和田正江の発言 (予算委員会公聴会)
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○和田(正)公述人 主婦連合会の和田でございます。
きょうは、消費者として関心の深いガット・ウルグアイ・ラウンドの特に米の問題と、それから食品などの規格や基準の国際平準化について発言させていただきたいと思います。
現在、日本では多種多様の食品があふれておりまして、飽食とまで言われておりますけれども、食べ物の自給率を考えますと、豊かと言われる食生活が非常に底の浅いものに見えてまいります。日本の食糧の自給率は、申し上げるまでもなく一九九〇年はカロリーベースで約四七%、九一年の速報ではさらに下がって四六%となっております。これは残念ながら先進国中最低の水準であり、一九七〇年ごろ日本と同じように自給率の低かったイギリス、西ドイツがそれぞれ七三%、九四%と自給率を上げているのに対して、日本は低下傾向にあるという現状でございます。
私たちはこのような現状を憂い、主婦連合会の運動方針に、「食料の国内自給率を高め、安全な食料を国内で生産し消費する運動をすすめよう」と明記して、さまざまな運動に取り組んでおります。その低い自給率の中で唯一一〇〇%自給しております米につきましては、今後も自給でというのが私どもの考えでございます。
主婦連合会では、一九七一年から毎年東京を中心に主婦千名を対象に米の消費動向調査を行ってまいりました。米の自由化については一九八七年から調査をしておりますが、その結果としては、始めました八七年は、「自由化してもよい」、これは条件をつける人を含めましてですけれども、「自由化してもよい」という人が「自由化すべきでない」という人よりも少し多うございましたけれども、八八年以降を見てみますと、「自由化してもよい」という人が大体三七%前後で同じような数字でございますのに対して、八八年は三八・五%、八九年は四二%、九〇年は四七%と、「自由化すべきでない」という人の数字がずっと多くなってきております。
九一年の調査では自由化についての設問は特に設けませんでしたけれども、自由意見のところに自由化について意見が多く書かれておりました。これは、設問に対する回答ではございませんので、単純に数で比較するのはいかがかと思いますけれども、参考までに申し上げますと、二百五十四人の人が自由化反対、七十八人が賛成意見を述べております。
そして、この毎年の特徴といたしまして、自由化反対の意見としての主な理由が、輸入に頼って天候異変や社会状況の異変事態のときに困る、自給率をこれ以上下げるのは問題である、日本の米が余って減反までしているのに輸入するのは納得できない、安全性の問題が心配である、水や緑など環境保全に果たしている役割は大きいなどと、非常に積極的な意見が書かれております。
これに対して、「自由化してもよい」という意見の理由を見てみますと、やむを得ない、少しくらいなら、あるいは現在の稲作に何らかの揺さぶりをかける意味でというような意見が大半を占めておりまして、外国の米が安いから入れてそれを食べたいという積極的な意見は毎年非常にわずかでございます。これが特徴と言えるだろうと思います。
以上、主婦連合会の調査から意見を述べましたけれども、私たちが米は自給でと考えている理由をもう一度整理してみたいと思います。
日本は、農産物の輸入に門戸を閉ざしているというのではなくて、次々と開放し緩和し、世界最大の食糧の輸入国となっております。その結果として、先ほども申し上げましたように、胃袋の半分以上を外国にゆだねている日本の消費者としては、唯一一〇〇%自給できる米、そして私どもの供給カロリーの四分の一を占めている米、そういう米をこれ以上、主食の米まで外国にゆだねるのは大変不安がございます。これは日本だけの問題ではなく、将来世界の食糧需給は逼迫するとの見通しの中で、各国が基礎的な食糧は自給するということを目指すのが本筋ではないかと考えております。
次に、米の貿易量は世界の生産量の三%にすぎず、小麦の一五%と比べて非常に低うございます。しかも、タイとアメリカがその貿易量の六割を占めておりまして、一部の国の米の作柄によって、過去の例を見ましても貿易量や国際価格が大きく変動するという事情を踏まえておかなければいけないと思います。
次に、安全性の不安ですが、安全性につきましては、国産も輸入品も同じように安全性を求めるのは当然ですが、輸入の場合には農薬などの規制方法や使い方というのが全く異なっております。そして、保管に関しましては、日本の米は低温管理が徹底しているのでポストハーベストなど必要ないというふうに思われますけれども、日本まで運んでくるための処置などを考えますと非常に不安が残ります。
それからさらに、先ほども申し上げましたけれども、水田が国土や自然環境の保全に役立っているという点も見逃すことはできないということでございます。
それから、米の値段について、日本の米は高い、外国の安い米をという声も耳にはいたしますが、米は一食分お茶わん二杯分として、精米百グラム、約四十円から五十五円というところでございます。これを高いと見るのかどうかというのはいろいろ見方があると思います。外国と比べますと、一九九一年の米の消費者価格はアメリカの二・五倍、タイの六・三倍と言われております。しかし、内外価格差は、申し上げるまでもなく為替相場の変動が大きく影響し、例えば一九八五年の為替レートで一九九一年の内外価格差を試算いたしますと、消費者価格はアメリカの一・四倍となりまして、円高による影響が非常に大きいということが明らかでございます。
このようにいろいろと考え合わせまして、今現在内外価格差が大きいとしてもやはり米は自給でと思う人の方が多いということになっております。
外国と日本の農地の規模の違い、それから農地の価格の違いを考えますと、この内外価格差をゼロにすることは困難かとも思われますけれども、今後もできるだけ縮小する努力を望んでいることは言うまでもありません。一九九〇年の家計調査報告によりますと、家計支出総額に対する米の支出は一・七%とわずかな数字にはなっておりますが、米の価格は単に高いとか安いとかという問題だけではなく、消費者として納得のできる価格なのか、それから生産、流通を通じ需給に応じた適正な競争が働いているのかという点にも関心を持っている消費者がふえてきているということを申し添えておきたいと思います。
次に、安全基準の国際平準化について申し上げます。
ガットの最終案によりますと、食糧、食品の検疫・衛生基準について、国際基準はFAO・WHOでのコーデックス・アリメンタリウス委員会が決定し、各国が国際基準よりもさらに厳しい基準を採用する場合には、有効な科学的根拠のあるものでなければならないとしております。この方針に沿って現在我が国では、食糧やその他食品添加物あるいは農薬などの基準がどちらかというと緩められる方向での作業が進められております。私たちは、国際基準は最低限の国際基準とし、各国はそれぞれの国の気候、風土、伝統それから食習慣、その国の衛生状態、いろいろなものを加味して自主的に設定することを認めるべきだというふうに考えております。日本では、ガットで決まったのだからこれを認めなければ日本は孤立する、国際化の中でこれを納得できない消費者は認識不足であるというようなことが言われております。しかし、私たちのような考え方は、日本だけではなく世界各国で、それぞれの国の、それから地域の規格なり基準が後退することに問題があると考えて運動に取り組んでいる消費者のグループがあることを申し上げておきたいと思います。
消費者といたしましては、所あるごとに今申し上げましたような意見を申し述べておりますけれども、最近の例で申し上げますと、一九九一年の十一月の十五日に全国四十九の消費者団体が参加して、これは毎年一回開いております消費者大会でございますが、一九九一年は第三十回に当たっております。この三十回の全国消費者大会において、「コメの輸入自由化に反対し食糧の自給率向上と食べものの安全を求める特別決議」を決議いたしております。また、一九九二年九月に来日されたガットのドンケル事務局長に対して、それぞれの国が適切と考える基礎的食糧の自給率を達成するための措置を認めること、それから今申し上げたような国際平準化の問題などについて、全国消費者団体連絡会、主婦連合会も賛同団体としてこの書面を提出いたしてございます。
さらに本年二月二日に、「コメ輸入の関税化」受入れを求める国民委員会が緊急アピールを発表されましたのに対しまして、全国消費者団体連絡会は次のような声明を発表いたしております。
二月二日、「「コメ輸入の関税化」受入れを求める国民委員会」が「「コメ輸入の関税化」受入れを決断しよう」との緊急アピールを発表しました。
このアピールは、輸出国の論理にたった所謂ドンケル・ぺーパーに基づく農業交渉決着を至上命題とするもので、到底認めることはできません。ガット・ウルグアイ・ラウンドは、農業分野だけでなく非農業分野においても主要国間の意見の対立があり、日本がコメ輸入の関税化を受け入れないことが交渉全体を壊すものではないはずです。
私たちは、全国消費者大会の決議にあるように、
1 基礎的食糧の自給と、歴史と風土に根ざした食生活、自立した食文化を確立することが、各国国民の責務である
2 食料の安全性の確保は最優先の課題である
3 農業、特に水田が環境保全等に果たしている多面的役割を維持する必要があるなどから、「コメ輸入の関税化」受入れに反対であることを改めて表明するものです。
今日、日本の食料、農業、農村をめぐる危機的状況は、深刻さの度合いをますます深めています。また、「自由貿易」の名による食品の安全基準の国際平準化もすすめられています。私たち消費者は、わが国食糧自給率の長期的な向上をめざし、安全性や環境への十分な配慮がなされた地域農業の健全な育成をはかり、国民共有の財産である地域資源と国土を守る国民的な合意を早急に形成し、何よりも食品の安全と健康を守ることを食料、農業政策の根幹に置くことを強く願うものです。
私たちは、政府がこれまでの国会決議に示された国民の意志を尊重し、毅然たる態度で引き続き交渉に臨むことを求めます。
これが私どもの出しましたアピールでございます。国会におかれましては、昭和五十五年、五十九年、六十三年の三回にわたりまして、食糧自給力強化に関する決議、米の需給安定に関する決議、米の自由化反対に関する決議がございます。この決議に沿いまして今後ともガット交渉に取り組んでいかれますよう強く希望いたしまして、私の公述を終わらせていただきます。(拍手)