保田行雄の発言 (厚生委員会薬害エイズ問題に関する小委員会)

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○参考人(保田行雄君) 本日、このような形で発言の機会を与えていただきまして、ありがたく思っております。
 去る三月二十九日、HIV薬害訴訟は和解解決しました。国会の議員の皆様にも和解解決へ向けて多大な御支援をいただき、この場をかりてお礼を申し上げます。
 この三月二十九日の和解の際、原告団と厚生大臣及び製薬企業との間で確認書が取り交わされました。その確認書の中で、「厚生大臣は、」「再び本件のような医薬品による悲惨な被害を発生させるに至ったことを深く反省し、その原因についての真相の究明に一層努める」という一項が入りました。これは極めて異例のことであります。
 では、なぜこのような解決に際してなおも真相の究明が必要とされるのか、それが被害者によって求められ、これが明記されたのか、その理由です。
 まず第一に、なぜに日本の血友病患者の四割、二千人に及ぶ被害者が生み出されたのかという問題です。裁判所の所見によればエイズという死の病、この被害が何ゆえ発生したのか。この原因の徹底した解明なしに、二度とこのような悲惨な薬害を繰り返さないための制度の改革は到底できないからであります。
 また、二千人に及ぶ被害者のうち、既に四百人を超える人たちがエイズを発症し命を絶たれています。そして、今も五日に一人の割合で新たにエイズを発症し、また発症者の中から死亡者が出ているのです。このようないわば虐殺とも言える凄惨な被害を生み出した責任者が究明されず責任が問われないということであれば、この国に正義はないと言っても過言ではありません。原告被害者は正義を求めているのであります。
 第三に、真に揺るぎのない恒久対策を実現するためには、真相究明は不可欠であります。
 さきの確認書の作成作業の中で、厚生省は将来にわたる恒久対策、つまり被害者に最高水準の医療を保障する、医療・生活支援をする、その責任を負うことに対して極めて執拗に抵抗を示しました。これは、口では責任を認め謝罪したとしても、まだまだその加害責任に対する痛切な自覚が足りなかったものです。原告被害者は、将来にわたり厚生省が恒久対策の実行を怠ることがないよう、その真相の究明を求めているのであります。
 そして、この間の厚生省の動きを見れば、厚生省にみずから原因の解明を求めることは愚かなことであることが明らかになっています。ここは、国権の最高機関であり、国政調査権を有する国会が真相究明の役割を果たすことが求められています。
 この点で、この後予定されています安部英元エイズ研究班班長や郡司篤晃元生物製剤課長らに対する調べが参考人にとどまるということに被害者たちは強い不満を持っています。任意の供述を求めるだけでは真実を語らないことは、厚生省の調査プロジェクトに対する彼らの回答で明らかであります。また、二千人に及ぶエイズ感染被害、このことにかかわった人物が参考人にとどまることに対して強い不満を覚えます。原告被害者たちが望む証人喚問をぜひ実現していただきたいと思います。この場で強く要求しておきます。
 では、何をどういう方法で解明すべきでしょうか。
 私は八年前、エイズ予防法案の審議の際、当時社会労働委員会に参考人として呼ばれて薬害エイズの解明を訴えました。厚生省は、その後今日まで資料を隠し続け、うその答弁に終始してきたのであります。そして、三月二十九日の和解成立を待つかのように新たな資料を公にしました。それは、いわゆる訴訟対策ファイルと言われるものです。また、この事件で重要な役割を果たしたと思われる藤崎生物製剤課長補佐のファイルを含む二十数冊であります。今、TBSの事実隠しが問題となっていますが、和解成立前に厚生省の責任にかかわる資料の存在を知りながら隠すこのような厚生省のやり方は、その悪質さにおいて比べようがありません。
 東京地方裁判所の薬害エイズ裁判の中で、私たちは研究班資料など薬害エイズにかかわる資料の開示を求め、裁判所もその開示を促してきました。
 厚生省は存在が確認できないとして提出を拒んできました。しかし事実は、訴訟対策を練る部署のロッカーに三十冊ものファイルがあったのです。
 この七年間に及ぶうそをつき続けてきた責任はどうなるのでしょうか。今になってもまた繰り返される資料隠匿が徹底的に解明され、その責任が明らかにされない限り、この事実解明は進みません。
 また、今まで厚生省が公開してきた資料を見ても、一見して情報操作の疑いが濃いものです。エイズの危険性にかかわる一九八一年から一九八三年にかけての公衆衛生局保健情報課の資料はほとんどありません。また、日本のエイズ第一号認定や非加熱製剤の回収と関連してくる一九八四年九月に設置されたエイズ調査検討委員会に関する資料は一切出されておりません。真相の究明のためには、これらの資料の公開が不可欠であります。
 これができるのは国会をおいてはほかにありません。
 次に、ぜひ解明をしていただきたい点です。
 いわゆる郡司ファイルにあった七月四日付の「取り扱い注意」と書かれた「AIDSに関する血液製剤の取り扱いについて」と題する書面についてです。
 私はこれを見て大変驚きました。そこには、当時私も含めて血友病の患者たちがエイズの緊急対策として考えたすべての点が盛り込まれています。米国原料を用いたものについては取り扱わないように業者に対し行政指導をすると事実上の輸入血液製剤の輸入中止が考えられ、加熱製剤の早期導入と国内原料による製剤の供給確保で対応しようとしています。これらの対策がとられていれば血友病患者の運命は変わっていたことは明らかです。
 この点に関連して、二つの事実が何ゆえ隠されたのか徹底的に究明される必要があります。
 まず、一九八三年六月から八月にかけてのトラベノールの回収報告書が何ゆえに隠されたのかということであります。当時、アメリカの製剤回収でさえも新聞の一面を飾る事実でした。厚生大臣、通産大臣が例外輸出許可をし、公の手続を経て行われたにもかかわらず、なぜこれが隠されたのか。
 だれが知り、だれが隠していたのかはっきりさせる必要があります。
 そして、血友病のエイズ第一号患者がCDCのスピラ博士によって認定されながらも、そこには郡司氏や安部氏ら多数の関係者が参加していながらなぜに隠されてきたのか。
 また、一九八四年から八五年にかけての不可解な事実の解明は不可欠であります。八四年九月、既にエイズウイルスは固定され、検査法も確立しています。九月には帝京大学の血友病患者の多数がエイズに感染していること、その後鳥取大の栗村教授により日本の血友病患者がエイズ感染していることがわかっています。
 厚生省にこれらの事実が報告されながらなぜに隠されたのか。そして、今日では既に明らかになっていますが、エイズ発症者ではない、単に感染者であるホモセクシュアルの男性がエイズ第一号患者としてなぜに認定をされ大々的に宣伝をされたのか。これらは、厚生省が加熱製剤認可後も非加熱製剤の回収指示を出さず、ミドリ十字が一万本に及ぶ非加熱製剤を新たに出荷していたのか、これらの事実と密接に関連するものであるというふうに確信をしています。そして、これらはフランスで刑事事件になったと同様に厚生省の犯罪にかかわる重要な事実であります。
 薬害エイズでは、最初から最後まで血友病患者の一人でもエイズに罹患させてはならないと、そういう立場から施策がなされたということはありません。そこには、長年にわたり輸入売血を容認してきた厚生省の血液行政の誤り、ミドリ十字と厚生省の癒着など、構造的なものを含んでいます。
 そして、一九八四年の九月以降に見られるように、危険であることを承知の上で、いや殊さらうその安全宣伝をしてまで使わせ続けてきた極めて悪質な犯罪性を持った事件であります。
 これらにメスを入れられるかどうか、その点に関しては国会の力量がまさに試されていると思います。国会が被害者、原告たちが求めるその真相究明の痛切な思いにこたえられて、真に関係者を証人尋問されて徹底的に真相究明されることを期待しまして私の陳述を終わります。
 御清聴ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 保田行雄

speaker_id: 9734

日付: 1996-04-17

院: 参議院

会議名: 厚生委員会薬害エイズ問題に関する小委員会