井上隆司の発言 (税制問題等に関する特別委員会)

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○参考人(井上隆司君) 私は、消費税法を廃止する法律案外八案に賛成の立場から意見を述べさせていただきたいと思います。
 その論拠として、まず一番目に公約違反を挙げさせていただきます。御承知のように政府・与党は六十一年の衆参同日選挙で大型間接税は導入しない旨の選挙公約を行ったわけでございます。しかしその後大型間接税そのものの売上税法案を出して、それが廃止になるやすかさず今回の消費税法を無理やりに成立させた。このことが非常に政治不信を招いた一因でもあるわけですね。先ごろの参議院選挙でも御承知のように与野党逆転ということで、消費税について一般国民はノーの判断を下したと思います。そういうこともございますので、消費税法は来年の三月いっぱいで廃止して、その後二十一世紀の高齢化社会を迎えた税制改革、それを行っていただくのが民主主義のルールではないかと思う次第でございます。
 第二点としては、中小企業向けの簡易課税、非課税事業者、限界控除制度などの適用範囲が余りにも拡大した結果、消費税として国庫未納分四千八百億円が生じる可能性が出てきたということでございます。この四千八百億円たとえ出たとしても、およそその半分ぐらいは法人税、法人事業税などとして国庫もしくは地方自治体に入るということは周知のとおりでございます。しかし、消費者として消費税を払ったにもかかわらずその一部が業者の懐へ残って、はたまた消費税という名目から国庫に法人税とか、地方自治体に法人事業税などとして転嫁して入るということは、これは一般庶民としては甚だやり切れないというか、納得のできない点ではないかと思うわけでございます。
 私、ここにデータを持ってきまして、これは中小企業庁の原価指標、それに基づいて簡易課税でどれだけ業者にボーナスとして手元に入るかということを試算しましたら、御承知のように中小企業の場合は非常に人件費の絡みでマージン率が高うございます。それで、例えば不動産仲介業の場合は帳簿上のマージン率が五三・九〇一%、クリーニング業の場合は五五・九七五%、一般貨物運送業の場合は四八・七六二%、そばうどんの場合も四七・八九二%、家具小売業の場合は、これはぐっと下がりまして二二・五三九%、このように政府の機関のいわゆるデータでも消費税法のみなしマージン率よりも高うなっております。しかし実際問題として現在、中小企業、資本金一億円以下の法人の約五割ぐらいは税務署の申告が赤字になっているわけですね。
 そういうようなところを実際に計算してみますと、逆に消費税法のみなしマージン率よりも低いということで、簡易課税を選択すると余分に納められてしまうというか、そういう矛盾点もあるわけでございます。この簡易課税については、我が国以外、例えば西ドイツでも行っておりますが、全体の事業者の一%余り。ところが日本の場合は、御承知のように課税売上五億円以下の企業というのは、政府の統計でも九六・七%もある。こういうような点からも、非常に矛盾点として浮き彫りに出てきているわけですね。
 今、この簡易課税とか非課税事業者、限界控除制度で実際に矛盾が出ているということは、先般導入当時、会社の設立ラッシュが続いたわけでございます。東京法務局渋谷出張所では、ことし三月の法人関係の登記受け付け件数は二百十件で、昨年三月に比べ二〇%増となったわけです。同港出張所でも一五%もふえたわけです。この傾向は、東京に限らず関西地方でも同じ結果が出ているわけです。
 なぜこのようなことが起こったかといいますと、二点ばかり考えられまして、一つは、会社を分割することによって簡易課税や免税事業者に入ってしまう、そういう意図のもとでですね。二番目として、設立後二年間は免税措置が講じられるわけですね。御承知のように、課税事業者の認定は二年前の売上実績によるということでございますので、新設の会社はたとえ何十、何百億売り上げがあったとしても、二年間というのは一銭も納税義務がないという、こういうようなことは企業の立場としてはよろしいんではないかと思うんですが、消費者の立場としては甚だ容認できないんではないか、そういうことが考えられます。
 三番目としては、逆進税の問題でございます。
 私ごとで恐縮ですが、昨年関西のあるデパートで講演会を行いました。その席で、あるお年寄りから次のような語りかけがあったわけです。
  私は定年直後で、まだ年金受給資格がないため、トラの子の貯金を取り崩して細々と生活している。六十五歳になっていないのでマル優もきかず、この四月から利子に税金をかけられている。政府は所得税を大幅に減税してくれるといっているが、私には減税対象の所得はないのだ。にもかかわらず消費税が実施されたら、生活費にモロに課税されるので、とても不安だ。私のような境遇の人は大勢いる。井上さん、あちらこちらで老人の叫びを伝えてもらいたい。
そういうことがきっかけになりまして、私が主宰する全日本健歩会、いわゆる歩く会のボランティア活動の一環として、中立な立場で消費税オピニオンダイヤルを昨年開設したわけでございます。それで、多数マスコミの協力によって電話を受け付けたわけでございますが、その中で注目すべき点は、電話をかけた方のうち、当初予想していたとはいえ四十歳以上の中高年が九〇%を占めていたということで、非常に中高年の方がこの税に対して不安を持っていたということもうかがえるわけでございます。
 逆進税についてはハーバード大学のサリー教授が、一九七〇年にビジネスレビューで次のように述べています。付加価値税、これは我が国の消費税のもとになった税でございます。
  付加価値税は消費財およびサービスに関する小売売上税であり、財およびサービスの生産者や販売者の税ではない。ビジネス部門にとって、付加価値税の中立性は、単に非納税者を意味するにすぎない。何故ならば、企業は最終消費者から税の徴収官としての役割を与えられているからである。われわれは、付加価値税を消費者に対する中立的な税であるとみなすべきでない。付加価値税は、それがすべての消費財およびサービスに対して同一に課税される限り中立である。しかし、そのような税はヨーロッパにおいても実在していないし、またアメリカにも存在しないであろう。別々の税率、差別、除外および区別のリストは無限にある。
アメリカの消費税論議に対して反対論を述べていたわけでございます。
 御承知のように、アメリカは連邦レベルで消費税の導入を再度図っていたんですが、それが実現しなかったのは、やはりこの逆進性の問題、それを緩和する福祉プログラムがどうもあんばいが悪かったというか、そういうことのようでございます。
 それで、この逆進性の問題については、中小企業の価格転嫁でございますね、政府等では今非常に消費税の転嫁はうまくスムーズにいっているというそういうデータが流れているわけでございますが、私が地方都市、特に商工会の依頼等で全国津々浦々回って、そこの商工会長などの意見を聞きますと、地方都市の場合は過疎化が進んでいて、とてもじゃないけれども価格に転嫁できる状況ではないというわけです。どこの商工会長さんも、大体転嫁率というのは五〇%以下というか、それが一般的でございました。
 最後に、自民党の見直し案について意見を述べさせていただきたいと思います。
 この見直し案を見た感じでは、現在、原則外税方式、それを内税化にして、いわゆる税隠しの一言に尽きる感じでございます。小売段階での食料品の非課税化ということは、小売業者が負担した税金を価格に転嫁するというと今まではちゃんと原則外税で三%ということが明示されたわけですが、その転嫁部分が内に隠れて、見えない税金にしてしまう。そのほかの課税物品についても、行政指導によって総額表示方式を取り入れるということをうたっているわけでございます。御承知のようにこの総額表示方式は、EC諸国の付加価値税をとる国はほとんど採用しているシステムでございます。これは言ってみれば内税そのもので、例えば西ドイツの場合は、御承知のように、値札の中に付加価値税が全部盛り込まれております。それで、レシートには虫眼鏡でしか見えないぐらい小さな字で、上の価格の中には一四%のメーベルシュトイエル、付加価値税が含まれているということが書いてございます。
 したがって、そのようなシステムがEC諸国で行われておりますので、EC諸国の人々に私もいろいろインタビューしたんですが、付加価値税の納税意識というのはほとんどないわけですね。極端な例で、西ドイツの場合は、例えば標準税率が一四%ですが食料品などについては七%です。それで、相当数の方にインタビューしたんですが、一四%の税率はほとんどの方が御存じだったんですが、食料品についてはいわゆる内税になっていますから何%払ったという感覚がないんです。正しくは七%なんですが、六・五とか八だとか九%、そういうような状況でございます。
 私は、今度の消費税法で一番評価できる点というのは原則外税になって、従来見えない税金が主だった物品税とか酒税等々、それが見える税金になったということで、非常に納税意識の高揚というか、評価していたんですが、それを今度の見直し案では、そっくりいわゆる見えない税金、税隠しとして内税に持っていってしまう、そういうことは非常に民主主義というか民主税制というかではないと思うんです。
 それで、EC諸国で御承知のように税率が数回にわたって各国とも引き上げが行われたというのは、いわゆる内税になっていたから、そういうことでございます。したがって、今、消費税で一番危惧されるのは税率のアップですね。これは、内税になりますと消費者にとっては見えない税金になりますので、どんどん上がっていってしまう。一%の税率で二兆円の増税になる。EC諸国で付加価値税のことをレべニューマシン、税収増加装置と言っているわけですね。日本流に言うと打ち出の小づちと言うんで、そうならないためにも、絶対に自民党案の食料品非課税等を含めたいわゆる総額表示方式には私は反対でございます。
 時間もございませんので、最後に結論を申しますと、自民党の見直し案は消費税を廃止するよりも難しい、これが私の見解でございます。

発言情報

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発言者: 井上隆司

speaker_id: 17253

日付: 1989-12-06

院: 参議院

会議名: 税制問題等に関する特別委員会