須藤浩の発言 (本会議)
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○須藤浩君 新進党の須藤浩でございます。
私は、ただいま提案されました労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案に対して、新進党を代表して質問をいたします。
すべての勤労者が健康かつ安全に働くことは、家族はもとより国民一人一人の切なる願いです。しかしながら、近年、労働災害の件数が減少傾向にあるとはいえ、いまだ一年間に約十八万人もの人々が死傷しています。しかも、二千人を超える人々が、我が国経済を支えるそれぞれの職場でそのとうとい命を落とされているという現状は、悲しみにたえないところです。まずは、最近の労働災害の現状及び傾向について政府の認識を伺います。
言うまでもなく、労働災害補償保険制度は、不幸にも発生した労働災害に補償を行うための保険制度であり、勤労国民が安心して働くための制度でもありますが、国家の政策としては、この制度の前提として労働災害の防止のための諸施策が存在しなければならず、そのためには労働災害の現状と今後の動向に関する調査と分析がなされなければならないことは当然であります。
さて、労働をめぐる情勢に近年大きな変化が生じていることは皆さん御承知のところですが、その典型的な事例がいわゆる過労死であります。
以前の労働災害は、業務との因果関係がより直接的な業務災害や業務疾病が中心でしたが、今日では業務による疲労やストレスの積み重ねに起因する疾病、すなわちいわゆる過労死の件数が増加してきています。
また、業務や職場の人間関係に起因する精神的な障害も急増しています。さらには、在宅勤務のような新しい勤務形態の普及や契約社員のような新しい労働契約の普及に伴って、労働災害の新たな類型が発生しつつあると言えます。にもかかわらず、これらへの的確な対応がおくれているのではないでしょうか。
先ほど例に挙げました過労死については、死亡原因が業務に起因するか否か、この判断については困難な状況も少なくないと伺っております。このような過労死の件数の推移、労災認定状況等はどのようになっているか、お伺いいたします。
近年、過労死事案に見られるように、審査請求事案が複雑困難化していることなどから、請求事ういての永井労働大臣の趣旨説明 労働者災害補案の処理に要する期間が長期化する傾向にあり、その迅速な処理が求められております。この点に関して、労災保険給付の審査体制の現状、審査請求、再審査請求の件数、その処理に要する期間、滞留の状況及びそれらに対する政府の認識をお伺いいたします。
今回は、昨年七月六日の最高裁判決における問題点の指摘にこたえた形で労働者災害補償保険法等の一部改正案が提出されているわけですが、この改正案は、国税通則法や健康保険法等と平仄を合わせ、審査請求制度の見直しを行おうとするものであります。
確かに、この改正によって再審査請求に至るまでの期間が短縮され、請求事案の処理が迅速化されるとの評価があります。しかし、その一方で、今回の改正は、労災制度が抱える問題を糊塗したまま、最高裁の判決に対するいわば対症療法的な見直してはないかとの批判もあります。また、審査会自体の存在意義も場合によっては問われる改正内容ではないかと見る向きもあります。
労災制度は、扱う事案が非常に専門的な判断を要するものであるため、事案の妥当な処理を図ると同時に裁判所の負担軽減を図るという訴願前置主義をとっています。しかしながら、業務上の認定基準が拡大されない限り、業務上に起因した疾病であるという判断がなされず、裁判の段階で初めて業務上と認定される事態も生じていると思われます。過労死等に係る労災の認定基準について、改めて政府の対応をお伺いいたします。
この認定基準については、業務及び職場の人間関係から生じる精神的な疾病についても、一定の基準のもとにこれを労働災害と認めるべきであると考えますが、いかがでしょうか。また、新しい勤務形態や労働契約のもとで発生する労働災害について、本制度による救済を行うべきであると考えますが、見解をお伺いいたします。
訴願前置主義については、労災制度にこれを採用していることが、一方ではかえって国民の裁判を受ける権利を阻害し、言うならば、裁判への回り道を強いる結果にもなりかねないのではないでしょうか。また、仮に当事者が裁判所へ持ち込んだとしても、司法判断に要する時間は長期にわたることも想定され、被災者救済に至るまでの期間が長引くおそれもあります。
我が国における裁判は、押しなべて判決までに長時間を要するとの指摘があるところですが、事労災にかかわる裁判については、その迅速化もあわせて行わなければ、救済制度の改善と言いながら、その実、画餅に帰す危険性なしとしないものであり、この点について指摘をしておくものであります。
工場での操業中のけがのように業務上であることが比較的容易にわかるものもあれば、過労死のように判定が困難な場合もあります。過労死の場合、例えば夫が職場で脳溢血で死亡したとき、妻が労災保険の給付を受けるためには、その脳溢血が業務のためであることを立証しなくてはなりません。しかしながら、その立証を妻にさせることは極めて困難であります。したがって、妻は弁護士や医者に協力を求めるほかはないわけですが、もし会社が妻の依頼した弁護士や医者の立ち入りを拒否した場合は、お手上げの状態となります。たとえ医者が立ち入りをしても、因果関係についての立証をすることが無理な場合も多くあります。
もともと死因が業務上のものであるにもかかわらず、医学や医者の能力が不十分なため、業務外ということになりかねないこともあります。このような場合、被災者の救済という観点から、行政としてどのように対応しているのか、お伺いいたします。
今回の改正により、労働保険審査会の審査体制の整備充実が図られることになるわけですが、案件の増加や内容の多様化に真に対応できる体制になると言えるのでしょうか。問題の本質は審査案件の滞留と審査期間の長期化にあり、今回の改正においても、労働保険審査会の委員を三名増員して審査体制の整備を図ることとしておりますが、果たしてこれだけで滞留の解消による審査期間の短縮が可能なのか、大いに疑問のあるところであります。
まず、今回の改正はどのような予算上、定員上の措置によって裏づけられることとなっているのか、また、今回の法改正とそれらの裏づけ措置とをあわせて滞留案件の解消と審査期間の短縮の効果はどの程度あると予測をしているのか、お伺いをいたします。
また、審査委員の任命基準は適切と言えるのでしょうか。官寄りであって民を救う構成となっていないおそれはないでしょうか。現在、国民の官に対する信頼が薄れてきているのは憂慮すべき事態であると思います。これにこたえる意味でも、審査委員の任命等については国民によく見える状態の中で適切に行われることの必要性を強く感じるものであります。
さて、ここまでは事故が起こってからの救済についてでしたが、最も重要なことは、不幸な事故を未然に防ぐことであります。そのためには、当然のことながら、このような危険を予知し回避する方策がとられていなければなりません。しかも、今や過労死をも視野に入れ、潜在する危険を予知してかかる必要があります。果たしてそれぞれの職場において使用者の安全配慮義務の実施は徹底されているのでしょうか。
例えば一部の中小企業等においては、これらにかかる費用が負担になることにより、安全配慮に欠ける面も生じることはないでしょうか。これらに対して、政府においては、最近における労働災害の現状を踏まえ、一層有効な方策を打ち出し、適切な指導等を行っていく必要があると考えますが、いかがでしょうか。
また、あわせて労働災害の防止策について、職場の安全管理、勤労者の健康管理、労働時間の短縮等について、さらには在宅勤務等の新しい労働形態における事故防止策についてもお伺いをいたします。
労働福祉事業を活用し、すべての勤労者の健康、安全を図っていくことが強く求められております。その際、安全教育の領域までをも視野に入れた幅の広い政策をもって当たらなければならないことは言うまでもありません。
労災保険制度の収支、積立金等の財政の現状と将来の見通しについてお伺いをいたします。また、労災保険制度の今後のあり方について、総理の認識及び見解をお伺いいたします。
最後に、政府の経済政策、景気対策が大した効果を上げないというまことに情けない状況が続いている中にあって、産業の構造改革に果敢に取り組み、企業にあってはリストラのあらしにさらされるなどの逆境にありながら必死に働き、家族を養い、しかも同時にこの国を支えておられる勤勉な国民一人一人に思いをいたし、心より感謝し、真に国民から信頼される政治を行っていかなければならないことを強く肝に銘じ、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕