鈴木重勝の発言 (法務委員会)
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○鈴木参考人 早稲田の鈴木でございます。
話が細かくなると思いまして、レジュメというものをつくってまいりました。これはどうも、子供のときからの癖で、一夜漬けの癖が直らないものですから、ゆうべ仕上げたのでありますけれども、少々ミスプリなどあるかもしれませんが、ひとつ意のあるところをお察しください。
私が意見を述べるように言われましたのは、ここに書いておきましたように法曹界の綱紀粛正問題でありますけれども、そのうちの中でも弁護士、法曹三者の中でも弁護士の、しかも、倫理とか綱紀というよりも懲戒の問題に限定しましてお話ししたいと思っております。長いこと懲戒委員会をやっておりまして、その経験がございますので、私にとっては一番ここでは取り扱いやすい問題かと思っております。
まず、今回の続発した巨額事件でありますけれども、これは、ここに書いておきましたように、私どもの認識では、どうも今まで私どもが取り扱ってきました懲戒事件とはまるで違う、何といいますか、特殊例外的な事件だろうというふうに、いろいろ考えてみますとそうなると思います。もっとも、同じようなことはございましたけれども、こういうふうに頻発するようなのはみんな共通しておりまして、大体弁護士の先生たちが巨額な借金を抱えている、その借金を抱えるために大体ああいうことが出てきたわけでありますけれども、大体このレジュメの2の5に書いてございますように、大体、弁護士が巨額な事件を取り扱うのはこれは日常的でございまして、また、巨額な金額が手元に入ってくるのもまた日常的なんですね。しかるべき時期にしかるべき人に戻されていくというのが日常的でございますけれども、今度の場合には、その人たち、今度の人たちが巨額な借金を抱えていたばかりにそちらに使ってしまった、流用したというような経過でもってこういう事件が頻発したんだろうと思います。
そういう意味で、しかも、巨額な借金を抱えたのは、やはりバブルの時期の雲をつかむような取引の結果、株とか土地とかそれからゴルフの会員権とかというようなことから借金を抱え込んだのでありますので、これが恐らく、もうこれからはこういうような事件というのは出てこないだろう、あるいは二、三出てくるかもしれませんけれども、もうそれは終息に向かっているんじゃないかというふうに思います。ですから、これは特殊例外的、まあ特殊例外的だから大目に見よとかなんとかというんじゃございませんけれども、これはやはり今までの我々が日常取り上げてきた事件とは根本的に違うだろうというふうに思います。
それで、私がむしろ取り上げたいのは、日常的に続発しておる懲戒事件であります。これはもちろん個人的な問題、弁護士さんの個人的な人格の問題でございますけれども、私はやはり、弁護士会の方が責任を負わなければいけない。なぜかというと、綱紀とか懲戒に関しましては弁護士会が独占しているのですね。ですから、ほかの何物も、ほかの国家権力の何物にも介入させないということがございます。ですから、自分の責任で自分で処理しなければいけないところなんでありますけれども、私が長いこと懲戒に携わっておりまして、常々どうも不可解なことがございます。その不可解な手続の中で懲戒がなされているわけでありますけれども、それが今回のような、これからも続発するであろうような不祥事を生むのじゃないかというふうに考えております。
それを七不思議と、まあもっとも七つもございませんけれども、世間に言う七不思議というものですからあえて七つ数え上げてきたのでありますけれども、その重立ったものは、もともと弁護士会が責任を負うといいましても、弁護士会は機関で動いておりますから、その機関は綱紀委員会をおいてないはずなんですね。ところがその綱紀委員会は、もうどういうわけだかよくわからないのですけれども、できる限り行動させない、懲戒問題を大変受動的に消極的に扱うようにしむけられている、つくられているわけですね。
ところが、ここに書いておきましたように、弁護士法の七十条では、「綱紀委員会はこ「会員の綱紀保持に関する事項をつかさどる。」と書いてありまして、また、初めのころは各弁護士会もそれを高らかに宣言していたのが、綱紀委員会というのは会員の綱紀粛正を図るんだということを言ってあったわけでありますけれども、やがて、今このレジュメに書いてありますように、綱紀委員会にそんなことしたら調査権限の役割を与えるじゃないか、だからひいては綱紀委員会がその裁量で会員の懲戒事由捜しをすることも許さざるを得なくなるから、もう綱紀委員会というのはそんなものじゃだめなんだ、ともかく受動的な役割しか与えられていないんだということを認識しろということが繰り返され強調されてきたものですから、どういうわけか、懲戒手続を見ましても、なるたけ懲戒しないように懲戒しないようにできているのじゃなかろうかというふうに考えております。
そして、例えば極端な話は、たまたま綱紀委員会なり殊に懲戒委員会で審査しておりますときに新しい事由が発見できる、あるいは今審理している弁護士の別な事件、そっちの方がよっぽど重大なんでありますけれども、そちらが出てきた場合に、我々はそれを取り上げてはならないのですね。建前上は、それは必ず、そういう新しい事件が出てきますと弁護士会の会長に報告する、会長はどういうふうにするのか、その辺の後の手続はちょっとよくわからないのでありますけれども、しかしながら、私どもの経験では、どうも会長にも報告しないのがある。
だから例えば、ごく最近ですけれども、A、B、Cという事件があったのですね、ある弁護士さんが。Aという事件で今我々審査している。ところが、どう見てもBの方が重大なんですが、本人も、Aでここでとやかく言われるのは大変心外である、Bは言われてもやむを得ないところがある、懲戒されてもやむを得ないと言うのですけれども、Bは取り上げられないのですね。なぜかというと、懲戒を請求した本人と大変、何といいますか、共犯と言わないまでも、それがつくり出しているものですから、その本人が懲戒請求しない限りはこれを取り上げない仕組みになっておる。この辺がちょっと少し根本的に考え直した方がいいんじゃないかというふうに私は常々言っておりますけれども、今のところはそれができない仕組みなんですね。
建前としては、弁護士法は、懲戒請求人が申し立てたらばそれに基づいて綱紀委員会なり懲戒委員会なりが発動するというのですけれども、大体懲戒事由というのは、弁護士法違反あるいは弁護士会の信用とか品位を保持しなきゃいけないところを、それを侵害したから懲戒事件になるわけですね。こういうような懲戒事件は、ですから弁護士会の信用とか弁護士会の秩序維持のためなんですけれども、それを国民の請求だけに任せるということ自体がもうそろそろ考え直させてもいいんじゃないか。
ともかく初めは、建前は、国民一億に、弁護士の、悪いことしている場合にはこういうことを悪いことをしているから懲戒しろということでできたんでありますけれども、しかし、実際に事件の流れを見てみますと、必ずと言っていいほど被害者が懲戒請求をやるんですね。ところが、懲戒事件というのは被害者の救済じゃ決してありませんので、救済はもちろんしないわけでありますけれども、ともかく申立人、請求人というのは必ず被害者、だから、この辺の認識のずれも何とか調整しなければいかぬのじゃないか。つまり一億総告発者だという前提でもってできています。ところが、出てきているのは被害者だけである。この認識からしますと、被害者が請求しない場合に、実はもっともっと隠れたものがある。事実、そう思いますけれども、あるのではないかということがあります。
そこで、七不思議の一つとして、私は、弁護過誤の一一〇番がないというのはどういうことなのか。弁護士会は、大変苦労しまして、いろいろな活躍をされております。殊に、医療過誤だとか子供の人権だとかということについて一一〇番を設けておりますけれども、弁護過誤による一一〇番というのはないのです。これは一つは、私思いますには、同僚のそれを取り上げて、同僚をとやかく言うというのは大変苦痛なんだろうと思います。しかし、ほかのところの被害は救済するように一一〇番を設けているのに、なぜ弁護士の非行による救済が一一〇番を設けられないのかということは、やはり不思議だろうと思います。
そこで、その対策なのでありますけれども、対策としまして、私、今弁護士会なり、弁護士会から出ていきました法律相談所というのがありますけれども、その弁護士会のコーナーとか法律相談所の片隅に弁護過誤の苦情処理相談所というようなものを設けたらどうか。どうも弁護士さんも綱紀粛正とか綱紀保持というものにアレルギーを持っておりまして、綱紀と言うともう大変いきり立つところがございますので、綱紀の保持じゃないのです。
ともかく、現実も被害者だけの申し立てですから、被害者が苦情処理を申し立てる。場合によっては、私ども見ていますと、かなり依頼者の誤解もありますので、誤解のあるときは、それは誤解しているよということで説明してやる。ともかく気軽に被害をこうむった者が立ち寄って、そこで実情をお話しして、説明を聞いていく。聞いた方は、その苦情処理の相談所の方は、本当は内部に苦情処理委員会というのを設けた方がいいと思いますけれども、そこでもってしかるべく振り分ける。
例えば、これは紛議調停に回した方がいいだろう、あるいはちょっと当の弁護士を呼んで話し合いをやる。出てこないことがあると思いますけれども、今までの経験では、なかなか出てこない人もおります。そうなりますと、実はこういうような事件は懲戒請求に当たるよということを通知して、そうして出頭を促して、善処を促していくという形にしていけば、懲戒請求という大変儀式立った、形式張った手続によらなくても、何とかそこでもってかなりの処理ができるのじゃないか。その処理によりまして、被害をこうむっている者は、そのときに簡単に救済できますでしょうし、また、当の弁護士も懲戒を避けられるかもしれない。そして、あるいはその懲戒が重大になる前に手を打つことによって、それほど重大にならないかもしれない。
この懲戒の結果というのは、確かに弁護士自治が貫かれておりまして、これは大変厳しい、私ども見ていると、本当に厳し過ぎないかなと思うくらい厳しいのでありますけれども、懲戒に至るまでのところがどうも少し手ぬるいんじゃないかという感じがします。ですから、懲戒という結果を避けるためにも、またそういう重大な結果を避けるためにも、苦情処理相談所というものを設けまして、そこで救済を図りながら、弁護士の方の善処も要望していくという形は何とかとれないものだろうかというふうに思います。
それから最後に、私ども大変苦労しておりますのは、弁護士会の懲戒規定というのは必ず会則とか、独自に懲戒規定をみんな持っておりますけれども、これが見られないのです。国会図書館にもない。日弁連の図書館、資料室にもない。どこにあるのかといいますと、日弁連の調査室ですね。ここはもちろん日常執務をしておりますから、その執務を邪魔しながら、そこの戸棚から持ってくるということであります。何遍かは、大学から見に行きたいのだけれどもと言ったら、それならお前の方で二回ばかり指定してこい、そのうちのどれかをこっちが指定してやるからと言うので、そんなのじゃらちが明きませんので、私が自分で出かけていって、押しかけていって見たことがあります。
何も日本全国の懲戒規定を非公開、秘密にしなければならぬ理由は全くないのでありますから、ですから、どこに行っても見られるように、そしてなぜそういうことをするかといいますと、各弁護士会がいろいろ工夫しておりまして、大変独自の懲戒手続を持っております。だから、そういうものを比較検討しながら、現に各弁護士会の懲戒委員会もほかの会がどうなっているかということを知ることは大変有用だろうというふうに思いますし、私どものように関心を持っている者にとりましても、そういう手続規定についてはいつでも見られるようにしていただきたいというふうにこの機会にお願いしておきます。
ちょうど十五分でございますので、終わります。(拍手)