前田勲男の発言 (法務委員会)

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○前田国務大臣 委員長を初め委員の皆様には、平素から法務行政の運営につき格別の御尽力をいただき、厚く御礼申し上げます。今後とも皆様の格別の御理解と御協力を賜りまして、法務行政の各分野にわたって全力を尽くしてまいる所存でございます。
 最初に、今般の兵庫県南部地震により亡くなられた方々とその御遺族に対し深く哀悼の意を表し、また、負傷された方々や不自由な生活を余儀なくされている方々に対し、心からお見舞いを申し上げます。被災地が広範囲にわたり、復興に向けての課題が山積している中で、被災者の方々の不安を解消し、復興の促進を図るため、法務省といたしましても、関係各方面と緊密な連絡をとりながら、被災地における法秩序を維持するとともに、被災者の権利を保全するため、全力で取り組んでいるところでございます。
 特に、昨日六日には、借地・借家に関する権利の保全と調整を図ることを目的とした罹災都市借地借家臨時処理法を適用する政令が施行されましたので、今後各種の広報活動、相談業務に積極的に取り組み、被災者の方々に同法の内容はもとよりその他の登記手続等についても正しく理解していただくよう、迅速的確に対応してまいりたいと考えております。
 それでは、法務行政に関する所信の一端を述べさせていただきます。
 内外の諸情勢が極めて厳しい中、戦後五十周年という節目の年を迎えましたが、私は、現内閣が掲げる「安心して暮らせるやさしい社会」等の目標を実現していくに当たっては、法秩序の維持と国民の権利の保全を使命とする法務行政の役割がますます重要になるものと認識をいたしております。
 第一に、国民が安心して暮らせる社会を確立するには、何と申しましても、各種犯罪に厳正に対処し、治安の確保、法秩序の維持に万全を尽くさなくてはなりません。
 最近の犯罪情勢は、全般的にはおおむね平穏に推移しているものの、けん銃を用いるなどの殺人、強盗等の凶悪事犯の続発、薬物事犯、公務員による♯職事犯、各種財政経済事犯等の相次ぐ摘発、来日外国人による犯罪の急増等の現象が認められ、今後の犯罪動向には楽観を許さないものがあります。私は、このような犯罪情勢を的確に把握しつつ、変動する時代の要請にこたえ得る検察態勢の一層の充実を図り、安全で公正な社会の確保に努めてまいりたいと考えております。また、テロ・ゲリラ活動を標榜する過激派集団、企業、マスコミ等に対し不法事犯を敢行する右翼諸団体につきましても、なお警戒を要するものと認識をしております。
 他方、各種犯罪に対処する上での基本法である現行刑法は、片仮名まじりの漢文調の文体で難解な用字用語も少なくないため、かねてから一般国民が内容を十分に理解することが困難であるとの指摘がなされております。そこで、第百二十回国会における衆参両院の法務委員会の附帯決議を踏まえ、刑法の表記をできる限り平易化し、あわせて違憲判決を受けている尊属殺規定等を削除する作業に取り組んでいるところでありますが、これらに関する審議を進めている法制審議会の答申が得られましたら、これに基づき刑法改正法律案を作成して今国会に提出いたしたいと考えております。
 第二に、安全で平穏な社会を確保するには、犯罪者の矯正処遇と更生保護に万全を尽くし、犯罪者の社会復帰の援助にも努めなくてはなりません。
 犯罪者の矯正処遇に当たっては、改善更生に多大の困難を伴う暴力団関係者、薬物事犯者、累犯者等が依然として高い比率を占めている一方、外国人被収容者が急増するなど、困難な諸問題に直面していますが、医療の充実、食事の改善等にも配慮しつつ、引き続き被収容者の特性、犯罪傾向等に応じた適切な処遇に努めてまいります。また、近時の非行少年の特質、多様な問題性等にかんがみ、その立ち直りを図るため、従前にも増してきめ細かい配慮のもとに適正な処遇、鑑別に努力してまいりたいと考えております。
 他方、犯罪者や非行少年の再犯を防止しつつその社会復帰を図ることが刑事政策上極めて重要な意義を持つことにかんがみ、今後とも保護観察の効果的な実施に努めますとともに、平素から献身的な御協力をいただいている民間の個人や団体との連携を一層密にして、更生保護の実を上げてまいりたいと考えております。その際、特に更生保護事業につきましては、その充実強化のための基盤整備を図る必要がありますので、第百二十九回国会における衆参両院の法務委員会での附帯決議の趣旨を踏まえ、更生保護事業法案とその関連法案を今国会に提出することといたしたいと考えております。
 なお、監獄法を全面改正する刑事施設法案は、行刑制度の近代化、法律化、国際化を図る上で不可欠の法案でありますので、引き続き同法案の再提出に向け、種々の観点から検討を加えてまいりたいと考えております。
 第三に、自由で活力のある経済社会を確立するためには、権利の保全にかかわる民事行政事務を充実させ、社会経済活動と価値観が多様化する時代の要請を踏まえた民事法改正等にも取り組んでいかなくてはなりません。
 民事行政事務につきましては、国民の利便に資するように事務の効率化と窓口サービスの一層の向上に努めてまいりたいと考えております。他方、民事法改正に関しましては、法制審議会で調査、審議中の民法の身分法に関する事項が選択的夫婦別氏制、裁判上の離婚原因、嫡出でない子の法定相続分等、国民生活に深くかかわるものでありますので、改正要綱試案を公表して広く国民の意見をお聞きしながら、慎重に検討を進めております。また、民事紛争の解決に当たり民事訴訟手続を利用しやすいものとすべく、民事訴訟法の全面改正に向けた検討作業を鋭意続けているところであります。
 また、訟務事件の処理につきましても、訴訟の結果いかんが国の政治、行政、国民生活等に重大な影響を及ぼすものも少なくありませんので、訟務事務処理体制の一層の充実強化を図り、適正、円滑な事件処理に努めてまいりたいと考えております。
 なお、地方裁判所における民事訴訟事件等の適正、迅速な処理を図るなどのため、今国会に裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を提出いたすこととなっているところであります。
 第四に、すべての人々が人権を尊重され、差別を受けない社会を構築するため、人権についての正しい認識を広めていかなくてはなりません。
 そこで、人権擁護行政におきましては、人権尊重の思想の普及高揚のため各種広報活動の充実に努めますとともに、人権相談や人権侵犯事件の調査、処理を通じて関係者の人権尊重の精神を啓発し、被害者の救済にも全力を尽くしてまいりたいと考えております。特に、大きな社会問題となっているいじめ等の子どもの人権問題を解決するため、子どもの人権専門委員の制度を積極的に展開させるとともに、外国人の人権問題、部落差別を初めとする各種の差別問題の解決を目指し、関係省庁とも緊密な連絡をとりながら、粘り強い啓発活動を一層活発に行ってまいりたいと考えております。
 また、法律扶助制度は、国民の裁判を受ける権利を実質的に保障する上で極めて重要なものでありますから、その一層の充実に努めながら、昨年発足いたしました法律扶助制度研究会において海外調査を含めた研究を進め、我が国にふさわしい制度のあり方について抜本的な検討に取り組んでまいりたいと考えております。
 第五に、国際化の著しい進展により、出入国管理行政が国民生活とのかかわり合いを深め、ますます重要なものとなっております。
 そこで、我が国国民、外国人を問わず円滑に出入国できるように審査業務を適正、迅速に遂行する一方、不法入国者、不法就労者等には厳正に対処する効果的な対策を推進するべく、引き続き要員の確保及び大村入国管理センター等の施設の整備に努め、業務体制の充実を図るとともに、職員の研修体制の強化に取り組み、職員各自の能力の向上に努めてまいりたいと考えております。
 なお、出入国管理行政に関するさまざまな報道がなされておりますが、いやしくも国民の信頼を損なうことがあってはならないのでありますから、国民にも外国人にも出入国管理行政が正しく理解されるべく、職員が一丸となって一層の綱紀の保持に努めるよう指導を尽くす所存であります。
 以上、法務行政の重要施策につきまして所信の一端を申し述べましたが、今国会に提出し、御審議をお願いすることを予定しております提出法案の内容につきましては、今後逐次御説明をいたしますので、何とぞ十分な御審議をいただき、速やかに成立に至りますようお願い申し上げます。
 委員長を初め委員の皆様の一層の御協力、御指導、御支援を得まして、法務大臣としての重責を果たしてまいりたいと存じておりますので、どうかよろしくお願い申し上げます。(拍手)

発言情報

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発言者: 前田勲男

speaker_id: 8872

日付: 1995-02-07

院: 衆議院

会議名: 法務委員会