野中一二三の発言 (国民福祉委員会)
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○参考人(野中一二三君) 全国町村会の副会長をいたしており、京都府園部町長の野中でございます。
本日は、町村の国民健康保険事業等について意見を申し述べる機会を与えていただき、厚くお礼を申し上げたいと存じます。
このたび、国民健康保険法等の改正案が提出されまして、国会で御審議をいただいているところでございますが、今回の制度改正に当たっては、制度の抜本改革を行うまでの間における当面の措置としての改正でありまして、私どもといたしましても、まだお願いしなければならない点もございますが、現時点ではやむを得ないものとして、賛成の立場から意見を述べさせていただきたいと存じます。
まず、国民健康保険制度の現況について簡単に申し述べさせていただきます。
御案内のとおり、国民健康保険制度は、被用者保険と比べ、高齢者や低所得者の極めて多くを被保険者として受け入れる仕組みとなっておりますので、その財政基盤は弱く、しかも近年の医療費の増嵩等により保険料の負担が著しく高くなっており、被保険者に対してこれ以上の負担を求められない現況に来ております。
特に、市町村国保は老人加入率が極めて高く、健保組合の老人加入率は二・九%、政管健保は五・三%となっているのに対し、市町村国保は二一・八%となっております。また、七十歳以上の者を除きました加入者の平均年齢を比較いたしましても、国保が四十二・三歳、組合健保が三十一・五歳、政管健保三十三・七歳という状況でございます。また、無所得の方や低所得の方の多くを抱えており、国保加入世帯におきましては、無職世帯の割合が約四割、所得なし世帯は二割以上をも占めております。一方、加入者の平均年間所得について見ましても、国保は二百四十二万円であるのに対しまして、組合健保は三百五十万円程度、政管健保二百八十万円程度となっております。
ちなみに、私の園部町につきましても、老人の加入割合は二七・九%、また退職被保険者の加入割合も一一%となっております。また、所得なし世帯についても二八%であり、他の市町村国保同様、率直に申し上げて極めて厳しい財政運営を行わざるを得ない現況になっております。
このように、市町村国保が抱える困難な問題は、高齢者の加入率が高いこと、被保険者の所得水準が低いことなど、そもそも構造的な問題に由来するものであり、保険者としての責に負いかねる面が強いことをまず御理解いただきたいと思います。このため、市町村の多くは国保会計に対して毎年多額の繰り入れを行わざるを得ない状況にあります。
この数を見ますと、国保会計の赤字補てん等のために一般会計から法定外の繰り入れを行っている市町村は全体の約六割、法定外繰入金総額は約三千百億円に上っており、さらに、我々町村においては国保事業だけを実施しているわけではなく、他にも多くの施策を抱えておりますので、町村財政において国保は大きな負担の原因となっておるのが実態であります。
このような国保の構造的な問題を解決するためには、何よりも医療保険制度の抜本改革が一日も早く実現されることが必要でありますが、一方、抜本改革が簡単に実現できるものでないことは承知をいたしているところでありまして、当面は現行制度の枠内においても公平の観点からすぐに着手できる問題について、市町村国保の構造的な厳しさを踏まえた上で、できる限り現行制度における不合理の見直しを行うことが必要であると考えます。
御案内のとおり、老健拠出金の算定方法に関しましては、平成十年三月を目途に所要の見直しを行うこととされており、今回の改正はその一環として負担の公平化を進めるものと理解をしております。
思えば、老健制度の趣旨は国民のすべてで老人の医療費を公平に負担しようとするものでありますが、現在、加入率の上限を超えた保険者は、超える分については調整されることなく負担するという状況が続いております。御案内のとおり、平成九年度は老人加入率上限は二五%でありまして、この二五%を超えている市町村割合は、市町村国保の約六割にも達しているということであります。
そもそも、市町村保険者において老人の加入率が高いということについては、保険者の責に帰さない事由でありまして、これに上限を設け、老健制度の趣旨を否定するような仕組みにしていること自体が不合理であると言わざるを得ません。特に、上限を超えているような市町村は、先ほども申し上げましたとおり、過疎地域等の財政基盤の弱い町村が多い現況であり、老健制度の趣旨に照らせば、ぜひとも上限は即撤廃すべきであるというのが私どもの気持ちであります。
次に、退職者に係る老健拠出金の半分を退職者医療制度を通じて負担することについてですが、退職被保険者は確かに国保の被保険者でありますが、もともと退職者医療制度は、被用者保険に属していた方が退職してから市町村国保に加入することによる負担の偏りを是正するために、退職者に係る費用は被用者保険において負担するということをその制度の考え方としているものであります。しかし、現在の老健拠出金の算定に当たっては、保険者における加入者数に応じて負担することとされているために、退職被保険者の数も国保の被保険者として算定されている一方で、その老健拠出金は退職者以外の一般被保険者が負担することになっておりますことはやはり不合理であると言わざるを得ません。
退職者医療制度創設時におきましては、市町村国保に占める退職者の数も少なく、その不合理さもさほど問題にはなりませんでしたが、市町村国保における退職者数の増加に伴い、退職者に係る老健拠出金の負担が高まってきており、その額は現在約二千億円程度にも達して、これは制度創設当時と比較いたしますと二倍以上に膨れ上がっているところであり、これ以上一般の被保険者に負担のしわ寄せをすることは不合理であると思います。
このように、老健制度の原則や退職者に係る費用は被用者保険が負担するという退職者医療制度の趣旨を踏まえれば、町村会としては、加入率上限は撤廃すべきであり、また退職者に係る老健拠出金は全額退職者医療制度を通じて被用者保険が負担すべきものであると考えますが、今回の改正が抜本改革までの間における痛み分けの措置であるならばやむを得ないものと考えており、改正案について賛成せざるを得ないというのが現況でございます。
また、医療保険制度を健全に運営していくに当たっては、老人医療費を初めとする医療費の適正化を図ることは極めて重要な課題であり、町村の立場としても、保健事業をさらに推進する等の取り組みを行いたいと考えております。
また、不正請求に対しては厳しい姿勢で臨むことが肝要であり、今回の不正請求防止対策の強化については評価をいたしているところであり、また、保険医療機関の病床数等が多い地域は入院医療費が高いという関係が見られ、今回の保険医療機関の病床指定制度に関する改正案につきましては市町村国保の運営の健全化を図る上からも妥当な策であると考えております。
先ほども申し上げましたとおり、高齢者や低所得者が多く偏っているという構造的な問題に対し抜本的にメスを入れていかなければ、市町村国保が抱える現在の困難を解決することは不可能であり、世界に冠たる国民皆保険制度をこのようにゆがんだ形で支え続けていくことはもはや限界に達していると言わざるを得ません。私ども町村国保の立場からも、ぜひとも医療保険制度の抜本改革を早急になし遂げていただくことを切にお願いしたいと思います。
私どもといたしましては、医療保険制度の一本化など医療保険制度の立て方に踏み込んだ抜本改革が必要であると考えます。
また、受益を受けた方についてはそれ相当の負担をしていただく必要もあると存じます。今後の高齢化の進行を踏まえれば、持てる高齢者には一部負担金や保険料は相応の負担をしていただくことも必要であろうと存じます。
また、いかに健康を維持し、できる限り病気にならないようにする動機づけを医療保険制度の中に組み込む必要があると考えます。
ともあれ、医療保険制度をめぐる問題解決は極めて緊急性を有し、重要な課題であります。市町村行政を預かる立場といたしましては、今後とも保健、福祉と連携した公平、効率的な国保運営の取り組みを積極的に進め、また健康づくり等の保健事業の充実を図っていきたいと考えております。このためには財源の確保とともに公平な費用負担がどうしても必要になってくるわけでございまして、何とぞ先生方の特段の御尽力をお願い申し上げる次第であります。
最後に、先生方にお願いいたしたいことは、今回の法案の成立のおくれは直ちに市町村国保の財政に多大な影響を及ぼすものであり、このような事態を避けるためにも一日も早く法案を成立させていただきたいというのが私たちの最大の願いでございます。
これをもちまして、私の意見とさせていただきます。
御清聴ありがとうございました。