保坂三蔵の発言 (宗教法人等に関する特別委員会)
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○保坂三蔵君 オウム真理教事件は、二十四名の死亡者と三千九百四十名の犠牲者を出すという前代未聞の大事件となりました。地下鉄サリン事件などで私たち地元の東京都民は無差別の殺りくに震えおののいたのが実情ですが、一方、オウム真理教の宗教法人認証を東京都知事が行ったという複雑な心境にもありました。わずかな間に熊本県、山梨県、神奈川県を初めとして被害は拡大していき、全国の自治体から約四百件の意見書や陳情書として東京都知事あてにオウム真理教の解散を求める動きがほうふつとして沸いておりました。特に東京都出身の私、議員といたしましては非常に責任を痛感して今日まで参ったのが実情であります。
この中で、犯人検挙による教団撲滅への努力と犠牲者の対策、再犯防止策の模索へと、焦燥感募る中で関係者の努力が今日まで続いております。幸い、仮谷さんの拉致殺人事件を契機に、警察庁の一挙の捜査で事件拡大を防止し、裁判所による解散命令が出されたことにいささかほっとしているところでありますが、即時抗告などの教団の抵抗もあり、深谷公安委員長が答弁いたしましたように、捜査はまだ六合目。サリンの何倍も強力なVXガス四十リッターが行方不明であると言われたり、あるいは指名手配十五名の検挙もいまだであります。大阪APECは必死にクリアできましたが、何かが起きなければよいがと祈る思いであります。
オウム事件は、関係の薄い地域におきましては、かつて私たちが湾岸戦争をテレビで劇映画ふうに見ていたごとくと似ているような気もいたします。だが、オウム事件は漫画チックだとか劇画風という希有の猟奇事件では全くありません。治安から宗教のあり方まで社会全般に警告をし、いつフラッシュバックで事件が再発するかわからない予兆の大事件ともとれるのであります。私たちはこれを生きた教材にして、宗教界の協力のもとに何としても再発を防止しなければ、犠牲になられた方々も浮かばれないことでありましょう。
その意味で、いかに現行の宗教法人法が無力であり、いや、罪つくりの面さえあったかを、実際現場で体験したささやかな立場から検証を試みまして、今回の法改正による正しい宗教の発展とカルト事件の防止が重要かを順次お尋ねしてまいりたいと思います。
そこで、オウム真理教の事件、何回も当委員会でも、あるいはまた国会全般に出てまいりましたし、テレビ等でも報道されているところでありますが、当時、私は認証を行いました東京都の現場の自民党の幹事長をしておりまして、非常に苦慮した立場にございました。
そこで、順次お話をしてまいりますが、実は、この十月三十一日にアメリカの上院の政治活動委員会・大量破壊兵器の世界的拡散に関する公聴会が開かれまして、手元に資料が届いたところであります。これの中で、要約をいたしますが、特にアメリカの議会におきましてオウム真理教の事件が非常に明細にわたりまして取り上げられております。
この中を一部御紹介いたしますと、
同法の施行以来、約二十万の宗教団体が認証を受けており、単純計算ではその信者数の合計人数は日本の人口を七千万人も上回っている。これらの宗教団体の多くは法律を遵守し、また尊敬を得ているが、免税の「営利」活動を行っている組織や自分たちの政党を支配している組織があるにもかかわらず、政府はこれらのいずれの組織の活動も監督できないでいるのが実情だと、こういうふうに公聴会では言われております。
また、オウムに関しましては、「宗教法人の認証を得ることを重要な優先課題にしていたことがわかっている。そのためにオウムはこ東京都や文化庁でのピケを初め「攻撃的なロビー活動を展開していた。」が、「こうした活動は「スキャンダラス」なものであり、他の宗教組織の性格から完全に外れたものであった」と、カルト宗教としての特徴を挙げておりまして、「この奇妙な日本の法律がオウム教団発展の重要要因となったとする意見」が多くあった、こう言っております。
そして最後に、オウム教団が「宗教法人として保護されるようになったことで、教団は政府の干渉を受けないという自信を強め、坂本弁護士の殺害を決断した」と見られる。「また、殺害後も政府の反応がなかったことが、日本国内で敵に対して露骨により恐ろしい攻撃をしかける大胆さを教団に与えてしまったと指摘する声もあった。」と、こうなっております。
そしてなお、資料といたしまして、オウム教団が認証を受ける前と認証を受けた後どう変化したかという数字が追ってありますが、例えば純資産で見ますと、平成元年オウム教団が持っていた資産は四億三千万である、そして七年後、地下鉄サリン事件発生のことしては一千億円になっていると言っております。四億三千万から一千億円に。そして信者の数も、昭和五十九年二十人から、ことし平成七年全世界で五万人になっていると言われております。日本では約一万と言われております。事務所は、昭和五十九年日本にたった一カ所であったものが、ことし平成七年世界六カ国で三十カ所、日本におきましては全国で四十カ所、東京都内で十カ所、アジトに至っては数え切れないほどと、こういうデータさえありまして、いかに日本の宗教法人法、また憲法二十条の歯どめというものが効き過ぎているかということの指摘をアメリカの議会が行っていることは注目に値することではないかと思っております。
ここでオウムのことに関しまして戻りますが、御案内のとおりオウムの麻原教祖でありますが、昭和五十七年、今から十二年前に薬事法違反で逮捕されておりますが、その二年後に教団を渋谷区の桜丘、東京都内で布教を開始いたしました。この後に阿台宗で宗教法人のノウハウを勉強いたしまして、六十一年、東京都に対しまして宗教法人を設立したいという相談に来ておりますが、私たちの知る限りにおきましては、このときは不動産登記がなされた物件すらないというような貧相な状態でありました。
そして、翌年六十二年二月、教団はオウム神仙の会を設立し、八月にオウム真理教に名称を変更いたしまして、その都度何回か東京都に相談に来ております。
で、翌年六十三年四月でありますが、事件が起きる前の年、もう既に教団に対しての苦情が多く出ておりました。私たちはそれを察知しておりましたが、八月に教団は静岡県の富士宮市に富士山総本部を建設しております。そして十月に教団は最終的に形式を整えまして、本拠地を世田谷区赤堤に移して東京都に設立の相談に来たのが表に出た行動の最初であります。
このとき麻原教祖は、既に教団の内部で認証が取れそうだという話をしたものでございますから、信者の親から東京都に対しまして二十数件に及ぶ認証を与えないでほしいという苦情や反論が既に寄せられておりまして、警視庁におきましてもいろんな事件の苦情が寄せられておりました。それがもう認証の一年前であります。
年が明けまして六十四年に、東京都は、申し入れは非公式でありましたけれども、現地調査に入りました。宗教団体としての実態把握、それから主に経理関係についての調査、それから江東区の亀戸に移りました三月以降は宗教法人活動の実態調査、出家制度についての質問、ありとあらゆることをやってまいりましたが、三月になりましてから教団は、東京都に対しまして認証申請書を出してきたわけであります。
ここで、これを受理いたしますと三カ月以内に認証を与えなくてはいけないという法的な要件が整ってしまうものでございますから、私たちといたしましてはこれは非公式でありましたけれども、議会筋から東京都に預かり処分にさせることにいたしました。預かり処分にいたしましたところ、教団はデモをかけてまいりまして、二百数十名の信者を東京都庁内でデモ行進させたり、あるいはまた、行政部や知事公舎、副知事、行政部長、指導課長などの事務室に認証を求める電話を数百本、正確には二百八十一本人れてまいりましたし、自宅には数え切れないほどの電話が入りまして圧力をかけてまいりました。そして、東京都はやむを得ず五月に申請を受理したわけであります。
このときに、ここのところが重要なんでありますが、既に教義にも問題が出ておりました。それは、教義は文書としては整っておりました。これは当然十四条一項にのっとるように指導してきた嫌いも各自治体にございましたので、そういう条件は整うわけでありますが、問題は、例えば麻原教祖の説法会だとかあるいは出版物などで教義そのものを見ておりますと、一番問題になったのは出家制度でありました。未成年の子供たちを拉致して親に会わせないとか、それから血のイニシエーションなどもやっておることがわかっておりましたし、またいろんな事件が入っておりました。それから、実は北川石松代議士が大阪からわざわざ都知事を訪ねてくれまして、この教団を認証させると大変だよと、こういうお話もございまして、これは大変に私たち参考になりました。
それから、私たちといたしましては申請書を受理いたしましてからただ惰眠をむさぼっていたわけではありません。信者の家族から入信に伴うトラブルについての苦情が多数ありましたので、この事実関係をまず調べておりました。
それから、申請書につきましては書類上の不備がないことが確認されておりましたけれども、今申し上げた教義の問題、それから都内の警察署及び教団の主要支部が存在する八道府県まで出かけてまいりまして、県庁及び所轄警察署で苦情などの事実関係、違法行為の存否などを全部調べてまいりました。いかに機関委任事務といいながらも、常時は四名の宗教法人係しかいないんでございますが、全力でこれを阻止しようということで、法律的な根拠がない聞き込みの調査までやってまいりました。こういうことをやってきたわけでございますけれども、現実には条件が整い、そしてだんだん我々は追い込まれていきました。
しかも、六月一日になりまして教団が不作為の違法確認訴訟を提起いたしました。これが問題であります。それで、私たちは文化庁や弁護団とも相談をしたのでございますが、結局、今の法律では形式的な確認の不作為ということで負けるだろうと、裁判は。しかも、それ以上に突っぱねてやりますと、窓口の職員まで損害賠償の請求をするぞとおどしをかけられておりました。
私たちは、ほかの事例では、言ってみればおかしい教団を認証しないような努力をしてきた効果も出ておりました。例えば、統一教会のダミーであります天地正教という教団があります。ここはもう最初から霊視商法などでおかしいことはわかっておりましたので、東京都は認証を与えないように努力した。それで結局、向こうは急ぐものでございますから、北海道に行きまして簡単に認証を取ってしまった。こういうような実例が現にございます。
私たちといたしましては、とにかくやれることは全力でやろうとやってきたわけでございますが、御案内のとおり、青島知事が解散請求をほのめかしただけで、知事公舎に当時の自民党の幹事長の田中晃三という都議会議員の名前をもって爆弾を仕掛けた郵便物を届けて、結局ああいう、まかり間違えば人命が陥れられるような事件さえも後々起きていることでもおわかりのとおり、どういうプレッシャーがかかってきたか。そして、どうしてこれを防ぎ得なかったか、認証を出さざるを得なかったか。これはまことに厳しい現下の状況でありまして、このことをもってすら法の不備ということがいかに重要なテーマになっているかということがおわかりをいただけるわけでございます。
そこで、いろいろオウム真理教のことについて述べてまいりましたけれども、文部大臣、文部大臣も東京都選出の国会議員の先生として、今まで我々は、文部大臣に御就任いただく前からこういう苦衷を述べて、そしてカルト教団の社会に及ぼす悪影響について御相談してまいったところでございますが、このオウム真理教の事件に端を発する今回の法律改正に至る大臣の御心境をまず冒頭で御開陳いただきたいと思います。