市川惇信の発言 (予算委員会公聴会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○市川公述人 お答えいたします。
我が国の環境研究あるいは対処の技術といいますものは、各方面において世界の第一級の水準にございます。しかしながら、原油流出ということに関して申し上げますと、我が国の経験は極めて少ないものでございます。御案内のとおり、瀬戸内海水島コンビナートにおきまして原油タンクからの流出事故がございましたが、我が国のこの点に関連する研究者あるいは技術者が触れた唯一の例である、こう考えてよろしいかと思います。したがいまして、御案内の、例えばアラスカのル・バルディス号、二十六万バレルといったような流出事故その他、大変多くの体験を持った世界のこの面での技術者の持っておりますノーハウに比べまして、我が国のこの面でのノーハウというのは残念ながら少ないと言わざるを得ないと思います。私は、あえて言いますが、これは少ないノーハウであればあるほどいいのであって、もしこれが我が国の周辺で非常に技術水準が高くなっているようでございますと、これは大変なことでございます。
さて、そういたしますと、我が国がこの問題に対して対処できる範囲というのはかなり限定されてまいります。ただ、具体的にどういうことができるかということを考えてみますと、それについて何か言えるだけの情報は、少なくとも私ども研究者のところまでは届いておりません。
まず、流出原油量につきましても、少なくとも私どもの耳に入るところでは諸説紛々でございまして、五十万バレルから、大きい方は千百万バレルでございますから、一体そのどの辺にあるのか、あるいは流出油が漂っている面積等についてはいろいろデータがあるようでございますが、一体それがどれだけの深さのものであるかというようなことについても、どうも一致した観測値はないようでございます。
加えまして、それがどういうふうに挙動していくかということを考えるといたしますと、少なくともあの付近における潮流、ペルシャ湾というのは、御案内のとおり奥行きが八百キロか九百キロぐらいでございますか、幅が二、三百キロ、狭いホルムズ海峡で数十キロというところかと思いますが、海の干満といいましょうか潮汐によって流れを生じておりますし、それから一番奥には例のチグリス、ユーフラテスが合体した川が注いでおるというようなそういう地理的条件でございますのですが、そこでの潮汐流といいましょうか潮の流れ、この辺のデータが必要でございますし、それからまた風の方向等もかなり詳細なデータが必要になるわけでございます。そのようなところを完全に我々が把握できる状況にございません。
これは妙な言い方でございますが、我が国がああいう地点においてそういう研究といいますか調査をある権限を持って実施できるような状況にこれまでなかったというところにあるわけでございまして、決して怠慢であるということではございませんのですが、そういうものが十分そろっておりません。したがいまして、そういうものがそろいますと何かのことが言えるのでございますが、現在のところ、何ができるかあるいはどういう結果になるかということについては何も言えないというのが一番間違いのない答えだと思います。
ただ、そう申しますと、例えば市川、ここに何のために立っているんだということになるかと思いますので、やや冒険でございますが、私として踏み込んだ意見をお差し支えなければ申し上げさせていただきたいと思います。これは、しかしながら、私が申し上げましたからそのとおりになるとか外れたとかということが問題になるようなことではございませんでして、私のこれまでの環境に関連いたしましての知識というものからできるだけ概要をつかみたいということで申し上げるわけでございます。
まず、全貌を私なりにつかんでいきたい、こう考えますと、流出量は最悪の場合で約千万バレル。御存じのとおり、我が国の一日の原油の処理量というのは三百七十万バレルでございます。したがいまして、我が国の消費量からすれば三日分。もちろん、かつて体験した最大の原油流出が二十六万ですから、それをはるかに超えた大きなものであることは間違いございませんが、少なくとも量自体を日本の消費量を升としてはかってみますと三杯分ということでございます。
そうしますと、環境負荷として問題になります、例えばでございますが二酸化炭素の出てくる量ということを考えますと、これは日本の三日分に相当するわけでございますので、それが直ちに温暖化に寄与するというようなことは、これは考えにくい話になるわけでございます。今は全部燃えたというお話でございますが、もちろんそれが全部燃えるわけではございませんので、その部分が燃えるわけでございますけれども、仮に全部燃えたとして大気に対してはそういう負荷がかかる。
さらに、当然御心配があるかと思いますけれども、硫黄酸化物あるいは窒素酸化物を考えてみます。硫黄酸化物は、これは燃えますとそれなりに出てまいりますが、窒素酸化物の場合には御案内のように燃焼温度が高いと大量に発生いたしますが、ああいう状況で仮に火がついたということを考えますと、それほど高い燃焼温度にならないとしますと、窒素酸化物等は余り、もちろん出るわけでございますけれども、そんなに多くはないというふうに考えられる。そういたしますと、あれが燃えたという状況を考えてみまして、日本の三日分に対応するものが燃えて、確かに脱硫操作あるいは脱硝操作がないわけで、裸で燃しているわけでございますから、その影響というのはあるのでございますが、世界のいろいろな国を見まして、あれぐらいの量を脱硫、脱硝がそれほど十分でなしに燃している国というのはございまして、したがいましてあれが硫黄酸化物、窒素酸化物を出したとしても直ちにどうこうという量には達しないのではないかという気がいたします。
もう一つ心配になりますのがブラックスモーク、いわゆるすすでございますけれども、これが非常に高層まで上がりますといろいろ気になることが起こりますが、成層圏に達しないで対流圏にとどまっている、一言で言えば雲の下にいるということでございますといずれ地上に落ちてくるということから、直ちにいわゆる地球規模での温暖化その他の大問題につながる心配はないのではないかというふうに考えられます。
以上が……