新藤宗幸の発言 (行財政改革・税制等に関する特別委員会)

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○参考人(新藤宗幸君) 新藤でございます。
 時間が限られておりますので、最初の私の発言に関しましてはまとめました原稿を読み上げるという形にさせていただきたいと思います。
 この財政構造改革法案は、衆議院を通過はしておりますけれども、日本の財政構造の改革あるいは法的問題といった点を考えますと、なお多くの論点が残されているように思います。とりわけ財政構造改革とこの法案との適合性、それから財政構造改革法案の法としての問題点について申し上げたいと思っております。
 この法案は、御承知のとおり、財政構造改革の推進に関する特別措置法と名づけられておりますが、条文を読んだ率直な感想を言えば、財政構造改革法案ではなくて歳出削減法案でしかないということです。と申しますのも、歳出削減が問われているのは否定はいたしませんが、歳出削減自体は財政構造改革の手段とは言えないからです。歳出削減が財政構造改革の手段たり得るためには歳出削減のターゲット、方法等について明確な戦略を必要とするはずであります。
 この法案は、予算の総量規制、分野別支出に関する歳出統制、補助金等と地方歳出に対する統制の三点を特徴としております。とりわけ分野別支出に関する歳出統制を中心としているように見受けられます。そこでは、従来のシーリングによる大枠規制からより詳細な分野別総量規制に転換することを法的に定めていると言うことができます。
 ところが、例えば公共事業に関する統制に端的にあらわれていますように、公共事業の分野別歳出バランスないしシェアには全く手がつけられておりません。事業年度を延長し、単年度当たりについては、言うなれば皆ひとしく泣こうという、日本に伝統的歳出削減方法から脱却するものではないと言えます。そのことは、より大きな行政分野別に見ても全く同様であります。
 一九八一年三月に土光敏夫氏を会長とします第二次臨時行政調査会が設置されましたが、その際には、一般会計の公債依存率は歳入の三〇%強、GNPに占める公債残高の割合も約三分の一でございました。当時も財政の危機、破綻が言われたわけでありますけれども、にもかかわらず、なぜにこうまで極端な財政破綻状況が生み出されたのか。理由は決して一つではありませんけれども、少なくとも今日、財政構造改革と言うならば次の理由は無視できないはずであります。
 第一に、財政の危機を常に語りながら、政治、官僚、業界の三位一体となった鉄の三角形間のバランスの維持を基本として拡張主義的な財政運営が行われたからであります。その結果、事業の実績の評価、時代状況と事業の適合性などは顧みられませんでした。しかし、収入を気にせず拡張主義的財政運営が可能であったのは、必要なだけの国債が発行できたからでもあります。
 つまり、今議論されている行政改革とも関係いたしますけれども、大蔵省は金融業界に強大な監督権を持ち、国債の市中消化をなすとともに、他方で大蔵省資金運用部資金、財政投融資資金によって国債を引き受けてきたからであります。言いかえれば、一方の手で借金証書を発行し、他方の手で引き受けてきたに等しいわけであります。
 第二に、時代状況が刻々と変わっていくにもかかわらず、事業系特別会計、公団、事業団、政府系金融機関の整理は行われず、財政投融資資金が貸し付けられてまいりました。しかし、これらの融資は事実上焦げつき債権を生み出したに等しく、したがって一般会計からの利子補給をするという悪循環に陥っていきました。しかし、一般会計そのものに余裕がないのですから、この利子補給のためにさらに一般会計が借金を重ねるというこれまた悪循環に陥らざるを得ません。
 第三に、今回の法案には明確に姿をあらわしてはおりませんけれども、道路特定財源に代表される目的税の整理が行われず、歳出構造を硬直化させたと言えます。また、特別会計と一般会計との間の会計間操作が行われることによっていわゆる隠れ借金が累積されてまいりました。一般会計における借金額を幾らかでも減らし、見かけをよくするためにとられた手法がいよいよ限界に達したということではないでしょうか。このように見てくるならば、財政構造改革に必要とされる視点は、まず何よりも事業の実績の評価、事業の時代的適合性の評価を行うことでなければなりません。そして国権の最高機関である国会は、内閣をこのような観点から法的に縛る制度を創出することが問われているはずであります。また特別会計、特殊法人の整理をなすこと、財政投融資を根本にわたって改革し、公的資金による国債引き受けという安易な方法を法的に制約することではないでしょうか。
 この法案のモデルがアメリカの一連の歳出削減法にあるのは私も推測いたしております。しかし、私がこの法案で最も危惧いたしますのは、全体的歳出規模の縮小に貢献するかもしれませんけれども、既存の歳出構造あるいは事業構造を固定化してしまいかねないことです。この法案は、議会制民主主義の悪弊と言われてまいりました一種のむしりとたかりの民主主義に枠をはめ、次の世代に余裕ある財政を残そうとするものであるかもしれません。法案は時限立法ですが、一たんこのことを始めますと次の世代も同様の法律をつくっていくことになるかと思います。
 つまり、議会制民主主義の悪弊を正すための議会制民主主義の良識ないし自浄能力の発揮の論理は、実は議会制民主主義の否定につながりかねないわけであります。財政構造改革法として国権の最高機関が法的規範を制定するならば、内閣・省庁官僚制の予算編成制度と方法の統制システムとして構想するべきなのであって、分野別歳出に法的枠をはめ、既存構造を保護し、議会が自縄自縛に陥るような法を制定するべきであるとは考えません。
 最後に、国会は内閣の予算提出権を害さない範囲で予算を修正する機能を有するという、私に言わせれば甚だ意味不明な内閣法制局見解が繰り返されてまいりました。しかし、憲法四十一条こそが内閣に属する行政権にも予算提出権にも上位するのだということを明確にしない限り、いかなる財政改革方策も意味を持たないと申し上げておきたいと思います。以上です。

発言情報

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発言者: 新藤宗幸

speaker_id: 7871

日付: 1997-11-18

院: 参議院

会議名: 行財政改革・税制等に関する特別委員会