塩川優一の発言 (厚生委員会薬害エイズ問題に関する小委員会)

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○参考人(塩川優一君) 今の御質問の中で帝京大学の症例の認定がおくれたというお話がございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、第三回の委員会におきましてはこの症例についていろいろ検討しましたけれども十分な結論が出なかったということです。ただ、これは安部班長からまだ十分該当する例がないというような報告があったわけでございますけれども、第四回の、先ほどのスピラ博士の報告とそれから帝京大学の病理の先生の報告の時点では、この帝京大学の症例をエイズと認定するかどうかという御諮問は班長からはなかったわけでございます。それから、さらに第五回の研究班におきましてもそういう御諮問はなかったわけでございまして、またその間で特にこの症例がエイズでないと否定するようなはっきりした皆さんの御議論はなかったと思っております。
 それを一つ申し上げますのと、それから、今の帝京大学症例についてのステロイドの問題が出て、かなりこれが重要のように言われておりますが、この帝京大学の症例というのは実際は非常に複雑な例でございまして、一つは、非常に主な症状が肝障害、肝臓の障害がございました。それから、その上に血友病があり、そしてエイズがあり、ステロイドがあるということです。
 肝臓の障害も、それから血友病もともに免疫機能が非常に低下するような病気でございます。血友病につきましては輸血が行われる、あるいは血液製剤の注射が行われるということで、これだけでも免疫の機能が低下するわけですし、肝硬変症も、肝臓でいろいろ免疫グロブリンなんかがつくられておりましたが、それができないということで免疫機能が低下するということでございます。
 それに、さらにステロイドの使用ということがありますけれども、CDCの診断基準というのも当時使っておりましたけれども、これにはステロイドの使用をしている者は除外項目というところに入っておりまして、要するにステロイドというのは免疫の機能を低下させるので本当にエイズで免疫の機能が低下しているかどうかがわからなくなるという意味でそういうことが書いてあったわけでございます。そういうふうに、皆さんはまずステロイドを使っているからどうかということを考えて問題点としておられたわけです。
 なお、この帝京大学症例のステロイドの使用でございますけれども、何かステロイドの使用が非常に少量だったということが言われておりますけれども、この病歴を見ますと、亡くなる三カ月ぐらい前からプレドニゾロンとして一日に二十ミリグラムから三十、四十、六十ミリグラムぐらいの量が使われております。これはかなり量が多かったというふうに私は思っております。しかし、肝硬変症と血友病とステロイドの使用、それにエイズということで、どれが免疫機能を低下させる主なものか、あるいはどれが一番重要かというようなことについては、結局、非常に難しい問題でございましてお答えが私自身もできません。
 その議論の中では、ステロイドを使っているということが一つ、十分検討すべきだという意味で述べられたわけでございます。そのほか、御存じのように、この帝京大学症例にはカポジ肉腫とかカリニ肺炎とかいう当時アメリカでは最も普通に起こるとされていた日和見感染がなかったというようなこともございましたし、またヘルパーTリンパ球というものが比較的多かったというような御指摘もあって、議論は非常に複雑になっていたわけでございます。
 しかし、当時のことを考えてみますと、エイズの原因は何かということがまだ全くわかっておりません。ウイルスだろうと言っておりましたけれども、わからない。それからさらに、これを決める検査がなかったわけでございます。後に、一年後に抗体検査ができるようになって初めてこの帝京大学の症例がエイズと認められたわけですけれども、当時はそういうものもない。また、日本ではエイズの患者さんを診たという経験のある人も一人もいなかったわけです。そういう状況で皆さんがこの症例について議論されたわけですから、なかなか結論が出にくかったということです。
 最後に、どなたかの証言によりますと多数決で決めたようなことが書いてありますけれども、この委員会は多数決ということはありませんで、皆さんがいろいろ議論した終わりに、これを班長がまとめて、御自分の意見を入れて記者発表をされたということでございました。
 そういうことで、このステロイドというのも一つの議論の要素だったんですけれども、これだけでなくてたくさんの疑問点が出た。しかも当時のエイズに関する知識ではこれに対して十分なお答えをすることができなかったというふうに考えていただきたいと思います。

発言情報

speech_id: 113614258X00419960610_016

発言者: 塩川優一

speaker_id: 21189

日付: 1996-06-10

院: 参議院

会議名: 厚生委員会薬害エイズ問題に関する小委員会