清水湛の発言 (法務委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○清水(湛)政府委員 お答え申し上げます。
 今回のこの国際海上物品運送法による海上運送人の責任でございますけれども、御承知のように、国際海上運送というのは、多国間、外国との関係の運送でございますので、それぞれの国の法律が異なるということでは非常に不都合が生ずるということから、まず第一に、国際間において運送人の責任に関する法制を統一する、こういうことが非常に重要な目的になっているわけでございます。そういう意味におきまして、我が国の陸上運送あるいは我が国の国内における海上運送というものとは国際間の統一を目的とするためにある程度食い違いが出てくる、こういうような点も当然のことながらあるわけでございます。
 今回の改正法に従って幾つかの陸上運送人の責任との相違点を指摘いたしますと、まず第一は、航海上の過失免責及び火災免責という問題がございます、船長など運送人の使用する者の過失のうち航行または船舶の取り扱いに関する過失、これは俗に航海上の過失と言われているわけでございますけれども、そういう損害については、この国際運送については運送人は責任を負わない、こういうことになっているわけでございます。通常の場合ですと、船長あるいは運送人の使用する者は運送契約を履行するための履行補助者ということになるわけでございまして、こういう者の過失は運送契約当事者である運送人の責任になるわけでございますけれども、国際運送につきましては、そういったものについて運送人の免責を認めておる、こういうことになるわけでございます。これは国際海上物品運送に特有の免責事由でございまして、もとより陸上運送にはない免責事由でございますとともに、我が国の国内の海上運送にもない免責事由こういうことになっているわけでございます。陸上運送人につきましては、先ほど申しましたように、陸上運送人の使用する者、つまり運転手とかそういう人たちの過失はいわゆる履行補助者の過失として当然に運送人の責任になる、こういうことになります。
 それから二番目に、堪航能力という問題がございます。海上運送人は、発航の当時に船舶が航海にたえる能力を有するということに注意を尽くさなければならない義務を負うということになっております。これは国際海上物品運送法の五条でございますが、この義務に違反がございますと運送人は損害賠償責任を負う、こういうことになっております。逆に言うと、この義務に違反がないと損害賠償責任は負わない、こういうことでございます。陸上運送については商法に明文の規定はございませんけれども、運送手段であるトラック等が安全な運送にたえ得る能力を保持するということ、これは商法五百七十七条に定める運送品を運送する義務の一内容でございますので、実質的には運送人はそういう注意義務を負っているということになるわけでございます。この堪航能力の保持義務というのは、これは実は内航船に関する商法七百三十八条でも定められているわけでございまして、この点は国際海上物品運送法による堪航能力保持義務と同じでございますけれども、ただ、商法上の責任は無過失責任であるのに対して、国際海上物品運送法では過失責任とされているという点が違いがあろうかと思います。
 それから三番目に、損害賠償の額でございますけれども、海上運送人が支払い義務を負う損害賠償の額は法律で一定の限度で制限されておる、こういうことになるわけでございます。損害賠償が定型化されておる、こういうことになるわけでございます。ところが、陸上運送人の責任についても、実は商法五百八十条が同趣旨の規定を定めておりまして、この損害賠償の額については、海上運送か陸上運送かということについて実質的な違いはないということが言えようかと思います。
 ただ、この責任の限度につきましては、まさに海上運送人の責任については、運送品一包または一単位につき、今回の改正案によりますと、六百六十六・六七SDRまたは損害を受けた運送品一キログラム当たり二SDRのうちいずれか高い金額を限度とするというような責任の限度を決めておるということになっております。しかしながら、陸上運送人の責任については、このような限度額が定められていないという点が違うわけでございます。
 それから、この責任の追及をすることができる期間につきまして、海上運送人の責任は、原則として運送品が引き渡された日から一年以内に裁判上の請求がされないときには消滅するということで、これはいわば除斥期間だというふうに言われておりますが、一年以内に運送人の責任を追及しませんとその追及権は消滅する、こういうことになっております。陸上運送人についても実はこの責任は一年間で消滅するということになっておりますけれども、これは短期消滅時効というふうに解釈されておりまして、時効中断等が認められるというような問題がございます。
 それから、運送人等の不法行為責任についてでございますけれども、海上運送人及びその使用する者の荷主に対する不法行為責任につきましては、運送人の契約責任におけると同様の免除及び軽減が認められる、今回の改正法案によりますとそういうことにされているわけでございます。これは、具体的には二十条の二でございます。しかしながら、我が国におきましては陸上運送人については、このような責任の減免とか、例えば履行補助者に一定の過失があっても責任を負わないというような航海上の過失免責あるいはその他の減免事由というものは認められない、不法行為責任も契約責任も競合して責任の限度なしに認められる、こういうことになっているわけでございます。

発言情報

speech_id: 112305206X01419920526_006

発言者: 清水湛

speaker_id: 6478

日付: 1992-05-26

院: 衆議院

会議名: 法務委員会