中村紀伊の発言 (税制問題等に関する特別委員会)

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○参考人(中村紀伊君) 主婦連の中村でございます。
 初めに、公約を守って大変御苦労をなさいまして四野党の方々が消費税廃止法案をちゃんと提出してくださった、そして、国会で堂々と大臣席にお着きになって御説明をなさっている姿を見て私どもは非常にうれしく思いました。まずそれのお礼を申し上げたいと思います。
 夏の参議院選挙で消費税に対して国民はノーと言ったと思います。私たちは、公約された各党が、野党は消費税廃止法案を、そして自民党は見直しをするとおっしゃったのですから見直し案をきちっと国会にお出しになって、そしてきょうのようなこの席、いろいろな税特の審議でその両方が国民の前で開かれた討論をされる、問題点についていろいろな討論をされて、そしてそれが解散総選挙によって国民がその開かれた討論を参考にして選挙をする、そこで国民の判断を下すんだと、そういうことを求めて繰り返し私どもは要望してまいりました。でも、結局自民党はついこの一日にやっとその大綱を出してくださいました。
 思い切った見直しをする、大幅なのをする、私たち国民は非常に幻想を抱いて、どんなすばらしい見直し案が出るのかということでさまざまな幻想を抱きました。ちょこちょこあれも非課税になる、ここも直す、ここもこうなると、いろいろな首脳部の方々の御発言がございまして、それを期待して、見直し案でうまくいくならばそれもいいんじゃないかと考えた国民もたくさんいたと思います。
 しかし、現実に出てまいりました見直し案というのは、私どもが期待していたものとは非常に違っていた。そしてここで、この議論の中で初めて消費者の言い分をもっと聞くべきだった、消費者の意向を入れて見直し案をつくるというお言葉をたびたび伺いまして、遅きに失したとはいえ私どもにとってはこれは自民党が大変よくお考えくださったというふうに考えたわけでございますが、しかし最後に出てきた見直し案は、結局消費税全体の公平公正な立場で国民の利益をどう守るかというような見直し案ではなかった。本質的なものではなくて、国民のさまざまな要望の一部をつまみ食いしていかに選挙にそれで勝てるか、どういうふうにしたら大幅に見えるかという、そういう議論に終始したのではないか。
 二日間のさまざまな状況を新聞やテレビで国民はじっと見ておりまして、やっぱり自民党は変わっていないんじゃないかな、国民があの参議院選挙で本当に消費税について怒りをぶつけたということについてわかっていないんじゃないかというように思ったと思います。そして、それを期待していた国民は非常にがっかりしたというのが現実でございます。これを思い切った大幅なという公約からいえば、それはまた一つの公約違反ではないか。私どもは初めからこういう今の消費税の仕組みを残したままで大幅な思い切った見直しはできないんじゃないか、やればますます不透明なものになるんじゃないかというふうに考えて廃止を主張してまいりました。
 しかし、やれるのかな、やればやれるのかなというふうにも思っておりましたけれども、そうでなかったということはこれは公約違反ではないか。私が公約違反という言葉を申し上げますと、またおまえはそれを言うのかというふうにお思いになるかもしれませんけれども、これは国民の頭にしっかり焼きついているんですけれども、中曽根内閣のときに大型間接税は導入しませんと中曽根さんが同日選挙の前にテレビで何回もおっしゃった、それが出てきます。
 それからもう一つは、昨年十月、この税制特別委員会で自民党が単独で強行採決をしたあの情景でございます。大変な怒号と喚声の中で強行採決されました。そして、万歳をする方もいらっしゃいましたし、リクルート議員の方がにっこり笑っているところも大映しになりました。情報化社会というのはそういう国会の動きがすべて茶の間で見られる。しかも、一回でなくて、この消費税問題が出てくると必ずその部分が何回も放映されるということは、国民の頭の中にそれがしっかり焼きついているんだ、それをお忘れになってはいけないと思います。ですから、見ていた人たちがこの国の議会制民主主義はこれではだめになるんじゃないか、特に主婦たち、女の人たちは非常に危機感を持ちました。そして、その女性パワーの爆発が参議院の選挙で、男に選挙は任せておれないんだというような形でああいう選挙結果が出てきたというふうに私は考えております。
 ここで申し上げることもないと思いますが、税制は国政の基本であって、何よりも国民の理解と信頼がなければ成り立たないものだと思います。
消費税は、そのスタートからそういう問題について全く手続を間違った、そして信頼を失ったということだと思います。ですから、私どもは消費税は廃止して、そして国民の意思を尊重した税制改革を一から築き上げるべきだというふうに思っております。
 私たちの主張は、生活費非課税、応能負担の原則に立った公平公正な税制の実現ということを求めております。土地や株で巨額な利益を上げているのを放置したり、法人にさまざまな優遇措置を残したり、さまざまな不公平税制をまず是正すべきだ。そして、それをしないのに弱者に負担を強いる消費税のみを導入するということ、まず消費税を導入するということだけに狂奔するということは、私どもは全く許せないことだというふうに考えております。
 それから、自民党の消費税見直し案について意見を申し上げたいと思います。
 いろいろ二転、三転しまして最後に、食料品非課税というのが国民の期待でございましたが、小売非課税、流通段階は一・五%の軽減税率という妥協案で成立いたしました。政府は、この部分の減税の総額は一兆一千四百億円、そういう発表をいたしております。食料に関しては九千九百億減税になると。しかし、静岡大学の税制研究チームのシミュレーションによりますと、この消費税減収分は六千百八十四億円、食料は五千二百億円、その他に家賃とか出産費とか入学金などが一千億というふうになっております。この間のNHKの番組でも他の学者の方々も大体そうではないかというふうに肯定していらっしゃいましたが、そういうことになりますと、一世帯で平均しますと年間一万六千三百円、食料品のみですと一万三千七百円、一カ月で千百円の減税だ、これでは思い切った見直しとは言えないんじゃないかと思います。それで、もともとわかりにくかった消費税の仕組みがますますわかりにくくなって、不透明になって、小売段階の非課税というのが果たして消費者にとってプラスなのかどうかということを考えるわけでございます。
 それからもう一つ、私たちはその何千万だかの減税分というものも、では消費者にとって本当に価格が下がるのだろうか、そこのところで静岡大学の先生方は一・四四%計算上は下がるという数字を出していらっしゃいます。しかし、そんなに下がらないんじゃないか。なぜかというと、末端非課税ですから、先ほどからもお話が出ていましたように内税になるわけです。ですから、一体我々の払った税金は幾らなのか、その流通段階でかかった税金をどうやってコスト転嫁するのかということははっきりしないわけです。そして、円高差益の還元というのは、なかなか時間をかけてもちっとも下がってこなかったわけですね。上がるときはすぐ上がるけれども、下がるときというのはなかなか下がらない。
 消費税導入の四月に、政府や大蔵省は総力を挙げて三%の税率は転嫁しろ、物価は上がるんだと繰り返しおっしゃいましたから、転嫁の方は実にスムーズにいきました。しかし私は、これを下げるということは非常に難しい。こういう不透明なやり方では物価が思うように下がらないのではないか。また、逆に転嫁できない小売商の方々も出てくるんじゃないか。今でも非課税業者の方で転嫁しないで頑張っている方もありますから、その方々は値下げはする必要もないということだと思います。そういうことを考えますと、これは大幅ではないんじゃないか。
 そしてもう一つは、小売非課税ということは内税ということでございます。ということは、大蔵省も政府もこれからは総額表示の問題で内税にしたいんだということをずっとおっしゃっていらっしゃいました。痛税感がなくなるということは税率アップにつながるのではないか。
 また、もう一つ危機感を持ちますのは、広く薄く、だから三%なのだということを繰り返し私どもは聞かされておりました。これが食品といろいろなもので狭くなるわけです。その分の減収率を結局厚くしなければ将来の消費税は成り立たないのではないか。そうすると、税率アップということが非常に心配になってきて、三%はいつまで続くのだろうかという気がいたします。
 それからもう一つ、複数税率が入ってきたわけでございます。食品を軽減するんだということですけれども、複数税率が入ってきた、しかもゼロ税率でなかったということは、ゼロは倍にしてもゼロですけれども、一・五は倍になり三倍になる可能性もあるわけでございます。ですから、ヨーロッパの諸国を見ておりますと、一六・五と一〇・三とか、一〇%と五%とか、さまざまな複数税率が入っておりますけれども、そういうところにもつながっていくんじゃないか。いろんな心配をしております。
 もう一つ、消費税の持つ基本的な欠陥ということで挙げられておりました簡易課税とか免税点とか帳簿方式とか、そういう問題については全く触れられなかった。学者の方のお話を伺うまでもなく、これでは本当に消費税を見直したとは言えないんじゃないか。もともと、これは売上税の反対のために、業界の方々に賛成を得るために簡素ということで、公平、公正は横に置いてちょっと簡素の方を広げたんだ、これは御説明を伺ったことがございますけれども、そういうところは手をつけなかったということも問題だと思います。自民党の見直し案は国民に幻想を与えて、そしていろんな期待を膨らませ、見直し案を支持するという統計の結果も出ておりました。しかし、最近になりまして、この見直し案が出てから、それからこの審議でなかなか見直し案が出てこないという時期にだんだんまた状況が変わってきたということも私は申し上げたいと思います。
 経済企画庁の外郭団体である日本リサーチ総合研究所が十月上旬に二千人の方たちの調査をいたしました。消費税を一たん廃止し税制改革をやり直すが四八・一%、見直し修正を行った上で存続が二九・五%、このままでいいと思わないがどうしたらよいかわからないが一五・五%、現状のまま続ける一・八%という結果が出ております。ほかの調査でもこういうような調査がまた出だしたということは、自民党の見直し案がなかなか出てこなかった時期に出たわけでございます。それから、この見直し案が出てから、私どもことしの初めに消費税一一〇番というのを設けまして、さまざまな声を皆様から受けました。それはもう終わったのでございますけれども、その一一〇番のつながりでいろんな方からお電話がございますが、やはり見直しを待っていたけれどもこれでは期待外れだった、これでは廃止しかないという声が、これで見直しができたという声よりも数倍多いということを申し上げたいと思います。
 この消費税導入が四月でございましてちょうど七カ月、今日ほど消費者が税制について関心を持っている時期はございません。みんな実感して、そしてみんな廃止論とか見直し論とか一人一人がはっきりした意見を持って行動するようになっております。こういうときにぜひ国会の先生方、与党も野党も一緒になって二十一世紀に向けて一体税制はどうあるべきなのか、私は一応廃止してそれを検討していただきたい。そして、本当に消費者の声を聞くとおっしゃるならば、国民の声を聞いて、そして納得のいく、合意できる税制を改めてつくり上げる、そういう行動に出ていただきたいということをお願いいたしまして、私の意見陳述を終わります。

発言情報

speech_id: 111614587X01419891206_008

発言者: 中村紀伊

speaker_id: 21435

日付: 1989-12-06

院: 参議院

会議名: 税制問題等に関する特別委員会