高山憲之の発言 (税制改革に関する特別委員会公聴会)
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○高山公述人 高山でございます。
本日は、税制改革案につきまして意見を申し述べる機会に恵まれましたことを大変光栄に存じます。
今回の税制改革は、所得減税の恒久化を実現させる一方、消費税の定着に向けて第一歩を踏み出した点におきましてそれなりの評価に値する内容を有しております。取りまとめに当たった関係者の皆様方の労を歩といたしたく存じます。ただし、コメントすべき点も少なくございません。
以下、四つのポイントに絞って小生の所見を申し述べます。
第一点目。税負担は社会保険料負担とワンセットで考える必要がございます。
社会保険料は、強制徴収の対象となっており、税金と基本的に違いがございません。特に、年金保険料は拠出と給付の関係が一対一に対応しておらず、実質的にはそのときどきの高齢者の生活をサポートするための主要な財源として機能しております。民間保険の掛金とは明らかに性格が異なっております。負担する者にとって年金保険料の引き上げは増税と実質的に変わりがございません。今回、年金保険料をこの十一月分から引き上げることになりました。その引き上げに当たって税制改革との整合性を問題にする動きが国会内において全くなかったことはまことに遺憾でございます。
社会保険料をなぜ問題とするかと申し上げますと、社会保険料の方が消費税よりもはるかに逆進的であり、かつ経済成長の阻害度が大きいからでございます。また、今回の年金保険料引き上げにより、民間部門から政府部門へ平年度ベースで三兆円台の資金が移転いたします。恒久減税分の三兆五千億円はこの年金保険料の引き上げによってほとんど帳消しになってしまいます。今は景気回復を一層力強いものにすることが最も重要な経済政策のはずでございます。年金保険料の引き上げを考慮いたしますと、恒久減税分の規模に物足りなさを覚えざるを得ません。
さらに、税負担だけでなく、社会保険料も考慮する一方、年金給付や教育サービス、医療給付等の政府移転を含む再分配後所得を調べてみますと、最近では三十代が最も割を食う形になっております。厳しい生活を強いられているのは年齢別に見ると三十歳代でございます。出生率が低下し続け、早晩技術革新の担い手である若手の労働力が急激に減り始めると予想されている現在、中堅所得層だけでなく出産や子育てで苦労している者に対しても政策的に特別の配慮をするように切にお願い申し上げる次第でございます。
第二点目。消費税率五%の是非についてでございます。
日本の消費税には今のところ後ろめたさが何となくつきまとっております。いわば日陰者のような扱いになっており、正当な価値が認められておりません。しかし、消費税にはプラスの評価に値する点が幾つかございます。経済成長の阻害度が所得課税や社会保険料よりも小さいこと、ライフステージ別の負担が平準化し世代間負担が公平になること、税収の安定が期待できること等でございます。むしろ今後は消費税を税制の主要な柱の一つとして扱っていく必要がございます。
特に高齢化の進行に伴って発生する公的負担増につきましては、主たる財源を消費税に求めざるを得ません。今国会で成立いたしました年金改正法ではいわゆるネットスライド制が導入され、事実上費用負担原則が変わりました。高齢化に伴って発生する公的負担増は高齢者も現役と並んでひとしく引き受けていく、これが新しい負担原則でございます。日本共産党を除く全政党がこの新しい原則への切りかえを一致して支持なさいましたことは、まさに画期的でございます。税制におきましてもこの新原則をぜひとも御参照なさっていただきたく、切にお願いを申し上げる次第でございます。
今回、消費税の引き上げ幅は二%にとどめ、税率を五%にすることが提案されております。しかし、これでは所得課税偏重システムが依然として残ることになります。中堅所得層の減税も極めて不十分なものにならざるを得ません。年金保険料の引き上げで恒久減税分がほぼ相殺されてしまうことも先ほど申し上げたとおりでございます。恒久減税分を拡大することをさらに検討なさっていただけないでしょうか。
なお、五%の消費税ではこれから必要となる福祉財源を賄うことができません。将来の福祉ビジョンを早急に策定する一方、国際貢献等をも考慮に入れた新しい財政支出計画、財政ビジョンに基づいて消費税率の見直しを進めていただきたく存じます。
第三点。増税をする際には、あわせて財政のスリム化をさらに徹底して進めていただきたく存じます。
申し上げるまでもなく、増税に納得し、それを受け入れるためには二つの条件が必要でございます。一つは、財政支出が適正であること、もう一つは、負担が公平であることでございます。先般の消費税導入に際しましては財政支出の見直しか大規模に進められました。旧三公社の民営化を初めとする土光さんの臨調・行革路線に国民の広範な支持があり、行財政改革にそれなりの成果があったことは皆様御案内のとおりでございます。消費税率の引き上げに際しましても、財政のスリム化、財政支出における優先順位の変更を大胆に進めていただきたく存じます。これは国民すべての切なる願いであると存じます。
ところが、最近伝わってまいります話は、部分利益の代弁者が財政支出をふやすものばかりでございます。財政支出をスリムにする具体的な話はほとんど耳にいたしません。部分利益の代弁者ばかりが目立つ今日、社会全体の利益という観点から部分利益の相互調整を政治家の皆様に御期待申し上げることは無意味なことなのでしょうか。部分利益の代弁ばかりに熱中していますと財政支出の合理化は一向に進まないことになります。結果的に国民は公的な高負担を求められる一方、経済は停滞を余儀なくされます。やがて子供や孫の世代は親の世代より豊かになれなくなる、そういうおそれが強まってまいります。
現に、高福祉の先進国であるスウェーデンでは、経済が三年連続でマイナス成長となり、財政は事実上破綻いたしました。この七月には、スウェーデン最大の生命保険会社であるスカンディアが国の発行する国債の引き受けを拒否するという悲しむべき事態にまで至ってしまいました。
現在の政治システムでは、未来世代の利害が正しく反映されておりません。自分の子供や孫の世代の負担にぜひとも思いをはせていただき、財政支出のスリム化に積極的に取り組んでいただきたく存じます。
例えば、個別の財政支出を拡大なさる場合、原則として他の具体的な支出項目をどれだけスリムにするかということとワンセットにして御提案なさるという方法もございます。それを政治家の皆様の新しい行動原則としてお考えいただけないでしょうか。過去において意味のあった財政支出であっても、時代の流れの中でその存在意義を低下させたり喪失させたりしているものが少なくございません。財政支出の部分的スクラップ化は財政合理化のために避けて通れません。それは政治家の皆様の重要な責務の一つだと存じます。皆様方の間で財政支出合理化競争を御展開なさっていただけないでしょうか。
申し上げるまでもなく、財政支出の裏側には財政負担が必ずついて回ります。財政支出を拡大する際には、その財源を増税で賄うのか、経費の節減で賄うのかを同時に御議論なさっていただきたい。財政支出の拡大を痛みなしで約束することはもうやめていただきたいと存じます。
第四点目。公的負担の公平化をさらに進めていただきたく存じます。
まず、資産課税の強化でございます。
相続税につきましては、税負担の軽減に向けた大合唱ばかりが聞こえてまいりますが、相続税を減税いたしますと、減税分は所得課税や消費税を増税して穴埋めせざるを得ません。相続税を減税することは、所得税や消費税を増税することと結局同じです。現行の所得課税偏重システムを改めるためには相続税を増税することが不可欠です。また、地方住民税の負担を軽減するためには固定資産税を強化する必要がございます。さらに、資産課税の強化に当たっては、納税者番号を導入し、資産を適切に把握する必要がございます。
次に、所得課税についても見直すべき点が少なくございません。特に公的年金等控除の制度は問題が大きいと存じます。
高齢者の所得は年金だけに限られているわけではございません。それにもかかわらず公的年金給付だけを特別に取り上げ、課税上優遇いたしますと不公平が生じることになります。年金受給者の間では結果的に高額年金の受給者が税負担を軽減することができることになります。夫婦で四百五十万円の年金を毎年受給していても所得税は負担しないという例が現にございます。所得が四百五十万円であっても年金給付が七十万円で残りが年金以外の所得であるケースでは、当然のことながら所得税を負担することになります。一方、若い夫婦の場合、賃金収入が二百五十万円もあれば所得税を負担することになるはずです。
世代と世代の助け合いとおっしゃいながら、年金受給者を税制上ここまで優遇する必要があるでしょうか。老後生活に対する特別の公的支援に当たっては、一般的な人的控除や支出控除で対応し、公的年金等控除は廃止を含め、御検討をお願い申し上げる次第でございます。
次に、消費税の構造改革についても着手なさっていただきたく存じます。
消費税の税率を引き上げる際には、現行の消費税にまつわる不公平感を払拭しておくことがどうしても必要でございます。今回の改革において限界控除制度を廃止するなど幾つかの点で前進が図られましたが、見直しについての御努力を惜しまずにさらに続けていただきたく存じます。
特に、課税業者証明を最寄りの税務署で発行し店頭表示を義務づけること、業者番号つきのインボイスを導入すること、免税点を引き下げること、簡易課税制度をさらに見直すこと、住宅課税の合理化を進めること等につき御検討をお願い申し上げる次第です。
中長期的には、消費税率を二けた台に引き上げざるを得ないと存じます。社会保険料を過度に引き上げ、企業いじめをしたり現役のサラリーマンいじめをしたりすると、一部のヨーロッパ諸国の二の舞になります。現にフランスやスウェーデンでは、社会保険料の引き上げではなく、その引き下げが最も重要な政策課題の一つとなっております。税制改革におきましても、社会保険料問題をあわせて御議論いただきたい、この点を重ねてお願い申し上げます。
以上でございます。御清聴ありがとうございました。(拍手)