エズラ・F・ヴォーゲルの発言 (外務委員会アジア・太平洋に関する小委員会)
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○参考人(エズラ・F・ヴォーゲル君) 台湾問題に関するアメリカの見方ですが、中国が恐れていることは台湾の独立運動と私は思っている。中国の目的は、軍事的に台湾をとるよりも軍事的手続を使って政治的な影響を及ぼしたいというのが中国の目的だと私は思います。
李登輝大統領が去年アメリカを訪問したとき、アメリカは台湾の独立運動を支持していると中国はすごく心配したんですね。私は、アメリカのそういう運動、ちょっと誤解もあったかもしれないんですね。アメリカ人が心配したことは、特にアメリカ政府の人が心配したことは、三原則を守るか守らないかと心配して、それでアメリカ政府の人は、我々は必ず守るから変化はないということを説明したんですけれども、中国は結局原則よりも台湾内の政治について心配したという状態じゃないかと私は思います。
李登輝はコーネル大学から博士号をもらって、台湾に戻ってすごくいい気持ちで、台湾は独立になっても構わない、アメリカも支持する、アメリカは選挙もあって、新しい共和党の人がアメリカの議会議員になって多分李登輝を支持するんじゃないかという気持ちがあった。ですから、その政治状態は非常に複雑になって、中国は独立にならないようにどうしたらいいかと。余り方法がなかったので軍隊の手続しかないかというふうに思った。
私の個人的な判断では、中国はそういう手続はミサイルを使って、北京の見方は李登輝の訪問以来は手続はかなり成功したんじゃないかという見方があると思います。というのは、李登輝が訪問したとき台湾の独立運動が強くなるんじゃないかと。株市場は少し下がって、台湾の資本は海外へ行ってしまって、台湾内の投資の不安が高まって、それから台湾の政府も少し遠慮するようになったということで北京は成功したという見方があると思います。
アメリカ人はそういう問題を見て、やっぱり七〇年代と今の見方はかなり違ってきたと思います。七〇年代、冷戦の時代にアメリカが心配したのはソ連のこと。英語でチャイナ・カードという言葉があって、中国とかなりいい関係をつくった。中国とアメリカの利害関係は似ている面もあって、ですから七一年にキッシンジャーが中国を訪問して以来、非常に実務的な話をしたんです。大体七二年から八九年まではアメリカと中国の関係はかなりスムーズにいったわけです。別に我々は中国はいいと思わなかったんですけれども、実務的で両方ともイデオロギーのことを余り言わなかった。
八九年に状態が変わってきて、そのときの中国の見方とアメリカの見方はかなり違うと思うんですね。どうしてアメリカが変わってきたかというと、中国の説明は、アメリカはコンテインメント、封じ込め政策をとろうとしているんじゃないかと中国人が判断した。どうしてそうなったかというと、中国人の目から見ると、例えば去年の二月のイースタンアジア・ストラテジカリー・レビュー、戦略報告があって、アジアの兵隊たちは減らさないと。その前にアメリカのEASIという報告があって、数年前にはアメリカの兵隊を減らすと。北京の目から見ると、どうして今度減らさないのか、どういう敵を考えているか、中国ではないかという疑問。それから、ベトナム戦争以来アメリカはベトナムとの関係を正常化しなかったのにどうして急に今ベトナムとの関係は正常化してきたか、それもやっぱり中国のことを考えているのかなと。
それからエイジアン・リージョナル・フォーラムでアメリカがASEANの軍備の話を、安全保障問題を取り扱ったらいいんじゃないかと大体二、三年ぐらい前からアメリカが進めた。アメリカがどうしてあれを進めたかというと、北京の目から見ると、アメリカはアジア各国と連絡して、中国に対する封じ込め政策を今はどんどんとれるんじゃないか。日米安保、それからベトナムとも関係はよくなるし、それから東南アジアはどんどんそういう手を組んで、それは中国に対して封じ込めるという説明があるんです。
アメリカ国内の実際とは全然違うと私は思います。どうして中国はアメリカを誤解したかというと、私の目から見ると、中国は民主主義の状態が余りよくわかっていないんですね。民主主義の世論ということを余り理解していないんじゃないかという気がするわけです。つまり、天安門事件のときアメリカ人がテレビを見て、あれは独裁的な国ですね、悪い指導者が民主主義を支持する国民も殺した、それは全然悪いと。それでアメリカの世論ができ上がった。
大体のアメリカ人は、中国について実際に余り興味を持っていないし、はっきり言うと知識も余り高くないと自分は認めるべきだと思います。余り知識がないからテレビの影響は物すごく強かったんですね。ですから、八九年の天安門事件以来、大体のアメリカ人が中国はもう全然だめだという見方があるんです、指導者が悪いと。そういうアメリカの世論ができ上がって、アメリカの議会もそういう世論を取り込んで、議会も中国に対して余りいい気持ちを持っていない。
それから、アメリカの指導者クリントンは物すごく敏感な政治家で、世論がそういうふうに認めているから自分も中国に対して余り親しくならない方がいいんじゃないかと。大体のアメリカの政治家の判断ですね。中国は指導者があれほど悪いことをしたとアメリカの新聞は中国に対して物すごく悪口を言う。
私は、最近北京を訪ねてアメリカの専門家と話して、封じ込め戦略があると向こうがおっしゃったので、アメリカは封じ込め政策だけではなくて中国に対する戦略は残念ながらないと私は説明した。
我々の政府は、まとまった戦略がないけれども、中国に対する反感は天安門事件以来非常に強い。そうしますと、アメリカは民主党だけではなくて、ブッシュ大統領の共和党もF16を台湾に売ろうとしたわけですね。それは、選挙運動をやったときテキサス州の投票は非常に難しくて、F16をつくる会社のあるところのテキサスで発表して、F16を台湾に売ろうとした。九二年の選挙運動のときに共和党がやったと。
それから、アメリカも政治運動があって、天安門事件のすぐ後、ブッシュ大統領は北京を批判しなかった、やっぱり米中関係は大事であると。外交関係のために彼は最初はそれほど批判はしなかった。しかし、アメリカの国民は物すごく反応が強かったので、クリントンは選挙運動のときにそれを使おうとした。ブッシュ大統領は十分に人権のことを考えない、それはけしからぬと。天安門事件の後、アメリカの世論は中国に対する態度が物すごく強くて、クリントンは人権に対してもう少し我々は厳しくやろうと。そのときは、最恵国政策と人権ということを一緒にやる。人権の状態がよくならないうちは我々は最恵国の待遇をしないということを言って、それは別に戦略というよりも選挙に勝つためにそういう説明をした。
民主主義の国だから、そういう中国に対する態度はどんどん厳しくなって、クリントン政権はそういう政策があって、中国は物すごく反感を持った。中国の目から見ると、クリントン政策は北京の政府に反対する人たちを支持したという気持ちで、我々アメリカ人が感じたのは人権の普遍性の原則があるからで、北京が考えたのは政治の目的があるんじゃないか、結局反政府の人間を支持すると。そうして中国とアメリカの関係はどんどん悪くなった。
それから、アメリカ人も八七年以来は台湾との関係がどんどん親しくなるんですね。というのは、八七年に民主化の傾向があって、関係も非常に親しくなって、アメリカ人は八七年以来は台湾に対して気持ちがどんどんよくなって、冷戦も終わった。そういうようにいろんな動きがあって、台湾に北京が少し悪口を言っても我々は余り心配しないんじゃないかと。そういう背景があって、結局アメリカは民主主義の国だから、戦略よりも北京に対する反感が強くなったという状態。それを背景として李登輝が当選された。
これからどうなるかというと、アメリカ人が今期待しているのは、やっぱり台湾と北京は話し合って平和的に台湾海峡の問題、両岸の関係を台湾と北京は決めるべきだと。我々は前の三原則、三つのコミュニケのとき、台湾と北京の人たちは両方とも中国、そういう見方なので、今でも我々アメリカの立場として無事にそういう両岸の問題を解決すれば我々は反対しないと。
ただ問題なのは、もし北京が台湾を本当に攻撃したらアメリカはどうするか。今、我々の政策はあいまいで、力を使うのは英語ではユージング・フォース・ウイ・オポーズ。ですから、武器を使えば我々は反対する。どういうふうに反対するかあいまいにしておく。どうしてあいまいにしておくかというと、北京が何をしても我々は何もしないと余りはっきりさせると北京は危険なことをする可能性もある。もしどういうことがあっても我々は台湾を支持するということなら、台湾は非常な冒険をする心配もあるから、ですから政策としてあいまいにしておきたい。
もし何か異常な状態ならアメリカはどうするか。最近第七艦隊も動いて、戦う状態になればアメリカと日本の関係はどうなるかという問題について、もし実際にアメリカ人の命が亡くなり、それを日本が助けてくれないと、アメリカの日本に対する反感は物すごく強くなると私は思います。イラク戦争も皆さんよく御存じだと思いますけれども、アメリカ人が命をかけて日本はお金だけを使う、人間の血を流すつもりは全然ないと、アメリカ人が日本に対する反感を持つ可能性は十分あり得ると思うんです。
韓国の問題もそうだと思います。もし朝鮮半島が何か異常な状態なら、アメリカ人は命をかけて人が殺される。それを日本は人をくれないしアメリカの援助をしないと、アメリカの世論は日米安保はどういうことかと非常に意見が強くなると思うんです。台湾もそうだと思うんです。もし台湾で何か異常な場合にアメリカ人が亡くなる、それに日本は十分に助けてくれないと、アメリカの世論は、日米安保はどういうものか、我々は命をかけているけれども日本人は命をかけないと。それでアメリカの反感が強くなる可能性も十分あると思うんです。
ですから、日本がもし日米安保は非常に大事だと思えば、何か協力的な態度を異常な場合はとるべきだと私は思います。日本人の目から見ると、アメリカ人が何か変なことをすると日本側も巻き込まれる心配が十分にあり得ると思いますけれども、私の目から見ると、アメリカは真剣に物を考えて、簡単に戦わないと思います。ベトナム戦争以来、アメリカの世論を見ますと、例えばソマリアでもアメリカ人が殺されると心配して簡単に兵隊を送らない、冒険なことは今の状態では余りしないと思います。慎重に武器を使おうと。
それから、アメリカはアジアに兵隊たちを残すか残さないか。十年とか十五年以内とか二十年以内にアメリカはアジアから兵隊を全部引くという説明もあると思いますけれども、私はそうは思いません。今、アメリカの国防予算は全体で二千五百億ドル、その二%ぐらいは日本と台湾のために今使っているんです。今、我々は毎年四十億ドル、それから韓国で三十億ドル、全部で七十億ドルぐらいは東アジアで使っている。それは国防予算全体の三%ぐらいで、そのくらいはやっぱり東アジアが全世界の経済の中心になっているから、我々の国防予算の三%ぐらいを使うのに批判する人はほとんどいないと思います。ギングリッチ氏は、予算の増加は反対したけれども、国防予算の増加には反対しなかった。
結局、アメリカ人は十年とか十五年とか二十年だけではなくて長く、今の我々の経済状態はそれほど悪くならないと私は思って、少なくとも二十、三十年、そういうアメリカのプレゼンスは残すと私は思っております。
どうもありがとうございました。