橋本龍太郎の発言 (予算委員会)
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○国務大臣(橋本龍太郎君) 今、議員が引用されましたフェルドスタイン教授の論文、この中では一九八〇年代のメキシコあるいはブラジルにおける中南米の危機を取り上げながら、当時のIMFの役割というのは現在でも有効だと。そして、ただ現在のIMFのプログラムがそれを超えてしまっているのではないかという問題を提起されているように私は思います。
八〇年代の中南米における危機の原因、これは間違いなくそれらの国々が積極的な国内開発計画などにより膨大な財政赤字を生じさせた、あるいは輸入の急増とこれに対する対外債権の増という形であらわれておりました。ですから、IMFのコンディショナリティーというのは、当然のことでありますけれども、財政収支の改善とインフレ抑制のための金融の引き締めというところに主眼が置かれていたと思います。
今回のアジアの通貨危機、これは各国の状況によって必ずしも一概に言えませんけれども、やはり為替の過大評価、そしてこれに伴って民間資本の流入というものが続いていたところですが、それが必ずしも適切に活用されていなかったところに市場の信認が失われた。そのために、一転して為替の急激な減価あるいは民間短期資本が流出する、そしてさらには脆弱な金融部門の抱えている問題が顕在化する、こうした状況を招いたと思っております。
ですから、今回の通貨危機におけるIMFのコンディショナリティー、これが経常収支の改善を目的としたものに加えて、経済構造の調整、なかんずく金融セクターの強化というものに重点が置かれた。そういう状況の中で、さまざまな議論を確かに議員御指摘のとおりに呼んでおります。
私は、IMFは、発生した危機の性格でありますとか各国の状況を踏まえて適切なコンディショナリティーを設定するように努力しているとは理解しておりますけれども、プログラムの実施に当たって、当然ながら定期的にレビューを行う、そして必要があればコンディショナリティーに調整を施しているわけです。
タイについては既にレビューが行われました。そして、黒字を義務づけておりましたものを、たしかマイナス二%ぐらいまでだったと思いますが、赤字を許容するといった調整を施しております。
インドネシアとの間で現在行われておりますその話し合いにいたしましても、非常にたくさんの島から構成されている、例えば物流一つをとりましても人の手で運ぶことはできない、航空機または船舶を必要とする、そうした島が非常にたくさんあるという特異な国土形成というものもその考慮の中に入っているでありましょう。こうしたインドネシアの実情に即したプログラムというものを目指して議論が行われ、関係者が努力をしている。私はその中で実質的に民間債務の部分を除いてほぼ内容が固まったことを喜んでいると先ほど申し上げました。
そして、このプロセスの中におきましても日本は、IMFのコンディショナリティーというものが今回の通貨危機に表明されましたような新しい形の危機というものに即応できるようなものにするべく、今後とも調査、研究、分析というものに鋭意取り組みながら積極的に発言を行っていきたいと思っております。
ちょうどこの危機がスタートいたしましたときには、その状況というものが従来の中南米型とどこまで違うのか、必ずしも十分な認識を持たずに我々も議論をした部分がございました。IMFとしても、当然ながらこの中で学んでいったことは多いと存じます。
そして、今回のASEMにおきましても非常に論議が集中しました一つのポイントは、短期間の巨大な資本の国際間の移動というものに対して単独でそれを防ぐ能力はどの国にもない。その場合に、IMFというものが十分にワークできるようにするためには今後どういう方途を講じていくことが必要か、こうした点について一層論議を、また研究を深めていかなければならないというのがお互いの共通認識でありました。