小田晋の発言 (文教委員会)

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○参考人(小田晋君) この事件については、その特殊か一般かという問題と全く逆立ちした議論がなされていると思います。
 つまり、一方ではこの事件は特殊な事件であって、この事件をもとにして少年法の改正などを考えるのは短絡だという意見が、もちろんこの参議院からも出ています。それから一方では、この事件はたった一人の少年の事件であったんですが、この事件をすぐに内申書の問題とか管理教育の問題に結びつけてしまって、今の教育一般が全部間違っているというふうな議論もあります。
 これはどちらも間違った意見です。実はこの事件のような快楽殺人の事件というのは極めて少ないのでありまして、人口二百万人に一人とか百万人に一人ぐらいしか起きてこない事件だと言われておりまして、日本でも極めて少なかったんですが、最近少しふえてきた。
 これはいろいろな事情がありますけれども、一つは、確かに多くの人々の中には性的な衝動と攻撃的な衝動とがもやもやと共存しているという状態はありますし、そしてそれは、思春期に特に性衝動が高まりますので玉突き的に攻撃的な衝動にそれが及んでくるということはあるんですが、最近はそのもやもやとした衝動を行動につなげてしまうような情報が社会の中にあふれている。そのためにこれが行動化されてしまうということはあると思うんです。
 それじゃ、この少年は正常であったか異常であったかといえば、明らかに異常です。異常という言葉は私は余り使いたくないのでありますが、それは精神医学的に診断がつく事例である。行為障害と性障害がある。行為障害というのは人格障害の一つです。人格障害の小さいときの幼弱型です。だから正常ではないんですが、精神分裂病であったかどうかということについて言うと、鑑定では精神分裂病であったことを否定されておりまして、この鑑定はある程度信頼できるものだと思います。その程度のところなんです。
 ただ、この事件を例えばモデルケースにしてみると、こういう事件について現在の少年法の処遇システムがうまく働いていなかったし、今後もこのままではうまくいかないなと。
 この少年が例えばもし心神喪失で精神病院に送られたとしたら、この場合は数カ月で退院するというのが関西の精神病院の運営の仕方である。入院した場合はできるだけ早く精神障害者は退院させなきゃならないのでありますが、いつまでも病院に置いておくのは人権の問題がありますが、犯罪事件に関与した場合は反社会性と精神的な病理と両方が矯正されたということがちゃんとした専門家の機関によって確認されてから退院させるということを提案しますと、これは精神障害者を予防拘禁するものである、保安処分であるという形の非難が提案した精神科医に対しても個人攻撃という形で加えられていく、それが現在の状況です。そういう意味では、この事件は決して教訓にならない事件ではありません。
 もう一つの教訓になることは、こういう形で現実に問題が起きかかっているときにどうしたら入り口でとめることができただろうかと。
 もちろん、子育ての問題として情性をどうやったら高めるのか、それから思春期における性的な興奮をどうやって抑制するのかということがありますが、確かに、猫殺しなんというのは相当異常な行動で、それと、友だちが驚いて転校してしまうほどの暴力をやるというのを両方加えれば、飼い猫一匹でも猫殺しは器物毀棄ですし、友だちに対しては傷害。傷害と器物毀棄と二つあって、しかもその背後に精神的な問題が考えられるような場合には、そこで早急の対応をしなきゃならない。それが今回はできなかったという意味では、これは一般的な問題です。
 ただ、この事件の場合、これが管理教育や学校の教師の対応の問題だということがよく言われておりますけれども、そして神戸の中学校の態度が悪いということですが、この少年が猫殺しを始めたのは、少年が語っているところによりますと、これは本当かどうかこの辺はわかりません、実のところを言うと、これはちょっと比喩でありますから。少年がこういうことを言われていたんです。少年が飼っていた犬のえさを猫が横取りして食べた、そのことに対する復讐として猫を殺したんだとこの少年は友人に語っていた。もしこのことが本当だったとしたら、この事件はちゃんと野良猫の始末をやらなかった保健所の責任だということになります。
 こういうレベルの議論を多くの教育関係者、特に社会評論家、社会学者、ジャーナリスト、新聞の論説委員という人はこの程度の議論を展開してきたんだと。それによって地元の学校の教師たちはいわれない非難を受けてきた。何らかの少年の問題が発生したら学校の教師がいわれない非難を受けるという、現在の報道のあり方ばかりじゃなくて、特にいろんなところでの識者の発言のやり方というのは極めて遺憾だというようなことをこの事件は示してはくれました。

発言情報

speech_id: 114115077X00219971118_027

発言者: 小田晋

speaker_id: 8151

日付: 1997-11-18

院: 参議院

会議名: 文教委員会