河口博行の発言 (厚生委員会)

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○参考人(河口博行君) 労働組合連合の河口でございます。きょうはお招きいただきましてありがとうございます。
 きょうお配りいただきました改正する法律案の参考資料を拝見させていただきまして、最初に書いてあります「年金制度改正に至る背景と経緯」、非常に感慨深く読ませていただきました。簡潔にして意を徹した名文だと思います。前回の八九年年金改正に当たりまして、八七年十一月に連合が発足して年金審議会に対応しましたが、そのときの改正案に対しましては、「背景と経緯」に書いてありますように、連合は定年引退と六十五歳支給の連結がないということで当時政府の審議会について労働委員を退席、俗に言えばボイコットいたしました。八九年の年金改正にも反対を行いました。異例な行動をとったわけでございますが、結果、ここに書いてあるとおり、前回の改正では衆議院で与野党一致で今回の改正に先送りされて今日に至っているわけであります。
 さらにさかのぼれば、八五年の改正以来十年ぶりの結論、決着を出さなきゃならない場面、さらにこれから三十年先を見込んでおるわけですから、ある意味では日本の進路にかかわる重要な一つのテーマだと思って臨んでおります。その意味で、この臨時国会で与野党一致、さらに国民も納得した内容でもって決着をつけることが肝要と、このように考えて臨んでまいりました。
 そこで、改革の視点について三つほど、私どもが感じておりますことを申し上げておきたいと思います。
 今回の年金改正の場合は、日本の今日までの雇用制度と社会保障制度をリストラクチャリングしていく中身であるというふうに受けとめております。いわば人生六十年、労働力過剰を背景にしてつくり上げられた雇用制度を、労働力不足時代に対応して、しかも現実は人生八十年になっておるわけでございますから、人生八十年に対応したシステムにリストラクチャリングしていくという中身であるというふうに受けとめております。しかしながら、現実は人生六十年を前提にした雇用制度になっておりますから、そこになかなか難しいところがありますが、今からおおむね二十年ぐらいかけてそういうふうに移行をしていかなきゃならないスタートに当たっているというふうに考えております。
 二番目に、国民全体をとってもそうでありますが、とりわけサラリーマンにとりまして年金改正は、実感で申せば五年に一度の生涯所得の配分のルールを改定するときでありますから、あえて言えば最も重要なテーマであると思っております。ピーク時に向けて、二〇二五年に向けての基本論議でございますが、同時に、きょうあすの問題でありますし、ある面ではサラリーマンにとって生涯の問題でもあるし、家族の問題を含んだ問題として取り組んでおります。特に今回の改正の場合は、いわば来月の給料袋からサラリーマンにとって一%のチェックオフ、会社の一%の負担増と、こういうことになっていくわけでございますから、極めて現実的な問題であると同時に、二〇二五年、三十年先まで見通して、しかも法律で方向を決めていくわけでございますから、極めて重大な課題として考えております。
 三番目のスタンスといいますか、気持ちで、特にこの点は申し上げたくてきょう資料も持参したわけでございますが、政府は鳥の目のように上から改革の視点を見るわけでございますが、私どもサラリーマンの立場で申し上げれば、地についておりまして虫の目で全体を見るわけでございますから、上から見たプログラムと下から見た声とがインターフェースしたときに改革が円滑に進む、このように考えておりますが、少し資料を使って、下からのサラリーマンの声ということでお聞き取りいただければと思います。
 資料を使わせてもらいますが、二つ資料を持ってまいりました。いずれも連合の作成した資料であります。
 資料一ページのところ、これは大変恐縮でございますが、現役の高齢化社会に向けての意識でございます。現役の特に中高年は、率直に申し上げれば、高齢化社会に対してOBよりもはるかに暗い見方をしております。将来に対しての不安が非常に強い。同時に、高齢者の生活水準の格差が広がるというふうに見ているんです。これが現役の見方であります。
 それから、政府の資料にもついておりますが、有識者調査で、六十代あるいは七十代も大いに働きたいという意識が載っております。一般的に意識調査をいたしましても、同様な結果が出ています。私どもがやっても出ます。しかしながら、実態の意識と建前の意識は違うというふうに御承知いただきたいわけであります。
 ここでいったら資料二ページのところに詳細は載せておりますが、実態で申し上げれば、年金が減額されない範囲であれば働くという人と、もう六十で結構、疲れだというのが四割ということで、その二つで大部分でありまして、フルタイムで働いてもいいという方は現在でいえば二七%程度しかおられません。潜在的な意識のある方を加えても三〇%程度であります。したがいまして、建前というと失礼ですが、こうありたいという気持ちと実態の意識には相当の乖離があるという上に立って進めなきゃならない、このように考えております。あと、資料をつけておりますが、老後格差がかなり実態としてある、また将来も広がるというような面も持っているということであります。
 それから、資料の二として二つの資料がございますが、連合として、特にサラリーマンとしては負担を、もちろん今回は年金改正でありますから年金のことを最も重視して考えておりますが、年金だけではなく税そして年金あるいはその他の社会保険等を含めたトータルの負担、あえて言えば国民負担率ということになりますが、おおむね負担率五〇%を目標にしながら、税、年金及びその他の保険をどのように負担していくかについて納得していくかということの視点で取り組んでおります。
 ちなみに、年金改正と消費税が今回論議されておりますが、政府原案どおり上がっていくということになりますれば、ここの資料に載せておりますように、年収五百万の方であれば九四年度レベルで消費税一・七、それから所得税・住民税三・一、社会保険料九・〇ということで二二・八、九三年で一四・二ですが、減税が先行いたしますからことしと来年は下がりますが、消費税が上がる九七年、あるいは年金で申せば、保険料が一七・三五になる年は五百万の人で一五・七、九八年は一六・一と。さらに、社会保障制度審議会が提案されているような介護保険などというものが出てまいればこの上に加算をするという数字になっていくというように、トータルな負担率として見ております。
 あと、七百万、八百万と一千万の事例を挙げております。また数字的根拠も資料に載せておりますが、このように相当の負担増が来月から上がっていき、この五年間でも相当上がっていく。さらに三十年先、ピーク時に向けて保険料は三〇%というように上がっていくということでございますから、そういうことを決意して臨んでいっているということでございます。
 特に、前回の改正以来、連合としましては年金審議会に、この現在の保険料一四・五%をおおむね三〇%、倍にしていくということについて、厳しい負担であるが承知をして臨んでいく、同時に、賞与についてもチェックオフされることについて決意を固めて臨んでまいりましたが、特にこの国会の前の段階では、いわゆる六十五歳への移行のプロセスと、そして先ほど村上参考人から御指摘の基礎年金につきましては、連合は当初三分の二というふうに申し上げておりましたが、この国会の段階では二分の一ということを強く求めました。
 なぜ強く求めたかにつきましては、基礎年金の持つ意味も御承知のとおりでございますが、あえて申し上げれば、高い負担を来月から三十年先まできっちりと上げていくということを抱えてやっていくわけでございまして、企業サイドもそれを当然負担していく。したがいまして、政府としてどのように腹を固められますかという気持ちもございます。
 同時に、OBの方につきましてもネットスライドになったということを先ほど詳細に村上参考人からお話しのように、OBも一定の我慢をしておるということでございますから、政府の決意と目標というものとが明示されて、また将来への格差是正の展望も方向づけていくことが極めて重要と、このように考えております。
 その面で、現役とOBとそして政府の三者の合意といいますか、決意があってこれだけの負担を乗り切っていけるものと思っておりますので、とりわけ政府及び議会が国民に決意のほどを明示いただきたいということがこの改正に臨んでの最も重要な点の一つであります。
 もう一つは、移行のプロセスに当たってより円滑にするためにということで、既に衆議院で修正をされました諸点についてお願いを申し上げました。
 最後に一点、残っておると言えば失礼でございますが、働きたくても働けない人を法律の上であるいはまた議会の意思として何らかの形で明示いただきたいと思っております。現在の実感を申し上げれば、法にかない、現にかない、情にかないということでなければならないと思いますが、いずれにしても、サラリーマンなり国民の立場から見れば、六十歳支給が六十五に変わるという、現実はそうでありますから、そこへ法律としての情が必要であると思っております。
 とりわけ、最近私どものところに資料が集まってまいりますのは介護にかかわる点でございます。特に今、介護休業もかなり普及をしてきておりますが、その中で出てくる一つの事例を紹介いたしますと、奥さんが交通事故でけがをされて寝込まれた状態で、しかも完全な介護を要する状況になったとき、今公務員は三カ月、民間で協定されたのは一年の休業ができますが、無給ですが、その中で結局収入が閉ざされるために職場に帰ってくるという状況になっております。したがいまして、六十代の前半層で、障害者あるいは四十五年の保険を掛けた方だけではなく、そういった方がいろいろな形で社会の変化の中から出てくるというふうに思っております。
 そういった面で、いわば厚生大臣が認められる内容のものについては六十歳から部分年金を支給するなどというようなことをできれば法律の中に盛り込んでいただきたいと思っておりますが、できなくとも国会として意思をそこに明確に出していただきたいと思っております。
 総理も人に優しいということを所信の第一としておられますだけに、そこのところを法律の中に法と理とそして情というものを最後に入れていただいて、高い負担と国民の相互扶助に向かってもらいたい。また、労使の間におきましてもこれを機会に、六十代の前半層はもちろんでございますが、高齢者が積極的に就業していくように労働協約を変え、設備を変え、システムを変えていくことに全力を挙げていくということも申し添えまして、この国会で国民が納得する内容で決着をつけていただきますことを心からお願い申し上げたいと思います。
 以上です。

発言情報

speech_id: 113114237X00619941101_005

発言者: 河口博行

speaker_id: 17812

日付: 1994-11-01

院: 参議院

会議名: 厚生委員会