岡本健治の発言 (宗教法人等に関する特別委員会)

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○参考人(岡本健治君) 神社本庁の総長といたしまして、今回の宗教法人法改正に伴います私どもの考え方、姿勢を御理解いただくために、まず現行の宗教法人法に対して私どもが考えております姿勢を、今までとってまいりました姿勢を御説明申し上げたいと思います。
 結論から申しますと、神社本庁は現行の宗教法人法につきましては基本的に反対であります。理由は、現在の宗教法人法が日本の宗教の実情につきましてしっかりと押さえないで、そして制定されたと、このように判断をいたしておりますので、この宗教法人法が制定されました昭和二十六年から、その制定当時から私どもとしては必ずしも好ましい法律ではないと、こういうように考えてまいりました。
 したがいまして、昭和三十二年に文部大臣から宗教法人法の改正についての諮問がありました場合も、神社本庁といたしましては、その点を抜本的な改正という点に立ちまして、そして全面的な改正についての意見を述べたわけでございます。そういう形で現在に至っております。
 現行の宗教法人法についてどこに私どもが不満を感じているか。幾つか挙げなくてはいけませんが、簡単に申しますと、例えば、たしか第二条におきまして宗教団体が備えるべき要件は次の三つであるという形で宗教法人法では示しております。
 その第一が教義を広めることであります。御存じかとも思いますが、私ども神社の信仰につきまして、教義というものは持っておりません。したがって、教義を言葉にし文字にした教典というものを持っていない。まずその点で、厳密に考えますならば神社が法人格を取得することは困難であります。早く言いますと、宗教法人になるためにはこれだけの要件が必要なんだ、おまえさんのところはその要件を満たしていないから宗教法人の法人格を取得することはだめだと。もしどうしても宗教法人の法人格を取得したいと思えば、おまえさんの方の信仰の内容を変えて出直してこいと、極端に言えばそういう事態が生じ得る問題を含んでおります。
 神社本庁ではそういう言葉を使いませんけれども、私の言葉をもって表現すれば、これは日本の宗教、殊に神社の実情を考えないでつくられた法律、そして宗教法人格を取得しようと思えば信仰の内容を変えなくちゃいけない、宗教信仰に対する迫害である、そういう表現さえしたくなります。
 さらに、神社というものは古い歴史を持っております。二百年、三百年、五百年、千年という古い歴史を持った神社が無数にあるわけでありますが、その神社を解散させますためには、これは神社によってそれぞれ数は違いますけれども、わずか数人の役員が解散を決議すれば神社は即日消滅をいたします。若干の手続、公告等の手続はありますが、基本的には、仮に千年の歴史を持った神社であっても五、六人の役員によって決議されれば消滅する。それに対して宗教法人法の中の手続は、長い歴史を持った、またそれぞれの地域において生活の精神的な中核になってきた、そういう役目を果たしてきた歴史的な事実というものを全く考えないで制定されたと、こういう判断をせざるを得ません。
 これは無理もないことなのでありまして、御存じのとおり、宗教法人法そのものが、昭和二十年にポツダム勅令によりまして急遽制定されました宗教法人令を土台といたしております。そして、まだ占領下におきまして昭和二十六年に法人法を制定されたと、こういう経過を持っておりますから、占領軍が考えたその考え方がどこまで影響をしておるかは、詳しい事実ははっきりいたしませんけれども、そういうような占領軍の考え方そのものが影響をしておるということも考えられます。したがいまして、無理のないことではありますけれども、私どもといたしましては、制定以来常に現行の宗教法人法について反対をしてまいりました。
 ただ、法律であります。基本的に反対しながら、その法律によって神社は法人格を得ております。したがって、その法律を守ることについては、これは私ども全国の八万の神社とともに、それに違反することのないように全力を挙げてまいりました。おかげさまで、現在まで神職を中心にしまして、その神社を取り巻く役員、総代、氏子、崇敬者などが力を合わせて、そしてその法人法に違反をしないようにそれぞれ努力をしてきたわけであります。数の多いことでございますし、法律というのは私ども余り親しみがありませんので、やはり違反をするというようなことも間々あったかもしれませんけれども、まず一〇〇%その法律を守るために努力をしてまいったと、こう申し上げても間違いはないと思います。
 以上のような宗教法人法そのものに対します私どもの基本的な姿勢というものはずっと変わらずに参りました。そして現在に至っておりますことは今申し上げたとおりでございますが、今回の宗教法人法の改正につきましても、今申し上げました基本的な姿勢はそのまましっかりと考えながらこの改正に対処をしてまいりました。
 やはり、この制定以来の四十年という間には宗教法人そのものも大きく変わった面がございます。さらにまた、それを取り巻く社会の環境も大変な速さで変わってきております。これも事実であります。そこへもってきて、オウム真理教といういわば凶悪な犯罪集団が宗教であるという名のもとに発生をしてまいりました。この社会の安定を乱す反社会的な行動もいたしております集団に対して、その凶悪な犯行を防ぐために、そういう集団の発生を防ぐためにもし現在の宗教法人法を改正することによって効果があるならば、これは一部の改正はやむを得まい、現在の宗教法人法の基本的な考え方に影響を及ぼさない範囲において行政上の手続として宗教法人法を改正して、そういう宗教の名のもとに凶悪な犯行を行う集団の存在を許さない、これは当然のことと私どもは考えました。
 私たちの毎日の神様に対しますお祈りは、国家の安定と国民の幸せとさらに皇室の御繁栄、これを祈るのが私どもの毎日の仕事でございます。したがって、国家の、社会の安定を乱す、これが、もし宗教法人法の改正によってその効果が一部でもあるならば、これは改正はやむを得ない、このように考えました。
 ただ、ただいま申しましたような極めて凶悪な社会不安の原因をつくっております集団は、これは全宗教法人の中のほんの一部にすぎない。私どもの神社の関係で申しますれば、先ほど申しましたように、八万の神社はこの法が制定されましてから四十年間、何ら社会不安を起こすような問題を起こさなかったということは、まあ一、二の例外は悲しいことですがございますけれども、全般を通じてこの四十年間に一体神社を初めとするほとんど大部分の宗教法人がそういう社会不安を起こす原因になったかどうか、これは少なくとも私ども神社関係としましてはまずなかったと、こう申し上げてよいと思います。
 ということは、少なくとも私ども八万の神社の中におきましては、基本的に宗教法人法に対して極めて不満を持ってはおりますけれども、それを忠実に守ってまいったということであります。この忠実に守ってまいりました者に、今回の改正によりまして、いろんな点でまじめにやってきた、四十年間真剣にやってきた神社に対してさらに負担を加えることがあるとしますれば、これは言葉重言いかえてみますと、おまえたちが今まで宗教法人法を真剣に守ってこなかったから今回こういうような改正をしなくちゃいけないんだということを宣言するのと全く同じことになります。少なくとも現在組織の長として仕事を仰せつかっております私としましては、これは承服ができません。
 非常に危険な社会不安を起こす一部の集団、これがあることは事実ですけれども、その反対の立場に多数の、ほかの御宗派のことは余り存じませんけれども、少なくとも私が現在長をいたしております組織、神社本庁の傘下にあります八万の神社は真剣にとにかくやってきた。それに対して、おまえたちの今までのやり方が悪いから、そういう悪いことが起こらないように法律を変えて、負担もふやすぞということは言えない。ですから、その点については、改正について十分留意をされたい。このことは強く主張をしてまいりました。
 なお、公開、報告等につきましても、これは大部分じゃございません。大部分じゃございません。我々神職は神社を自分の、私有のものだとは考えておりません。先祖から伝えられてそれをお預かりしている、そしてそれをまた永久に子供たちに、またそれを子孫に引き継いでいく、その責務を持っている。また、その地域の氏子なり崇敬者なりという人々からこの神社をお預かりしている、基本的にはお預かりをしているんだという考え方をいたしております。
 したがいまして、お預かりしております以上、先祖に対して具体的な報告はすることはできませんが、少なくとも同時に、神社をお守りをいただいている氏子、崇敬者については、これはもう神社の経費はほとんど全部ガラス張りに近いと、こう申し上げてもよろしいかと思います。ただ、神社の経済、これはもう大変貧乏であります。神社というのは大変お金がない。お金がありませんから公開するほどの経理の必要もないぐらいであります。
 そういう点から考えまして、今、仮に日本の社会全般から宗教法人は極めて不明朗であると、こういうおしかりを受けるとすれば、これはその部分がまだ残っておるとすれば、私たち神社もこれはもう徹底的にとにかく透明さを図ってまいりたい、このように考えております。ただ、時間はかかります。時間はかかりますが、それを目指して進んでまいりたい、このように考えておる次第であります。
 以上のような大変乱雑なお話で恐縮でございますけれども、そういうような私どもの考えに立ちまして、今回の宗教法人法の改正につきましては、望ましくはない。望ましくはありません。けれども、信教の自由を叫ぶためには、それに倍する厳しい、みずからを律することが前提になるということを考えながら一歩一歩進めてまいりたい、このように神社本庁としては現在考え、そして一応改正についての賛成の意思を表明した次第であります。
 申し上げたいことがまだまだ残っておりますけれども、大分時間を超過いたしまして申しわけございません。お許しをいただきたいと思います。
 では、以上で私の意見の開陳を終わらせていただきます。ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 岡本健治

speaker_id: 28172

日付: 1995-12-04

院: 参議院

会議名: 宗教法人等に関する特別委員会