池田元久の発言 (本会議)

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○池田元久君 私は、民主党を代表して、議題となりました財政構造改革推進に関する特別措置法案について、総理にお尋ねします。
 橋本総理大臣、今、日本が置かれている状況、国民の意識について、どのように認識されておりますか。多くの日本人は、我が国の先行きに不透明さを感じ、漠然とした危機感を抱いております。金融市場の極度の不振にも、それが色濃く反映されております。
 しかし、政治、とりわけ政権与党は、我が国がどこへ行こうとするか、進むべき道、展望を具体的に示せずにいます。それどころか、総理の率いる自由民主党は、総理大臣経験者も交えて幹事長のポスト争いなどを繰り広げたあげく、市井の市民の普通の感覚を軽視して、有罪確定者を行財政改革の核心とも言える閣僚に据えようといたしました。そして、石油卸売商をめぐる疑惑が自由民主党中枢にも向けられております。また、みずから打ち出した郵政三事業を初めとする省庁再編構想は、あっという間に骨抜きされようとしています。総理が火だるまとなってやると言った行財政改革は、今や風前のともしびとなる気配すら出ています。
 こうした内閣に対する信頼感の喪失と与党内の反乱、混乱に一体どう対処されようとするのか、まずお尋ねをしたいと思います。
 さて、我が国の財政は、平成九年度までに国債発行残高が二百五十四兆円を初め、政府借入金、地方債残高、それにいわゆる隠れ借金も合わせますと、国、地方の長期債務残高は実に五百二十兆円を超え、GDP、国内総生産に占める債務残高の割合は、イタリアを除いて先進国中最高となっています。この長期債務残高は、我が国の財政の失敗のあかしであると言わざるを得ないと思います。(拍手)
 とりわけ、バブル崩壊後、六回にわたる六十六兆円の不況対策は、景気の一段の落ち込みを防ぐのに若干役には立ちましたが、景気の浮揚効果はほとんどありませんでした。その唯一の効果は、財政構造を無残なまでも悪化させたことでした。
 ケインズ流の裁量的、拡張的財政政策は、先進国では既に過去のものとなっております。総理は、この失敗の現実とその責任をどう認識し、反省しているのか、お伺いをしたいと思います。
 財政構造改革には、国民の理解と協力が不可欠ですが、現状では財政に関する情報の開示が全く不十分と言わざるを得ません。財政構造改革の大前提として、国の財政にかかわるあらゆる情報、データを国民に知らせ、財政を透明なものにすべきだと考えます。
 また、今度の予算編成に当たっては、国の持つ資産や負債の状況、各経費の積算の根拠となる調書、決算では各経費の支出の明細を明らかにする調書などを国会に提出するよう政府に義務づけることが必要だと考えます。総理の見解をお伺いいたします。
 次に、政府案の基本的な問題点について伺います。
 我が国の財政は、平成九年度予算で見ても、一般会計予算の六〇%が特別会計に繰り入れられ、三十兆円以上の予算が国から地方自治体に補助金等で流れる仕組みになっています。こうした一般会計と特別会計の関係、国から地方へ流れる補助金やそれによって行われる公共事業のあり方について、本質的な構造改革の論議が政府・与党でなされた形跡はありません。
 実際に提出された法案を見ても、対象が国の一般会計に限定されており、特別会計、財政投融資、地方財政は事実上対象から外れています。一般会計についても、三年分の分野別キャップ、歳出上限を設け、公共事業などの計画期間を一律に二年間ずつ延長しようというだけで、具体的な構造改革の提案は一切盛り込まれておりません。
 これでは、政府案は数字合わせのための単なる歳出カットの寄せ集め、構造改革とは名ばかりの上げ底の法案と言わざるを得ません。政府には財政構造を抜本的に改革する気があるのかどうか、疑わざるを得ません。総理、これで本当に財政の構造改革になるとお考えなのでしょうか。
 政府案は、財政再建の目標として、国と地方の財政赤字を二〇〇三年度までにGDPの三%以下にするとしていますが、政府案のように中央政府と地方政府の貯蓄投資差額の合計を財政赤字の指標とすることには大変問題があります。過去二十年間の貯蓄投資差額で見た財政赤字は、国と地方を合わせた債券発行残高や借入金の増加分よりも平均で一〇%以上も低い数値になっています。
 このような財政の実情を忠実に反映しない指標を財政再建の目標に掲げて、果たして財政再建ができるでしょうか。国民に痛みを伴う財政構造改革を断行するには、国民にわかりやすい目標を掲げなければなりません。国と地方の債務そのものを指標として、その増加に歯どめをかけるようにすべきだと考えますが、総理はどのようにお考えでしょうか。
 また、政府案は二〇〇三年度までに赤字国債ゼロを達成することを目標に掲げていますが、これにも疑問を抱かざるを得ません。
 土光臨調以来、政府・自民党は、赤字国債ゼロを目標に掲げて、福祉予算や環境保護に必要な予算をカットする一方で、建設国債で賄う公共事業は景気のよしあしにかかわらずどんどん拡大してきました。しかし、バブルによる税の増収で赤字国債発行ゼロは一時的には達成したものの、バブルが崩壊した後、累積債務がさらに拡大し、消費税率や保険料のアップ、福祉予算切り捨てによる自己負担の拡大という極めて高いツケを国民は払ってきました。
 世界じゅうを見ても、国債を赤字国債と建設国債に分けて、一方だけにたがをはめている国はないのです。赤字国債、建設国債という区分自体が、もはや時代に即しているとは思えません。
 当時大蔵大臣を務めたみずからの経験を踏まえて、総理はどのようにお考えでしょうか。赤字国債をゼロにするというだけで本当に財政再建になるとお考えでしょうか。
 民主党としては、財政法を改正し、広く環境や福祉のためのインフラ整備や教育への投資にも、必要であれば公債を発行できるようにすると同時に、今後は、建設国債も含めた国債発行総額を毎年削減していくことを新たな歯どめとして財政の再建を進めるべきだと考えます。総理の御見解をお尋ねしたいと思います。
 旧国鉄長期債務などの隠れ借金を含めて我が国の累積債務の増加傾向がこのまま進めば、二〇一〇年には累積債務残高のGDP比はイタリア並みの一二〇%台になるという試算もあります。EUのマーストリヒト条約では、通貨統合に参加する条件として、累積債務残高のGDP比を六〇%としています。国際的に見ても、累積債務残高をコントロールすることが財政再建の目標とされているのに、政府案では累積債務残高の目標値を明記しなかったのはなぜか、お伺いします。
 二〇〇三年度までに単年度の財政赤字を削減するというフローの目標に加えて、累積債務残高の拡大に歯どめをかける目標を設定すべきだと考えますが、総理、いかがでしょうか。
 また、その際には、旧国鉄や国有林野の累積債務などについても、一般会計で堂々と処理するような総合的な財政再建計画を策定すべきだと考えますが、いかがお考えでしょうか。
 財政悪化の原因の一つは、シーリングの枠外であった補正予算の編成に財政の規律が働かなかったことにあります。バブル崩壊後の七年間に、景気対策の名目で、補正予算によって二十七兆円余の公債が追加発行されました。政府案で補正予算を枠外としているのはなぜでしょうか。各分野別のキャップも当初予算についてのもので、補正予算にはかかりません。これで果たして歳出のコントロールができるのでしょうか。総理の見解をお伺いいたします。
 特に、ウルグアイ・ラウンド農業対策費や住宅・都市整備公団への補助金などが毎年補正予算に計上されているのは、「特に緊要となった経費の支出」に限るとしている財政法第二十九条の趣旨を逸脱しているのではありませんか。これらの経費を計上するのであれば、補正予算での計上をやめて、当初予算で計上すべきものと考えますが、総理、いかがでしょうか。
 緊急景気対策の名目で、またぞろ公共事業ばらまき型の補正予算の編成を求める声が自民党内に上がっているようですが、総理は、景気刺激を目的とする補正予算の編成をするつもりがあるのかどうか。財政再建のバランスをどのように図るおつもりか、お伺いいたします。
 さらに、米国で採用している、歳出増に見合う歳入増を義務づける収支相償原則、いわゆるペイ・アズ・ユー・ゴーの原則と同様の財政運営のルールを我が国でも導入すべきだと考えます。総理の見解はいかがでしょうか。
 さて、我が国が公共事業依存型の経済を続けた結果、ついに日本の公共事業予算の総額がアメリカの軍事費をしのぎ、セメントの使用量が、国土が二十五倍のアメリカとほぼ等しくなるという現実に改めて驚かざるを得ません。まさに土建国家と言わざるを得ないこの国のありようから目を背けることはできません。
 民主党は、公共事業改革の第一歩として、公共事業透明化法案をさきの通常国会に提出し、各公共事業計画の策定の手続を透明なものにするとともに、各計画を国会承認事項とすることなどを提案してまいりました。今後は、一定期間たったものは見直す「時のアセスメント」の観点から、個々の事業計画の見直しを行う仕組みを取り入れるべきだと考えますが、総理の見解をお伺いいたします。
 また、補助金を用いた公共事業を地方自治体の判断で中止することを妨げている補助金適正化法の補助金返還ルールについては、これを早急に廃止し、公共事業の見直しを進めやすいようにすべきだと考えます。総理の考えをお伺いいたします。
 医療、年金などの社会保障制度について、政府案のように、制度の抜本的な改革の方向性を示さずに歳出カットのみを法律で規定することは、社会の安定の根幹をなす社会保障制度への国民の信頼を失墜し、社会の活力を失わせかねないと考えます。この点について総理の見解を伺います。
 以上述べてきましたように、財政が危機的状況にあるにもかかわらず、政府案は構造改革なき財政のつじつま合わせをしたと言って過言ではありません。
 運命に無責任になるとき、文明は滅亡すると言います。私たち民主党は、未来に責任を負う立場から、この国の破局のシナリオを安易に語ることなく、国民、市民とともに本当の構造改革を進めたいと思っております。そのため、民主党の財政構造改革法の対案を委員会審議の過程で提出し、大いに論議を深めていきたいと考えております。
 以上をもちまして、私の民主党を代表しての質問といたします。(拍手)
    〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕

発言情報

speech_id: 114105254X00519971017_024

発言者: 池田元久

speaker_id: 27942

日付: 1997-10-17

院: 衆議院

会議名: 本会議