高木勝の発言 (行財政改革・税制等に関する特別委員会)
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○参考人(高木勝君) 私は富士総合研究所の客員理事及び明治大学の政治経済学部の教授として日々経済あるいは金融状況をフォローしている者でございます。
本日は、参考人といたしまして当特別委員会にお招きをいただきましたことにつきまして、まことに光栄に存じております。これからいろいろ私なりの意見を発表させていただきますが、十分間ということでもございますので、論点を絞った上でポイントのところをお話しさせていただきたいと思っております。
第一は、現在御審議中の財政構造改革の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案、この中で特に気になる点あるいは申し上げたい点を申し上げてまいります。
まず、景気の認識でありますけれども、九七年の春、既に景気がピークを打ってその後は景気後退局面にある、しかも昨年の十一月ぐらいからはそれに金融システムの混乱あるいは金融機関の破綻という事例が起きて、一段と景気の状況を悪化させて今日に至っているのではないかというのが私の見方であります。
そういった点で今回改正する法律案を考えますと、既に景気が後退をしてから一年以上たってようやく法律を改正して弾力的に財政運営をしていこうということですが、残念ながら余りにも遅かったのではないか、景気の実態とは大分タイム的にギャップがあったというふうに私は思っております。
いろいろと理由はあると思いますが、このような政策転換の大きなおくれ、その一つはやはり政府が財政構造改革あるいは財政再建にどうもこだわり過ぎたのではないかと力いつまでもこれに足を引っ張られた結果、景気の方は冒頭申しましたように日に日に悪くなっていたんですけれども、対応がおくれてしまったのではないか、このように認識をしております。
今申しましたように、今回の景気は相当厳しく、デフレ的な色彩も非常に強まっているわけでありますが、やっぱり景気認識の誤り、そしてその後の気がついたときのおくれ、これがかなり大きな問題になって、結果的にはこういった法律の改正もおくれたのではないか、かように認識しております。
今回の景気がなぜ悪くなったかというそもそもの議論でありますけれども、金融機関が破綻したりあるいはアジアの通貨が混乱したことが原因ではないと思います。とかくこのように言う見方もございますけれども、やはり昨年度の初めからなされた財政デフレ四点セット、これは私が勝手に自分でつくっている言葉でございますが、いわゆる消費税の三%から五%への引き上げ、あるいは特別減税の打ち切り、そしてまた医療費の自己負担の増大あるいは一部社会保険料の負担の増大、もう一点は公共投資を縮減したと、九七年度の話でありますが、こういった四つの財政デフレの結果、起こるべくして景気は悪くなったのではないか。そういう意味では、文字どおり政策によってもたらされた不況というふうに言わざるを得ないと私は考えております。本来なら避けられた不況ではないか、人為的に引き起こされた不況だろう、このように現状をとらえております。こういった点にまず判断の誤りが一つあったと思います。
それから二番目には、そういう中で政府の景気認識は、昨年の後半まで緩やかな回復ということを言い続けてきました。月例経済報告を見ても、いつまでも回復という一文字がとれなかった。ようやくここへ来て厳しいとなっておりますが、こういったそもそもの現状認識の誤りとそのおくれというのが結果的には景気をここまで悪くしたわけですし、またその政策対応も今言いましたように一年以上もおくれてしまった最大の要因ではないか、かように考えております。
さて、中身の問題でありますけれども、今回の総合経済対策でいわゆる所得税、住民税の減税規模を四兆円にするというのが既に発表されておりますけれども、実態的には私は新たな追加の減税規模というのは二兆円にすぎないのではないかと考えております。残る二兆円は来年の早い段階で実施されるということですが、そもそも来年の話でもありますし、ことし二月に行われた特別減税二兆円の単なる継続にすぎないのではないか。となりますと、経済的な効果という点では、来年の分についてはプラマイゼロでありまして、景気浮揚、個人消費を引き上げるという意味では、これから行われます二兆円がすべてではないか。既にこの二月に二兆円をやっておりますけれども、これからという点では二兆円にすぎないのではないか、このように思っております。
それからもう一点は、そういう意味では金額が非常に少ないということでございますし、二番目の問題点は、特別減税という形で相変わらず実行しようという点でございます。特別減税ということは、いずれ打ち切りになる。その時点では増税になることと等しいわけですから、どうしても消費に与えるプラスの刺激効果というのは低下してしまう、こういう問題が残っているのではないか。したがって、私は金額も少なかったと思うし、それから同時に特別減税ではなくてやはり恒久減税、制度減税にすべきではなかったかというふうに思います。
このような視点に立ちますと、結局は弾力条項だけでは不十分でありまして、そういう意味では、今回は一部改正ということになっておりますけれども、抜本的にいずれ見直さないといけない時期が来るのではないか。今回の総合経済対策でも、所得税全体を制度的に見直すという文言も入っております。ということは、いずれ恒久減税という話になると思うんですが、こうなれば、二〇〇三年度から二〇〇五年度に財政目標の時限を二年延長したところで、結局はそれはまた果たせない話になるのではないか。
いずれにしても、今回は仮にこの一部改正で可決、成立したとしても、早晩また財政構造改革法の抜本的見直しが必要になってくるのではないか、このように考えている次第であります。
もう一点は、平成十年分所得税の特別減税のための臨時措置法及び租税特別措置法の一部を改正する法律案であります。
私はこの面で申し上げたい点は、現在は公共投資を追加するよりもやはり個人の所得税減税を第一に考えるべきではないかというのが基本的な見方であります。公共投資を追加するというのももちろん経済にはプラスの効果がございますけれども、あくまでも関連する業界にとどまる。かつてのように、それが一定の時間を置いて日本経済全体にプラスの効果が波及するというのであれば結構なんですが、どうも九〇年代以降の公共投資の追加による効果を見ますと、非常に一時的なものにとどまっておりますし、そのプラスの範囲も非常に限定的なものにとどまっておるということが言えるのではないかと思います。
一方、減税の方につきましては、納税者に対して全員プラスのメリットが及ぶということで非常に幅広いわけですし、同時に現在の不況はある意味で消費不況でもあるわけであります。そういった面では、とにかく消費を持ち上げていく、回復させるというのが第一ですから、やはり減税を中心に考えるべきではないかというふうに思っております。
このような考え方に対して、公共投資の方が経済効果は大きいんだ、減税はほとんどが貯蓄に回って効果が余りないという意見があることは重々承知しております。確かに実施の初年度においては減税というものの四割から五割は貯蓄に回るのは過去の経験則で示されているわけでありますが、問題は次年度以降にも減税の効果というのが残るという点であります。ところが、公共投資の方は財源を使い果たしますと一応その限りでプラスの効果は消えるということでありまして、初年度だけをとって公共事業の方が効果があるんだというのは必ずしも適切な分析ではないんじゃないか、このように思っております。
それからもう一点は、小さな政府というのを中長期的には我々日本は目指さなきゃいけないわけですが、そういった点からも減税というのは小さ唐政府に向けた第一歩ではないか。減税をするということは歳入を減らすわけですが、そのことが結果的にはその後の歳出削減へのプレッシャーになるというのも間違いないと思います。ところが、公共事業の追加というのはまさに歳出の増加であって、これは大きな政府をさらに進めるということでもあるわけで、中長期的な視点からいっても減税主体で対策は考えるべきではないか、私はこのように考えております。
そういった中で、減税については、先ほどもちょっと触れましたように、新たな減税の規模二兆円というのは不足であります。新たな追加としてやはり五兆円程度はやるべきではないかというのが第一点であります。
二番目は、扱い方でありますが、特別減税ではなくて恒久減税を展望すべきではないか。必ずそのときには財源が必要になりますが、直ちに消費税を引き上げるといった短絡的な意見ではなくて、歳出の徹底的な見直しがなされていないのではないかというのを常々感じております。
九八年度予算でもいろいろ努力したということでありますが、歳出総額は前年対比ふえてい各ということで、果たして抜本的な切り込みがなされているかどうか甚だ疑問であります。徹底的な歳出削減というのがまず第一であって、そしてどうしても足らないときには間接税あるいは消費税の引き上げ等を考えていくというのが順序ではないかと思います。
それからもう一点は、せっかく減税をやるんですが、支給方法にも一工夫が必要ではないかと思います。前回、二月に行われたものというのは基本的には給料振り込みでありますから、結局は預金通帳の残高がふえているだけであります。したがって、それをおろさないということであれば結局は貯蓄に回るわけです。
減税をやるに際しては、商品券というのも一つのアイデアではありますが、なかなか難しい面もあるようであります。少なくともこの減税の分については現金支給をしたらどうか。昔は給料は全部現金袋に入っていたわけですが、いわゆる現金で支給をする。そうなると、またそれを金融機関に持っていって預金する人というのは余りいないんじゃないか。額が多ければ別でありますが、今回の一人当たりあるいは一世帯当たりの支給額から見ると、結局それは消費に使うのではないかということで、減税の具体的な支給方法にも一工夫あっていいのではないか、このように考えております。
私からは以上でございます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)