清水湛の発言 (法務委員会)
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○政府委員(清水湛君) お答えいたします。
社債法の全面的な見直し作業というのは、実は昭和三十六年代に既に法務省としては手をつけたことがあるわけでございます。その理由といたしましては、社債の発行限度規制について法律でこれを決めておるというのは日本とその他の先進国ではイタリア、ベルギー程度のものである、諸外国ではこのような制約は一切ないというようなこと。それから、制約をするにいたしましても発行のときだけの制約でございまして、その後の追跡というようなことが一切何もない。また、企業が銀行から金を借りるということについては何らの制約がないというようなことから、このような規制の合理性というものについて早くから疑問が提起されていたわけでございます。
そこで、法務省としても昭和三十六年に関係方面の意向打診をするというようなことをいたしたわけでございますけれども、まだまだ時期尚早ではないかというようなことがございました。その後、四十五年ごろから学者の方でもいろいろな研究会を組織して社債法制の研究に着手するというようなことはあったわけでございます。
しかしながら、昭和四十九年の商法改正の際に、当委員会でもあったのでございますけれども、会社法の全面的な見直しをせよというような附帯決議がございまして、それに基づきまして実は法務省では会社法の根本改正作業というものに着手いたしました。そして、幾つかの問題点を整理いたしまして関係方面に照会したわけでございますけれども、その中で社債の発行限度規制というのはこれは現在の法制のもとにおいては余り意味がないし、このようなものは撤廃すべきである、撤廃できないにいたしましてもその枠を大幅に拡大すべきであるというような意見が出されてまいったわけでございます。
企業の資金調達の方法の最もいわば原則的な形態といたしましては、新株発行という方法と社債による資金調達という二つの方法が明治以来基本的な制度としてあるわけでございますけれども、社債の発行についての需要が特に戦後非常に高まってきたというようなことが一つの背景にあるわけでございます。そういうような状況を踏まえまして、この社債発行限度規制をどうするかということが昭和五十年代非常に大きな問題になったわけでございます。
そこで、法務省といたしましては、発行限度規制を撤廃するといたしましても、いろいろな外的な諸条件、あるいは商法の中にも社債権者保護という観点からいろいろな制度を研究、検討しなければならない、今すぐ社債限度の発行規制を撤廃するわけにはまいらないということで、御承知のように昭和五十二年に暫定的な措置法といたしま
して、社債発行限度暫定措置法という法律を国会において御承認をいただいたわけでございます。
この暫定措置法というのは、さしあたって商法の発行規制枠の二倍までは社債を発行することができるというような形で、あくまでもさしあたっての暫定的な措置であるということでこのような法律がつくられたわけでございますが、その後私ども法務省といたしましては、本格的な発行限度規制を撤廃するとすればどのような諸条件が整備される必要があるかというようなことについての研究、検討を開始し、昭和六十年に入りまして法制審議会の正式な検討議題として審議を始めたわけでございます。
そういう状況の中で社債権者の保護を図るための措置としてどういう条件が満たされればよいかということになるわけでございますが、一つには証券取引法上のディスクロージャー制度、社債を発行する場合の有価証券届け出書あるいは報告書等の制度は完備してまいりまして、大衆を相手とする社債発行についての証券取引法上の規制が非常に充実してきたということ、それからもう一つには社債についての格付制度というのが昭和六十一年以降日本においても非常に充実強化されてきたというようなこと、そういうような客観的な条件もかなり整備されてきたということを踏まえまして、今回の商法改正に見られますように、商法自体におきましても社債権者保護のための社債管理会社の設置を義務づけるというような面におきましてきちっとした制度的なものを保障する。
もちろん、これまでも社債を募集する場合には募集を委託する会社、受託会社というのがございまして、この受託会社には実際上銀行がなっていたわけでございますけれども、これまでの受託会社というのは発行会社側の立場も兼ね、あるいは社債権者側の立場も兼ねるというような両面性がございましたので、今回の改正法におきましては銀行等の業務を社債権者の保護という一点に絞るということにいたしまして、社債管理会社の設置を義務づけるというような中身にすることによりまして今回のような発行限度規制撤廃というような結論に到達したわけでございます。
もちろん、こういうような限度の撤廃を求める経済界あるいは証券界等の声もあるわけでございまして、また現実に社債の発行の事務にこれまでも携わってきた銀行あるいは証券界の立場というような意見もあるわけでございまして、このような各方面の意見を十分にしんしゃくしながら社債権者保護という商法の本来の観点を貫き通す、こういう意味におきまして今回のような改正案に私ども到達をいたした、こういうことになるわけでございます。
以上でございます。