中村芳夫の発言 (行財政機構及び行政監察に関する調査会)

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○参考人(中村芳夫君) 経団連の中村でございます。本日はこのような機会をいただきまして、まことにありがとうございます。
 私からは、社会資本整備の効率的、重点的な整備という観点から評価の問題について触れさせていただきたいと思います。
 お手元にお配りしてありますレジュメでございますが、その中の四「豊かさと活力を生むための社会資本整備を」というところを中心にお話をさせていただきます。その次にありますのは、経団連が今年の一月に出しましたレポートでございます。
 せっかくいただきました機会でございますので、経団連が目指す二十一世紀の経済社会構造の全体像及びその実現のための必要な構造改革、とりわけ社会資本整備と密接に関連を持っております税財政構造改革のあり方についてまずお話をさせていただきたいと考えております。
 経団連では、これまでの経済社会システムを大胆に変革して世界から信頼され尊敬される国づくりを進めるために、九六年に魅力ある日本の創造という長期ビジョン、いわゆる豊田ビジョンというものを取りまとめました。この長期ビジョンは、日本の高齢者人口がピークを迎えます二〇二〇年を展望したビジョンでございまして、二十一世紀に日本が目指すべき経済社会構造はどうあるべきか、またそれを実現するためにはどのような構造改革を進めていかねばならないかという問題について取りまとめたものでございます。
 私どもが二十一世紀に目指す経済構造の基本は、企業や個人が自己責任のもとで活力を十分発揮でき、リスクへの挑戦や独創性の発揮が高く評価される経済社会でございます。これは海外から見れば、日本は自由で透明で公平で、内外に開かれた国に転換していくことでありまして、市場経済体制のもとで活力のあふれるグローバルな国家を目指すことでもございます。このもとで経団連では、規制の撤廃、緩和などの行政改革、法人税引き下げなどの税制改革、さらには財政構造改革、金融システムなどの構造改革に取り組んできております。これらはすべてこの豊田ビジョンを実現していくための政策提言でございます。
 そこで、社会資本整備と密接に関連いたします税財政構造改革において最も重要な視点は、経済社会を活性化していくことだと考えております。国、地方を通じた規制の撤廃、緩和、行政改革、歳出の抜本的な見直しなどによりまして小さな政府を実現して、民間でできることは可能な限り民間に任せるべきであるというふうに考えております。そうすることによりまして、初めて歳入が安定して財政健全化への道筋をつけることができるというふうに考えております。別な言い方をしますれば、国民や企業に安易な税負担を求めるような財政再建では民間の活力は阻害されまして、将来にわたって角を矯めて牛を殺すという結果になるのではないかというふうに考えております。
 その際、財政ということを考えますと、国の一般会計に限られがちでございますが、政府の範囲は一般会計ばかりでなく特別会計、財政投融資、さらには地方財政も含めて全体として考える必要があります。この全体を見ながら歳出にめり張りをつけて財政をスリム化し、国民負担率が五〇%を上回ることがないようにしていかなければならないと考えております。
 また、税制につきましては、高齢化社会における負担の平準化、経済社会の活力の維持などの観点から、所得、消費、資産の税制全般にわたる抜本的な見直しを行うことが不可欠だと考えております。二十一世紀のメガコンペディションの時代、高齢化社会の中で日本が活力を維持していくためには企業の国際競争力、起業家精神の高揚が不可欠であります。そのような環境をつくり上げるためにも法人の税負担を引き下げ、法人税の実効税率を国際水準並みの四〇%にしていく必要があります。また、個人のやる気や才能を十分に発揮させるためには所得税の累進構造をさらにフラット化の方向で見直していく必要があります。
 このような意味から、先ほど申し上げましたこの長期ビジョンでは、所得税、法人税などの直接税による国民の負担を軽くする一方で、社会の高齢化に伴う負担増に対応しまして消費に対する課税の比重を高めていかざるを得ないというふうに考えております。
 このような財政構造改革の必要性を主張しておりますけれども、本日の議題であります公共事業、社会資本の効率的な整備、重点的な整備という点につきましても、やはり経済の活性化の視点から重要だと考えております。経団連の長期ビジョンでは、人口がピークに達します二〇一〇年までに二十一世紀の発展基盤を重点的かつ効率的に整備すべきだと考えております。
 特に、重点化という観点から申し上げれば、高コスト構造の解消に役立ちます国際拠点空港、高規格幹線道路、新たにイノベーションを生み出すような研究インフラの整備、高齢化対応施設などの生活関連のインフラの整備が必要と考えております。これに対しまして政府では、毎年度予算編成の過程でシェアを見直し、重点枠を設定する一方でコストの縮減の目標率を設定するなど、重点化、効率化の努力がされて取り組まれておりますが、さらなる重点化、効率化をお願いしたいというふうに考えております。
 現在、五百二十兆円にも上る政府の債務がありますように、財政状況は非常に厳しい状況にありまして、九八年度の予算案におきましても文教、防衛などさまざまな経費が削減される中で、公共事業も七%の削減、経済協力に次いで大きな削減率となっております。こうした面から公共事業には従来以上に重点化と効率化といった構造改革が強く求められております。
 そこで、経団連では、財政構造改革における社会資本整備のあり方や整備の進め方についてさらに具体的に検討を進めまして、きょうお手元にお配りしてありますような提言を取りまとめた次第であります。
 前置きが長くなりましたが、その提言について説明させていただきます。
 結論から申し上げますと、公共事業には、まず審査・優先順位づけを行うプロセス、次に執行のプロセス、最後に評価・見直しのプロセスがあります。それぞれの段階にルールをつくって透明化していく必要があると考えております。
 例えば、最初の審査・優先順位づけの段階では、費用便益分析などの手法を活用しまして情報公開を通じて透明度を高めていく必要があると思います。二番目の執行段階では、規制緩和を進めまして徹底した効率化を図っていく必要があります。三番目の段階で、先ほど金本先生からお話がありました第三者機関による客観的な評価を行っていけば、財政構造改革にふさわしい経済活動や国民生活に真に役立つ社会資本の整備が行われるというふうに考えております。
 なお、あらかじめお断りしておきますが、この提言では、公共事業を減額すべきとか増額すべきといった量的な問題や、あるいはいわゆる箇所づけの適否については検討しておりません。あくまでも質的な構造改革を求めているものであります。
 それでは、お手元の資料でございますが、分厚い方でちょっと恐縮でございますが、提言の目次を一枚めくっていただきますと、一ページの中ほどから二ページ目の中ほどにかけまして、社会資本整備の重点化、効率化と必要性を強調しております。
 さらに三ページ目に行きます。ここでは公共事業の改革を具体的に進めていくには改革の基本原則を定めることが不可欠だと訴えております。イギリスではPFIという公共事業に関する新しい基本理念を用いまして公共事業改革に成功をおさめております。その背景には、メージャー前首相がシチズンズチャーターという行財政改革に関する基本理念を取りまとめまして、その中で租税に対して最も価値あるサービスを提供するという考え方、すなわちバリュー・フォー・マネーという考えを明確に打ち出したことがあります。この考え方を打ち出すことで官民の役割分担に関する基本原則を国民や行政に浸透させるのに成功したと言われております。
 そこで提言では、日本でも公共事業の改革に取り組む前に、まず政府は行財政改革と公共事業改革の基本原則を示すことが不可欠だと考えております。その際、やはり国、地方の役割分担の適切な見直し、民間活動の優先、公共事業に関する透明性の確保の三つが必要だと考えております。
 次に、公共事業改革の具体的な方策について申し上げさせていただきます。
 本文の八ページ以降の参考資料というところがございますが、その二ページ目の図表の二をごらんいただきたいと思います。公共事業の重点化、効率化のためのプロセスを、先ほど申し上げました審査・優先順位づけ、執行、評価・見直しの三段階に分けて、国が行う公共事業について政府が守るべきルールを具体的に示しております。
 図表二の一番上にありますように、提言では、審査・優先順位づけなど公共事業の具体的なプロセスを進める前に、まず二つの基本的な考え方を打ち出しておく必要があるとしています。
 第一番目は、右側の上の四角いところにございますが、公共事業の中期方針を政府・与党が定めまして国会の承認を受けるということでございます。そして、この中期方針で公共事業の範囲や優先順位あるいは民間活動の優先や国、地方の役割分担などの原則を打ち出すように求めております。
 第二は、一番上の中ほどにあります公共事業の評価、監視を行う第三者機関の設置であります。この第三者機関は、各省がばらばらに行っております費用便益分析を政府内で統一するためのガイドラインあるいは執行を効率的にするための業務運営の基本方針、さらにはプロジェクトの評価についてのガイドラインを定めます。これらを大前提としまして、図表の中ほどにございます第一番目の審査・優先順位づけを行っていきます。
 このプロセスのポイントは、政府が国民のニーズを的確にとらえまして経済的な効果を科学的に検証して、国民が納得のいくような審査・優先順位をつけていくことであります。提言では、政府だけがプロジェクトを提案するのではなくて、広く政党、住民が参加するものとしております。政府はこのプロジェクト案の審査・優先順位づけを行うわけですが、その判断に当たりましては、費用便益分析などの科学的な手法を用いまして経済効果をできる限り数値化して、このプロジェクトがほかの代替案と比べて効率性や環境対策などの面で最善のプロジェクトであることを国民や議会に説明しなければならないとしております。
 続きまして、その下の執行のプロセスでございますけれども、このプロセスの最大のねらいは規制緩和などを通じました効率化でございます。九五年三月に規制緩和推進計画が策定されて以来、規制緩和は、情報通信一土地住宅、運輸などの分野で大きく進んでまいりました。しかし、公共事業分野の規制緩和は、予定価格の事後公表が打ち出されただけで、それ以外は手がついていないという状況だと思います。行政改革委員会では、最低制限価格制度の廃止やランク制の見直しなどの入札・契約制度を中長期的に見直すことを求めておりますが、私どももこの考えを基本的に支持しております。
 次に、図表二の一番下の三番目の「評価・見直しのプロセス」でございますけれども、ここでのポイントは、最近、三重県や北海道などの地方公共団体で採用されております事業の評価や見直しの仕組み、いわゆる時のアセスメントを国にも導入するよう求めている点でございます。
 私どもの提言ではさらに踏み込んで、事業の評価、監視を行う第三者機関の設置をしてはどうかという提案をしております。この第三者機関は、余り大きな組織になっても行政改革の精神に反しますので、すべてのプロジェクトを評価するのではなく、基本的に大規模なプロジェクトを取り上げまして、総務庁の行政監察局や財政担当部局などの協力を得ながら評価を行っていけばいいというふうに考えております。
 そして、この第三者機関は、プロジェクトの評価結果を政府に提出すると同時に、国民にも公表してほしいというふうに考えております。政府は、この評価結果を参考にしながら、プロジェクトを中止するか見直しするかの判断をしていく必要があると考えております。
 以上が公共事業の適正化のためのプロセスでございますが、さらに提言では、図表の二の右下にございますように、これらの公共事業の手続を法制化して、法律が守られているかどうかも第三者機関に監視させてはどうかと考えております。
 私からの説明は以上でございます。

発言情報

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発言者: 中村芳夫

speaker_id: 22532

日付: 1998-03-11

院: 参議院

会議名: 行財政機構及び行政監察に関する調査会