砂原幸雄の発言 (逓信委員会)

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○参考人(砂原幸雄君) 砂原幸雄でございます。
 本日は、審議御多忙の中、私どもをお招きいただき、まことにありがとうございます。
 前回、四月二日の本委員会では、私どもの前社長磯崎洋三が出席させていただき、坂本弁護士テープ問題に関する経緯などにつきまして御説明を申し上げました。今回の当社の事態につきましては、委員長を初め委員の皆様に大変御迷惑をおかけいたしましたこと、まことに申しわけございません。
 私どもは、坂本さんとの信頼関係をみずから損ない、視聴者、聴取者、国民の皆様の信頼にもひびを入れてしまいました。私どもではこうした事態を極めて重大かつ深刻に受けとめ、鋭意事実関係の再調査を進めました。その結果を先月三十日に取りまとめ、郵政省に提出するとともに皆様のお手元にもお届けをいたしました。また、記者会見及び特別番組としてテレビ、ラジオを通じて全国の視聴者、聴取者、国民の皆様にも直接お伝えをいたしました。ゴールデンウイークのさなかでもありました関係で、委員の皆様には詳しく御説明をする機会を失い、本日になりましたこと、深くおわび申し上げます。
 本日は、再調査の結果と再発防止のための改善策につきまして概略を御報告させていただきたいと存じます。
 再調査は、テープを見せていたという事実が判明いたしました直後の三月二十七日に開始するとともに、独立した調査人として、ここにおられる元最高裁判事の佐藤庄市郎弁護士に調査を委嘱いたしました。その後、約一カ月の調査の結果は以下のとおりでございます。
 まず、坂本弁護士テープ問題でございますが、一九八九年十月二十六日、「3時にあいましょう」の金曜日担当のプロデューサーが富士宮におけるオウム取材の際に坂本弁護士インタビューテープの存在をオウムに知らせ、その結果、同日夜、オウム幹部が当社千代田分室に来訪いたしました。金曜日プロデューサーと総合プロデューサーの二人はオウムの要求に応じ、当該テープを彼らに見せる指示をしたものです。これは取材の原則を逸脱する行為であり、また取材協力者との信頼関係を損ねたという点で番組制作のモラルにもとる行為でありました。
 問題のテープが翌日の放送に使用されなかったのは、必ずしもオウムの圧力によるものとは言えないにしても、彼らの訪問が放送中止の一因であったことは否定できません。また、失踪事件の公開捜査後もオウムの来訪を関係者に通知しなかったことは、テープを見せたことに対する後ろめたさがあったためであると判断いたしました。これは、取材者、制作者であるがゆえに知り得た情報を放送を通じて知らせなかった点で重大な誤りでありました。
 こうした行為が生じた背景には、ワイドショーなどの情報系番組が増大する傾向に制作力が追いつかなかったこと、現場教育の欠陥や管理者の配置に適切さを欠いたこと、組織における責任体制が機能していなかったことなどがありました。そして、テープ問題が発生した時点で当社が組織として対応し得なかったこととあわせますと、全体的な責任は当社そのものが負うべきものと判断いたしました。
 ボンにおける麻原単独インタビューは当社報道局記者に対するお返してはないかという点でございますが、この記者とオウム教団及び社会情報局との関係を調査した結果、オウム幹部の認識と事実関係が一致していないことが判明いたしました。
 さらに、一九九五年三月の強制捜査情報の漏えい問題に関しましては、当社関係者がそのような情報を通報した事実は認められませんでした。
 次に、本年三月十一日の当社の調査報告概要が誤ったものとなった原因について簡略に御報告いたします。
 第一は、昨年九月段階で、当社として坂本弁護士テープについて捜査当局が強い関心を示していることを知った時点で問題の重要性の認識に欠けるものがありました。そのため、当社の調査の初動体制に不備が生じ、このことが調査全体に最後まで影響したものであります。さらに、十月十九日に日本テレビがテープ問題を報道した際には、報道機関として冷静な判断を示し得ず、感情的な選択を行う結果となりました。その後も社内調査の限界を超えることができず、見せた記憶はないという二人のプロデューサーの証言を覆すことができませんでした。
 こうした経過の中で、決断の先送りと不作為という誤りを積み重ね、調査方針を変更する機会を失い、誤った報告を行うことになったものです。報道機関としてこのような結果を公表いたしましたのはまことに申しわけなく思っております。
 以上が再調査結果の骨子であります。
 こうした再調査の結果を踏まえまして、四月三十日、当時の番組「3時にあいましょう」の総合プロデューサーを懲戒解雇の処分といたしました。金曜日担当プロデューサーにつきましては既に三月二十五日付で懲戒解雇といたしております。さらに、五月一日、磯崎洋三が代表取締役社長及び取締役を辞任、杉本明が代表取締役専務及び取締役を辞任、既に前回調査の誤りの責任をとって常務取締役を辞任しておりました大川光行も取締役を辞任いたしました。また、残る常務の谷田志津雄、田代功、鴨下信一、鈴木淳生の四人は常務取締役を辞任して取締役となりました。磯崎にかわり、私、砂原幸雄が五月一日付をもちまして代表取締役社長に就任いたした次第であります。
 さて、私どもでは、再調査と並行して、問題が起きた要因として当社に構造的な欠陥があったとの認識から、組織、番組制作のあり方について全面的な見直しを進めておりました。その上で、制作現場の組織、教育研修システムの再構築、チェック機能の強化拡充、管理部門の整理統合、番組内容の改善の五項目に分けて改善策を検討いたしておりました。
 そして、五月十七日に日野郵政大臣より、厳重注意とともに、再発防止のため、放送番組素材の管理体制の確立を図る等番組制作体制の見直し、社員及び社外スタッフに対して制作現場の実情に見合った実践的な教育研修が十分行えるよう研修体制を見直す、事実関係の調査等について組織的かつ迅速に対応できるよう組織機能を見直す、番組考査部門の充実強化を図る等番組のチェック機能を改善する、取材対象者等に対して十分に配慮できる体制を充実させる、視聴者に対し本件についての社としての責任と対応を明確にする、以上六点について具体的な措置を講ずるよう強く指導を受けました。
 当社といたしまして検討作業を急いだ結果、十七日と二十日に分け改善策を発表いたしたところでございます。
 以下にその改善策について御報告をさせていただきます。
 まず、番組制作体制の見直しと組織改革について御説明申し上げます。
 今回の当社の不祥事は、まずは主として、かつてのワイドショー番組「3時にあいましょう」の制作現場で発生したものであり、これを踏まえて情報系生番組の制作体制を総点検してまいりました。
 ワイドショーという番組スタイルそのものは、それ自体としては一概に否定されるべきではなく、テレビが開拓してきた最もテレビ的なジャンルの一つとして評価されてもよいのではないかと私は考えております。しかしながら、この長所を支える基盤がいかにも脆弱でありました。総点検の結果、みずからの制作力、取材力を超えた、言うならば身の丈を超えた番組づくりが今回の不祥事の大きな要因であることが明確となりました。番組のコンセプトやジャンルをもう一度はっきりさせていくことも当然ながら必要であります。さらに、放送番組素材の管理体制の改善も早急に進めるべきテーマでありました。
 こうしたことから、まず番組制作現場に関しまして思い切った組織改善を行うことといたしました。
 具体的には、社会情報局を番組単位で報道局と制作局とに移し、再編成することといたしました。番組名で申しますと、従来、社会情報局でつくっていたもののうち、「サンデーモーニング」は報道局に、その他の番組は制作局に移しました。これによって、テレビ番組の制作関連部門は従来は四局でしたが、報道、制作、スポーツの三局に整理統合されることになりました。こうした措置で、専門性が必要とされる分野などの面で取材を一元化し、放送に混乱の起きないよう図ってまいりたいと考えております。今回の制作組織の整理統合と内部組織の改善、その運用の改善により放送番組素材の管理体制も明確にさせることになると確信しております。
 また、今回の不祥事では、番組のチェック機能が的確に働かなかったことが大きな要因の一つでありました。番組のチェック体制の見直しを進める中で、パッケージ番組、生番組など、番組の形態に応じたチェック体制が必要であり、しかも放送前、放送中、放送後を通じて行われるべきであることも明らかになりました。さらに、教育研修を強化することによってチェック機能の効果をより高めることも必要と考えました。
 こうした検討作業の結果、編成考査局を新設することといたしました。この編成考査局はラジオとテレビにまたがる考査全般を担当することになります。また、制作現場から独立したモニターグループをここに設けます。これによって、これまで十分に機能していなかった生番組のチェックを担当させることにいたしました。加えて、社外モニター制度を早急に発足させることにいたしております。オンブズマン制度につきましては引き続き具体化を検討してまいります。
 さらに、番組審議会はこれまで総務局審査部が担当しておりましたが、番組審議会事務局として独立した部署に担当させることにいたしました。これによって、番組審議会の運営が円滑に行われるようになり、放送法で求められている番組審議会の機能の活用が十分発揮できるものと考えております。
 以上のほか、報道局には新しく編集主幹のポストを設けて、取材上、編集上の問題などを統括し、現場を指導させることにいたしました。また、制作局でも制作推進部を設置し、番組のチェックや内外の番組制作スタッフの教育研修を徹底させることといたしました。
 さて、番組をつくるのは人間であります。仕組みやマニュアルを立派にしても、そこにいる人間が能力、意欲、判断力をきちんと働かせなければ何の意味も持ちません。従来の教育研修制度を充実させ、活性化させることが重要と考え、教育研修のかなめとして教育研修部を新設することにいたしました。ここでは、従来、全社一律に実施してきたさまざまの段階での教育研修を一層充実させるとともに、教育研修を受けることを厳しく義務化して効果を高めるようにいたしました。
 さらに、従来現場それぞれの裁量に任せていた現場教育についても、番組制作にかかわる各局に教育担当者を配置し、教育研修部の指導のもとで、今後、現場それぞれに合ったカリキュラムを作成し、体系的で実践的な教育研修を行ってまいります。社外のスタッフに対しても、同様に教育研修部が指導し、実情に応じた教育研修を統一的に実施するよう進めてまいります。
  さらに、倫理綱領やマニュアルにつきましても、各現場で既に見直し作業を進めつつありますが、早急に取りまとめた上、この教育研修部が集中的に社内、関係会社等での周知徹底を図ってまいります。
 管理部門につきましても、今回の事態に関しましては、事実関係に関する社内調査を初め、社としての対応が適切、十分でなかったことが強く指摘されました。この点、郵政大臣からも見直し改善を強く求められたところであります。
 番組制作現場ばかりでなく、管理部門においても肥大化、非効率化が進み、迅速かつ的確な対応ができがたい状況にあったことは事実であります。特に、問題が生じた場合、事実関係の調査や判断が組織的かつ迅速的確にできるよう整備することが重要であります。
 そこで、社長室を拡充いたしました。ここに、それぞれ責任分野を分け持つ局長クラスの担当者を複数配置し、社長を補佐させるとともに総合的ないわゆる危機管理の指揮を担当させることといたしました。そのために総合調整委員会を組織して、恒常的に専門的な活動ができるようなベースをつくっておき、いざというときに組織的かつ迅速的確に対応させることといたしました。
 総務局には法務部を置き、みずからの取材、放送が視聴者、聴取者の権利を侵害する結果になってはいないか、取材対象者に対する配慮などを十分にしていないのではないか、こうしたことに対応することが今重要な時期になってきております。法務部はこの要請にこたえるべく設置したものであります。
 今回の法務部の設置とあわせ、さきに申し上げた教育研修制度の充実等により、取材、放送する上で広い問題意識を社員、社外スタッフが持つように意識の改革を一層推進してまいる所存であります。
 このほか、経営企画局に国際部とメディア企画部を吸収し、二十一世紀に向かってメディアのマルチ化、国際化が一層進展する中で総合的な経営戦略を立てやすくすることといたしました。
 以上の措置で、局レベルで八つあった管理部門は六つとなりました。
 最後に、番組内容の改善でありますが、まず、私どもTBSの代表的なワイドショー番組「スーパーワイド」を今月いっぱいで終了させていただくことといたしました。坂本弁護士テープ問題を契機に、TBSは番組のあり方や組織、制作体制の抜本的な見直しをすることを対外的に発表しました。特に、取材力、制作力に比べて放送時間が膨張している情報系生番組の見直しが急務であり、その第一段として「スーパーワイド」を終了することにしたものであります。また、「スーパーワイド」は今回問題を起こしたプロデューサーが長年にわたってかかわってきた番組であり、謹慎、自粛の意味もございます。
 先ほども申し上げましたが、ワイドショーそれ自体はテレビというメディアが生み出したユニークな情報処理のジャンルとして評価すべき面を持っております。出演者の皆様にも努力を重ねていただいてきたと思います。しかし、反面で制作手法や番組内容に問題も出てきました。今回の経験で私どもはワイドショー番組の番組コンセプトや制作手法にさまざまな問題を抱えていることを自覚させられました。
 今後も、情報系番組につきましては、先ほども申し上げましたように、番組のコンセプト、ジャンルをはっきりさせていくという作業の中で、さらに整理、改善してまいる所存でおります。
 以上、番組面の改善について報告させていただきました。
 このほか、先週月曜日から金曜日まで実施いたしましたが、今回の不祥事に関しまして目に見える形でのおわびとしまして「筑紫哲也ニュース23」第二部以降の深夜放送を休止いたしました。私どもは、自粛するという形がおわびといたしましては最も明瞭な形であろうと考え、実施いたした次第であります。
 私ども民放としては、出演者及び外部の制作スタッフは当然のことながら、番組を支えるスポンサー、広告会社など多くの外部の方々の協力が必要であります。今回、当社が起こした不祥事で視聴者、聴取者、国民の信頼を失った上に、直接間接にそうした外部の関係者に御迷惑をおかけし、そうした方々からの信頼をも損なったと思っています。
 私としては、各方面の方々の信頼を回復する、あるいは新しく信頼を築いていくために、今回犯した過ちを徹底的に反省し、TBSは新しく生まれ変わるべきだと強く認識しております。当社の改善措置は新しく生まれ変わるための道づくりだと心に決めております。
 組織、機構面の改革は先週二十三日に人事異動を行って実施に移しました。形は変わったばかりであります。マニュアル、仕組みをどんなに変えても、それを運用する人間が能力、意欲、判断力を的確に発揮しなければむだになってしまいます。今後は、教育研修を通じ、また新しい組織、機構を運用していく中で、社員そして一緒に番組制作に携わる外部スタッフがともに意識を改革していくことが最も重要なことだと思います。私は陣頭に立ってこの改革を推進してまいる決意でおります。
 今後とも御指導、御鞭撻を何とぞよろしくお願い申し上げまして、報告を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 砂原幸雄

speaker_id: 13213

日付: 1996-05-30

院: 参議院

会議名: 逓信委員会