古岡勝の発言 (税制問題等に関する特別委員会)
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○参考人(古岡勝君) 私は、かつての物品税等個別間接税を納税しておった団体、それから現在の消費税を納税しておる団体の、全国間税会総連合会と申しております、全間連と申しておりますが、その会長の古岡勝でございます。きょう、こうしてこの機会を与えられましたことを感謝申し上げます。
さて私は、消費税を廃止しまして、代替財源として廃止された物品税等の個別間接税を復活させようとする税制再改革関連法案には反対するものであります。先般の税制改革は、サラリーマンの長年にわたる重税感、すなわちクロヨンとかトーゴーサンとか言われておりますが、不公平感を解消するための所得減税や、これまでの個別間接税のひずみ、ゆがみの是正など、従来の税制が抱えておりました諸問題を解消し、所得、消費、資産の間で均衡がとれた安定的な税体系を構築し、さらには我が国の将来を展望しまして、高齢化が急速に進み、働き手が少なくなる、その中で豊かな長寿社会を築くために国民全体で広く公平に負担を分かち合うための改革でありまして、消費税制度はその中の重要な骨組みとして、今後全力を挙げて長期的に安定した税制として定着させるべきものであると存じております。
そこで、まず物品税について申し上げます。
代替財源として廃止されました物品税等の個別間接税を復活させようとする法案に対しまして、旧物品税の納税者としましての立場から、旧物品税の抱えておりました問題点を中心に申し述べたいと存じます。
第一に、個別に課税されるものと課税されないものとの間でアンバランスが生じておりました。旧物品税は、課税しようとする物品を一つ一つ法律に規定してその範囲を定めていく、いわゆる個別間接税となっていました。こうした個別間接税は、国民の所得水準が一般的に低く、庶民が使うものとか金持ちが使うものとかというように、消費者の所得階層と物品やサービスの消費との関係が明らかな時代におきましては、公平感のある税制として機能していたと言えると思います。
しかしながら、近年、私たち国民の所得水準は上昇して大多数の者が中流意識を持つような社会になり、国民の消費動向が多様化し、個々人の趣味や生活信条によって、お金の使い道がさまざまに異なってきております。
こうした消費態様の変化とともに、世の中のあらゆる商品、サービスについてぜいたく品か否かを区分しようとしても、共通の基準を見出すことは極めて困難な時代となっています。例えば、白黒のテレビのように、今や一般家庭ではほとんど見られないものや、ほとんどすべての家庭にある電気冷蔵庫や電気洗濯機が課税されていた反面、新しい商品でございます、各家庭にもございますが、パソコンやワープロには課税されていませんでした。また、ゴルフ用品は課税なのにテニス用品は課税されないというのもしばしば取り上げられる例でございます。ゴルフはお金持ちのスポーツ、テニスは一般的なスポーツという考え方からこのようになったものと思われますが、これも今日ではアンバランスではないかという声が大きくなっております。
このように価値基準が不明確になっている状況のもとでは、課税される物品と課税されない物品との間のアンバランスが拡大し、特定の物品を選定して課税しようとする客観的、合理的基準を求めることは極めて困難でありますし、新しく開発されました物品に対して課税が追いつかないという問題も生じていました。
第二に、旧物品税が物に対する課税を中心としていたために、サービスに対する課税が十分にできていないという問題がありました。私たちの生活の多様化、サービス化への進展に対応できず、消費税導入以前はサービスに対する課税はわずか五税目、それは入場税、通行税、娯楽施設利用税、料理飲食等消費税、入湯税のみでございました。近年、消費支出に占めるサービス支出の割合は五〇%を超えると聞いておりますが、経済のソフト化、サービス化が急速に進んでいるにもかかわらず間接税が課税されるものはわずかであり、物に対する課税とサービスに対する課税との間で大きなアンバランスがありました。
第三に、もともと個別消費税は、昭和十二年、北支事変の戦費調達の税として誕生しまして、当分の間の施行ということが五十数年に及んだものでありまして、今日、社会主義国も含めまして、世界のどの主要国を見ても既に廃止されております。個別消費税制度をとっていたのは日本だけで、まさに日本は世界の歴史の流れに逆行していた孤児と言わざるを得ないと思います。
第四に、今日、国際化が経済の隅々にまで及んでいる我が国で特定の物品に高率の課税をしていたことに対しまして、関係国の批判、貿易摩擦の原因となっておりました。例えば例を挙げますと、普通の時計は一〇%でございますが、貴金属時計ということになりますと三〇%の税金がかかります。ですから、普通の時計にほんのちょっとの、例えばダイヤモンドでも一万円、二万円というのがありますから、仮に一万円のダイヤモンドを二つくっつけて見ばえをよくするというようなことにしますと、それはもう貴金属時計ということになって三〇%の税率になります。そのために、スイスから輸入する時計はそういうものがたくさんございますので、日本は一五%、我々はなぜ三〇%だというスイスからの批判がたくさん出ておりました。また金貨につきましても、これは純金ですから一五%ということになりますが、これはカナダのメープルリーフ金貨を申しておりますが、純金の金貨は一五%、しかし純金の地金は非課税、これもおかしいじゃないかというカナダからの批判を浴びておりました。旧物品税が復活しますと、これらの批判もまた復活するということになるわけでございます。
このように、消費税を廃止して物品税などの個別消費税を復活させようとすることは、国際的な見地から見ても問題があると思います。
第五に、事業者から見た執行上の問題点でございます。
まず一つ、旧物品税は課税対象物品を法律上で限定列挙しておりました。したがいまして、現実の物品が物品税法上の課税物品に該当するかどうかということの判定が必要であります。この課否判定は私ども事業者にとりましては大変重要な問題でありました。例えば、税法上、テレビは、ブラウン管を使用したテレビをテレビということに規定しておったわけでございます。液晶テレビが新製品として市場に近年出回っておりますが、しかしそれは課税されません。技術革新の時代に新製品を次々と開発しますと、それが課税物品に当たるか当たらないかの判定は大変難しい問題でございました。
さらに、課税物品として個別に掲名された物品でありましても、一定規格のものを非課税とする制度や、といいますと、例えば桐だんすでございますが、桐だんすは御存じのように課税しないということになっております。ところが、その桐だんすでありましても、例えば極端に言いますと、一ミリか二ミリの板に、キリをずっと薄く切りましてぺたっと張りつける。そうしてつくりますと、それは外見上は全く桐だんすになってしまいます。消費者はそれを見てもわかりません。しかし、そのキリが現実には五〇%以下しかなかったとした場合には課税になってしまう。五〇%以上のキリがあれば非課税、なければ課税。消費者には全くわかりません。
そういうことを見ろといっても見ることはできない。それをまた、悪いことではございますけれども、製作者はそれをうまくごまかす。ごまかし通したらもうけものだというようなことで、悪い風習はだんだん広がっていく。消費者は買ってみたら、ちょっと傷が入ったらこれは桐じゃなかったということで泣きを見るというような問題もあったわけでございますが、これは大変大きな問題と思います。また、一定金額のものを非課税とする制度など複雑な課税関係となっておりました。
まだ例を挙げればたくさんございますが、時間がございませんのでこの程度で終わっておきますが、物品税の納税者の事務負担は大変なものがあったわけでございます。今回導入されました消費税は、こういう問題点につきまして明快に答えを出してくれたと思っております。原則として実額で三%ぽっと掛ければそれで済むということでございます。大変思い切ったいい制度だと思っております。
このように、旧物品税は前時代の遺物ということが申されようかと思います。長年、個別間接税の納税者として実態を見てきた私たちから見ますと、このように多くの問題点を有していた旧物品税を復活させようとすることには絶対反対せざるを得ません。消費税は、これまで申し上げたように、個別間接税制度の持つゆがみやひずみを是正するもので、長期的に安定した税制として定着させるべきものと考えております。
第六に、財源としての個別消費税を考えたときに、酒やたばこのような嗜好品はその消費の伸びに限界があります。また、物品税など個別間接税制度のもとでの特定の物品、サービスに対する課税では財源的に限界があります。事実、税収全体に占める間接税の比重が低下してきております。消費に対して広く薄く負担を求める消費税の導入は、安定財源としても肯定されるものと言えます。
二番目、次に、消費税廃止についての反対意見を申し上げます。
第一に、二年間の暫定措置として旧物品税を復活し、二年後には国民の合意に基づき新たな間接税を導入するとされておりますが、具体的にどのような税制になるのか判断の手がかりがなく、特に私ども中小零細業者は不安感を抱いているのが事実であります。
第二に、さきの毎日新聞の記事によりますと、将来の物品、サービスを含めた合理的な税制の姿を挙げられており、また、間接税は基本的には残すとされておりますので、これらから推測しまして、二年後の税制改革は、結局、最終的には現行消費税に類似した税制になるのではないかという町の声も多く聞かれます。
さらに、読売新聞を見ますと、十一月十二日の社説によりますと、「再改革案は「サービス、流通への適正な課税」を考えるとしているが、八日の答弁では「大型間接税は想定しない」としている。だが商品のほかにサービス、流通へも課税すれば結局は消費税と同じタイプの間接税にならないか。一体、再改革では、どんな税体系を考えているのか。」、そういう記事が掲載されておりました。
もしそうだとするならば、消費税を廃止するのではなく、それを見直して国民の納得が得られるような姿にしていくのが本筋ではなかろうかと願うものであります。
第三に、今回の消費税導入のために、私ども事業者は短い準備期間にかかわらず、膨大な設備投資と労力とを費やしました。その消費税を廃止してもとに返せば、また新税制の創設と同じで、新たに投資と労力を費やすこととなるわけでございます。さらに二年後、新税制が施行されたとき、全国の事業者は三度目の投資と労力を強要されることになるわけでございます。
このように短期間で頻繁に税制が変更されて迷惑をこうむるのは我々国民であり、特に事業者は三度にわたる経理システムの変更、値札の書きかえなど、多大の投資と複雑煩瑣な事務量の増加により耐えがたい苦痛に見舞われることとなります。
最後に、まとめでございます。
所得、消費、資産課税の構成比から見て、日本の直接税への依存度は先進諸国の中で最も高く、間接税の比率が最も低くなっておりました。このことは、サラリーマンを初めとして、納税者の重税感、不公平感の高まりとなっていたわけであります。所得課税の負担を軽減し、消費に応分の負担を求めた先般の税制改革は十分に理解できます。また、廃止された物品税等の個別間接税については、先ほど申し上げましたように不合理、不公平などの諸問題を持っております。それらを解決するためには、特定の物品やサービスに対する課税でなく、原則として消費一般に広く薄く負担を求める間接税制度を採用することが必要であるとの考え方に基づき導入された消費税は妥当な選択であったと思います。
しかしながら、消費税に対する国民の見直しの要望が強いことも事実です。いかなる税制も社会経済に適合するよう不断に見直しを行うことが必要であります。特に消費税については、我が国にとって初めての税であり、実施状況を十分に把握し、事業者、消費者双方の意見に耳を傾け、消費税を取り巻くあらゆる事項について議論した上で慎重に検討されるべきものと考えます。
以上、私見を申し上げましたが、消費税廃止の代替財源として廃止された物品税等の個別間接税を復活させようとする税制再改革関連法案には反対するものであります。むしろ消費税については、二十一世紀に向かっての安定した税制として定着させるべきものであると存じます。
終わります。