笹野貞子の発言 (国民生活・経済に関する調査会)
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○笹野貞子君 私は、民主党・新緑風会の意見をまとめまして、社会資本整備及び社会保障のあり方について意見を述べさせていただきます。
皆様方のところにペーパーをお配りしておきましたので、それをごらんになっていただきたいと思います。
我が国は、経済の成熟化と少子・高齢化時代を迎えつつあります。途上国型の産業保護政策や旧来型の社会資本整備を中心とした政府の役割を縮小し、基礎研究など純然たる公共財の供給に徹した市場補完的な機能へ移行すべきであると思います。一方、高齢化社会に対応した社会保障を中心とする政府の役割を再編、強化すべきであると思います。
その一といたしまして、財政構造改革時代の社会資本の整備。一、公共事業の総合的、効率的な実施。
伝えられるところによれば、政府・与党の財政構造改革会議は、公共投資基本計画の三年延長、分野別長期計画の二年延長といったことを議論しているとのことであります。しかし、二十一世紀に向けた公共財の内容やその供給方法を示さず、政策的優先順位も論じないで、このような単に公共事業の計画期間を延長するだけでは本当の意味での財政構造改革とは言えません。
今後の社会資本整備は、第一に、目標の明確化、重点化を図ること、第二に、事業のコストと効果の事前事後の評価を明確にすることの二点が重要であります。
二番目といたしまして、社会資本整備の目標の明確化。第一の社会資本整備の目標としては、例えば、一、超高齢化社会における快適な生活環境の整備、二、安心、安全な暮らしを支えるインフラの整備、三として、成熟段階の次世代経済システムを支える基盤整備であると思います。
具体的には、一、超高齢化社会への対応としては、高齢者向けの医療、福祉施設、バリアフリーの施設や町づくりが求められます。また、自然との共生を重視した治山治水対策や水資源開発、多重性を持った交通通信ネットワークの整備が考えられます。
三として、さらに、次世代の経済システムを支える基盤整備としては、次代を担う人材の育成、確保を目的とした女性の社会進出を支える育児、介護その他の生活環境を整備したり、情報化に対応した教育施設整備などが求められます。また、ハードウエアとしては、光ファイバーなど情報通信網や基礎的な科学研究施設、効率的な国内物流体制や国際交流ネットワークなどが求められます。
三として、計画の効率性、透明性の確保、第一に、公共事業の効率性については、建設コストにかかわる内外価格差や重複投資の是正、競争原理に基づく入札、契約、施工の仕組みの確立などが求められます。
また、民主党が提案している公共事業コントロール法案などに見られるように、一、公共事業計画を検討する審議会の情報開示等による計画策定手続の透明化や国会における公共事業計画の統一的、総合的な審議、二番目として、あるいは事後評価書の策定や国会審議などによって計画の策定から執行、事後評価までのプロセスを公正、透明に行うことが必要です。
大きな二番目として、成熟社会の社会保障について述べさせていただきます。
まず第一に、単なる負担論を乗り越えなければなりません。社会保障のあり方について意見を述べますと、昨今の社会保障問題をめぐる論議は、国民負担率や保険料に関するものなど単なる負担論に陥りがちであります。
そこで、まず第一に指摘したいのは、少子・高齢化社会においては、日本が戦後の欧米へのキャッチアップのプロセスにおいてらち外に置いていた老いや障害、性差別といった問題が普遍的な課題として浮上するという点であります。
日本はいわば二十一世紀の高齢化社会のフロントランナーとなるわけですから、したがって戦後の高度成長期以降の高成長追求、若年の男子労働者中心の経済システムの上に成り立った従来型の発想の転換が求められると思います。
二番目に、福祉・社会保障の経済化と経済の福祉・社会保障化の問題について述べたいと思います。
福祉・社会保障と経済を独立して対立するものととらえる従来型発想から転換する必要があります。介護サービス、公的介護制度の充実によって女性の介護、家事労働からの解放、女性の社会参加の機会の増大、労働力率の上昇、労働供給の増加、経済成長という経路で、福祉・社会保障が経済にとってプラスに作用するといったことが予想されます。
もちろん、こうしたプラスの発展が順調に進むためには、介護以外の面でも家庭責任の公平な分担や労働と生活の両立整備などの基盤整備が不可欠であることは言うまでもありません。すなわち、福祉的な事業が市場ベースに乗るようになり、あるいは経済にプラスの効果をもたらすようになる、つまり福祉・社会保障の経済化がもたらされます。
その一方、高齢化社会においては、例えばノーマライゼーションの観点から、バリアフリー型の住宅や公共施設、交通機関等の建設や高齢者、障害者との共生を念頭に置いた町づくりが求められます。つまり、経済活動が福祉的な観点や要素をあらかじめある程度織り込んだものに変化していく経済の福祉・社会保障化の進展が追求されるべきであると思います。
三つ目としまして、成熟・超高齢化時代の社会保障の公私の役割を分担しなければなりません。成熟社会、超高齢化社会における社会保障は、その公私の役割分担のあり方や保険制度と公費、すなわち税による制度のあり方を整理すべきであります。
高齢者の構成比が非常に大きくなる超高齢化の時代においては、社会保険は、リスクの分散という性格から世代間の所得移転、すなわち福祉という性格が色濃くなります。例えば、老人の医療費を若年者が支えている老人医療、福祉の部分がそれに当たります。また、同じ世代内において長生きをするリスクを分散することを目的とした社会保障である年金についても同様であります。当初の積立方式が実質的に若年者が高齢者の年金を負担する賦課方式に移行しており、所得移転の性格が色濃くなっております。
一方、特定少数者を対象とする一方的な所得移転として出発した福祉が、超高齢化によって対象が拡大し、リスクの分散としての保険的な性格を持つようになってきております。
したがって、例えば、第一に、高齢化に伴い所得移転的な性格が強い部分については公費中心の基盤を充実させ、第二に、所得移転よりもリスクの分散という機能の強い部分については保険によることとし、国は市場を補完する役割に純化させていかなければなりません。第三に、保険制度をとるもののうち、若年者の医療など、いわゆる逆選択が生じやすい部分は強制加入の社会保険で保険制度を維持する。第四に、年金の所得比例部分のように逆選択性が生じにくい部分については民間保険で対応していくようにするといったことを考えるべきです。
こうした基本的な考え方で現在の社会保障制度を見直すとすれば、第一に、所得移転の性格が強い年金の基礎的部分や老人医療、福祉は税中心の仕組みにする。第二に、リスク分散の性格が強く、かつ逆選択が生じやすい若年者の医療については社会保険の仕組みにする。第三に、リスク分散の性格が強く、かつ逆選択が生じにくい年金の所得比例部分、いわゆる厚生年金の二階建て部分については、民間保険を視野に改革していくべきだというふうに思います。
いずれにしても、単なる負担論に終始しがちな社会保障改革論ではなく、中長期的な視野、歴史的な視点から見直すべきだと考えます。
以上で終わります。