牛嶋正の発言 (国民生活・経済に関する調査会)
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○牛嶋正君 皆さんのお手元に「社会資本整備の進め方について」というペーパーを用意させていただきました。今、会長がおっしゃいましたように、ちょっと時間が十分というふうに限定されておりますので、ぺーパーを用意させていただきました。これに沿って説明をさせていただきたいと思います。
これまで多くの参考人の方から意見を聴取してまいりました。これから二十一世紀に向けて社会資本整備を進めていく場合に何が一番大切であるかということ、そういった参考人の意見を聞きながら私なりに考えてみたわけですが、問題は、社会資本を整備していく場合の基準と申しますか、投資基準といいますか、整備基準のあり方、これがやっぱり一番問題になるのではないかなというふうに思います。
そこで、すべての社会資本についてその整備基準、それから投資基準を議論することは時間的にも許されておりませんので、きょうは道路整備のケースを取り上げてこの問題を考えてみたいと思いました。なぜ道路整備を取り上げたかということですが、一般会計ベースで見ますと、公共投資総額の約三〇%が道路の投資に向けられているわけです。全体の公共投資額がGDPの六%ですから、約十兆の投資額ということになります。ですから、ここの道路のところの整備が非常に効率的に、そして資源配分の観点から見ましても最適な形で進められるならば、我が国の社会資本整備に対する評価というのはそこでかなり高まってくるというふうに思われるからであります。
もう一つ道路を取り上げた理由は、参考人の御意見にもありましたように、道路に関しましては比較的これまで科学的あるいは客観的な分析手法が使われてまいりました。それはどういうふうなものであるかといいますと、費用便益分析と呼ばれているものであります。道路が建設されることにかかる費用とそれから道路がもたらす便益とを比較いたしまして投資の決定を行っていくわけであります。
これだけの説明ではちょっと御理解いただけないと思いますので、四ページをお開きいただきたいと思いますが、ここでバイパス建設に例をとりまして、費用便益分析がどういうふうに適用されるかということを説明させていただいております。
よく見かけることですけれども、国土軸の上にあります都市で、国道が都市の市街地の真ん中を通っている場合があります。通過交通が多いわけですけれども、市街地ですから幾つか信号がございまして、そこでとまらなければならない。その都市を通過するのに相当時間がかかります。そういうときにバイパスが建設されるわけであります。その場合に、今そのバイパスのルートとして三つのルート、それを適当にルート一、ルートニ、ルート三と、こういうふうに呼んでおきたいと思いますけれども、そういう建設計画がつくられたといたします。これはいわば代替案でございます。このうちからどのルートを選んでバイパスを建設するかというときに費用便益分析が使われるわけであります。
五ページのところに、そのバイパス三ルートの効率性ということで表をまとめさせていただきました。この単位は一億円でございますけれども、ルート一の場合には建設をしていくに当たりまして、例えばトンネルの箇所もあったりなんかしまして、百二十億の費用がかかるというふうに今仮定をしたいと思います。ルート二の方は、比較的平たんなところに道をつくりますので百億で済む。ルート三は、これは今までの市街地を通っている国道を立体交差するというふうな形で、先ほど申しました通過交通量の処理をしていくということで九十五億というふうにいたします。
それに対しまして、便益というのは何かということです。今、このルートがつくられなかった場合に、その市街地を通過するのに仮に二十分時間がかかったと。ところが、ルートが建設されることによりまして、十分でその二地点を通過することができたといたしますと、十分間の時間短縮になります。一台についてそうですから、交通量を掛けますと全体の時間短縮額になるわけで、これを例えば平均賃金等で貨幣に換算する、貨幣タームに換算するというのがベネフィットでございます。それが百五十億、百四十五億、それから百三十億というふうに計算されたといたしますと、C分のB、費用に対する便益がどのような割合になっているかということがそれぞれのルートの効率をあらわすわけであります。計算いたしますと、一・二五、一・四五、一・三七でございますので、この場合はルートニが一番高い効率であるということで、ルートニを選んで建設事業が進められるわけであります。
こういうふうに、費用便益分析というのは一つのプロジェクト、事業を進めていくに当たりまして幾つかの代替案を設定して、その代替案の中から最も効率的な代替案を選ぶというのに非常にすぐれた分析手法であります。ですから、我が国におきましても、建設省あたりばこの費用便益分析を非常によく使っているわけであります。
しかし、この費用便益分析が絶対的なものであるかというと、そうではありませんで、やはり有効性から見ますと幾つかの問題がございます。きょう私が御提案申し上げますのは、その問題点をどういうふうにクリアしていくか、そしてこの費用便益分析を軸に置きながら、効率的な投資が行われるための基準をどうつくっていくのかということで提案させていただくわけでございます。
したがって、一番最後の、ちょっと途中を抜かしまして、九ページの社会資本整備の進め方に関する四つの提言というところに入らせていただきます。十ページに、そのうちの一つといたしまして、事業間の優先順位の決定についてという項目を設けさせていただきました。
今、説明いたしましたように、バイパスを建設するというときに幾つかの複数の代替案があって、そこから最も効率的なものを選ぶのには費用便益分析というのは非常にすぐれているわけです。しかし、別な事業とそれからバイパス建設とを比較する場合、そこに優先順位をつけるに当たりましては、ちょっとこの費用便益分析は問題があるわけでございます。
例えば、そのバイパスを建設する都市を、今仮にA市というふうに言っておきたいと思います。そして、そのお隣にB市がございまして、その二つの都市の人口が最近急速に増大をしてきた、したがってAとBを結ぶこれまでの道路ではちょっとピーク時におきましては渋滞、停滞が生ずる。そこで、これまでの道路をもう少し拡幅するか、あるいはもう一つ新しい道路を新設するかというふうな事業が上がってきたといたします。
その場合、その事業と、それから今説明いたしましたバイパスの事業を予算的には優先順位をつけて、ことしは一つだけ、そして来年その次にもう一つやるというふうに優先順位をつけなければならないといたしますと、その優先順位をつけるに当たりまして費用便益分析はそれほど有効ではありません。そこで、そういった事業間の優先順位をつけるためには、もう一つ総合的な判断基準が用意されなければならないわけであります。
その判断基準といたしましては、私はその地域における道路ネットワークを想定いたしまして、その道路ネットワークの持っております。その機能がどちらを優先した方が高まるのかというふうなことで判断していけば、その事業間の優先順位もつけることができるのではないかというふうに思います。そういった総合的な判断基準をさらに設定するということをここで提案させていただいております。
二番目は、十一ページになりますけれども、環境への影響の評価であります。
これまで道路の建設というのは、先ほどから言っておりますように、主としては効率性を追求しながら道路の建設が行われてきたというふうに考えていいのではないかと思います。しかし、最近は、道路建設によって周囲の環境にどういう影響を与えるかといった環境への影響を考えていかなければなりません。その場合に、道路建設に当たりまして、環境への影響を評価するに当たりまして二つの方法があると思います。
そこに書きましたように、その一つは、環境への影響度に上限を設け、それがクリアされるときは社会資本整備を進めるという立場であります。これは、今議論されております環境アセスメントがこういった方法をとっているわけであります。もう一つは、社会資本の持つ効率性と環境への影響度とをトレードオフの関係としてとらえる立場であります。
今、その下に別表、事業AとBの効率性と影響度というので表をつくらせていただきました。プロジェクトAの場合は、先ほど費用便益ではかりました効率は一・五六、それからプロジェクトBは一・三八というふうに今仮に想定をいたしました。影響度の方は、これは大きい方が問題でありまして、プロジェクトBは五の影響度でありますが、プロジェクトAは八の影響度であります。もしこのプロジェクトAとプロジェクトBを選択するに当たりまして効率だけで決めるならば、当然プロジェクトAというのが決まるわけであります。しかし、環境に与える影響度だけで考えますと、今度は逆にプロジェクトBが選択されます。こういうふうに二つの基準がトレードオフの関係になってしまった場合に、それじゃどちらに決めるべきかという問題が出てくるわけであります。
一つの方法といたしましては、効率で見ますと、プロジェクトAはプロジェクトBに対して一・一三倍の効率性を持っております。ところが、影響度の方は、プロジェクトAの方はプロジェクトBに比べまして一・六倍の影響度があるわけであります。ということでございますので、環境度を採用いたしましたプロジェクトBを選択するというふうなことも一つのとり方だと思います。
いずれにいたしましても、今いろいろなところで議論されておりますように、できるだけ効率と影響度のトレードオフの関係を、国民の意見を反映しながらやっぱり一定のルールを決めるべきではないかというふうに思います。
あと二つ提案がございますが、その一つだけ、時間の関係がございますので報告させていただきますと、社会資本の場合は、民間資本に比べまして非常に長い耐用年数です。民間資本の場合は、大体法定の耐用年数というのは十年でありますけれども、社会資本の場合は五十年とか六十年でございます。しかも、その計画から建設までの建設期間、これも長いのであります。
そうしますと、計画を立てた時点に比べましてどんどんどんどん時間がたつ、それに従いましてプロジェクトで立てた前提が崩れていくわけであります。そういたしますと、建設計画の途中でも、あるいはまた供用を開始された後でも、もう一度そういった前提が大きく変わる場合には私は計画の変更を考えていいのではないか。そしてまた、最近のように環境問題というものが非常に重要になった場合には、建設計画を立てたときにはまだ効率だけで議論されていた。そうだとしますと、先ほど説明いたしました環境度を考慮した、もう一度計画の立て直しをしてもいいのではないかということであります。
ただ、その場合、ケース・バイ・ケースで行いますと非常に混乱をいたしますので、やはり計画の変更をする場合には一定のルールをつくるべきであるというふうに思いますが、そのルールに関しましては、残念ながらちょっと時間がなくて十分な御提案ができないのでございます。
あとの四番目の提案は、だんだんだんだん社会資本の整備が進んでまいりました。ですから、これから建設よりも、むしろこれまでつくられた社会資本の維持管理が非常に重要ではないかというふうな点を指摘させていただいたわけでございます。
ちょっと超過いたしましたが、以上でございます。