金指正雄の発言 (公職選挙法改正に関する調査特別委員会)

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○金指参考人 日本経済新聞の金指と申します。
 実は、選挙制度の問題というのは、皆さん方にとってもそうかもしれませんけれども、我々にとっても一種悩ましい問題なのですね。なぜかと申しますと、さっき荻野さんも言われましたけれども、選挙制度というのは非常に相対的なものでありまして、絶対的なものではない。どこを見るかで、いい点も見えるし欠点も見える。
 要するに、今コップに半分水がありますけれども、よく言われますけれども、半分しかなくなったというのとまだ半分あるという、それぞれの立場からする認識の相違というものがありまして、まさに選挙制度はその一つの典型だと思うのですね。しかも、結果として非常に党派性を持つ。A党に有利である、B党には不利であるとか。しかも、政党も議員の人も、当選しているか、野党か与党かということによって、またその都度有利、不利が変わるというわけで、そういう意味では、絶対的物差しがないものですから極めて難しいわけです。
 私どもといいますか、きょうは個人の資格で出てまいりましたけれども、一連の選挙制度に絡む政治改革につきましては、若干慎重な対応をしてまいりました。私ども、中選挙区制についてのある種の限界を感じておったのです。というのは、もう戦後五十年たって、日本の政治状況というのはさしたる変化がないじゃないかという意味で一は、その前提にある選挙制度を見ますと、ある種の限界かなというような感じもしたわけであります。では、当時言われました小選挙区制を中心とする制度がまるで打ち出の小づちのようなものかといえば、そうじゃない。むしろ欠陥が、ある意味では、これも見方によって欠陥と見えるのがプラスに見える場合もありますけれども、いろいろ問題点がある。そういう問題点を並行して解消した上でやるならばいいだろう、大体そういう主張で私どもは来たのですね。
 例えば、さっき出ましたけれども、どぶ板選挙、これは実は選挙制度に絡む部分もあります。サイズが小さくなって、その分頻繁に回らなければいかぬ、あるいは、一つの選挙区から一人しか出ないから、その地域の利害を全部一人の人間がしょって東京に出てくる、そういうことになるのですね。ですけれども、それは選挙制度だけではなくて、要するに日本の地方制度の問題に非常にかかわっていくわけですね。要するに、補助金でもって地方行政を行う、あるいは許認可を中央が持っているものだから、それに頼むよというようなことで代議士が陳情する、そういう地方と中央の仕組みというもの、それだけではなく、あるいは政党のありようというようなものもありますけれども、いろいろなものがまざり合って、ある意味ではどぶ板選挙というのが出てくる。
 ですから、どうも選挙制度ばかりにすべての問題の解決をゆだねるのは、余りにその荷物が重過ぎると思いますね。もうちょっと複合的に処方せんを出して、しかも衆議院だけじゃなくて参議院がありますから、そういうコンビネーションの中で少し時間をかけてやる。
 あるいは、そのやる順番も、これは理想論かもしれませんけれども、本来的に言えば、地方分権というのを先行させて、あるいは許認可権というものの撤廃などを先行させて、そういう中で小選挙区制を軸にした今回のような選挙をやると、前回の選挙で見られたようないろいろな問題点の幾つかはかなり解消するのじゃないか、そういうふうに私どもは考えております。そのことは、今回選挙をやってみまして、大体そう間違いなかったなということを一つ感じます。
 ただ、選挙制度をそうやたらに変えるということは、それこそ党派性、党利党略というふうな部分と非常に絡むわけでありまして、結論的に言えば、そういう問題点をなくすために、選挙以外の、先ほど申しましたような地方分権とか許認可の問題とか、あるいは政党自身のあり方の問題とかいうようなことを同時並行してやりながら、この選挙をしばらくやるというあたりが現実的なのかなという感じがいたします。
 それから二番目に、重複立候補の問題ですけれども、これは常識的に判断すればいいわけで、比例区の二百のうち八十四人が重複立候補で当選したということですが、この重複立候補というのは、小選挙区制というものにはいわゆる死に票といいますか、投票したけれども議席に結びつかなかった、有権者側からするとそういう問題があるわけですけれども、死に票は少ない方が当然いいわけで、それを緩和する。
 あるいは、小選挙区制というのは制度的に第一党に非常にバリューを与える。今回も、第一党の自民党は四割ぐらいの得票率でありましたけれども、いわゆる議席率の上では六割近い。ですから、もうかっているわけですね。ボーナスをつける制度だ。制度はそういうものですから、それはそれでいいのですけれども、やはり少数政党というもの、特に昨今のいろいろな考えを持っている人がふえてきている中で、そういうものを議会に反映させるという、これもやはり一つの役割でありますから、そこを補充するという意味で、比例、特に重複立候補というのがあるわけで、これはあっていいと思いますね。
 今回見ますと、重複立候補で当選した議員が全体の当選者の中に占める割合、これは少数党の方がパーセントが高いですね。自民党が十数%、たしか一三%ぐらいです。要するに、当選者全体に占める重複立候補の当選者というのは、自民党は一三%ぐらいですけれども、民主党以下、少数党といいますか、数が少ない方はその割合が高いですから、この部分でバランスを若干とったなという感じで、一応いいと思います。
 ただ、選挙制度というのは、一方で常識、国民常識といいますか、それに支えられていないと、やはり代表を選ぶという根本のところが揺らぐわけですから、びりの人がばっとトップに上がる、当選してくるとか、あるいは法定得票数、あるいは供託金を没収された人がまた出てくるというのは、政党の中ではそういう事情はありますけれども、国民の方から見ますと、いかにもこれはおかしいじゃないか。選挙というのは、当選させたいというだけじゃなくて、落とさせたい、そういう側面もあるわけですから、これまた出てくると、これは程度問題ですけれども、その辺のところは常識という網でしゃくわないと、選挙制度そのものに対する不信といいますか、それが出てくるというふうに思います。
 それから、選挙運動のあり方というのは、先ほど荻野さん言われたようなあたりが一番の問題で、マスコミを使った、メディアを軸にした選挙運動、アメリカ型の選挙運動というものが少し出てきたのが特徴だと思いますけれども、この辺はこれからネガティブキャンペーンの問題などを含めて論議しなければならぬ。もう一つ、政策重視というふうなことになりますと、戸別訪問。イギリスなんかの選挙を、私、見たことありますけれども、これこそ一軒一軒訪ねて、政策やそれに伴う予算、どうやってやるのかというふうなことを含めて議論する。そういうことになっていけばいいわけですけれども、そのためには選挙運動というものを、べからず集からもうちょっとこれこそ規制緩和をしていかなければならぬのじゃないかと思います。
 最後に、あと一言つけ加えますと、この間の選挙の特徴というのは、御承知のように大変低い投票率、せっかく政党本位といいますか政党が軸になる選挙になったのですけれども、政党の数が非常にふえたり、あるいはその後の展開でもありますように、投票すべき政党そのものがなくなってしまったとか、あるいは政党といったって、全然違う人が同じ政党にいるというようなことで、政党本位の選挙になりながら、政治の現実では政党そのものが何か流動的な状況になっている。非常に論理矛盾の最たる状況が起きているわけですね。
 この辺のところをひとつ考えていただきたいのと、もう一つは、低い投票率というのは、そういった意味で一般的に政治不信の問題もあるのですけれども、実はこの小選挙区制という選挙制度とかかわっているわけですね。
 要するに、小選挙区というのは、アメリカの例もそうですし、イギリスもそうですけれども、大体すごい激戦のところと圧倒的無風区が多くなるわけですね。イギリスなんかは六百五十一下院のシートがありますけれども、本当に接戦区というのは百ぐらいですね、ほかのところはもう決まっていますから。日本でいいますと、圧倒的に強い知事さんの出る知事選とか参議院補選とか県会議員選挙、ここはほとんど投票率は四〇%、場合によっては最近は三〇%ぐらい、こういうことになりゃせぬか。そうすると、国民の半分以上の人が参加していないチームが成り立つのかという問題がある。
 むしろ、今度の選挙制度ではその辺が根本問題であって、重複立候補の問題というのは、これはある意味では技術論、常識で判断すればいいわけで、私、今のところはなかなかその辺のことがよくわからないのですけれども、そういう問題点がありますよということを何やらもっと将来に向かって議論してもらいたいというふうに思います。
 終わります。ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 金指正雄

speaker_id: 1117

日付: 1997-02-19

院: 衆議院

会議名: 公職選挙法改正に関する調査特別委員会