前田正の発言 (本会議)
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○前田正君 私は、平和・改革を代表して、ただいま議題となりました財政演説に対し、総理並びに関係大臣に質問いたしたいと思います。
日本の経済はますます深刻の度を増してきており、三月の完全失業率は史上最悪の三・九%となり、実質賃金も八カ月連続の減少、株価、長期金利とも低迷など、ありとあらゆる経済の指標は日本の経済の厳しい現実をはっきりとあらわしております。
こうした事態を招いたのは、これまで再三にわたって指摘してきたとおり、橋本内閣の経済の見通しの甘さと政策の転換のおくれにあるということは言うまでもありません。もっと早く総理が経済の認識を改め、政策の転換をしていれば、これほど日本の経済が重い病に陥ることも、中小零細企業の相次ぐ倒産も、そしてさらには一億二千万人の国民が将来の不安におびえながら生活の防衛に走ることもなかったはずであります。
ところが、こうした深刻な不況に国民を陥れておきながら、平成十年度予算成立直後に橋本総理が行った総合経済対策を発表した記者会見では、いとも簡単にみずからの主張を脱ぎ捨て政策の大転換をしたにもかかわらず、政治責任の追及ということを恐れて必要な政策を実施できないということだったら、その方が政治責任だと思うと開き直り、みずからの政策の誤りを国民に対し謝罪の言葉すらなかったのであります。不況にあえぐ中小企業の皆さんや、働く意欲がありながらも失業に追いやられた方々、また将来の不安におびえている国民のことを総理は一体どうお考えになっておられるのか、責任を感じておられないのか、率直な御意見をお伺いいたしたいと思います。
平成十年度第一次補正予算案に関連してお伺いをいたします。
総理は、当初予算の審議の中で我が党が予算の修正、組み替えを迫った折に、平成十年度予算は最善であると言っておられました。当初の予算成立からわずか三十四日しかたっていないこの時点で補正予算を提出をしてこられたということは、当初の予算は最善ではなく欠陥であったということなのですか、明確な答弁を求めます。
次に、補正予算の編成の理由についてお伺いをいたします。
補正予算の編成については、財政法第二十九条には補正の理由として、当初予算の作成後に生じた理由に基づき特に緊急となった経費の支出というのが原則となっております。四月の九日の総理の記者会見では、私は今、国民の景気をよくしてほしいという強い要請と期待にこたえるために、構造改革を推進しながら我が国の経済及び経済運営に対する内外の信頼を回復するのに必要かつ十分な規模の経済対策を講じることを決意しましたと述べておられますが、国民の景気をよくしてほしいという強い要請と期待というのが予算作成後に生じた理由になるということでしょうか。私は、本予算の作成前に起きた橋本内閣の経済政策の選択とその失敗こそが補正編成の最大の理由だと考えておりますが、このたびの補正予算の編成の理由、すなわち予算作成後に生じた理由とは一体何なのか、明確に御答弁を願います。
また、平成十年度の実質経済成長率について、橋本内閣は平成十年度本予算だけで一・九%を達成すると考えておられますが、これはほとんど不可能であろうと考えます。このたびの補正予算の編成によって名目GDPを二%程度押し上げるという試算もあるようですが、補正後の平成十年度における実質経済成長率の見通しについて、経済企画庁長官の答弁を求めます。
さて、政府がまとめた総合経済対策は、十六兆円と見かけの数字、規模は厚化粧したものの、実態は小出しの特別減税の積み増しと従来型の社会資本の整備が中心であり、その効果のほどは疑うところであります。手法たるや、七月の国政選挙を前にして、族議員の主張に屈した、まさにばらまき型財政支出と言わざるを得ません。これでは、昨年来の九兆円の財政デフレの分を相殺できるとは到底考えられないのであります。
その証拠に、国内において市場は全く反応せず、国外においても、先日行われましたG7蔵相会議では、総合経済対策への評価はそこそこに、各国からは日本の構造改革の断行と不良債権問題の早期解決を強く求められているというありさまでございます。また、アメリカのゴア副大統領も、日本の経済対策は問題解決には十分でないと表明しております。
本番のバーミンガム・サミットの主要議題は日本の経済問題であると言われており、我が国の経済の危機について海外では相当深刻に受けとめられているという実態を総理は強く認識すべきであります。この点について総理の答弁を求めたいと思います。
また、サミットにおいては、総合経済対策はお土産としてはむしろ喜ばれず、かえって大きな宿題を持って帰ってくることになりそうですが、総理はバーミンガム・サミットにどのように臨まれようとされておられるのか、明快に御答弁を願います。
次に、減税についてお伺いをいたします。
本年二月に実施した二兆円規模の特別減税と合わせ、追加的に四兆円の特別減税を行うとしておられますが、実態は、平成十年においては二兆円が追加されるだけであり、残りの二兆円は来年のいつ行うかも全く不明確であります。このような、小出しで、しかも規模も小さく、実施の時期もばらばら、さらには特別減税が終われば次の年からは増税になるというのであれば、将来、不安の解消するどころか、国民はかえって生活防衛に走って貯蓄に回すということになりかねません。このような減税案では余りにも中途半端であり、消費マインドを決定的に高めることはほとんど不可能であります。
また、追加的な特別減税では、一つ、既に前回の特別減税で課税最低額が引き上げられ、その恩恵を受けられない世帯が出ること、二つ、所得税については減税が八月以降になること、この二点からも、減税の効果は極めて限定的と言わざるを得ませんが、総理の御所見をお伺いをいたします。
私は、国民の将来の不安を解消し、消費マインドを高めるのであれば、ますます進む少子・高齢社会の明確なビジョンとそのための構造改革の処方せんを示し、思い切った税制改正、すなわち恒久減税に踏み込むべきであると考えます。減税規模は、少なくとも所得税、法人課税合わせて六兆円規模とすべきと考えます。総理は、法人課税は三年以内に国際的な水準並みにするとしておられますが、そんなのんきなことを言わず、今すぐにでも実行に移す決意と意気込みを示すことが内外の不安の解消につながり、ひいては我が国の経済構造改革と景気の回復につながってくるのではありませんか。本年中に恒久減税の実施を決めるお気持ちは全くないのか、総理の明快な答弁を求めます。
総合経済対策においては、十六兆円のうち、地方単独事業が何と一兆五千億円を占めております。これは、この不況下で税収は伸び悩み、地方債の起債もままならない地方公共団体が、単独事業などできるはずはありません。財政状況の厳しい地方公共団体が全国に数多くあります。借金をしてまで単独事業をやるくらいなら、借金を少しでも返したいというのが本音ではないでしょうか。この一点を見ても、総合経済対策がいかに見せかけだけのものかが明白であると言えるのであります。地方単独事業が果たして総理の思いどおりに実行されると本気でお考えなのか、答弁を求めます。
社会資本整備については、環境・新エネルギー、情報通信高度化・科学技術振興、福祉・医療・教育の新社会資本整備に重点的に六割の配分を行ったと総理は胸を張っておられますが、その事業内容は、結局のところ建設国債を中心とした一般公共事業がそのほとんどを占めており、いわゆる従来型の域を抜けておりません。このことは、公共事業のあり方を見直さない限り、新しい投資分野やソフト面への公共投資は不可能であります。これまでの建設国債や公共事業の考え方では、二十一世紀に本当に必要とされる社会資本の効率的な整備はできず、この際、建設国債と赤字国債の区別の見直しなど、公共事業のあり方を抜本的に見直すべきであると考えますが、総理の見解を求めたいと思います。
次に、財政構造改革法改正案に関連して質問をいたします。
総理、昨年末の財政構造改革法審議のときには、既に金融不安を初めとして我が国の経済に暗い影が差しつつありました。その時点で、財革法の制定を見送るという判断は当然あり得たわけであります。それを我々野党の反対を押し切って強引に成立をさせたほどでありますから、総理にとって、この法律は橋本内閣の経済政策の根源、まさに魂とも言えるものであったのでありましょう。
しかし、今般、この財革法を、わずか五カ月で、一回の予算すらクリアできずにあえなく改正することになったこと自体、橋本内閣の経済財政政策の失敗を示しているものであり、もはや魂が抜けてしまったものと言わざるを得ません。さらに申し上げるならば、財政構造改革会議において総理は基本的な骨格は維持すると言っていたのが、目標年次は先延ばしにし、キャップ制も一部外すでは、ずたずたの状態ではありませんか。
総理、私は、財政構造改革法改正案の基本的な骨格は、これでは維持されているとは到底考えられません。この原因は総理のリーダーシップの欠如にあると言わざるを得ないのでありますが、総理、いかがお考えでしょうか、答弁を求めます。
具体的な改正内容について、端的にお伺いいたします。
第一に、特例公債発行枠の弾力化を可能とする、措置、すなわち弾力条項についてでありますが、「経済活動の著しい停滞」という極めて抽象的な表現があります。すなわち、国会のチェックもなく、やろうと思えば、時の内閣の裁量や作為的な判断でいともたやすく弾力条項が適用となってしまうことがありませんか。当初予算の審議の中で、我が党の議員から弾力条項について提案があったときに真剣にこの問題に取り組んでいれば、展開はもっと変わったものになったと思います。すなわち、後手後手に回る経済対策のツケが回ってきているのであり、今となっては、小手先だけではなく、一歩進んだ恒久減税など思い切った政策を考えるときではありませんか。
第二に、キャップ制について、社会保障関係費に限り平成十一年度だけキャップを外すとしておられますが、これは、なし崩し的に他の分野のキャップの形骸化を招くおそれがあると言わざるを得ません。この際、社会保障に限らず、キャップ制全体のあり方を議論することが重要であると考えますが、いかがでしょうか。
社会保障関係費については、その性格上他の分野と一律に論じることは困難であることから、キャップが外れることについては基本的に歓迎いたします。しかし、社会保障の分野においても、構造改革を進め、むだを省き効率化すべき点は多くあります。キャップが外れたのをよいことに、やみくもに、無原則にすべての分野横並びの配分をするのではなく、社会保障関係費の中でもきっちりと優先順位をつけ、例えば、介護の基盤整備、保育、子育て支援、難病対策など重点的に配分するといったことを考えるべきであります。厚生大臣の御所見を賜ります。
また、厚生大臣は、財政構造改革について、かねてから後世にツケを残さないよう血を流してでも改革に取り組むべきだとのお考えをお持ちと認識しております。今回政府が出されました改革案とは少し考え方に違いがあるのではないかと考えていますが、この点につきましてもあわせて御所見をお伺いしたいと思います。
第三に、目標年次の二〇〇五年への先延ばしについてであります。これは、そもそも方針を橋本総理自身が二〇〇三年に前倒しした経緯があり、まさに総理の失態であります。何より総理は、将来にわたる経済状況を勘案して二〇〇三年としたはずであり、今般の十六兆に及ぶ総合経済対策によって景気が回復すると考えるのであれば、あえて目標年次を先延ばす必要はなかったのではありませんか。
以上三点について、総理の明確な答弁を求め、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕