保岡興治の発言 (厚生委員会)

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○保岡委員 ありがとうございました。
 それと、臨調の大多数の委員の先生方の慎重な検討がなされた旨、今お話もありましたけれども、臨調の答申でございますが、これは議員立法によって設置された、国会の意思でつくられたわけですね。そこで大多数の方が二年にわたって慎重に検討された結果は非常に重いものがある、私はそう思うのです。
 そして、この中で、金田案でございますけれども、脳死を死としない考え方の法案は可能であるということが最近になって明確になってきたからというお話がございましたが、また、その後のいろいろな御意見があって提案に至ったというお話がございましたが、私は、この臨調の答申を、真っ向からこれを否定してしまう、ごく一番基本のところで否定してしまう法案になっているのではないだろうかということを非常に強く感じます。
 私は、そういった意味で、多くの臨調の委員の先生、あるいは、長い間、脳死に携わって、それをめぐっていろいろ真摯な議論をされてきた方々が、単に移植を目的として、方便として脳死を考えてきたことでないことだけは明らかだというふうに思います。今のお答えは実は金田案の方にぜひお願いしたいのですが、時間もございますので、後で、進めながら、その中でお述べをいただければと思います。
 それで、脳死を含む心臓死を死とする考え方と、心臓死のみを死とする考え方、これは世論調をやれば、大体六対四ないし七対三で脳死を死とする考え方が多い。これも私は重い事実だと思います。法律で死を位置づけなければならないということが両法案の宿命であれば、これは、そういうことで法案の提出をしている以上、私としては、この多数の考え方に沿うことが必要不可欠なのではないだろうか、臨調の答申、国民の多数の意思というものに従うことが正しいのではないかと。
 九九%余の脳死以外の死は、従来の心臓死の概念で説明できて、この点については両方の考え方に差もないし、あるいは臨床の現場でも別にそう混乱も起こらないことでございます。問題なのは、残る一%弱の部分についてどう考えるか。これによって死の概念を変えるから反対だという意見もありますけれども、私は、ここに、まさにこの一%弱に、人間として、社会として、医療として対応が正確に求められているのが脳死をめぐる題だと思うのです。要は、心臓が動いている、人工呼吸器で呼吸はしている、体温もある、人間のこういった状態をいかに受けとめるかということに尽きるのではないかと思います。
 そういった意味で、さきに行われた世論調査で、日本世論調査会の全国調査なんですが、「家族が脳死の状態になった場合、人工呼吸器を外すことについて、あなたはどう思いますか。」という問いに対して、「医師の判断で人工呼吸器を外してよい」とするのが一二・七%、「家族の承諾があれば、外してもよい」というのが六七・一%、「心臓が止まるまでは、人工呼吸器を着けておいてほしい」が一七・三%で、実は八割近くの人が脳死の状態の人から人工呼吸器を外すことを同意というか認めているわけなのです。
 このことは極めて重要な意味を持っていて、やはり人間の蘇生の限界点を死とする基本という点では心臓死などと共通しているということが一番基礎にあって、そうして私どもは、人間が脳の機能を喪失して、人間の最も根幹の部分を失って、なお人工的に呼吸をさせたり、その結果、心臓を動かしていることは、むしろ人間の生の尊厳を邪魔するというか、逆らうような、そういう思いも実は一般の人の中にある、これが一つの判断の重要な基礎になっていると思うのです。また、そういう状況になったのに、いたずらに治療、処置を続けるということの問題も、死者に対するいたわりの気持ち、あるいはお医者さんに対する配慮などから人工呼吸器を外すことを容認したという基礎になっていると私は思うのです。
 そういうもろもろの、人間の死というものの本来の意味をきちっと考えた上で国民の多数がこの一%の現象に対して正確に答えておる、正しく答えておって、移植のための方便などという認識ではないことは明らかだと私は思うのですね。そういった意味で、私は、これらの世論調査の結果、臨調の大多数の委員の先生方の長年の慎重な審議の結果、それを尊重すべき国会の立場、そして人工呼吸器が生まれてから長年にわたって脳死の定義をしてきた人類の歴史、そういったことを考えれば、これはやはり人類共通の課題であり、人間としての課題であり、日本人の文化とか日本の何か特殊な習慣に基づいて死、脳死の判断をすべき次元の問題ではないように私は思うのです。
 そういった意味で、これらの、この一%をめぐる脳死の考え方の多数の考えをむしろ少数に置きかえて立法する姿勢というものが私はよく理解できないのですが、いかがでございましょう。

発言情報

speech_id: 114004237X01619970415_010

発言者: 保岡興治

speaker_id: 16198

日付: 1997-04-15

院: 衆議院

会議名: 厚生委員会