大田弘子の発言 (大蔵委員会)
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○大田参考人 おはようございます。大田でございます。
租税特別措置法案の中で、高齢者マル優の限度額引き上げ、それから居住用財産の買いかえ特例、この二つを中心に意見を申し上げます。
まず、高齢者マル優の問題ですが、私はこの制度は廃止の方向が望ましいと思っております。その理由は三つございます。
第一は、利子非課税ということは、見方を変えますと補助金を渡すということと同じです。ですから、この制度の場合は、高齢者に補助金を差し上げる、それも貯蓄を持っている高齢者だけに補助金を差し上げる、それもたくさん貯蓄を持っている高齢者ほどたくさんの補助金を差し上げる、こういう制度です。こういう制度になぜ多くの方々が賛成なさるのか、私には理解できません。
それから第二に、日本はこれから急速に高齢化が進みます。この高齢化社会の負担をだれがどういう形で担うかという問題です。現在のように、現役世代は扶養する人、高齢者は扶養されるだけの人という関係ですと、現役世代はとてもこれからの負担を担っていけません。重くなり過ぎます。ですから、高齢者もこれからは一定の負担を担っていくことが必要だと私は思います。もちろん、経済力の弱い高齢者への配慮は必要ですけれども、高齢者イコール弱者ととらえることは望ましくありませんし、現実的でもありません。
それから、第三です。年金の保険料ですとか税負担が重くなる中で、現役世代はこれから自分の老後に向けて貯蓄を行ってまいります。したがって、これから必要となる税制上の措置は、高齢者に対してではなく、むしろ若い層です。これから資産形成をスムーズに行っていけるように、税制上の配慮をすることが必要だと思います。
こういう理由で、高齢者マル優は廃止すべきだと思っておりますので、ここでさらに限度を引き上げることには反対です。ただ、当初要求されました限度額よりかなり圧縮されましたので、この点だけを評価しております。
次に、買いかえ特例について意見を申し上げます。
土地に対する課税は、私は保有税を強化し、譲渡税を軽減することが基本だと思っております。譲渡課税が重過ぎますと、土地の流動性が阻害されますし、それから住みかえを必要とする世帯とそうでない世帯と比べましたときに、住みかえた世帯の方が不利になってしまいます。ですから、譲渡税は軽くする方向だと思いますが、ただし、譲渡税を軽くするためには保有税を強化することがあわせて必要になります。保有税が軽いために、土地が過度に有利な資産になってまいりました。そして巨額の譲渡益が生まれてまいりました。この巨額の譲渡益が生まれる状況をなくしておくことが必要です。今回、固定資産税は評価の適正化が行われることになっておりますが、あわせて非常に大きな負担調整措置がとられることになっておりますので、保有税としての役割は必ずしも果たしておりません。
こういう状況で買いかえ特例が復活しますこと
には懸念がありますが、ただ幸いなことにさまざまな要件がつけられております。売る資産だけではなくて、買いかえる資産についても適正な水準かどうかを見るとか、あるいは二年間の短期的対応ということですので、妥協し得る水準かと思います。問題は、これからどのようにして保有税の強化を行っていくかということだと思います。
保有税に関しまして、一つ気になる点がございますので、あわせて意見を申し上げます。それは、今地価税の撤廃を求める声がまた強くなってきていると耳にいたします。ただ、私は、これはとんでもないことだと思っております。これまでも、地価が少し下がりますと、業界から土地対策を緩和せよという要求が上がります。そして、この要求を受け入れて土地対策が緩和される、そしてまた地価が高騰する素地がつくられるという愚かしいことが繰り返されてまいりました。今回もこのあしき前例を繰り返してはならないと思います。
土地が下がって困っている業界もありますでしょうが、土地が下がって喜んでいる国民はたくさんおります用地価が高騰しましたことが社会資本整備をおくらせましたし、私どもの生活をさまざまな面でゆがめてまいりました。このことを考えますと、ここで地価を下げ切って二度と地価が高騰しない構造をつくっておくこと、ここで土地神話を完全に脱却してしまうことが何より大切です。地価が下がることで痛みを負う層は当然あるでしょうけれども、こうした層はこれまでの高い地価の恩恵を受けてきた層でもありますし、痛みなくして構造改革はできないかと思います。
あと、残りの時間で、景気刺激策としての所得税減税について簡単に意見を申し上げさせていただきます。
私は、景気刺激のための所得税減税には反対です。その理由は、効果が極めて弱いからです。現在消費者の心理が冷え切っているというふうに言われますが、私は必ずしもそのようにはとらえてはおりません。百貨店統計だけ見ますと落ち込んでおりますけれども、スーパーの売り上げはそれほどではありません。ここで暖冬の影響が出ておりますが、それでも百貨店ほどの落ち込みではありません。それから、ディスカウントショップの中には売り上げが伸びているところもかなりあります。
それから、こういう状況を見ますと、必ずしも必需的な支出まで切り詰めている状態とは言えません。それから、自動車の販売台数などを見ましても、ピーク時からの変化率で見ますと急速な落ち込みですけれども、水準はバブル期以前に戻ったにすぎません。好景気の間に、異常なほどに車ですとか耐久消費財の購入が進みました。山が高かったわけですから、その反動もこれは当然だと思います。
今の状況は、消費者心理が冷え込んでいるというよりも、堅実な消費にニーズが変化したと見た方が妥当だと私は思っております。このニーズにかなった商品ですと、今でも売れております。逆に言いますと、このニーズにかなった商品が出てきませんと、減税が行われても買いません。後ろにおられる連合の方には申しわけないのですが、春闘の賃上げは余り期待できそうにありませんので、なおさら貯蓄に向かう傾向があると思います。それから、ミドルクラスの雇用調整が行われたとか、この一面の状況が拡大されて大変だ、大変だと騒がれることも貯蓄に向かう傾向を強めているかと思います。
今回の不景気の場合は、特に所得税減税の景気刺激効果は弱いと思います。効果が弱い減税を赤字国債を発行して行いますと、いずれ償還のツケが回ってまいります。そこまでして今所得税減税を行うべき時期がどうか、冷静に判断すべきです。
ただ、私も所得税減税の必要性そのものは否定いたしません。昭和六十三年の抜本改革以来調整が行われておりませんので、所得税の構造を見直す時期は迎えております。それから、現在の税負担は所得税に偏っております。このゆがみを是正して、消費税の税率を上げるというような税構造全体の改革が必要です。しかし、これは景気刺激のためにばたばたと行うことではありませんし、実施時期から見て景気浮揚効果もありません。今、本格的な税構造の議論が必要なだけに、ここで安易な減税が行われることを私は懸念しております。言葉が悪いのですけれども、景気対策をにしきの御旗にして将来に対して無責任な減税が行われることを懸念しております。
日本は、これから急速に高齢化が進みます。高齢化社会は負担の増加する社会でもありますので、今から公平な負担の枠組みをつくっておくことが必要です。
第一に、所得税に偏った負担のゆがみを是正すること、第二に資産の面で公平な課税が行われるようにすること、この二点が私は特に必要と思っております。
超高齢化社会を迎える直前の非常に重要な時期を迎えておりますので、豊かな高齢化社会を支える税制をぜひつくっていただきたいとお願い申し上げます。
ありがとうございました。(拍子)