芳澤弘明の発言 (予算委員会公聴会)
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○公述人(芳澤弘明君) 公述人として意見を申し述べる機会を与えてくださいましたことを光栄に存じます。
私の意見の第一は駐留軍用地特措法の問題、第二は海上基地建設の問題、そして時間がありましたら劣化ウランの問題等に言及します。
楚辺通信所の一部用地が既に昨年四月から不法占拠状態になっております。去る三月十二日に開かれました沖縄県収用委員会の第二回公開審理におきまして地主の知花昌一さんは、私の土地を国は三百四十六日間もただで不法に強権的に占拠している、その使用権原はあるのかと釈明を求めました。防衛施設局はまともな釈明ができませんでした。嘉手納、伊江島、普天間など他の十二の施設についても本年五月十四日に期限切れになることはほぼ間違いありません。
沖縄県収用委員会は強制使用裁決を過去三回にわたって行ってまいりました。審理はいずれも長期化しておりまして、第一回目は約一年間、第二回目は一年七カ月、第三回目は一年ニカ月かかりました。現在行われております審理は、九六年六月六日の申請受理後、本年二月二十一日に第一回目が開かれまして、去る三月十二日に二回目、そして来る三月二十七日に三回目です。かなり速いスピードでこれは行われておりますけれども、物理的にまず裁決は間に合わないでしょう。
では、その責任はだれにあるのでしょうか。大田知事の署名代行拒否があったとしても、拒否せざるを得ない事態を招いたのは、ほかならぬ少女暴行事件などを引き起こした米軍と、これをかばい、犯人の身柄引き渡し要求もろくにしなかった政府ではなかったでしょうか。九万一千人もの県民が結集された一昨年の一〇・二一県民総決起大会で、米軍基地の整理、縮小、地位協定の抜本的な見直しなど四つの項目が採択された時点で、政府は今日の事態を十分に予測して、その対策を立てておくべきであったと思います。
使用権原を与えるか否かの収用委員会の審理の最中に、たとえ審理の結論、裁決が出るまでの期間に限定したとしても、このような使用できるという法律を制定するなどということは許されることではないと思います。仮に、沖縄県の収用委員会が使用権原はないとの裁決を下した場合は、さらにまた別の法律をつくろうということになるのでしょうか。
お手元にお配りしてあります新聞に登記簿殺人事件というのがあります。ある土地について、現に生きている人を死亡した人だということで登記簿がつくられまして、それに基づく申請がなされました。このような場合、これは却下は免れないと思います。
沖縄の軍事基地の形成過程を見ることによって、この特措法の問題について考える材料があると思います。
太平洋戦争末期、四五年四月一日、米軍は沖縄本島中部に上陸し、激しい地上戦の後にこれを占領しました。この地上戦で県民の四名に一人が死亡しました。米軍の沖縄攻略に備えて日本軍は各地に飛行場を建設しました。その土地は農民から接収したものであります。日本軍の基地、例えば伊江島、読谷、嘉手納の飛行場は米軍の占領によってそっくりそのまま米軍基地として再構築されました。ちなみに、一九四五年八月九日に長崎に原爆を投下したB29は、テニアン島に帰る途中、伊江島の飛行場に給油のため立ち寄っております。
沖縄戦終了後、米軍は、生き残った住民をポツダム宣言受諾後までも収容所に強制収容し続け、無人の土地を必要なだけ好き勝手に囲い込み、基地を建設しました。旧北谷村の住民は、収容所から生まれ育った村に帰ってみたら、そこは既に基地になっていた。住むところもなく、谷合いに追い込まれたわけです。広大な嘉手納基地で分断されたために、北谷村は嘉手納村と二つに分村を余儀なくされました。浦添村民も、収容所から帰ってきたとき、キャンプ・キンザーにその土地はすべて囲い込まれていました。それはへーグ陸戦法規に違反する強奪行為なのです。
ちなみに、へーグ陸戦法規第四十六条は「家ノ名誉及権利、個人ノ生命、私有財産並宗教ノ信仰及其ノ遵行ハ之ヲ尊重スヘシ 私有財産ハ之ヲ没収スルコトヲ得ス」と定めております。さらに、第五十五条は「占領国ハ敵国ニ属シ且占領地ニ在ル公共建物、不動産、森林及農場ニ付テハ其ノ管理者及用益権者タルニ過キサルモノナリト考慮シ右財産ノ基本ヲ保護シ且用益権ノ法則ニ依リテ之ヲ管理スヘシ」と明記しています。このへーグ陸戦法規に違反するものです。
その後、朝鮮戦争などがあって、アメリカは沖縄を太平洋のかなめ石にして、さらに土地の取り上げを強行して恒久的基地建設を強行しました。一九五二年のサンフランシスコ対日講和条約によって沖縄は日本から分離され、アメリカの施政権下に置かれました。その後、米軍は矢継ぎ早に布告、布令を公布して、軍事基地の継続確保と拡張を図りました。五三年四月には土地収用令を公布して強制的に土地の接収を行いました。このときは、銃剣で武装した米兵に守られて、ブルドーザーが住民の抵抗を押しのけて家屋を押しつぶし、耕作地を敷きならしていく、文字どおりの土地強奪でありました。伊江島の場合、一九五五年三月十一日、突如として武装兵が上陸して土地の取り上げをしました。はしかで高熱で泣き続ける赤子を抱えた母親、そのおばあちゃんが、せめてこの子の熱が下がるまではこの家を壊さないでくれと取りすがりました。これを突き飛ばして米兵は土地を取り上げました。お手元に配られている写真です。
これは「沖縄からのメッセージ」、沖縄県がつくったものの写しであります。抵抗する農民は、毛布にくるまれて、ヘリコプターに乗せられて那覇に連れていかれ、軍事裁判にかけられました。これに対して県民は島ぐるみの戦いでこたえたわけです。そして、プライス勧告による恒久的な土地取り上げの政策を断念させました。
ところで、米軍は、八月十五日の無条件降伏後、沖縄占領を継続しましたが、これは領土の不拡大を約束したカイロ宣言とポツダム宣言違反です。次いで、サンフランシスコ条約発効後もその条約三条を根拠に沖縄の占領統治を続けましたが、条約三条は、沖縄を米国の信託統治に付することを日本があらかじめ同意し、そうなるまでは米国が施政権を行使するというものでありました。しかし沖縄は、国連憲章上、信託統治に付することのできない地域です。その点からも沖縄統治は国際法に違反するものでした。日本が国連に加盟した五六年十二月八日以降はなおその違法性は高くなりました。憲章七十八条は信託統治制度は国連加盟国となった地域には適用しないと定めているからです。
このような国際法上も違法な占領下で米軍が制定するどのような法の衣で装いを凝らそうとも、その実質はよろいによる土地強奪であり、それが違法、無法なものであったことは明らかです。したがって、七二年五月の日本復帰と同時に沖縄の米軍用地は地主たちに返還されるべきものであったわけです。
しかし、復帰に際しても政府は、公用地法を制定して従前の米軍用地を引き続き米軍に提供し、この法律による使用期限が切れようとするとき地籍明確化法を制定して、その附則でもって公用地法の効力を延長しました。その際、立法手続が間に合わず、七七年五月十五日から四日間の法的空白が生じました。これは記憶に新しいところであります。そして、地籍明確化法の期限が切れると、今度は軍用地特措法を突如復活させて、これによる強制使用に踏み切ったのです。
このことについて、アメリカの著名な法律学者レノックス・ハインズ弁護士、ニュージャージー州立大学の教授ですが、彼を団長とする国際民主法律家協会の沖縄調査団は次のように指摘しています。このように、住民の意思に反して県土が強制的に接収され続けて五十年間も米軍基地として使用されているので、沖縄においては事実上いまだに戦争による占領が続いていると言わざるを得ない、これが国際的な評価であります。
収用委員会の審理手続は憲法で保障された国民の財産権が不当に侵害されることのないよう厳格に定められたものであり、この手続の途中に政府が一方的に土地の取り上げを続けることは、憲法第二十九条、三十一条、適正手続の保障、財産権の保障に照らして不当であります。特措法は実際には沖縄県民の土地にしか適用されないものです。事実、今回新設されようとする附則は、文字どおり現在審理中の土地、十二施設、三千人の土地だけを対象にするものです。ここで、国会議員の皆さんは憲法第九十五条という条項があることを想起してください。
このように、政府が考えている米軍用地特措法の改正と特別立法の制定は二重にも三重にも憲法に違反するもので、まさに法治国家の自殺行為であると言わねばなりません。我が国が真に主権国家であるならば、法と正義を投げ捨てて、また国民の権利を踏みにじってまで外国の軍隊のために国民の土地を提供するという暴挙を犯してはなりません。
お手元に配ってあります琉球新報と沖縄タイムスは、二つながら社説を掲げてその無法を説いております。もちろん、条約と憲法との関係についてはいろいろ意見があります。しかし、安保条約があるから基地を提供しなければならないということで国会がそのような法律をつくるのであれば、米軍占領下の高等弁務官がやったことと等しい行為であると私は思います。それでは我が日本はアメリカの属国、植民地であると言われても仕方がありません。
きょうお配りしました琉球新報に日本政策研究所の所長チャルマーズ・ジョンソン氏が書いております。「なぜ米軍は沖縄に駐留しているのか。植民地主義者として、つまり、第二次世界大戦の結果、東アジアに出現したアメリカ帝国の代表として、居座っているとしか言いようがない。」「自国軍のプレゼンスを東アジアの安全保障と安定を盾に正当化するアメリカの主張も、同様に疑わしい。」「朝鮮は、五十年前に植民地支配から解放された。しかし、沖縄は、二十世紀が終わろうとする今も、依然として、半植民地状態に置かれている。」。
アメリカからもたくさんの学者たちがクリントン大統領あてに、沖縄のこのような土地取り上げはやってはいけない、チェイニー元国防長官も言っているとおり、海兵隊は日本を守るための存在ではない、それはアメリカの国益のために展開するものであると言っているなどという理由を挙げて、海兵隊の早期撤退を求めております。
最後に、海兵隊です。海兵隊の早期撤退、これは当然の要求ですが、私はこの点に関して、海兵隊はそのうち撤退させますよ、しますよ、だから特措法の改正は認めてほしいなどということにしないでいただきたい。なぜならば、普天間基地と引きかえの海上基地、那覇軍港と引きかえの浦添移設等々、これまで政府が国民あるいは沖縄県民に約束してきたことはことごとく守られていません。海兵隊は撤退するなどということでこの法律を押しつけることは許されないだろうと思います。
沖縄に劣化ウラン弾が投下されました。五・一五メモによりますと、鳥島の劣化ウラン弾は廃弾処理をしなければならないことになっている。しかし、処理されないで放置されています。この劣化ウラン弾が海底深く沈んで放射能が沈着する。深層水をくみ上げて健康のために使おうとする沖縄県の計画、これはどうなっていくのでしょうか。五・一五メモの公開も今要求されるべき緊急の課題であると思います。
その他申し上げたいことがたくさんございますが、残された時間は御質問にお答えするという形で補いたいと思います。
どうもありがとうございました。(拍手)