河野光雄の発言 (税制問題等に関する特別委員会)
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○参考人(河野光雄君) 時間が十五分しかありませんので、私が考えているポイントだけを申し上げて、後で質問があればそのときにお答えしようと思うんです。
話す内容は二つありまして、一つは廃止論そのもの自体をどう考えるのかということと、あとはそれにかわる再改革法案並びに暫定措置法案について、その中でこれは問題だと思うことについて意見を述べさしていただきたいと思うんです。
廃止論を議論するときに二つありまして、一つは政治論、一つは税制論としての廃止論、二つあるんですね。大体政治論の方は避けて通るのが通常こういうところでは礼儀かもしれませんけれども、それを避けて通ると話にならないんですね。
何か話を聞いていると、最近は、七月二十三日の参議院選挙の結果、国民の意思は廃止論に決まったんだから、それに盾突くのは民主主義のルールを誤っておるというふうな話で、何やら水戸黄門の葵の御紋みたいな話になっていて、そこですべて判断中止ということを言われる方がかなり多いと思う。それは承服できないんです。
第二に、税制の理論からいって間接税をこの時期に外すなんということは全く荒唐無稽の議論だと思うのですよ。いずれにしても、私はここに出ている九法案に反対なんです。
最初に、参議院選挙の結果国民の意思は決定したという話は全然そうではないと。国民の意思が自民党の横暴その他について沸騰したことは事実ですけれども、何も争点が消費税だけにあったわけでもなく、日本は国民投票をやったわけでもありませんから。国民投票をやったなら一票でも勝てば、それはそれですべて万事決着ですけれども、スイスと違って日本ではそういうシステムがありませんから。いろんな問題が討議されて、自民党が惨敗して社会党が勝ったということは事実ですけれども、しかしそれがイコール国民の意思が廃止であるからそれに盾突くのは民主主義のルールに反するという議論は全くいただけないと思う。
もう一つ、税制論からだけいえば、これは日本の税制というのは直接税偏重だろうというのはもう天下周知の事実なんですが、それに間接税を入れるということは、やっと日本経済並みに税制も後進国的な段階から先進国的な段階に入っただけにすぎないと思う。遅かれ早かれいずれ来るんですね、これはどういう政党が天下をとろうとも。それを自民党が少し早目にやったにすぎないと思うんです。それを頭から否定するということは税制論として筋が通らないと私は思うんです。
今度はもっと具体的な内容に入りますけれども、一番最初にちょっと議論をしたいのは再改革法案の方なんですね。二年後に本格的なこういう見直しを行うという法案について意見を述べたいんですが、言いたいことは二つあります。非常に理念としてきれいな言葉で書いてありますから、そのこと自体に反論する余地はほとんどないように実に見事に法案はできていると思うんですが、私が特に議論したいのは二つあって、一つはかなり抽象的ではあるけれども、具体性のあるものがあるんです。
一つは、納税者番号制度というものを導入する、検討するというふうに書いてありますね。私は、過去二年間、海外出張を含めてこの問題を随分、普通の人よりも若干の経験と情報を集めた経験を持っていますけれども、この納税者番号制度を導入するについて決定的に、それこそまさに国民的な合意が必要なことがあるんですよ。それは、事、税制に関してはプライバシーはゼロだという話なんです。事、税制に関して自分の所得がどう発生しているか、それを税務署が、国税庁がどう把握するかということについてこれは全く白紙で、全部洗いざらい国税庁がわかる、そのことがプライバシーの侵害にならないということについて女性も男性も確認しないとこの話は一歩も進まないんですよ。
あの法案によれば、プライバシー問題があるからそれに気をつけてと書いてありますけれども、国税庁が知り得た情報をほかに流すということがあったらそれは大問題です。それこそプライバシー侵害です。それは厳重に制限されなきゃいけませんけれども、国税庁が、税務当局が我々国民の資産、収入その他について正確に把握すること、それを拒否することはできないというのが大前提ですから、あの納税者番号制度の根本的な思想が。それが二年間の協議会の中でできるとは私は絶対に思わないのですよ。
私は、長い目で見れば、これは日本として導入するに値する制度だと今でも思っていますから。ただ、事をせいて二年間ぐらいで結論を出そうなんて思ったら絶対できません。消費税反対のアジを飛ばすことはブロであればだれでもできますけれども、納税者番号制度だって同じことですよ。反対しようと思えば幾らでも反対できますよ、反対を一番するのは女性ですから。
十月の初旬にNHKが三日三晩九時間にわたる大討論会をやったでしょう。あのとき、いろんな世論調査をやりましたけれども、一番決定的に票が分かれたのは納税者番号制度だったんですよ。細かい数字は忘れましたけれども、たしか八対二ぐらいの比率でノーという答えが男性女性を問わず出てきたんですよ。あれはまだ説明不足だからそうなったんで、本当はきっちり説明すればもうちょっと反対は少ないと思いますけれども。
しかし、総理府のかつての調査によっても、日本人が男性女性を問わず一番自分のプライバシーで知られたくないことのナンバーワンは何だと思いますか。自分の資産、所得の話なんですよ。学歴がどうだとか子供が病気だとか女性の年がどうだとかというのはうんとランクが低いんですよ、プライバシーからいったって。そこが問題なんです。
三%の消費税でこれだけの大騒ぎが女性から起こったということを考えれば、納税者番号制度に女性が簡単に乗るなんということは考えられませんよ。やらなきゃいけませんけれども、二年でできる話じゃ絶対ありません。あと合意ができてから膨大な予算を用意して付番ということをやらなきゃいけませんけれども、実はこれも大変なことです。簡単にできる話じゃありません。ですから、二年で暫定期間が終わって総合課税制度が確立する、そのための指標の決定的なものとしての番号制度を導入するということは空論に近いんです。
二番目に、あの法案の中にもう一つ、サービスと流通などについての課税を検討すると書いてありますね。私は今度の反対論というのは、九割は導入の政治論であって、税制論としては実はわかっていると。わかっているけれども、民主主義のルールからいったら間違っているという議論を展開されたんだと思っていましたから、対案を出された野党の先生方が、腹の中ではいずれこれは必要なんだ、手順を間違えなければいいんだというふうに考えられて、サービス、流通を書かれたんだと了解したんですよね。そうであればそれも一つの選択だと思いましたけれども、国会答弁で、たしかあれは本会議の代表質問だったと思いますが、共産党の方の、近藤さんと言われる方だったと思いますけれども、あれは大変すばらしい質問だった。あの質問で答えられたのは、大型間接税は国民が反対するからノーだと書かれた。しかし、日本語としてあの法案をまともに素直に読めばあれは明らかに、消費税という名前は違うかもしれませんけれども、多段階の間接税の導入ということもあの枠の中には入っていると考えるのが素直な読み方ですよ。ところがそれを否定されましたから、この話はもうそれで話にならないと思ったんです。
そろそろあと五分しか時間がありませんから、本当に困るんですが、もう一つだけあの基本法の中でこれだけは絶対に自民党のしりをたたいてもやってもらいたいことがあるんですよ。それは非常に前向きに自民党も考えざるを得ないから考えることになると思いますが、資産課税の適正化論、きれいな言葉で言えば。今三%の消費税で国論が二つに割れて大騒動になっていますけれども、仮に日本の社会の中で東欧並みの劇的な地殻変動が起こっているとするならば、それは資産の格差がこれほどここ三年の間に広がったということですよね。これは全部バックにありますよ、あらゆる政党に対する注文を一般庶民で考えれば。それに対して税制面からどう切り込んでいくかということについてはっきりしたビジョンがなければだめだと思いますね。いずれ消費税問題は次の選挙でおしまいですから。ポスト消費税を論議するんだったら、税制面で言えば資産課税だと思うんですよ、避けて通れない話ですから。それについてまじめにやりますよと書いてあることは大変高く評価すべきことだと思うんです。
最後に、代替法案のことについて若干触れたいんですが、個別のことについて触れる時間がありませんので、ちょっと私の言いたいことだけをピックアップしていきますけれども、まず第一に、物品税の復活論、私はたくさんのジャーナリストの友達を持っていますから、現役で社説を書いている連中を全部知っていますけれども、どういう人でも、野党に対して極めて好意的な人でも、あの物品税の八十五品目を全く無修正で税率だけ変えて復活させたことについて賛成している者は一人もいません。あれは知的作業の怠慢ですね。
私が考えるに、仮にも物品税を言うんだったら、かつて数年前にワープロその他新しいのを物品税対象に加えようなんて話があって、あれは今課税対象としては膨大なものですよ。参議院選挙が終わった後時間があったんですから、せめてそのぐらいは入れて、ちっとは内容を変えました、新しいアップ・ツー・デートなものですというふうに並べるのならまだしも、八十五品目そっくりやって、あとは税率の調整を野党間で、えらいそれぞれ支持母体との関係があって御苦労されたようですが、どんな信条的な革新主義者でもあれだけはどうしても乗れないと言っているんです。私はこれは頭から乗れません。ただ時間がなくて緊急避難的にということをおっしゃっていて、それが本音だと思いますから、武士の情けでそのことをこれ以上あげつらうことはやめますけれども、話にならないと思うんです。
それからもう一点だけ。自然増収論。自然増収と税の増収論についての話ですけれども、今の日本経済の実態からすれば、今の好景気があと二年間棒に続くとするならば、その可能性は半分以上あると思いますが、相当の自然増収があることは皆わかっていらっしゃるんですね、だれでもどういう議論をする人でも。しかし今度は制度を変える話ですから、消費税六兆円の。それなら別の制度でこれを埋めるというのが作法だと思うんですね、税制議論をやるならば。自然増収が発生したらそれは百六十兆になんなんとする過去の蓄積された国債残高の減少にこそ向かうべきであって、今のような世の中であれば、景気がこういう状態であれば。
それを制度を変えた、特につじつまが合わないから入れてみたと。そうしたら宮澤さんだったですかな、質問されて、だんだんだんだんやってみたら計算が間違っておったと。僕は計算の間違いというのは今の野党の人たちに言うのは酷だと思いますから、大したことはないと思いますよ。しかし考え方の問題ですから、そろばんをはじいた結果がどうこうという技術論ではなくて、それは大蔵省にかないませんからそんなことを言っても無理だと思いますが、考え方が間違っているんじゃないかという気がするんです。安易に過ぎる、そんなことは。
最後にもう一つ。この場での十一月から始まった野党の話をテレビや新聞で見ていた人たちが一体どういうことを感じているか。私個人のことは別にして、全般的に言えば余りそう深まった議論をやっていらっしゃるようには見えないんですよね。私自身はもっと本当は深い議論がここで行われると期待していましたから本当にいいチャンスだと思いました。国会ではここ数年来ほとんど真っ当な議論がなかったですよ。私の印象では、攻める自民党も攻め方が足らないし、本当に初めての経験だと思いますから無理もないと思いますが、しかし受ける方も政治論ばかり受けて切り返してそれで事足りるとしている。ゲームみたいな話ですよね。どうせできない法案、通らない法案だと思ってお互いに見ているところも新聞記者はある。いずれにしても真剣味が足らないし、突っ込みが足らなかったというふうな、私の総合的な印象なんですよ。
まだこれから若干の日取りは残っているかもしれませんので、参議院での採決までにはもっと深まった議論をぜひやっていただきたいということをお願いして十五分の陳述を終わります。ありがとうございました。