中に入れておいていただきたい。
法人税について従来言われておりますのは、八〇年度の初頭におきまして日本の法人税の負担は、法人税の実効税率の負担でございますけれども、これは世界で一番安かったのでございます。しかしその後、各国はやはり国際競争の問題あるいは事業の活性化の問題等を考えまして、どんどん下げてまいりました。日本の方は逆に所得税の減税をやるための穴埋めを法人税で行ってまいりましたから、今日では日本は西独と並んで実効税率の最も高い国になっておる。これは将来のことを考えるときに、やはり競争は国際的にもフェアで戦うべきではなかろうか、余りにも格差のあるのはいかがなものであろうか、もしそのままほっておきますとそれはやはり産業の空洞化、あるいは将来に向かっての国の雇用の問題に響くであろうと当然考えられるわけでございます。なお、付加価値計算で見ますと、法人の付加価値計算というものは、後で消費税のところで触れますけれども、約八割を占めておるということも注目していかなければならぬのでございます。そういう意味で、この実効税率を引き下げるということ。
それからもう一つは、実は、留保に対する税率と配当に対する税率の二本立てになっております。配当に対する税率が新たに設けられましたのは昭和三十八年でございます。このときの発想は、やはり自己資本の充実の見地から増資を促進する必要があるであろう、そういう見地から配当に対する税率は特に安くしたのでございます。しかし、その後の経過を見ておりますと、残念ながら少しも目的に沿っていない。結果として配当性向の高い会社の負担軽減にとどまっておるということがはっきりいたしましたので、今度は一本税率にしようということになったわけでございます。今度の改正では、今の留保に対する四〇を二年がかりで三七・五%、こういうことにしようとするのでございます。それからまた、配当に対する軽減税率もこれを廃止して、今三〇のものを三七・五に持っていくのでございますが、これも二年がかりで持っていこうとしているのでございます。この点がもう既に今度の税制改革で、ちょうど最初の経過年度でありますところで今税率が決められておるということでございます。
そのほか、受取配当の益金不算入の縮減、一〇〇%をやはり二年がかりで八〇%にするとか、あるいは少額資産取得の即時償却制度、これは非常に企業が望んでおりますので、十万円という限度を二十万円に上げるとか、こういう改正が行われているのでございます。これもやはり画期的なことだと私は思っております。
今度の税制改正全般を見ますと、全体の仕組みの異動も大変なことでございますが、一つ一つの税目、所得税、法人税、相続税あるいは間接税、これの変化だけをとってみましても、かつてない大きな規模の改正であるということをこの際申し上げておきたいと思います。
時間がございませんので、政府側に対する御質問は後でまとめてさしていただきたいと思います。
それから、相続税の話は体系と余り関係ございません。ただ、五十年のときに大改正をいたしまして、奥さんには相続税を原則としてかけるべきでないのじゃないかという制度をつくったのでございます。やはり世代間の遺産の継承にだけとどめて、配偶者間、奥さんからいただくというのはやめようというのが五十年の大改正であったわけでございます。それから十四年たちました。その間、土地の上昇あるいは物価の上昇等を考えますと、相続税というのは累進税率で盛っておりますので、何としても負担の適正化を図る必要がある、こういう観点から、あわせていろいろな今までの懸案事項を全部片づけた、これが相続税の七千億の減税の中身であるわけでございます。
その次に、間接税と、それからこれは当然税制改革に関連してまいりますので税制体系の問題、これについての私の考え方を述べたいと思います。
御案内のように、日本の間接税というのは、いわば個別間接税制度をとっております。酒にしてもたばこにしても、あるいは代表的な物品税にいたしましても、ねらい撃ちでやっているわけでございます。しかし、世の中がどんどん進歩して、所得水準が向上してまいりました。昭和二十四年のときの一人当たりの国民所得は四万円でございます。現在二百四十万円でございますから、大体六十倍になっているわけでございます。いかに所得水準が上がったか。そして大体六〇%を占める消費でございますから、消費水準も上がったことはもう当然なことなのでございます。それで、やはりそこに消費水準が多様化してくる。あるいは消費に対する価値観が全く変わってくる。このごろの若い方を見ておりますと、別に高いものがいいというようなことでなくて、例えばジーンズがいい人はジーンズを買うとか、自分の求めるもの、まあ言葉で言いますと、よくわかりませんが格好のいいものとか、いろんなものがあるのでございましょう。そういうことで非常に個性的になっておる。
そのときに、例えば物品税でございますけれども、あの課税、非課税の区分は今だれか説明できる者がおるだろうか。コーヒーにはかかっておるが紅茶にはかからぬという説明をだれかできますかな。あらゆるところに全部あるわけでございましょう。ケヤキのたんすはかかるが桐のたんすはかからぬとか、毛皮は一万五千円からかかるけれども百万円もする高級織物はかからぬとか。私が考えますに、それぞれそのときどきにおきましてはそれなりの理由があったという歴史的遺産であると思うのでございます。そしてまた、日本の所得水準の低いときあるいは消費水準の低いとき、そのことはやはりそれなりの合理性を持っておったと思います。しかし、今日振り返ってみますと、その課税になっておるもの、非課税になっておるもの、あるいは税率の区分、例えて言いますと、ゴルフセットは三〇%であるが小型のヨットとかモーターボートは二〇%とか一五%でよろしい、値段にしたら問題にならぬわけです。こんなことだれか説明できますか。だれもできないのです。それは要するにそのときどきの歴史的な所産でございまして、それなりの意味があったのでございましょうが、今日ではほとんど意味をなくしているということ。
それから、第二の個別消費税の欠陥は、特に日本の場合でございますが、家計の消費の五割以上を占めておりますサービスですね、これに対する課税というものが全然欠落しておる。言ってみますと、物だけ一生懸命押さえている、そしてサービスの方は全然やっていない。これもまたおかしな話であると言わざるを得ません。
なおかつもう一つは、このような個別消費税をやっておりますと経済摩擦を起こすのは当然なことでございまして、例えば酒の税金でございますが、これは従価税あるいは級別課税を中心として、分類差等課税と言われる方式でやっております。しかし、ほかの国は全部そんなことをやっていないで、やはり広く薄く課税しているわけでございますので、ガットにおいて我々はガット違反であるという判定を残念ながら受けたのでございます。そしてまた物品税におきましても、例えば、自動車についてはアメリカから絶えずなぜ大きな車だけ、おれのところだけ高いんだ、スイスは金時計だけがなぜこんなに高いんだ、それからカナダの方は、おれの方の金貨幣は高いが地金はなぜ無税なのか、わんわん、わんわんと言われるわけでございまして、これがまた貿易摩擦になっているのでございます。
あれこれ考えますと、要するに今の消費税というものは時代おくれであるということははっきりいたしているのでございます。世界の動向を見ておりますと、すべて課税ベースの広い間接税、一般的な間接税に移っているということでございます。とりわけ今から二十一年前にフランスとドイツが共同して実施いたしました付加価値税、これが今全世界の間接税体系を風靡いたしているのでございます。世界で現在付加価値税を採用している国は四十七カ国あります。その中でアジアは七カ国ぐらいでございましょう。しかし、もうアフリカでも気のきいた国は全部やっている。それから、中南米もほとんどやっている。OECDは、五カ国、付加価値税が出る前に製造者売上税とかあるいは卸課税とか、こういうものをやった国を除いて、全部付加価値税でございます。OECDの国でも、現在そういった古い形の課税ベースの広い間接税から付加価値税への移行を検討している国もあることは御承知のとおりでございます。また、共産圏でありますハンガリーが既に付加価値税を実施していることも注目しなければなりません。
それなら、一体付加価値税の本質は何であろうか。したがって我が国の消費税の本質は何であろうか。これはもう言うまでもないことなんですね。国民経済の流れを考えてみますと、広い意味の生産に伴う付加価値の発生がございます。その付加価値の配分あるいは再配分に伴いまして経済主体に所得が帰属することになりましょう。帰属した所得を、それぞれの経済主体は、一部は、ほとんど大部分でございましょうけれども消費に充てる。その残りを貯蓄に充てる。その貯蓄がまた投資に向かうということは当然でございます。そこのところはまあ同じことでございましょう。
そこで、消費税というものを考えてみますと、実はその付加価値発生の段階で課税しているのでございます。そしてその負担を、ある仕組みによりまして、最後に最終消費のところに転嫁する、こういう方式をとっているのでございます。二重課税を排除し、そして税率のとおり最後に負担する仕組みを考え出してきたのがいわゆる付加価値税であるわけでございます。我が国も同じような方式を今度は日本的方式で今採用いたしたのでございます。
したがいまして、言えることは、この消費税の持つ大きな意味ということはそういう性質でございますので、何が特徴であるかと申しますと、やはり広く薄く課税できるということですね。付加価値発生の段階で課税して、それを消費段階に反映させるわけでございますから、これは広く薄くやれるということです。
それから、この仕組みからして、経済に対して中立性、この問題が非常に大事な問題なのでございます。市場経済でございますので、その市場経済に対してできるだけ中立、つまり市場経済がよく動くように、機能するように働いているのでございます。ですから、この仕組みですと大体経済に対して全く中立的である、こういう形でやっているのでございます。
第三番目で言いますと、捕捉の格差というものはあり得ない。つまり、消費はだれでも消費するのでございますから、捕捉格差というものはない。これが一つの大きな特徴でございます。そのことから、逆に言いますとある場合においては所得課税よりもより公平な場合がある、こういうことでございます。その意味は、例えば所得の大きい人は必ず余計消費するわけでございます。ただ、消費性向が違いますから、所得に対して消費の割合が落ちるということはありますが、必ず多く消費するわけでございますので、消費の多寡に応じて完全にやはり負担をしているわけでございます。
ところが、よく所得税の方で聞きますのは、いろんなところで聞きますのは、あの人は私よりも税金は何か少ないらしいが派手な生活をやっている、こういうことをよく聞くのでございます。この意味するところは何でしょうか。消費は所得の多い人がやっているが、所得は多いんだが税金は少ない、こういうことですね。この方がはるかに不公平であることは当然のことなのでございます。それは全部とは申し上げません。しかし、往々にしてそういうことがあるという事実はやはり我々は本当に率直に認めなければならぬと思うのでございます。そのことからいたしまして、今日一般に言われておりますのは、所得、消費、資産に対する均衡のある税制をとりなさいということの意味は、今私が言った意味からいいまして、それだけやはり経済に対する中立性、これがすぐれているということを経済的に意味いたしておるのでございます。
そこで、我が国は今、高齢化社会を迎えようとしているのでございます。これは世界でほとんどないようなスピードでやってまいりました。かつて働き手十人で一人を支えておったというのが、今日ではもう六人で一人、こういうことですね。二十一世紀になるとやがて二人ないし三人で一人を支える、これは統計的な正確さを持って必ず来るに違いないのでございます。そしてこのスピードは、我々が本当にびっくりするほどなスピードで来るに違いありません。
そのことは何を意味しているかといいますと、この相対的に少なくなる働き手、すなわち我々の子供、孫であるわけでございます。これに対して所得課税に偏重する税制をそのままとっておったとするならば、これは大変なことになりましょう。だから、いつか大蔵省が試算したものによりましても、二〇一〇年の実収入に対する負担は約倍になる、こう出ておるのでございます。負担率が倍になる。率が倍になるのですよ。それから、同じことをやはり厚生省が計算しておりますね。これも同じ結果を出しているのでございます。負担率が倍になる。それで今、例えば社会保障の方を考えますと、ほとんど大部分が現在のところやはり収入ベースでやらざるを得ない。ほかの基準がなかなかできないというところはやはり一つの問題でございましょう。これは間違いなくやってくる。税の方はそれでもまだ何とかやる道があるかもしれません。そういうことを視野に入れながら、しかもこれは大変だということで、今のうちにさっき申しましたような消費税という性質、特質を持った間接税のウエートをふやしていくということは極めて当然なことだと思うのでございます。
それからもう一つ、今度は減税を、今度のあれを通じまして家計に対する影響はどうかというのは、さっきの話でよくおわかりだろうと思いますが、要するに三兆三千億と二兆円の差額なのでございます。だから、家計調査で例えば消費税を幾ら払った、減税が幾らでした、払った消費税総額とそれから減税額を比較するのは明らかに誤りでございまして、そのうちのもう六割強はすべて旧間接税の身がわりであるわけでございます。だから、消費税としてネット増税分は二兆でございます。間違った比較というのは三兆三千億と五兆四千億を比較しているということでございます。それは、当然のことながら三兆三千億と二兆を比較しなければならぬと思っておるのでございます。
それからもう一つの問題でございますが、このように消費税というものがかなり大きなあれを持っているということはもうおわかりになったと思いますが、この消費税の導入の時期、これが実は非常に問題であったわけでございます。当然のことでございますが、経済の不況のときには、納税義務者である事業者の方が心配するのは、これは転嫁できないのではないだろうか、結局は第二の事業税として自分たちがしょい込むことになりやしないか、このことが、ちょうど売上税のときは円高不況の真っ最中でございましたから、非常に大きな声になったわけでございます。それからもう一方は、今度は逆にインフレ経済のもとにおいてこれを導入いたしますと、便乗値上げを誘発して、そして消費者がたまったものじゃない、こういうことが十分この種の消費税を導入する時期として言われるのでございますが、幸いのことに、ことし四月の導入でございます。景気は最高潮でございました。物価は世界で一番安定しておるのが我が国であるわけでございます。安定が大事なのでございます。
そこで、その意味で私は、この消費税の適正転嫁、いろいろまだあると思いますが、概括的に見ますればやはり転嫁は多く適正に行われておったのじゃないか。それから物価も、当然その裏腹として予定どおり、経企庁の計算では三年間は大体一・二%ぐらいになるだろう、こういう計算でございました。それが果たしてそのとおりいっているかどうか。これはちょうど裏腹の問題ですね。適正転嫁であれば物価も大体経企庁の計算どおり来るであろう、過剰転嫁になればもっと上がるはずだ、こういう裏腹の関係でございますが、まあほとんど出尽くしつつあると思いますけれども、念のためにその点だけを、適正転嫁につきましては本当を言うと各省からお聞きしたいのでございますが、実施状況を政府税調で調べておりますので、その点を代表して大蔵当局から、それから物価の点、その点については経企庁からお話しいただければありがたいと思います。