楢岡貞龍の発言 (政治改革に関する調査特別委員会)

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○楢岡貞龍君 それでは、私から申し上げさせていただきます。
 初めに、陳述をする前に申し上げておきたいと思いますが、去る十一月二日の毎日新聞に報道されましたところによりますと、十一月一日の日に、政治改革関連法案の修正交渉の際に、自民党の森幹事長が「政治改革は地方政治に大きな影響を与える。中央・地方公聴会が八日から始まる前に修正話をするのは公聴会を軽くみることになる」というふうに述べたのに対して、園田さきがけ日本新党代表幹事は「公聴会は形式的な問題で、法案の問題点は浮き彫りにされている。十二日までの合意を目指す」と、早期交渉の開始を求めたと報道しております。
 もしこれが事実であるとすれば、まことに心外な言動であって、独善と選挙民を愚弄する言動である。こういう態度でいわゆる公聴会を開くというようなことに一体何の意味があるのかということを、私はまずもって提言をいたしたいと思うのです。
 ゆえに私は、これから私が申し上げる意見は、決して形式的な意見でもなければ思いつき的な陳述でもないということを、まず委員の方々に御理解をお願いしたい、そういう前提でこれからお話を申し上げたいと存じます。
 時間がありませんので、私は、主に自分の関係しております地方の立場から現在の問題についての陳述を申し上げたいと思います。
 まず、今回の公職選挙法の一部を改正する法律案及び関連する法律案は、主に選ばれる側、すなわち衆議院議員の立場からのみ多く議論をされておりまして、選ぶ側、国民の方からの議論というものが余りなされていない。依然としていわゆる永田町の理論、考え方によってこういう議論がなされ、進行されておるというところにいろいろの問題点があると思うのです。
 現に、大部分の選挙民あるいは国民は、小選挙区並立制というのは一体どういうことなのか、それができれば自分たちが今まで投票しておった候補者がどうなるのかというようなことを、ほとんどの選挙民は知らないで新聞を読み、テレビを聞いているのです。こういうところに、私は、この選挙を議論する今までの運び方に非常に大きな疑問を持っておるものであります。
 私は、地方議会、地方議員の立場から、民主主義の原点というものは地方政治にあるというふうに考えております。そういう意味から、今回の改正案の中に、地方議会に対する配慮がほとんどなされていない。地方議員の政治資金というものは一体どのように調達をするのか。
 今もいろいろ話をされましたが、選挙には金が要ります。国会議員の選挙についての金の問題はいろいろ議論をされ、いろいろやられておりますけれども、地方議員は金を使わないで選挙をやっているわけではありません。しかも、そういう国政を支えておる地方議会あるいは地方政治というものは、私は一番民主主義の根幹というものにかかわっておると思うのです。その地方議員に対する選挙の資金というものは、一体どういう方向に進んでいくかという議論がほとんどなされておらない。
 しかも政府案では、政治資金規正法の一部を改正する法律案の中で、企業・団体献金を受けることができるのは政党だけであるというふうに限定をしております。しかも、それは国会議員を有する政党にだけ認めている。なぜ地方議員というものを認めることができないのか。国会議員だけが、一体政党を構成するあるいは政治集団を構成する政治家であるという理論であるのか。
 こういう意味からしますと、地方分権の強化などといいながら、地方軽視の措置であるということを私たちは地方の立場から感じざるを得ない。現に、知事であるとかあるいは市町村長、県会議員、市町村議員の中には、無所属で政党助成を受けられないという方々がたくさん出てまいります。しかも、地方においては個人献金の気風の浸透していない状況が現状でありますから、これらの地方自治体の首長、地方議員の政治活動費はどのように賄っていくのかということを、現在の段階においてやはり明確にしなければならないというふうに考えております。
 さらに、この件に関しての公費助成の問題でありますけれども、国民一人当たり三百五十円、総額約四百十四億円と一応政府の積算根拠を示しておりますけれども、これとても導入論が先行して、納得のいく説明が非常に乏しいのです。初めは六百何十億という数字を出しました。それが多いということで四百十四億円。何でこれが一体四百十四億円であるのか。三百三十五円という国民一人当たりの数字というものは何であるのかということが、納得のいく説明が非常に乏しい。
 しかも、この積算は、現在の政府・与党が、弊害ばかりが多い、金がかかると言って厳正に批判をした中選挙区制における現在までの経費を基礎にして算出をしておるわけです。私は、このことに矛盾があると思います。中選挙区制においては大変に金がかかるから、それを改正しなければならないと言いながら、中選挙区制においてかかった経費を基礎にして算定をしておる、一体これはどういうことであるのか。同時にまた、金権体質であると批判をしておる自民党案よりも、政府案がはるかに金額が多いということ、このこともまた一体どういう正当性があるのか、国民が納得のいく説明が非常に乏しいと思うのです。
 また、先ほども申し述べましたが、無所属議員は対象にならないということは、私は政党人でありますけれども、一体これが憲法で定める法のもとの平等という観点から問題がないのか。しかもそれは、国民の税金というものからこれを支出するということになりますと、私は、この問題は、法のもとに平等であるという民主主義の原点にかかわる問題ではないだろうか。このことについて、もっと国民が納得できる議論と説明というものが必要でなかろうか。
 しかも、本当にこの助成というものが必要であるのかどうかという、国民間の議論がほとんどなされておりません。政党人であるとか、あるいはジャーナリストの中においてはいろいろ議論をされておりますけれども、国民の中において、本当に我々はそういう政党助成というものをやって、政治というものをやらなければならないのかという議論が、もっともっと広範にこれはなされなければならない重大な問題ではないだろうか。
 それから、小選挙区二百五十、比例代表二百五十の並立制についてでありますが、各都道府県に配分される定数は小選挙区の二百五十だけであります、この案からいきますと。これは実質的には各都道府県の衆議院の定数の大幅削減に通じます。特に私のように、秋田県というような人口減少県の地方からしますと、国会議員が大幅に減るということは、これは地方分権が現実のものになっていない現状においては大変大きな政治課題である。
 地域の声を代表する議員の削減ということは、これは県民ひとしく、そういう方法はやってもらいたくない、こういう気持ちが地方にはたくさんあると思いますし、こういう方法をどこまでもやっていけば、今政府が言っておる地方重視というのとは逆に、人口が多い都市の政治家だけが多くなってしまう。地方を代表する政治家の数は少なくなって、その声が小さくなっていくということになっていかないか。
 したがって、政府案が比例代表の名簿を全国単位としておる点について、私は、そういう意味を補完する意味においても、ぜひともこの比例代表を都道府県単位に改めてもらいたい。そして、少なくとも衆議院議員の都道府県における定数の確保に努めるべきではないだろうか、そういう配慮をするべきではないだろうかというふうに考えるものでございます。
 同時にまた、現在参議院議員があるということは、地方区と全国区の選挙の現状を見ますと、衆議院議員は私たちが一人一人に対して投票をする、参議院は地方区と全国区があるというその選挙の方法の違いによって、国民は二院制というものを、参議院と衆議院というものの存在を認めていると思うのです。
 これが、選挙の方法が同じで、衆議院議員も全国区、参議院も全国区、そして地方区、そして小選挙区、これでは一体二院制の意義というものは、審議の過程は別にしまして、存在のあり方として、いわゆる参議院不必要論というものが出てくるおそれがある。そんなことでやるのであれば、衆議院一院制でいいじゃないかと。二院制の方向というものを考えた場合に、私は、参議院とは違う形においてやはり衆議院の選挙というものはやられなければならないのではないだろうか。
 そういう意味において、今回の改正案の中で、参議院の選挙のあり方は一体どうなるのか、これも議論がなされておりません。当然、これは国会の問題でございますから、衆議院のあり方と参議院のあり方を並行して議論し、これを国民に対して提示をしなければならない問題ではないだろうかというふうに考えるわけであります。
 次に、二票制の問題でありますけれども、参議院にはその二院制の意義の発揮のために、選挙区と全国比例代表の二票制の投票を行っておりますけれども、衆議院は候補者とその所属する政党が一体と見るべきである、私はそういう選挙が国民はわかりやすいと思うのです。なぜか。それは政策本位、政党中心、政権選択という衆議院の理念からも、一票制というものが私は正しいあり方では、正しいと言っていいかわかりませんが、一票制の方がいいのではないだろうか。候補者と所属政党を一目で確かめられる投票。
 しかし、無所属候補者に投じる者は政党に投票できないから、法のもとにおいては平等に反するという意見があります。これも私は一理があると思いますけれども、しかし、すべての有権者に一票は完全に平等に保障されておるわけでありますから、それを政党所属候補者に入れるか無所属候補者に入れるかというのは、これは有権者の全くの自由であります。
 もし一票制が法のもとの平等に反するという議論があるとすれば、これは三%をとらなければその中においてあれを認めないという、そういうことは一体どう関連を持っていくのか。ある人が算定をした数字によりますと、三%有効投票を持たなければ切り捨てるということになりますと、二百万票の票が死ぬという計算をしておる方もおるようでございますが、そういうことを考えますと、私はやはり二票制より一票制の方がいいのではないだろうかなというふうに考えるわけでございます。
 いろいろ申し上げましたけれども、政府は早期成立に向かって、場合によっては強行採決も辞さないというような言動が報道されておりますけれども、これは多分、細川総理が年内に成立をしなければ政治的責任をとるという、そういう言動に起因しておると思います。しかし、少なくとも政治改革というものは、今後、将来における我が国の民主主義の根幹と国の命運を決する重大な政治課題であります。一内閣の命運の消長を基準にして論ずべき問題ではない。これはあくまでも国民が納得をし、選挙民が理解をした上において、こういう問題はタイミングを見て発動をすべきであるというふうに考えますので、慎重に、しかも大胆に対応すべきであるというふうに私は考えるものであります。
 以上、終わります。

発言情報

speech_id: 112804573X01619931112_017

発言者: 楢岡貞龍

speaker_id: 3281

日付: 1993-11-12

院: 衆議院

会議名: 政治改革に関する調査特別委員会