屋山太郎の発言 (予算委員会公聴会)
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○公述人(屋山太郎君) 屋山でございます。
きょうは時間が限られていますので、二点について申し上げたいと思います。
一点は、日本が世界から見て非常に魅力のない国になりつつある。それが行財政改革の問題にもつながってくるわけですが、そういうジャパン・バッシングならぬジャパン・パッシングという現状になっているんじゃないか。それからもう一点は、そういう根源に天下りの問題が横たわっているというので、その二つについて私の考え方を申し上げたいと思います。
お手元に資料がお配りしてあると思います。
このジェトロの白書でありますが、全世界の主要国・地域への総投資額というのは、九四年に二千三十二億ドルだったのであります。この二千三十二億ドルがどこに投資されていたかというのを見ますと、アメリカへ四百九十四億二千万ドル、つまり二千億ドルの投資の大体二四・三%がアメリカに行っている。それからEUに三一・二%が行っている。それから対アジアでも二三・九%。これに対して対日投資というのは八億九千万ドル、わずか〇・四%ということであります。
これから空洞化が進む一方で新規の投資がないという状況が続けば一体どうなるのか、なぜそんなに魅力がなくなったのかということを真剣に考えないと、今ちょっと調子が悪い、じっとしていればそのうちに運が向いてくるだろうと、そういうようなものではないということを申し上げたいと思います。
次に、観光客を見ましても、日本から外国に行く人は千五百万人、外国から日本に来る人はわずか三百万人でありまして、これも五分の一になっている。
それから、もっと問題だと思うのは、高等教育機関への留学生の数であります。これは九五年でありますが、日本からアメリカへ勉強に行く人が八万二千八人、ところがアメリカから日本に来る人は千八十七人にすぎないということであります。実は三年ほど前に私はモンデール元駐日大使のスピーチを聞いたことがありますけれども、そのときにモンデールさんがおっしゃっていたのは、日本からアメリカに行く人が五万人、それからアメリカから日本に来る人が千五百人と、こう言っていたんですが、たった三年ぐらいの間にその五万人が八万人にふえて、来る方は千五百人が千人そこそこになった。これはやはり日本に魅力がないと、これは教育問題だけじゃなくていろんな問題が重なってこういう結果になりているだろう。
ノーベル賞の受賞者数でありますが、これは九三年末の時点でアメリカが二百十四人、これに対して日本は七人、この後大江さんが受賞されましたから八人でありますが。この数字を調べるのも、外務省に聞いても文部省に聞いてもこういう数字はしょっちゅうカウントしているような課がないんですね。日本は余りもらわないものですから、二十年に一遍ぐらいの話ですから、常時そういうところに職員なんか置いておかないというほど閑散としているというのもこれは非常に寂し過ぎないかということであります。
それから、港湾のコンテナ取扱量を調べてみましたが、九四年の全世界のコンテナ取扱量の伸びというのは一一・一%であります。香港だけを見ますと二〇・六%、それから香港を含む極東ということでも一六・三%であります。それに対して日本は伸び率がわずかに一・七%。これは実は九四年だけちょっと低いんですが、それにしてもこの減り方というのは尋常じゃない。荷物全体は物すごくふえているのに、日本にかかわってくる貨物というのがだんだん減っているということであります。
高度成長期には日本は輸出入貨物の荷動きの四〇から五〇%扱っていた。つまり、アジアに行くものも欧米から全部神戸、横浜というところに持ってきて、そこから仕分けしてアジアの各地に行ったのでありますが、今は釜山でありますとか高雄とか香港、シンガポールというところに行って仕分けして、日本の港に、消費地に直接持ってくる。完全にハブの機能を停止したといいますか、こういう状況は実は航空機もそうでありまして、今の現状が続くとみんなソウルにまず行く。それで、ソウルから日本の空港、東京、大阪も含めて十九空港に便が飛んでおりますから、ソウルがハブになって日本の飛行場がスポーク、ローカル港になっているという事情がございます。
そういう意味で、日本の魅力のなさというのはいろんな分野にわたってじわじわ崩壊が起こってきているんじゃないか、これが私の懸念であります。
それがなぜ起こっているのかということを考えますと、やはりがんじがらめの規制というのがあらゆる分野で激し過ぎるということで、物の考え方として日本は規制は必要なのであります。規制を全部なくしてレッセフェールにしろと言っているわけじゃなくて、要するに強めるべき規制は強める、緩めるべきところは緩める、あるいは撤廃するという、そうでり仕分けが必要なのでありますが、日本は個別の業法というもので、石油なら石油をずっと輸入するところから消費するところまで全部それを規制している。あらゆる業法で規制している。実は規制をしている方が人間が少なくて済むんですね。
今度の金融監督庁にしても、今まではまず業務をやる前に大蔵省と相談していたからそこそこそれで済んでいたんですが、今度監督するとなると、これは何千人も人間が多くなる。監督の方が難しいのでありますが、日本はいわゆる官業が一体になって何々業法というものでコントロールしてきた。この考え方を根本から改めないといけないんじゃないか。
各規制の業法を、行政手続法、独禁法、PL法あるいは情報公開法、こういう一般法に置きかえて、それで取り締まるところはびしつといく。それで、一般法ですからそこに行政当局の恣意が働く余地が非常に少なくなる、こういう形に日本の行政システムを変えていく必要があるんじゃないか。規制撤廃というのが大命題でありますが、独禁法も強化しなくちゃいかぬ。
それから、まだ情報公開法というのが制定されていませんが、これはOECD、先進国クラブの中で情報公開法というのができていないのは日本だけであります。それから、曲がりなりにも行政手続法とPL法はそろいましたけれども、まさにこれも世界におくれてつい二年ぐらいしかたっていないということで、規制撤廃というと、何でもやりたい放題にやるとマフィアがはびこるとか、そういう議論をする人がおりますけれども、そんなことじゃないんです。
例えば車検の規制なんかでも、イタリアとかフランスは車検の規制がなかったんですね。ですが、EUの統一に当たってあらゆる制度を平準化しようというときに、なかったイタリアとフランスにドイツ並みの車検を導入する。これは公害問題が主でありますが、規制をやるべきところはそれをきちんとやる、そのほかはうんと垣根を低くしていく、あるいは外していくという作業をEUはこの二十数年の間やってきまして、全部の項目で二百八十八の項目をEUの統一基準にしたという歴史があります。ですから、私もこれから日本の規制体質というのを思い切って変えなきゃいけないんだということを特に強調したいと思うのであります。
この官業の癒着体制がどうして直らないかというと、私は官僚と業界との結びつきということに尽きると思うのであります。乱暴なことを言うようですが、解決策はもう天下りを禁止する。途中で自分の力で商売がえする、これは自由でありますが、役所が音頭をとって天下りをさせるということは全部禁止する。
そのかわり、今の人事制度では局長、次官になる人以外は大体五十歳前後で退職するわけですから、五十歳で退職させて、天下りするな、隠居しろというのは無理な話であります。ですから私は、公務員の定年を延長する。今は六十歳でありますが、年金をもらえるというのが六十五歳になったら定年も六十五歳というふうに延長していく。私は、七十歳でもやりたい人はそこにいられるという、そういうことが必要だと思うのであります。
そのためには、今ピラミッドになっております人事制度を円筒形に変える。次官というのはその円筒の頂上にいる人じゃなくて、円筒の頂上が六十五歳だとしますと、次官は六十歳でもいい。それじゃ、その上の人はどうなるんだということですが、これは社長より上の職員が多いというのは普通の会社でも同じでありまして、私は、役人の頭の切りかえをやらなくちゃいかぬ。つまり、後輩が次官になってもそれはしようがないんだという、そういう常識の転換ということをしないといけないと思うのであります。
そういう人たちはどうするかというと、退職するまでずっと役職にいるんじゃなくて、ある時期で局長を退任した後、プロフェッショナルですから、そこでその省のシンクタンクでもつくる、あるいはスペシャリストはそのスペシャルな地位で仕事を続ければいいわけですけれども、そうじゃないプロフェッショナルというのは、シンクタンクをつくって、そこで長期的な国家の政策というのを考える、その省の利益だけじゃなくて、日本の将来はこうあるべきだというようなことをそこでしっかり勉強する。
私は、さっき港と空港の話をしましたけれども、これがどうしてこんなひどいことになっちゃったのかというと、結局どこかでじっくり落ちついて航空業界それから海運業界、日本のそういうものはどうなるのかということをしっかり考えているセクションがないし考えている人がいないものですから、何か場当たり主義でやっている間にこれだけ落ち目になっちゃったんだというふうに思います。そこで、シンクタンクをつくって、そういう人を処遇して、そこでじっくり国の将来を考えさせるというセクションにすればいいんじゃないか。そうすると、キャリアは非常に多くなるわけですから、キャリアの採用は半分でよろしい、半分以下で十分間に合うということであります。
本当なら民間から人を持ってくるとか、そういうことが望ましくて、そういう意見を言う方もいらっしゃいますが、それは後の話です。今は民間から入れるという問題をいろいろ議論していても、結局実績は上がらず、ただ今の制度が続くということですから、とりあえず天下り禁止を、これはやろうと思えばあしたからだってできるわけでありまして、公務員の定年はちゃんと六十歳になっている。
要するに、局長をやめても仕事を与えればいいわけですから、あしたからでもできる。まずそういう土壌を一回壊しておいて、それからポリティカルアポインディーがいいのかあるいは民間からその省にリクルートしてきた方がいいのか、そういう議論は後から来る話で、とりあえず私は天下り禁止ということがぜひ必要だというふうに思っております。
一時、一括採用がいいかなということを考えたことがあって、いろいろ調べるんですけれども、どうも二つの理由で反対せざるを得ない。といいますのは、一つは、私のところにいろいろ就職の相談に来る学生たちの話を聞いていますと、もう二十一か二で、私は例えば流通関係の仕事をやりたいとか、運輸関係の仕事をやりたいとか、食品関係の仕事をやりたいとかはっきり決まっているんですね。だから、志望の決まっている人の方が多いのに一括で採用して、それでどこに行くかわからないというんじゃ、入ってくる人も、目指したのがただ公務員という人なら別ですけれども、やっぱり通産省でやってみたい、運輸省でやってみたいという人がいるわけですから、そういう意味で一括採用というのは余り感心しない。
それから、これは裏を申すと、一括採用しろしろと言っている省の人というのは特殊法人が非常に少ない省なんですね。ろくろくない人がしきりにそれを言う。そうすると、一括採用にしますと全部がらがらぼんで人員は全く関係のないそういう特殊法人に行こうと、こういう腹が丸見えなのであります。
これから特殊法人もなるべくなくしていこう、それから官僚制度も人事制度も変えていかなくちゃいかぬというときに言うことですから、私は一括採用というのはやめた方がいい。とりあえず天下り禁止をしないと、この国会だけでも天下りの弊害というのは物すごく表面化しているわけですから、ぜひ人事制度に手をつけていただきたいということを申し上げて、私の意見といたします。
どうもありがとうございました。(拍手)