岩國哲人の発言 (本会議)
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○岩國哲人君 私は、民主党を代表し、ただいま議題となりました地球温暖化対策の推進に関する法律案及び環境全般の問題について、総理並びに関係大臣に御質問いたします。
この法律案は、京都のCOP3で採択された議定書による、我が国の二〇一〇年までの一九九〇年比六%の温室効果ガスの削減合意実現のための第一歩であることは評価いたします。しかし、本法案の趣旨、目的が、温暖化ガスの排出抑制を国、地方自治体、事業者、国民の責務とすることにあるとするのであれば、修正が必要であります。
国と地方自治体には排出抑制計画の作成、その結果の公表等を義務づけながら、事業者には計画の作成、公表への努力を求めていることです。中央環境審議会の昨年十一月の答申では、事業者についても、計画の作成、届け出が義務づけられていたはずですが、いつの間にか、義務が努力にすりかわっているではありませんか。国や地方自治体が政府の公約に基づいて率先して計画をつくるのは当然ですが、いわゆる民間である企業が同じ土俵で計画をつくることに大きな意義があったのではありませんか。本法案に先立って省エネ法の改正案が提出されています。省エネ計画の届け出が義務づけられていることから、二重規制だとして反発を受け、こうした後退となったことは容易に想像できることですが、私はこれは主客転倒だと思います。
この温暖化対策推進法案は、京都議定書に基づいて我が国が今後進めていく対策すべてを網羅した、いわば基本法に当たるものです。省エネは、温暖化防止の一つの有力な方法にすぎません。温暖化対策の基本法ではなく、各論にすぎない省エネ法が優先するがごときことは、断じて認めるわけにはまいりません。総理並びに環境庁長官の御所見をお伺いしたいと思います。
本法案の目的では、地球の温暖化対策に対する国民の責務を明らかにすることがうたわれています。ともすれば、温暖化対策というと、排出量を削減するための技術的側面に目が向けられますが、それだけではこうした全人類共通の問題を解決することは不可能です。技術の果たす役割は言うまでもありませんが、まず何よりも大切なことは、社会の仕組み、国民の生活そのものを温暖化防止に合致したものとするための意識改革であり、今後そうした意識を持った国民を大きくはぐくんでいくことではないでしょうか。そして、そのための政治のリーダーシップこそ求められているのではないでしょうか。
九二年六月のブラジル・リオでの地球サミットを前にして、竹下登元総理は、「今や、環境を論ぜざるは、知性と教養と良心と勇気なき政治家と言える」と述べられました。私は、この元総理の言葉は、政治と環境について触れた世紀の名言であり、小学校の教科書に入れられてしかるべきものと考えますが、総理、文部大臣はどのようにお考えでしょうか。
環境問題は、世代を超え、目前に迫った二十一世紀を見据えた国家ビジョンです。そこで、次の世代を担う学童に対する環境教育に対するお考えをぜひ伺っておきたいと思います。
私たちは、小さいころは、一年生の国語の教科書は「サイタ サイタ サクラガサイタ」で始まったものです。一番最初に桜が出てきました。身近な木、美しさの象徴、国を愛する気持ちがこうして教育の第一歩の中で育てられたのです。木に対するなじみというものが、自然に一年生のときから幼友達同士の共通の感情の中でしっかりと植えつけられ、教えられ、身についてきたのです。
例えば、衆議院の予算委員会の審議においても、景気回復のめどについては、数字ではなく、桜の花の咲くころとか、もみじのころとか、花や木に託して議論される、深刻な景気情勢の中で、花や木が自然に出てくる、これほど優雅で文化的な国会が世界のどこにあるのでしょうか。
今の教科書には、しかしながら、木の話はほとんど出てきません。これで自然を大切にする教育はできるとお考えですか。文部大臣の見解をお伺いしたいと思います。
確かに、動物というものは、環境が悪化しますと逃げていける動物もあります。しかし、逃げていけない動物、魚、貝などは、ムツゴロウのように、農水省の手で殺されていきます。こういう環境の悪化に、一番犠牲になるのは植物です。木は動けないからです。地球には、とりわけ日本にはきれいな緑があります。これは地球がいまだ健全であることのあかしであり、そのことを学校の教科書の中でもっと教育していく必要があります。そして、常に身近なところで木と接触し、そのぬくもりを感じていることが必要ではないでしょうか。
昨年七月、大手建設会社大林組が、木造建築は地球温暖化防止につながるとの試算をまとめ、新聞で報じられました。学校の体育館等を鉄筋コンクリートづくりにせず、木造にすることで、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量を削減できるというものです。鉄やセメントなどに比べ、木材は生産段階での二酸化炭素の排出量が少ないというのが根拠で、木造の場合、一平方メートル当たり二分の一という数字も出ています。
こうした技術的な問題だけではなく、木のぬくもりとコンクリートの冷ややかさが学童に与える影響は歴然たるものがあります。木造校舎の場合、多くは二階建てであり、廊下越しに友達の声が聞こえたり、生徒同士のコミュニケーションの場が自然にできているのです。最近の学校におけるいじめの多発も、こうしたぬくもり、コミュニケーションの欠如と無縁とは思えません。木のぬくもり、木の香り、木のやわらかさが人の関係をぬくもりあるものとするのです。
こうしたことは町づくりに関しても言えます。例えば東京では、都市化の結果、川や運河が消えてしまい、東京の水空間はこの百年間で四三%も減少し、東京の町から水辺の潤いが消えてしまいました。真の豊かさにあふれた都市生活のために、水辺の復活も積極的に進めるべきではありませんか。
自治大臣には、地方交付税の算定等に当たって、こうした環境施策への配慮を要望いたしますとともに、総理、文部大臣の木造校舎の推進に対するお考えを伺いたいと思います。
総理、バーミンガム・サミット、大変御苦労さまでした。アジア危機解決、我が国景気回復等、我が国に寄せられた期待は大きなものがあったことが報じられております。しかし、私は残念でなりません。それは、京都会議の議長国である我が国の総理として、環境問題に積極的にイニシアチブをとり貢献する具体策をお示しにならなかったことです。
一九八九年、出雲市で木のお医者さんが誕生しました。人間が病気をしたらお医者さんがいる。動物が病気をしたら獣医さんがいる。木にも命があります。それを市民にあるいは学童にわかりやすくするために、十人の木のお医者さん、樹医さんが誕生しました。九一年以降、農水省、林野庁がそれに倣って、現在全国に五百四十七人の樹医さんが誕生しております。
私は、これこそ地球全体に、世界各国に広げて、世界じゅうの子供に、木にも命がある、木にもお医者さんがいるということを知らせる格好のものだと思います。我が国で一万人の樹木医を養成し、緑の平和部隊としてODA予算を使って世界へ送り出す。これこそ我が国の環境保護、温暖化防止への取り組み姿勢、決意を目に見える形で示すことになるのです。これは一例ですが、総理の御所見をお伺いしたいと思います。(拍手)
今回出されましたこの法律案は超党派で論じられるべきものです。自民党を初め委員会では、そのような超党派の立場で終始熱心に議論をしてまいりました。国会の審議を通じ、修正すべきは修正していかねばならないと考えますが、総理の御所見をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕