水谷研治の発言 (予算委員会公聴会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○水谷公述人 このように意見を言わせていただきます機会をいただきまして、大変ありがとうございます。私は、東海総合研究所社長の水谷研治でございます。
 予算はそもそも収支相償わなければならないものだと私は考えております。その意味におきまして、赤字予算というものが是認できるかどうか、大変な問題であると私は思っております。それじゃ本予算について反対なのかと申し上げますと、今この予算を反対してもし成立しなかったらどういうことになるかという現実問題を考えますと、なかなかそうもいかないということなんであります。といたしますれば、私は、特に条件をつける、赤字を早急に是正するという条件づきで通過させるべきではないかというぐあいに思っております。
 私がこのように赤字というものについて特に重要だと思う点につきましては、予算の赤字そのものに大変魅力がございまして、ともすれば赤字予算のわなにかかりやすい。そして、一たんこのわなにかかりますとなかなか逃げられない、こういうことがあろうかと思うからであります。
 赤字予算と申しますと、収入よりも支出が大きいわけであります。収入が少ないということは、国の収入のもとは国民の税金であります。国民にとりまして、税金は少ない方が望ましいのであります。収入が少なければ少ないだけ、国民の人気は高まります。
 一方、支出は、どんな支出にしろ国民の懐へ入ってまいります。例えば社会保障費、これが支払われるということは、それだけ国民の生活が楽になる、豊かになるのであります。喜ぶべきことであります。公共投資。公共投資を行いますと、関係者のところへお金が回ります。と同時に、それだけではなくて、そのお金が回り回って皆さん方にプラスになるのであります。例えば、道路ができて怒る人はいませんし、橋もかけていただきたい、こういう要望に沿うことができるのであります。
 しかも、こういった赤字によりまして景気がよくなります。減税によりまして、皆さん方が懐が暖かくなる。暖かくなればお使いになるのであります。お使いになれば物が売れるのであります。物が売れれば景気がよくなるということでありますし、どんな支出にしろ、政府が支出をすればそれだけだれかの懐に入ってプラスになります。景気に対してプラスになるのであります。あるいは、公共事業をやりますと、それに伴っていろいろな仕事が出てまいります。もちろん、これが景気にプラスになるわけであります。したがって、赤字は大きければ大きいほど、目先的には好ましいのであります。
 一般的に、いいことがありますと、その反面悪いことがあるはずなんであります。
 では、赤字予算の場合どういう悪い点があるかと申しますと、原則としてインフレという懸念が出てまいります。では、現実にインフレになっているかと申しますと、なっておりません。その気配すらないのであります。といたしますと、いいことだけありまして悪いことが少なければ、どうしても赤字予算の方がいいということになりがちであります。
 なぜインフレにならないかと申しますと、これは我が国の経済の特殊性だと私は思っております。物が満ちあふれているからであります。物があり余っておりますので、赤字予算を組んで余分に買いましても物が不足しないからであります。もちろん、皆さんが買えばそれだけ物がなくなります。なくなったらつくればいいのであります。つくる力が大変旺盛なのであります。幾らでもつくれるのであります。しかし、つくれるだけつくるわけにはまいりません。そんなにつくったら、売れ残って置く場所にも困るからであります。
 では、現実にどこまでつくっているかといいますと、売れる分しかつくっておりません。したがって、売る力がたくさんございますので、もっと買っていただければもっとつくれる、まだまだつくれる。したがって、たくさん買っていただければ買っていただくほどつくることができて、人を雇うこともできて、企業ももうかるし、国民も潤うわけであります。
 そこで、皆さんに買っていただくのにどうするかといいますと、国民の皆さん方、買ってくださいだけではなくて、政府みずからが買う。これがいろいろな公共投資を初めとする支出であります。もちろん、国民の皆さんが買っていただくのがいいのでありまして、国民の皆様方が懐が寂しければ懐を暖かくしてやる。そのための減税というものがきく。すなわち、減税をすればするほど、あるいは支出をふやせばふやすほど景気がよくなるということであります。
 なぜ、そうなってもインフレにならないか。大きな供給過剰があると申しました。これは我が国の特殊性でありまして、ほかの国とは随分違う面であります。
 ところで、この赤字によりまして我々は何を願うかと申しますと、景気の持続的な拡大を願っているはずであります。減税をやることによりまして、国民が買う。買えば売れる。売れればつくらなければならない。つくるために人を雇う。雇った人に給料を払う。払われた給料で人々が消費財を買う。消費財をつくらなければならない。つくるために人を雇う。そして、雇われた人々に賃金が払われる。人々はそれをもとにして買う。つくらなければならない。人を雇うだけでなくて、機械も買う必要がある。機械が売れる。機械をつくるために人を雇う。その機械を設置するための工場も要る。工場をつくるための建築も出てくるということで、持続的な経済の拡大につながることを願って財政政策を利用するのであります。
 現実にそのような動きになっているかと申しますと、なっておりません。
 確かに、赤字財政によって景気を引き上げることができます。しかし、それが呼び水となって景気の上昇に弾みをつけることにはなっておりません。それは先ほど申し上げました、余りにも物余りが激しいからであります。これだけ物が余っておりますと、余分に買っていただけるから、余分に売れるからといってすぐに人を雇うということはございません。
 どの企業でも、ほとんどの企業では人手が余っております。新たに人を雇う必要はないのであります。多くの企業では機械が余っているのであります。余分につくるのは簡単です。新たに機械を買う必要はございません。したがって、機械の注文に結びつかないのであります。工場建設も同じであります。これだけ過剰生産圧力がある場合には、財政政策そのものが弾みをつけることにならない。一時的に景気をよくすることはできます。しかし、それでおしまいなのであります。
 その政策をやめたらどうなるかと申しますと、もとへ戻ります。一たん上昇した経済水準は低下すると私は考えております。
 それでいいのかと申しますと、多くの国民は不満になるのであります。したがって、一たん増加させた財政赤字を維持せざるを得ない。そうしますと、維持することによって景気は横ばいになるだけでありまして、引き上げることにならないのであります。本当に引き上げようと思いますと、さらに赤字をふやしていかなければならない、こういったことになってまいります。
 現実はそこまでできませんので、どうなっているかと申しますと、一たん引き上げた赤字をそのままにします。すなわち、赤字の分だけ資金が不足いたします。不足する資金は借りなければなりません。主として国債でございます。そこで、赤字の分だけ毎年国債がふえてまいります。そして、現在どのような国債の残高になっているかは、御承知のとおり莫大であります。
 国債の残高がふえますと、大変困ることが出てまいります。それは金利の支払いがふえるということであります。現在の金利の支払いが莫大な金額となっておりまして、予算の中に占める比重も大きゅうございます。もはや金利をまともに支払うことは難しくなっております。そこで、金利を支払うためにもまた資金を借りなければならないという事態に追い込まれております。その意味では、国の借金は引き続き増加するでありましょう。そして、それに伴って金利がふえるはずであります。
 現在の金利負担が大変大きいと申し上げました。これだけの金利負担と申しますけれども、御承知のように、現在は極めて低い低金利時代なのであります。低い金利ですらこれだけの負担でありまして、将来的にもし金利水準が上がった場合の負担ということを考えますと、大変であります。この金利負担は永遠に国民が担いでいかなければなりません。そのもとになります借金がある限り続くわけであります。
 現在、我々は国の借金を減らしておりません。毎年積み上げております。増加の一途をたどっております。そして、これからも、このままでいきますと増加してしまうということを考えますと、今後の国民の負担は大変なものであります。
 このような状況になりましても、赤字そのものが目先的に大きなマイナスになっていないという現実がございます。それは、我が国において大きな供給過剰があるからだと申し上げました。もしこれが永遠に続くならば、この赤字財政も一つの方法かもしれません。しかし、私は、将来的にこういう物余りがいつまで続くかということにつきまして、懸念を持っております。
 我が国におきまして、これほどまで物余りが出てまいりましたのは、せいぜいこの三十年間であります。四十年前、五十年前を振り返ってみますと、物は足らなかったのであります。百年前もそうです。恐らく千年前もそうでしょう。例外的な物余りが生じたにすぎない、こういうぐあいに考えております。
 一体いつまでこれが続くか、いろいろなお考えがおありでございましょうが、私は、海外への生産拠点の移転など、国内産業の空洞化の問題がそのあらわれの一つだと思っておるのであります。生産能力は下がっていくだろうと考えております。それは、私どもの先輩の国の例からも言えるのではないかと思っております。
 アメリカは、しばらく前まで物余りの代表的な国だったのであります。莫大な物余りの中で、永遠に物余りが続くかと私は思っておりました。そのアメリカが急速に変わっていったのであります。そして、物が不足し、海外から物を輸入しなければやっていけないというところへいきました。そのアメリカは、かなり復活したのであります。しかし、今でもなおかつ膨大な貿易の赤字を抱えております。恐らく、アメリカの前にはイギリスという国があって、同じような経過をたどったのでありましょう。
 アメリカの転換は早かったと思います。しかし、我が国の転換はそれよりもさらに早いのではないでしょうか。我が国には諸外国とは違った要因がつけ加わります。少子化であります。高齢化も加わります。その結果といたしまして、現在のような物余りは一体いつまで続くかという懸念になるわけであります。その段階で、すなわち物余りがなくなった段階でインフレ要因が頭をもたげます。そして、財政赤字が大きな負担になってくるのであります。その段階で財政赤字を圧縮する方がいいのであります。
 では、どのように圧縮するかと申しますと、これは支出を下げるということと、収入を上げるということしかないのであります。
 支出の圧縮は、例えば社会保障費の削減、これは国民生活に直接影響を及ぼします。マイナスになるわけであります。公共投資の削減、それは大いに必要でありましょう。しかし、莫大となりました公共施設の維持管理のための費用まで削るとなりますと、公共施設の使い勝手が悪くなるのであります。そこまでいかなければならない。しかも、それだけやってもなおかつ不足する分は、相当な増税が待っているのであります。
 増税を負担するのは国民であります。その段階におきまして、少子化が響いてまいります。実態として、働ける人の数が減りまして、その人たちの負担が相当重くなるということは明らかなことなのであります。それを目の前にして、私どもは財政赤字を続けていいものだろうかということを懸念するわけであります。
 当然赤字を圧縮すべきです。財政の改革をやるべきであります。これは支出の圧縮と収入の増加以外にありません。支出を徹底的に圧縮する、その上収入をふやす。これは増税であります。その結果赤字をなくす、これが第一段階です。黒字にして、我々がつくった借金を返す必要があると私は思っております。
 黒字にするために相当の支出をカットし、さらに大きく税金を上げまして黒字になったつもりになりましても、現実にはなかなかそうはまいりません。景気が悪くなるからです。財政改革をやれば、景気にマイナスになるのであります。支出の圧縮にしろ増税にしろ、景気は悪くなります。悪くなるからやめるのか、いや、悪くなるのは覚悟の上で財政を改革するのか、これは重大な問題であります。私は、当然に景気は悪くなると考えております。
 それは、言い方を変えますと、今現在の日本の景気は随分大きな力で押し上げられているということの裏返しでもございます。本来、予算は均衡していなければいけないのであります。大きな赤字の分だけ、我々は日本経済を押し上げております。本来使わなければならない支出については、国民が負担しなければならないのであります。負担すべき資金を負担していないから、現在の日本の国民は、我々の生活は実に豊かであると考えられるのであります。
 それだけに、我々は物を余分に買い、余分に売れ、そして景気が押し上げられている。これは、今まで二十年以上続いておりますけれども、一体これからも続けられるのであろうか、続けた方がいいのだろうか、こういう疑問であります。
 もはや時代は変わっております。先を見なければなりません。すなわち、少子化に対応しなければなりません。といたしますと、私どものつくった借金は我々が返していく、当たり前の話であります。そのために大増税をし、あるいは支出をカットしますと、それに伴いまして企業は倒産し、失業がふえ、失業者が所得税を払えませんので、所得税は減ります。法人税も減ります。税収は減るのであります。したがって、その分も見込んで増税あるいは支出のカットをやらないと、財政の改革はできないのであります。
 財政改革には相当な決意が要ります。しかし、それは必要であると私は思います。国民に対して説得しなければならない。今のままやっていきますと私どもの子供や孫にどれくらいの負担になるかということを考えますと、我々が経済水準を下げてこの問題を解決する、当然の話ではないかというところから、赤字につきましては早急に解消すべきである、私はこのように考えるわけであります。
 ありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 114205262X00119980311_002

発言者: 水谷研治

speaker_id: 3308

日付: 1998-03-11

院: 衆議院

会議名: 予算委員会公聴会