土屋勲の発言 (行財政機構及び行政監察に関する調査会)
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○政府委員(土屋勲君) 行政監察局長の土屋でございます。会長を初め理事、委員の先生方には日ごろから私ども行政監察局の業務につきまして深い御理解を賜り、まことにありがとうございます。この場をおかりして改めて御礼を申し上げます。
さて、本日は行政評価というテーマでございますが、私どもの行政監察について、評価という視点からお手元の資料に即して御説明をさせていただきたいと存じます。
まず、行政監察制度の概要について簡単に御説明申し上げます。
資料の一ページにありますように、総務庁の行政監察は、政府部内の自己改善機能として、行政の制度、運営等の実態を調査分析し、その結果に基づき改善方策を関係行政機関に勧告するものであります。国会や会計検査院が外部から行政を監視されるのに対しまして、私ども行政監察局は、行政みずからがまず自己反省、自己改善を行うことが必要であるという観点から仕事をしているわけでございます。そのため、行政監察は政府部内にありますが、各省庁からは独立した立場、第三者的な立場にございます。それから、行政の実態を調査分析するというアプローチをとっているわけでございます。いわゆる実証主義ということでありまして、行政の現場における実態をベースに具体的な事実、問題点を積み重ねて各省庁に改善方策を勧告いたしております。
行政監察は、その実施形態からは中央計画監察と地方監察に大別されますが、中央計画監察は、本庁が監察テーマ、調査時期、調査対象、調査方法などを決めまして、出先機関である管区行政監察局あるいは行政監察事務所を動員して実地調査を実施するものでございます。
機能といたしましては、総務庁長官から関係省庁の大臣に改善方策を勧告いたしまして、これに基づく措置の報告を求めるということによりまして行政の制度、運営等の改善を推進するということでございます。
ここで対象となります業務は、各省庁の業務、特殊法人の業務、それから地方公共団体等が国から委任、補助を受けて行う業務、いわゆる機関委任事務、それから補助金の関係であります。
対象となる事項は、行政の制度、施策、組織、運営と行政全般にわたっておりまして、重要行政課題の解決の促進、行政改革の推進という観点から仕事を実施しているところでございます。
次に、「行政監察プログラム」とありますが、これは行政監察を重点的かつ計画的に実施するため、平成八年十二月に閣議決定をされました行政改革プログラムというものに基づきまして、現在、現業、特殊法人等の事業の見直し、経営合理化並びに歳出削減、経費の効率的使用というところに重点を置きまして、向こう三年間に実施する予定の監察テーマを定めたものでございます。平成九年度から十一年度までの三年間を対象とする現行のプログラムを昨年度末策定いたしまして、公表もいたしております。
この行政監察プログラムにつきましては、行政を取り巻く情勢の変化を踏まえまして、毎年度新たな三年間について策定するローリング方式により見直しを行うこととしております。また、政府の重点施策に係る緊急の諸課題にも機動的に対応をすることといたしておりまして、次のページに現在の行政監察プログラムを入れてございます。
それでは、本題に入りまして、行政監察をいかなる視点から、いかなる調査分析、評価手法を用いて実施しているかということについて御説明を申し上げます。
資料の三ページの「行政監察の実施手順」というものをごらんいただきたいと思いますが、行政監察テーマの選定から監察実施計画の策定、調査の実施、取りまとめ、改善方策の検討、勧告、勧告に基づき各省庁が講じた措置についての報告徴収というところまで行政監察の一連の実施手順を示してございます。
少し具体的に御説明をいたしますと、まず、行政を取り巻く諸情勢、それに対する施策の動向、過去の監察の実施状況等を勘案してテーマを選定した後、当該テーマに関連する行政の制度、施策につきまして関係省庁からヒアリングを行ったり、事前調査として現地に出向いてテスト調査などを行いまして、調査の設計図に当たります監察実施計画を策定いたします。この監察実施計画は、事前準備の検討結果、あるいは監察の視点等を踏まえまして、当該行政の制度、施策、組織、運営の問題点、改善方策というものを取りまとめるために、何をどのように調査しどのような分析を行うかというものを記述するものであります。
監察の基本的な視点としましては、社会経済情勢の変化に対応して行政の役割の見直しが行われているか否かという変化への対応、行政の総合性が確保されているか否かという総合性の確保、行政の簡素化、効率化が図られているか否かという簡素化、効率化、行政に対する国民の信頼が確保されているか否かという信頼性の確保という四つの視点を主要視点として考えておりますが、さらには、調査対象となる事務事業の内容に応じまして、合目的性、合規性、経済性、効率性、有効性、公正性、透明性などの具体的な視点を取り込みながら監察実施計画を策定しているところでございます。
調査手法あるいは分析評価手法につきましては、例を掲げさせていただきましたので、後ほど実際の監察計画に即して御説明をさせていただきたいと思います。
次に、監察実施計画に基づいて調査を実施することになりますが、この調査は、本庁がみずから行うとともに、地方の管区行政監察局・事務所を動員して行っております。地方の調査結果は本庁に報告され、本庁においてこれを整理、分析評価を行い、当該行政の制度、施策、組織、運営についての具体的な問題点を実証的に把握した上で改善方策の検討を行い、相手省庁に勧告するということになるわけでございます。
勧告をした後には、その実効性を確保するため、勧告に基づき各省庁が講じました措置について報告を受けております。これは、単に報告を受けるということではなくて、改善措置が不十分な場合にはさらにその活動の中で改善を促すということを行っているわけでございます。
それでは、資料の四ページの、主な調査手法、分析評価手法の例をごらんいただきたいというふうに思います。
最近の行政監察による勧告の中から、代表的な調査手法または分析評価手法を用いた事例について御説明を申し上げます。
一つの監察の中では、さまざまな調査手法、分析評価手法の中から、問題の内容に応じまして適切な手法を組み合わせてデータを収集、分析し、問題点、改善すべき事項を実証的に把握していくことに努めているわけでございます。
まず一の、法令等の規定内容に従って事務事業が実施されているかを現地において確認し、遵守されていない場合、その原因を分析するとともに、制度、仕組みの改善をも含めた改善方策等を検討する手法を用いた事例、いわば現地における実地確認調査という手法を用いた事例でございます。
事例の一は、農業構造の改善対策に関する行政監察の例でございまして、国庫補助事業により整備された野菜集出荷施設の利用状況を現地で確認した結果、同施設が農機具や肥料の格納庫として目的外に利用されている事例が見られたものであります。
こうした事例に基づきまして、農林水産省に対しまして、施設の採択時における審査の慎重かつ厳正な実施、どうしても利活用の改善が見込めないものについての利用目的の変更、補助金の返還などを勧告いたしております、
次に、五ページの中ほどをごらんいただきたいと思います。
民間との制度の比較分析、外国の制度や仕組みとの比較分析、行政機関間の事務事業の比較分析、時系列による比較分析等を行いまして、その不均衡、優劣等を発見し、原因、改善方策等を検討する手法を用いた事例、いわゆる比較分析の手法を用いた事例でございます。
事例の五は、財務内容等に関する書類の作成、公開の制度について、特殊法人と民間を比較したものですが、特殊法人のディスクロージャーのあり方を検討するため、特殊法人と民間とのディスクロージャー制度について比較検討を行った結果、特殊法人のディスクロージャーの水準は、同等の資本金、規模等を有する民間の大規模な株式会社が行うディスクロージャーの水準に達していない、特殊法人の業務並びに資金は民間と異なり強い公共性を有しているということから、特殊法人を所管する各省庁に対しまして、特殊法人について、民間と同様にディスクロージャーを法定すること、民間の水準以上の内容のディスクロージャーをすることを勧告したものであります。
続きまして、六ページをごらんいただきたいと思います。
事例の八でございますが、我が国の民間金融機関における業務及び財産の状況に関する情報開示の状況につきまして、外国の制度、仕組みと比較したものであります。
金融に関する行政監察におきまして、民間金融機関における業務及び財産の状況に関します情報開示の実施状況を調査した結果、調査金融機関の約一八%が、業務及び財産に関する事項を記載した説明書類、いわゆるディスクロージャー誌を作成しておらず、作成していても開示事項、内容は不十分でありました。我が国と米国のディスクロージャー制度を比較したところ、米国では、ディスクロージャー誌について、作成、公表、最小限開示すべき事項等を連邦規則で明記しまして、虚偽記載に対する行政処分等も可能であるのに対しまして、我が国のディスクロージャー制度には、発行時期、記載内容及び虚偽記載に対する罰則の規定が設けられておりませんでした。
このため、大蔵省に対しまして、預金者等の理解が得られるレベル、国際的なレベルの経営の透明性が確保されるよう、ディスクロージャー制度の整備充実について勧告をいたしたところでございます。
また、七ページの事例の十一でございますが、郵便局の外務員の業務能率につきまして時系列で比較をしたものであります。
積立貯金の集金業務、定額貯金等の募集業務を行う外務員の定員は十年以上ほとんど変動のないものとなっておりましたが、郵便局の要員合理化を図る観点から、郵便局間の外務員一人当たりの取扱業務量を比較しますと約一・五倍の格差の生じている例が見られたほか、集金業務の指標である積立貯金の口座数を時系列で比較してみますと、平成六年度は昭和六十一年度に比しまして約三三%減少している。また、募集業務の指標である募集件数も減少傾向にありました。このため、郵政省に対しまして業務量に対応した要員配置の見直しを勧告いたしているところでございます。
次に、八ページをごらんいただきたいと思います。
基本計画等の目標と実績を比較しまして、その達成状況等から原因、改善方策等を検討する手法を用いた事例でございます。
事例の十二は、国有林野事業に関する行政監察におきまして、国有林野事業の経営の改善を図る観点から、現行の改善計画に基づく管理運営の状況を調査した結果、累積債務残高は三兆五千億に累増するとともに、事業の実施状況についても、例えば新たに開設された林道を利用した立木等林産物の収穫予定量と実績を比較してみますと、収穫予定量五百五十八立米に対しまして実績は二百九十立米にとどまるなど投資効果の乏しいものが見られましたことから、農林水産省に対し、林道整備については補修、修繕、森林保全の維持に係るものを除き、当分の間必要最小限のものに抑制するよう勧告をしたところでございます。
次に、四のコスト分析、ベネフィット分析、経営分析、財務分析等の結果を踏まえて改善方策等を検討する手法を用いた事例でございます。
事例の十四は、アルコール専売事業についてコスト分析、経営分析を行っているものであります。
新エネルギー・産業技術総合開発機構、いわゆるNEDOの発酵アルコール製造部門の合理化、七工場における製造経費の削減等を図る観点から、工場の稼働率、製造原価、配置職員数、製造工場の立地条件を踏まえた原料・製品輸送の効率性等の経営内容を詳細に分析した結果、七工場全体の稼働率は七七%にすぎず、大規模工場の製造余力で小規模工場の年間製造量を賄えること、一キロリットル当たりの製造原価が大規模な工場に比しまして小規模な工場は約二・七倍高いこと、工場は内陸部に所在をしているため輸入原料等や製品の輸送に経費がかかっていること、平成八年度から民間企業への製造委託を開始しているというふうな状況が見られたことから、通商産業省に対しまして、小規模で生産性の低い発酵アルコール製造工場の再編整理の推進を勧告したものでございます。
最後に、資料の九ページの中ほどにありますが、関係者の意見、要望やアンケート調査から行政ニーズの実態等を把握し、行政施策の改善方策等を検討する手法を用いた事例でございます。
事例の十六は、現在実施中の麻薬・覚せい剤等に関する調査におきまして、薬物乱用問題に関する認知度、防止対策等に関する意見、要望を把握するため、高校生、その保護者及び教員約五万六千人を対象にアンケート調査を実施し、とりあえずアンケート調査だけの結果は公表をいたしたところでございます。
事例の十七は、これも現在実施中の義務教育諸学校に関する行政監察におきまして、いじめ、登校拒否、校内暴力問題に関する実態、この問題に係る各種施策の評価及び意見、要望を把握するため、義務教育諸学校に在学する児童生徒、その保護者及び小中学校の教師約三万三千人を対象にアンケート調査を実施したものであります。
以上のようにさまざまな調査手法、分析評価手法を用いまして行政の実態と問題点を実証的かつ的確に把握をしまして、その結果に基づき改善方策を各省庁に勧告することによって、行政の制度、施策、組織、運営の全般にわたって改革改善を推進しているところでございます。
最後に、行政監察制度の今後の課題について申し上げますと、昨年十二月の行政改革会議長終報告の中で評価機能の充実強化が求められております。
資料の十ページ以下に最終報告の抜粋がございますが、その内容をかいつまんで御紹介いたしますと、
従来、わが国の行政においては、法律の制定や予算の獲得等に重点が置かれ、その効果やその後の社会経済情勢の変化に基づき政策を積極的に見直すといった評価機能は軽視されがちであった。
しかしながら、政策は実施段階で常にその効果が点検され、不断の見直しや改善が加えられていくことが重要であり、そのためには、政策の効果について、事前、事後に、厳正かつ客観的な評価を行い、それを政策立案部門の企画立案作業に反映させる仕組みを充実強化することが必要である。
また、評価機能の充実は、政策立案部門と実施部門の意思疎通と意見交換を促進するとともに、その過程において政策立案部門、実施部門の双方の政策についての評価や各種情報が開示され、行政の公正・透明化を促す効果があることも忘れてはならない。とされております。
このため、各省における評価機能の強化とともに、各省を超えた全政府レベルの評価機能の充実強化の必要性が指摘をされております。
新たに設けられる総務省に現在の総務庁の行政監察機能を引き継ぎ、さらに充実を図ることとされておりまして、客観的で公正な評価方法の確立、評価結果の政策立案部門への適切なフィードバックなど、評価・監視機能の十分な発揮のための工夫を行うことが求められております。
また、国民のニーズに即応した効率的な行政サービスの提供を実現するという行政改革の基本理念を実現するため、政策の企画立案機能と実施機能とを分離し、実施部門のうち一定の事務事業についてその垂直的減量を推進しつつ効率性の向上、質の向上及び透明性の確保を図ることを目的としまして、独立行政法人制度を導入することとされております。この制度の基本的な仕組みとして、業務の結果について評価し改善する仕組みが必要とされ、評価機関としましては、総務省には全政府レベルの評価委員会を、各省には運営評価委員会を設置することとされております。このうち総務省の評価委員会の事務局を行政評価・監察担当部局ということにされております。
先般、行政改革会議長終報告の趣旨にのっとって行われます中央省庁等改革に関する基本理念、基本方針等を定める中央省庁等改革基本法案が国会に提出をされたところでございます。この基本法案が成立をいたしますと、中央省庁等改革推進本部において新たな体制への移行に必要な法律案等の立案が行われるというふうに承知をいたしておりまして、政策評価のあり方、仕組みについても検討がなされることと思いますが、私どもといたしましても最終報告で示された課題に適切に対応できるよう必要な準備を進めていかなければならないと考えているところでございます。
以上でございます。