富田俊基の発言 (財政構造改革の推進等に関する特別委員会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○富田参考人 御指名をいただきました富田俊基でございます。
日本経済と財政運営のあり方について、市場経済と民主主義という我が国の原則に照らして、意見を申し述べさせていただきます。
昭和末期のバブルでかさ上げされた高いところから景気を見ることになれてしまったためでありましょうか、景気が停滞すると大規模な刺激策を繰り返し発動してきた。それにもかかわらず、景気の現状が示すように、持続的な景気回復が可能になったわけではない。結果として、国と地方に巨額の借金が累積し、GDPの九一・二%にもなってしまった。こうした対策を繰り返し、財政再建を先送りすると、我が国が立脚する市場経済と民主主義は危機に陥りかねない。
まず、市場経済の観点から論じる。
現在の日本経済は、冷戦後の世界経済の大きな産業構造変化の中に置かれています。新たに市場経済に参加した国々で労働集約的な財の生産が飛躍的に拡大し、新しい国際分業が模索されている。これに伴って、お手元の資料の図一にごらんのように、本邦製造業の海外生産は急拡大を遂げ始めた。国内では業種によって成長力に大きな差が出ている。景気の底から今日までの間に、資本財の生産は四割も増大した。その一方、消費財の生産は全くふえていない。図二に見るような産業構造の変化は今後とも続くであろう。このため、すべての産業で景気がよくなるということは今後とも考えにくい。さらに、十五歳から六十四歳の生産年齢人口は既に減少に転じている。二ページにごらんのように、我が国の潜在成長率も、八〇年代の四%程度から既に半減したものと推定されます。
こうした環境では、財政支出の拡大や減税という旧来の需要刺激策は効果を持たない。そればかりか、企業経営の甘えを助長し、古い産業構造が温存されるという悪循環をもたらしかねない。
政府は、民間経済を自在にコントロールできるという旧思考を改め、政策の枠組みの根本にまでさかのぼった改革が必要であります。産業構造の転換が促進されるよう、市場経済のダイナミズムを引き出さねばなりません。フェアで透明な競争ルールのもとに、企業の創意工夫と自己責任経営を促す規制緩和が一段と推進されるべきである。
次に、民主主義の観点から財政再建の必要性を論じる。
国債を出しても、借りかえすれば、経済が成長するので将来の利払いは重くないという考え方がある。しかし、三ページの図でごらんのように、一九八〇年以降、主要先進工業国では名目経済成長率の方が金利よりも低いという傾向がおおむね定着している。成長率よりも金利が高いということでございます。所得や税収の伸びよりも借金の元利合計の方が早く膨張することを示しております。所得の伸びが高かった昔とは違って、今国債を発行すると、将来の利払いの負担はますます重くなる。欧米主要国で財政赤字の削減が粛々と行われているのはこのためであろう。
昨年の総選挙、ことしの都議選では、若い世代ほど投票率が低く、高齢者ほど投票率が高いという明確な傾向があった。巨額の財政赤字はこうした投票率の反映であるかもしれない。将来に税負担増をもたらす国債に対して、高齢者ほどそれを許容する傾向が強いと考えられるからであります。あるいは、若年層の高い棄権率は、自分の世代に税と年金の保険料などをどんどん先送りされていることに対する反発であったかもしれない。
いずれにせよ、巨額の財政赤字は、我が国の民主主義が危機に瀕していることを示している。今日の国債増発は、将来世代の政策の選択の幅をますます制約することになります。所得の伸びよりも金利が高い傾向を重視し、財政再建に取り組まねばならない。
さて、本九七年度の当初予算では、国債発行は国債費よりも辛うじて少額にとどまった。現在世代の受益と負担のバランスを図り、新しい財政赤字を追加しない状況になった。この意味では、財政構造改革元年予算と呼ぶことができる。だが、現在の財政構造を放置すると、四ページ目の資料が示すように、財政赤字の対GDP比は異常なまでに上昇し、対外収支も大幅な赤字になる。極めて巨額の双子の赤字に将来転落することになる。
このように、現状を放置すると、国と地方の借金残高が拡大を続けるので、利払い費のGDP比も上昇が続く。将来世代の負担は増大を続ける。そこで、国と地方の借金残高のGDP比をまずは
一定の水準に保つ必要があります。このためには、年々の国と地方の赤字の対GDP比を三%以下にする必要があります。現在その比率は五・四%で、それを二〇〇三年までに三%以下にするというのが財政再建の当面の目標であります。
これを達成するために必要な赤字削減のテンポは、景気の情勢いかんで若干の変動はあり得るとしても、対GDP比で見て年平均〇・四%強であります。このテンポは、我が国の一九七九年から八六年、あるいは九〇年代に入ってからの欧米主要国の削減テンポよりも少しゆっくりしております。しかし、これらに比べて、これからの日本では、高齢化の進展によって、年金、医療などの分野で歳出拡大圧力は格段に大きい。
二〇〇三年までに財政赤字のGDP比が三%以下となっても、財政構造改革が終わるのではない。将来世代の税負担のうち、過去の借金の利払いに充てられる比率を縮小させていくためには、アメリカが二〇〇二年までに達成しようとしているように、毎年の財政赤字をゼロにしなければならない。
これらを実現するためには、財政構造改革の推進に関する特別措置法で、主要経費ごとに歳出に二〇〇〇年までキャップをかけて、歳出削減のための構造改革を推進することが不可欠であります。キャップを超えて歳出が拡大したり、減税によって赤字が拡大することは避けねばならない。
これ以上、安易なカンフル的景気刺激策を続け、将来世代の負担をふやすことはできない。将来世代の国民負担率を五〇%以下に抑えるという方針のもとに、明るい未来を子供たちに残すために、財政構造改革法の成立が急務であります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)