成田頼明の発言 (地方分権及び規制緩和に関する特別委員会)
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○参考人(成田頼明君) 成田でございます。
それでは、機関委任事務制度の廃止に係る検討試案につきまして御説明を申し上げたいと存じます。
最初に、この試案の背景にございます基本的な哲学ないしは考え方について御説明申し上げたいというふうに考えております。
三点ございまして、第一点は、現在の国と地方の関係というものは上下の主従関係あるいは支配服従関係にあるというふうに言われておりますけれども、地方分権推進法にもございますように、今後は対等の協力関係に改めていく、こういう考え方が一つ基本になっております。
それから第二は、国、地方の関係を、住民による選挙で選ばれました地方公共団体の首長、これを国の機関としてとらえ、しかも国の各省大臣が無限定かつ広範な指揮監督を行っている、こういうような責任の所在が不明確でしかも広範な指揮監督のもとに極めて不透明な関係にあるわけでございますけれども、これを透明かつ公正なものに改めていこうということでございます。
第三は、国、地方の関係につきましてもいわゆる法治主義というものを徹底いたしまして、現在各省庁による非常に広範な無限定な行政統制が行われているわけでありますけれども、そういう行政統制から国会による立法統制及び裁判所による司法統制を中心とするシステムに変えていこうということでございます。
この検討試案では、まず現行の地方自治法第二条で決められております地方公共団体の四種類の事務区分、つまり公共事務、団体委任事務、それから行政事務、機関委任事務、こういう四種類の事務区分を一応全部白紙に戻しまして、白紙から考え直していこうというところから出発しております。
それからまた、現行の機関委任事務制度は、これは私もよく前から考えているところでございますけれども、集権的行政システムの象徴的な存在であるというふうに思われますので、これを抜本的に改めるということがこの試案の基本的な考え方でございます。
以上、三つの基本的な考え方に立ってこれを策定したという次第でございます。
次に、試案の内容について御説明を申し上げますが、資料の二の一をごらんいただきたいと存じます。
まず、現在機関委任事務とされておりますものの中で、事務の存続の必要性を検討した結果、事務そのものを廃止するというものにつきましては、これは法令の規定を廃止するということにいたしております。例えば、これは規制緩和の観点あるいは時代的背景から見て現在ではそういう事務は必要ないというふうなものがありましたら、そういった事務はもうやめてしまうという場合、あるいは地方公共団体の任意にゆだねたらどうかといった場合には法令自体を廃止するということになるわけでございます。
それからまた、今後とも存続が必要な事務につきましては、原則として地方公共団体の自治事務というものにするという扱いにしております。これにつきましては、従来、団体事務というふうに呼ばれておりましたものと新たに地方公共団体の事務とされるものを合わせて自治事務という言葉をここでは使っております。
自治事務につきましては、これはさらに随意事務と必要事務の二つに分けてございます。
そこでまず随意事務と申しますのは、地方公共団体が住民のニーズあるいは能力、規模、意欲、そういうものに応じて必要であるというふうに判断すれば実施するという形になる事務でございます。本来、地方公共団体が条例や規則に基づいて実施するのが建前でございますけれども、国がガイドラインというふうな形で、あるいは計画をつくれというふうな形で法律を制定する場合もございます。現在の公共事務、行政事務と言われているものがここに入っているわけでございます。
その場合にも、国の関与のあり方としましては、こういった事務の性質からいたしまして、報告の徴収や技術的な助言、勧告を行うということにとどめるべきであるというふうに思っているわけであります。
それから次は、必要事務であります。
これは、法律で定めるところにより、地方公共団体は実施しなきゃならない、つまり実施が義務づけられる事務ということになるわけでございます。
必要事務の実施方法の基本的な枠組みにつきましては法令で定めるということになるわけでありますが、法令で定めることに加えて、場合によっては、現在も既に行われておりますけれども、地方公共団体の条例あるいは場合によっては規則等で上乗せ、横出しをする、あるいは適用除外規定を設けるというふうなこともできるだけ広く認める方がよいのではないかというふうに思います。
したがいまして、国の関与のあり方としましては、報告徴収や技術的助言、勧告のほかに、特に必要がある場合には法令によって最小限度の基準の設定を行うこと、あるいは国が事前協議を求め地方がそれに応ずる、こういうことも認めるということにいたしております。ただし、現在の事前協議の場合には、協議が成立するまでは地方公共団体は行動ができないということになっている場合が多いわけですけれども、ここでは協議が成立することを必須の要件にはしないということを原則にいたしまして、一定の期間内に協議が成立しない場合においても地方公共団体はその判断で行動することができるようにしてはどうかというふうに考えているのであります。
それからまた、現在の地方自治法にもございますけれども、地方公共団体の事務の管理執行が法令に違反する、違法の行政を行っている、こういった場合には、事後的に地方公共団体に対しまして当該違法行為を是正するために必要な措置を講ずる、こういうことを認めたらどうかということで、これは違法是正措置要求というふうにいたしております。ただし、現在の地方自治法では、著しく不当な事務の管理執行につきましても是正措置要求ができるということになっておりますけれども、ここでは法令に違反する、違法なものに限定するというふうに考えているわけでございます。
それからさらに、この場合に、国の要求に行き過ぎがあってはいけませんので、違法是正措置要求については地方公共団体の異議の申し出を認め、なお不服があるという場合には、司法統制ということで裁判所に持ち込んで争うという道を開いてはどうかということにしております。行政統制から立法行政、司法統制へというふうに最初に申しましたけれども、最終の決着を行うような場合には裁判所で行うということにしてはどうかということでございます。
この必要事務には、現在法律に基づいて行われております団体委任事務と機関委任事務のうちの多くの部分がこの範嗜に、このカテゴリーに入ってくるものというふうに考えております。
それから次は、法定受託事務でございます。
今申しましたように、現在の団体事務と機関委任事務の非常に多くの部分を自治事務のうち必要事務にするということにしたいと思っておりますが、それでもなお国政事務という形で残らざるを得ないものがあるだろうというふうに思われます。これをどうするかという問題が残るわけですので、それを一応法定受託事務、国からいいますと委託ということになりますが、地方自治体の側から見ると受託ということになるわけで、これを法定受託事務という形にしてはどうかというふうに思っております。
これは、都道府県知事や市町村長が国の機関として事務を委任されるというのではなくて、あくまでも地方公共団体が団体として受託をするということになります。したがって、国と地方公共団体を上下の支配服従関係に置くというこれまでの機関委任事務とは大いに性格が違ったものである、それが一つの大きな特色ではないかというふうに思っておるわけであります。
法定受託事務と申しますのは、これは事務自体は国政マターとしての性格が非常に強いということでありますけれども、住民ないしは国民の利便ということを考えますと、あるいは事務処理が効率的に行われるということを考えますと、やはり法律の規定によって地方公共団体が受託をし処理するというのが妥当ではないかというふうに思っているわけであります。
受託という制度につきましては、これは現在でも地方公共団体が例えば国の公共事業の用地買収について委託を受けるということをやっております。そのほかにもこういった委託の例はいろいろあると存じますけれども、この場合に、地方公共団体にそれを受託するあるいは受託しないという判断の自由があるわけであります。これに対して試案で出しております法定受託事務につきましては、法律の規定によって受託すべきものということで地方公共団体に事務の受託を断る自由はないということで、実施すること自体が義務づけられるということにしてはどうかということでございます。
法定受託事務は、事務の性格によりまして事実行為に係る事務と処分行為に係る事務の二つの種類の事務に分かれます。
まず、事実行為に関する事務でございますけれども、これは例えば国勢調査その他の統計法等に基づきます指定統計等の事務がこれに該当いたします。国勢調査などは全国を対象として一定の期日に一斉にやらなきゃならないという性質のものでございますので、その目的から申しまして、どうしても国が一斉に行わなきゃならないものでございます。しかし他方で、国が隅々まで国の公務員を派遣して統計調査を行うということはもう到底不可能でございますので、やはり地方公共団体が受託して実施するということが適当であるということに相なるわけでございます。
それから次は、処分行為に係る事務であります。この処分と申しますのは、これは行政手続法等にいう行政庁の処分にほぼ相当するものというふうに考えてよろしいかと思われますけれども、いわゆる許認可のように国民の権利義務に法的な効果を及ぼす、そういう個別的、具体的な行為というものを指すわけでございます。
処分行為に係る法定受託事務はできるだけ限定したいというふうに考えておりまして、例えば旅券の交付、外国人登録、あるいは国政選挙、あるいは国政事務としての性格が明白なものに限定していきたいというふうに思っているわけであります。
こういった法定受託事務に対する国の関与につきましては、ただいま御説明いたしました二つの事務と同様に、非権力的な関与というものを認めることにしていますが、同時に、従来の機関委任事務制度で認められております一般的な国の指揮監督にかえて、地方公共団体に国が個別の法律に基づいて指示を行うということができるようにしてはどうかと思っております。
また、処分行為に係る事務につきましては、特に必要がある場合には法令の規定を明確にいたしまして、国が認可、承認をするとか代執行するといったことを認めてはどうかというふうに考えております。このような指示、認可、承認、代執行につきましては、自治事務における是正措置要求と同じように地方公共団体の異議を認め、さらに不服があれば裁判所に持ち込むという形で司法統制にゆだねるという考え方にしております。
それから、国の直接執行でありますが、現在機関委任事務として地方公共団体が処理しております事務のうち、国政事務としての性格が明らかなものの中には、むしろ国がじかに執行した方がよいというふうに思われるものもございます。そういったものにつきましては、これは機関委任事務ではなくて国が直接執行するということで、国に事務を返上するということではいかがであろうかというふうに思っております。
それから次に、一ページの下のところにスターマークがついたところがございます。これは透明、公正、あるいは法治主義という観点から報告徴収等々の非権力的な関与あるいは権力的関与につきましては、個々にそれぞれの法律に根拠を定めるということにしております。また、行政手続法の趣旨を国と地方の関係についても当てはめて、国の関与についての一定のルールや手続に関する制度を一般的に決めるというふうな考え方をとっております。
それからまた、その下のスターマークにつきましては、これは自治事務及び法定受託事務のいずれについても、国の関与や基準の設定等に関して地方公共団体は所管大臣に意見を申し出るということにしておるわけでございまして、これはいわゆる意見具申権と呼ばれるものでございます。事務の執行に当たりますのは地方自治体でございますので、地方自治体の意向を反映させようということでございます。ただ、これに対して、所管大臣は意見が出ました場合には必ず応答するという義務をここで課しております。意見が認められない場合には、その理由を明らかにする理由付記なども認めるということにしております。
以上が昨年公表いたしました機関委任事務制度を廃止した場合の従前の機関委任事務の取り扱いに関する検討試案の概要でございます。これに対する各省庁、地方公共団体、有識者等の関係者の意見を伺い、さらに専門委員会での検討を経まして、必要な部分の明確化、詳細化等の修正を加え、取りまとめていく所存でございますので、どうかよろしく御理解のほどをお願い申し上げたいというふうに存じます。
若干時間が超過して申しわけございませんけれども、これで私の説明を終わらせていただきます。
どうもありがとうございました。