橋本龍太郎の発言 (予算委員会)
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○橋本内閣総理大臣 お許しをいただきまして、多少の時間をちょうだいし、委員の御質問にお答えをする形で予算委員会に御報告をさせていただきたいと存じます。
私自身、本年のデンバー・サミットあるいは昨年のモスクワ原子力安全サミットにおける首脳会談をエリツィン大統領との間に持ちながら、もう一つ突っ込んだ議論のできる関係、言いかえればまさに個人的な友情関係というものを深める必要性を痛感いたしておりました。
そうした中で、デンバー・サミットの機会をとらえまして、双方が、モスクワあるいは東京といういわば首都での公式の会談の形ではなく、例えば大統領自身がロシアの東部を訪問されるような機会、そうした機会をとらえて、本当にネクタイなしでじっくり話をすることはできないだろうか。そのような願いを込めて、週末、友人同士の会談はできないだろうかということを提案いたしておりました。こうした提案にエリツィン大統領も賛成をされました結果が、今回のクラスノヤルスクにおける会談になった、いわゆるノーネクタイ会談というものになったと思っております。
そして、個人的な私自身の思いとしては、全体として大変充実した時間を持つことができ、大統領と非常に率直な話し合いをすることができた。その意味では、今回一番大きな私自身の目的でありました個人的な信頼関係、友情というものを深めることはできた、そのように考えております。
同時に、大統領の計算では我々は四十三項目議論をしたと言われましたが、実は私は何項目か数を勘定いたしておりません。大小取りまぜて、双方が関心のある課題を率直にぶつけ合っていきます中で、随分幅の広い、しかも建設的な議論が行えたと思っております。
まず、経済関係につきましては、今後の両国の経済関係の発展の基礎ともなる一連の協力措置、これを橋本・エリツィン・プラン、あるいはエリツイン・橋本・プラン、どちらでも結構ですが、そうした形で実施をしていくことにいたしました。そして、その目的のために、貿易経済政府間委員会などにおける対話を強化していくということで一致いたしました。
この中には、ロシアの例えば若手経営者養成プログラムというものに協力をし、そのうち千人ぐらいの方々を日本が責任を持って教育していく。そのうちで優秀な方々を五百人ぐらい日本に招いて、日本の産業界、あるいは向こう側の要望がありますならば官庁、大学等、いろいろな場所でトレーニングをする。そうした将来の、日本に対する理解を深めてもらうような措置も含んでおりますし、そのために必要な、モスクワにおける日本センターに運び込む機材について税制上の優遇措置を行ってもらう、そんな種類の課題も入っております。
同時に私は、アジア太平洋地域にロシアが積極的に参加をしてほしい、ややもするとヨーロッパのロシアという顔が強調され、アジア太平洋におけるロシアの姿が見えないということに対しては、必ずしもいいことではない。それだけに、もしロシアがAPECに参加するお気持ちがあるのなら、私はその参加を支持したいし、アメリカとも連携をとりながらその実現に努力したい、そのようなことも申し上げてきました。
また、アジア太平洋地域における安全保障のあり方についての対話も行ってきましたが、その中で、当然ながら、防衛交流というものを一層進展させていく、このようなことでも意見の一致を見ております。
それから、北方領土の問題との関係におきましては、東京宣言に基づいて、二〇〇〇年までに平和条約を締結するよう全力を尽くすことでお互いの意見は一致を見ました。
東京宣言の中には、これは細川総理の時代につくられた御努力の産物でありますけれども、北方四島の名前が明記されていることは御承知のとおりであり、これを、歴史を踏まえ、法と正義の関係で解決していくということになっておるわけでありますが、二〇〇〇年までという一つのタイムリミットを設けてこれを加速する、そういう方向に向けられたことは、この国にとっても、またロシアにとっても私はよかったと思っております。
この合意に基づきまして、今後、一連のハイレベルの交流というものが予定をされております。その中で平和条約の締結というものに向けて努力をしていきたいと考えておりますし、また、この関連で、北方四島周辺水域操業枠組み交渉につきましては、できるだけ年内を目途に妥結をするよう双方努力することで、交渉当事者に指示をすることで一致いたしました。
こうしたネクタイなしの会談というものは、私はやはり、実際にやってみまして非常に有益だったという気持ちを持っております。そこで、今度は日本側で、明年の春にもどうぞ御家族御一緒に訪問していただきたい、そしてこうした関係での議論を続けたいということを提案いたしまして、大統領を日本にお招きいたしました。大統領はこれを非常に喜んで受け入れていただきまして、時期の御相談にも入りました。日付まで確定しているわけではありませんけれども、結果として、四月の中旬を目途に行おうということで一致をいたしました。
こうしたことを総括してみますと、今回の会談、非公式なノーネクタイの会談ということでありましたけれども、ロシア流に数えれば四十三テーマと言われるほど大小さまざまな問題を首脳同士で議論し、その方向性を定めた。その意味では、二十一世紀に向けての日ロ関係というものを強化、拡大、改善していくという意味での大きな機会となったと考えております。
エリツィン大統領は非常に元気でおられました。そして、延べにいたしますと八時間から恐らく九時間ぐらい御一緒していたと思いますけれども、積極的に議論され、意見を述べられ、いわゆる共同の記者さんたちの質問に答えるときにも非常に元気な姿を報道陣の前にも見せておられた。私は、非常にしっかりとした元気な姿を皆さんにも見ていただけたのではないだろうか。エリツィンさんに対していろいろな健康上のお話をされる方もありますけれども、少なくとも八時間、九時間という論議を続けるだけのエネルギーを持っておられる、これは申し上げて全く問題がないと思います。