清原武彦の発言 (政治改革に関する調査特別委員会)
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○清原参考人 清原でございます。
私は、産経新聞の編集、論説を担当しておりますと同時に、さきに第八次選挙制度審議会の委員を務めさせていただき、今また政治改革推進協議会、民間の団体にも加わっておるということで、二重三重の人格を持ってこの場に出ておるわけでございますけれども、私なりに自己矛盾がないよう考え方を整理し、きょうはできるだけ明確に私の考えを申し上げたい。もし表現に不用意な点あるいは失礼に当たる点があればお許しをいただきたいと、最初にお願いいたしておきます。
なお、私のこれから申し上げます点は、ただいまの島参考人が言われたことと基本認識においてはかなり一致している点がございますが、あえて重複を恐れずに申し上げます。
第一に、最初に私が強調いたしたい点、これは政治改革論議の中でまず最初にクリアされなければいけない、しかし、国民の目には意外に明確に映し出されていない点がある。それは、なぜ今政治改革が必要なのかという点、これが一番本質的な問題だと思うわけですね。政治改革といっても、人それぞれに別の考え方で物を言っておられる面があるのではないか。
ただ、そうした中で、私は、今なぜ政治改革かという点で落とし穴が今の議論にあるとすれば、それは政治と金の問題、これが強調される余り、もう一つの大きな本質的な点が見落とされている。それは何かといいますと、今の激変する国際情勢、東西冷戦状態に終止符が打たれ、今世界は新しい国際秩序を求めて動いている。その中で日本がいかに対応するか。敏速な決断、動きが求められている。そういう中で政治がそれに対応し切れていない面があるのではないか。例えば、湾岸危機のときの対応しかり、あるいはウルグアイ・ラウンド、米の自由化の問題に関する対応しかりだと私は考えております。それは決して政治家、皆さん個人個人の責任だけに帰する問題ではなくて、私は、やはり大きな政治システム、それが戦後の長い期間の間で制度疲労を起こして機能しなくなっている、あるいは当初予想された国際情勢と今の情勢が大きく転換している。ですから、体の丈が変われば着物も変えなければいけないのですが、その辺がおくれているのではないか、こういうことでございます。
つまり、私が申し上げたいのは、政治と金の問題、これは共和、佐川あるいは金丸前副総裁の逮捕、こうした問題をめぐって国民の間の政治不信が高まり、緊急に解決されるべき問題である、その点には異存はありませんし、この政治改革への追い風は大いに利用されるべきでありますけれども、もう一つ根本を見据えて、今日本が求められている大きな政治、民意を集約して敏速に対応する政治、そうしたものへのシステムづくりという観点を第一にお考えいただきたい。この点の整理がつかないと、下手をすればせっかく盛り上がった政治改革の機運も、結局は末梢的な部分の処理に終わって、根本問題は先延ばしにされかねない、そうした危惧を持っておりますので、あえて強調するわけであります。
そこで、私は、これから五つの点について考え方を申し述べ、皆さんにぜひ今国会での御処理をお願いしたいと思います。
第一は、島参考人も言われましたけれども、与野党間においてほぼ合意ができている点、それは現在の中選挙区制度の弊害、これはもはや放置できないところに来ているということで、新しい制度を導入しなければいけないという点でおおよそのコンセンサスができているというふうに考えます。そこで、まずこの点を明確に合意いただいて、中選挙区はとにかく廃止する、そして新しい制度に踏み込む、この点を第一に御確認をいただいて次の議論に進んでもらう。既にもうそういう段階とは思いますけれども、これが第一。
それから第二点。しからばどういう新しい制度を導入するかという点でございますけれども、これは私は、先ほど申し上げました私の基本認識から御理解いただけると思いますけれども、民意を集約した大きな政治、これを第一に考えるべきだろう。それから、やはり政治に緊張感をもたらすために政権交代可能な制度、そしてまさに日本の新しい国際秩序づくりへの参画が求められているようなときにどういう政策を打ち出すか。そういうことを選挙でもあるいは国会内においても活発に議論がやりとりされる政党本位、政策本位のシステム、そういう選挙を考えますと、やはり小選挙区のメリットを生かした選挙制度を中心にお考えをいただきたい、これが第二点でございます。
第三点。ただし、私は、先ほど大きな政治の実行という点を強調する余り、政治と金の面は二義的であるかのような印象を皆様にお与えしたかもしれませんけれども、これはもちろん国民の政治不信解消という意味で、政治改革の大きな柱であります。と同時に、選挙制度改革どこの政治と金の問題、つまり具体的に申しますれば、選挙制度改革と政治資金規正法の強化、改正、この問題は車の両輪であります。ぜひこれはやはりこの国会で処理していただきたい。
第四点。今、この選挙制度と政治資金の改正は車の両輪と申し上げました。両輪である以上、片一方が外れれば車はひっくり返ってしまいます。ぜひ今国会で一括処理をお願いしたい。もちろんこれに付随しまして、政党への公的助成の問題、こうした問題も一括処理さるべき問題であると考えます。
第五点は、具体論というよりは、これはお願いでございますけれども、政治改革は今国会が恐らく最後のチャンスであろう。これだけ国民の世論が高まり、皆様方も一生懸命取り組んでおられる、この時期を失して抜本改正が見送られれば、将来このようなチャンスはまたと来ないのではないか。そういう意味において、ぜひ今国会で今私が申し上げたような諸点、できれば、選挙制度改革は衆参一体で考えられるべきですので、参議院選挙制度改革もと申し上げたいところですが、これは現実には無理でございましょう。ですから、今私が申し上げましたような点については、ぜひ今国会で解決をお願いしたいと思います。
さて、今申し上げました五点のうち選挙制度改革、これがやはり大きな政治を行う上で一番大事な点であると私は考えます。
よく議員の皆様あるいは学者の方などから、政治改革論議を選挙制度改革論議に矮小化するなという言葉が聞かれます。私は、これは逆ではないか。つまり、まあ鶏が先か卵が先かの論議ですが、政治が正しく改まれば制度を改革する必要がないという議論もあるでしょうけれども、やはりこの四十年間のよどみ、これは制度を大きく変えることなくして大きく変わることはないというのが私の認識でありますし、基本的には金のかかる政治あるいは派閥政治あるいは選挙において地元への利益誘導、後援者への利益誘導、こうしたものは、やはり同一政党が複数の候補者を出すことによって政策よりもそうしたことの方が選挙戦においては大きなウエートを持つ、そうした制度面に由来して今の政界の勢力分布あるいはシステムがつくられてきているわけですから、私は、政治改革の根本は選挙制度改革にある。逆に、政治改革論議をただ単に政治と金の問題というふうに短小化しないでいただきたい。もしそういうとらえ方ですと、次々にスキャンダルが起き、そのときどきの大物政治家が傷つき、倒れ、そしてその段階でまた国民はその問題を忘れ去って同じような状態が繰り返されていく、そういうことになってしまうのだろうと思うわけですね。
それで、選挙制度改革について、先ほど申し上げた小選挙区のメリットを生かすべきだという私の考えを敷衍して、さらに二、三申し上げます。
理論的には、私は自民党さんが提案されました単純小選挙区制、これが一番すっきりしている、それから先ほど申し上げた民意の集約、大きな政治、これを行う上には一番適したシステムであると考えます。そして、将来的にはそうした方向に進んでいくことを希望するわけであります。
ただ、現状において、今現実に存在する中小規模の政党、議席数において中小規模である政党、こうした政党に対して、法律を変えることによって、制度を変えることによって、言葉はきつくなりますが、事実上抹消してしまうというようなことになりはしないか。そういう懸念があるとすれば、やはりその点は現在の段階でとる処置としてはいささか過激に過ぎるのではないかというふうに考えます。そうしますと、私は、海部内閣のもとで出されました小選挙区比例代表並立案、これが今申し上げた私の考え方、さらには現実に即した処理に照らしてベストに近い案ではなかろうか、こういうふうに考えております。
ちなみに、自民党さんは、平成元年五月に政治改革大綱で、小選挙区と比例代表制を組み合わせた形の新しい選挙制度の導入を検討、考えるということを言われ、これを公約に過去二回選挙を戦い、そして海部内閣のもとではこの法案が党議決定されて国会に提出された。やはり私は政党の党議決定というものを重く考えていただきたいと思いますし、こうした過去の経緯があるにもかかわらず、今回この案があっさりと葬り去られてまた別の案が出てきたという点については、まだ国民の前に十分説明がなされていないのではないか、こういうふうに考えます。
ところで、もう一つ今国会に提出されております社会、公明両党提案の、これは小選挙区と比例代表の併用案でありますね。並立と併用の違いというものは国民には非常に理解しにくいと思いますが、併用案というのは事実上これは比例代表選挙であるというのが私の認識でありますし、先ほど申し上げた民意の集約による大きな政治ということを行うには不適当な制度であるというふうに考えております。
民意を鏡のように反映するというのは非常に響きのいい言葉でありまして、耳に受け入れられやすい。私は一度日米のあるシンポジウムに出席いたしましてアメリカ側の学者と議論した際に、アメリカ側の学者から、いっそのこと日本の議員の半分ぐらいは世論調査方式の無作為抽出で選び出したらどうかという過激な案が出たわけですね。つまり、世論調査というものは、それをもとに政治家の皆さんがいろいろ政策を考えるわけですが、その世論調査の一部をそのまま国会の中に組み込んでしまうという案でございまして、私はこれについては、今申し上げたように、それならば国会は要らないじゃないか、世論調査を見て総理大臣が政策を決めりゃいいじゃないか。やはり議会制民主主義、代議制民主主義というのは、国民の意向を議員の皆様が受け取り、吸収し、それをさらに高いレベルでの情報あるいは分析、見識等をもとにそしゃくして、民意を集約して行うべきものであるというふうに考えます。ですから、鏡のような民意の反映というのは、一見言葉の魔術がありまして、これをそのまま受け入れると日本の政治は混乱に陥るという考え方でありますので、社公案の併用制案には反対であると申し上げざるを得ません。
そこで、もう一つ、今浮上してまいりました、これは民間側の政治改革推進協議会、民間政治臨調の連用制案というものでございます。これは、言葉自体もそうですが、内容もちょっとわかりにくいところがあるのが欠点といえば欠点。それと、並立制案と併用制案のどちらに近いか。これは読みようによっては並立制案そのもの、読みようによっては併用制案ということですが、私は、どちらかというと併用制案だろうと思うのです。実体的には併用制案。ただし、過剰議席の処理において、それは小選挙区よりも比例代表の方からその過剰議席の分を削るという発想に立っているという点で、並立と併用の中間ということかなということですね。ですから、私は基本的に併用制案に反対でありますので、この案にも必ずしも全面的には賛成しがたい。ただし、現実に即した考え方という点、しかも小選挙区制のメリットを生かそうという工夫が施されている、そういう意味では非常によく考え抜かれた案でありまして、私は、これは十分検討に値する案であり、皆様方が今後与野党間で接点を求められていくという中で、十分これをもとに議論し得る、そういったたき台になる案であろうと思います。
また、この連用制案については、結果的に現在の各党議席と異ならない、余り変わらないようにつくった、そういう現実性を重視し、思想がないんじゃないかという批判も一部に出ております。私は、これは若干この案が曲解されておるのではなかろうか。つまり、私が申しましたように、やはり小選挙区のメリットを重視するという点にかなり配慮が行われておる。したがいまして、この制度に基づいて選挙が行われた場合、第一党はやはり過半数をとるんだろうと思うのです。厳密にシミュレーションしたわけではありませんけれども、恐らくそういうことになるのではなかろうか。私は、小党分立あるいはそうした二つ、三つ、四つの政党による連立政権というものは、政治の不安定化をもたらすという意味で反対でございますが、そうした意味ではこの案は併用制案よりはそうした弊害はないということ。
それから、これは政治論でございますので、皆さんいろいろ見解の相違もおありでしょうけれども、この制度が導入されれば、政界再編といいますか、今の各党の勢力地図、そうしたものに大きな地殻変動を及ぼす、そうした起爆剤ともなり得るかもしれない。そうした意味では、将来的には小選挙区制への移行という可能性をも秘めた案であろうと私は私なりに理解いたしております。
以上、選挙制度改革については特に詳しく私の考えを申し上げましたが、その他の点については冒頭では割愛さしていただきます。
ただ一点、一つこの冒頭の発言の機会をおかりして申し上げたいことは、今回自民党さんが提案されました公職選挙法改正案、この中に選挙予測報道の規制に関するくだりがございます。私は、選挙に関して世論を的確に把握し、報道、評論を行う、これは報道の自由ということももちろんありますし、と同時に有権者に選挙に対する関心を高め、理解を深めさせるという意味で、やはりマスコミ機関として当然に行うべきことであろう、重要な使命であろう、こういうふうに考えております。
もちろん私はこのことを盛り込まれた趣旨は存じております。選挙直前の予測報道によりましていわゆるアナウンスメント効果が発生し、選挙戦を有利に戦っている者が逆に不利になるというような面があるのではないか、そうしたアナウンスメント効果の存在自体は私は必ずしも否定するものではありません。ただ、そのアナウンスメント効果によって有権者の意思決定、針がどちらの方向に振れるか。これは時には絶妙なバランス感覚で針が振れることもあれば、時には行き過ぎた振れ方もありますでしょう。行き過ぎた面があるとすれば、私は、それは民主主義が当然に払う代価の一つでありまして、むしろそうした規制を行うことによって民主主義自体を危うくする、そうしたことの方を恐れるべきだろうというふうに考えておりますので、この点はぜひ皆様の賢明な御判断をお願いいたしたいと思います。
以上で私の発言を終わります。ありがとうございました。(拍手)