東順治の発言 (本会議)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○東順治君 私は、平和・改革を代表いたしまして、ただいま議題となっております北朝鮮によるミサイル発射問題について、小渕総理及び関係大臣に質問をいたします。
質問に先立ち、東日本を中心に各地に甚大な被害をもたらした集中豪雨により犠牲になられました方々に対しまして、心より哀悼の意を表します。また、今なお被害に苦しむ被災地の皆様には、一日も早い復興をと心より願うものでございます。
去る八月三十一日、我が国に対する事前通告もないまま、北朝鮮は、我が国領土を越え、三陸沖の太平洋上に着弾する弾道ミサイルの発射を実施いたしました。
この弾道ミサイルは、平成五年五月に発射実験を行ったノドン一号の性能をはるかに超え、我が国全体をその射程距離範囲におさめるものであり、もしこれが日本本土に着弾していればどうなっていたか。仮に、落下地点に遠くない在日米軍三沢基地に着弾していれば、米軍は自衛権を行使し、即座に北朝鮮への攻撃を開始していたかもしれません。
このようなミサイルの発射は、我が国の安全保障上極めてゆゆしき事態であり、北東アジア全地域の平和と安全に深刻な影響を与え、国際社会全体に緊張をもたらす行為であり、断じて容認できるものではございません。この問題に対しては、いかに普通の常識が通じない国であろうとも、北朝鮮がその非を認めるまで、政府は、一歩も退くことなく、ミサイルの実験、開発の中止への毅然たる態度を貫き通すべきであると私は強く主張するものでございます。
さて、今回のミサイル発射に関しては、政府は、八月半ばには、既に米国から北朝鮮がミサイル発射準備を進めているようだとの情報の提供を受けて、警戒を強化するとともに、八月二十九日に北京において開催された北朝鮮との課長級非公式会議において、ミサイル問題を提起し、その発射を中止するよう要請したとのことでありました。
我が国が北朝鮮のミサイル発射準備についての情報を米国から受けて後、北朝鮮に対し中止要請を行ったのはこの二十九日の要請のみであったと伺っておりますが、そこで、まず第一に、我が国は八月半ばには既に北朝鮮の動向に関する情報をキャッチしていながらも、なぜ二十九日以前に北朝鮮に対し中止要請を含め何らの対応をとれなかったのか、まずお伺いいたします。
運輸省によりますと、ミサイルが発射された三十一日の正午から午後一時までの間、三陸沖の太平洋上の周辺空域を七機の民間機が飛行し、また着弾したと思われる地点から約百七十キロの漁場においては、百隻もの漁船が操業していたとのことでした。一つ間違えれば大惨事を招きかねない状況があったことになります。
それだけに、政府は、事前に北朝鮮の動きをキャッチして以来、北朝鮮にどのような対策を講じたのか、どのような内容の中止要請を行ったのか、そうした我が国の対応に対し北朝鮮はどのような反応を示し、結果としてミサイル発射に至ったのか。国民にとっては、まさにここがどうしても確認をしておきたい一点であります。総理に明確なる答弁を求めます。
また、あわせて、中止要請を行った時点で、我が国政府は、北朝鮮によるミサイル発射の可能性、脅威についてどの程度に認識していたのか、明らかにしていただきたいと思います。
さらに、総理、本日のマスコミ報道によりますと、明後五日、つまりあさってですね、あさってにも二発目のミサイルが発射されるかもわからない、このような報道があっております。こういう事実というものを確認されておられるのか否か。あさってにもミサイルをもう一回発射するというこの報道に対して、またこういうことを確認しているならば、これに対してどう対処するのか、この点もあわせてお伺いしたいと思います。
さて、我が国の中止要請にもかかわらず北朝鮮はミサイル発射を行ったわけでございますが、その目的、意図について、我が国政府としてはどのように推測をしているのでしょうか。
昨日の外務委員会において、高村外相は、その目的や意図については、直ちに政府としてこうだと断定することは適当ではないと現時点では思っている、このように述べておりますけれども、なぜ適当ではないのでしょうか。
むしろ、北朝鮮のミサイル発射により脅威にさらされている我々としては、今後の北朝鮮政策を検討し進めていく上で、北朝鮮がミサイル発射を行った目的、意図が明らかにされなければ、十分な対策は不可能であるばかりでなく、国民はただただ怒りに駆られ、不安におののくばかりであります。このようなことでは、小渕総理や高村外務大臣が目指すところの国民とともに歩む外交というモットーは、言葉だけで実体のない、全くむなしいものとなってしまうのではないでしょうか。
北朝鮮がミサイル発射を行った目的、意図について、外務大臣はどのように推測をされておられるのか、改めて見解をお伺いいたします。
次に、北朝鮮が行ったミサイル発射は、我が国に対する事前通告もなく行われたものであり、また、我が国領土を飛び越え太平洋に着弾していることから、領空侵犯の可能性等、国際法の違反という観点からの検討も必要かと思われます。
政府は既に、公海もしくは排他的経済水域の近くで実験を行う場合、沿岸国の権利に妥当な考慮をすることが国連海洋法条約に定められている、今回は妥当な考慮があったとは言いがたいと述べ、国際法上問題があるとの見解を示しておりますけれども、領空侵犯の可能性については、どのように判断をしているのでしょうか。
領空の範囲については国際法上も明確な基準が設けられていないと伺っておりますが、我が国政府としては、領空の範囲についてどのような認識をお持ちなのでしょうか。また、我が国の領空概念に従い判断した場合、今回の北朝鮮によるミサイル発射は領空侵犯に当たるのか否か、政府の見解をお伺いしたいと思います。
今回の事態を受けて、政府は、北朝鮮への対応として、日朝国交正常化交渉については当面応じない、食糧支援は当面見合わせる、KEDO事業に関しては進行を見合わせること等を決定いたしました。今回のミサイル発射が、北朝鮮にとって、利益をもたらすどころか逆に不利な結果を招くものであることを北朝鮮側に身をもって認識させるためには、北朝鮮に対するこのような対応も当然の措置であると考えます。
しかし、こうした方針は、果たして、具体的にどのような状態になれば、我が国の目的が達成されたと判断し、見直されることになるのでしょうか。例えば、北朝鮮がミサイル実験の中止を明言することなのか、あるいは北朝鮮がミサイル開発を中止することなのか、明らかではありません。このことはすなわち、対北朝鮮外交を見直す時期にかかわってくることであります。今回決定された北朝鮮への対応を見直すためには、一体どのような条件が必要とお考えか、総理にお伺いします。
あわせて運輸大臣にお伺いします。
昨日大臣は、北朝鮮から我が国へのチャーター便運航についてはこれを許可しないこととし、既に許可済みであるものについても許可を取り消す旨の大臣談話を発表されました。これについても、この措置はいつまで続けるのか、条件が整えば再び対応を見直すことになるのかならないのか、もし見直すのであれば、その条件とは何なのか、お答えをいただきたいと思います。
総理、もとより政治の責任とは、何にも増してとうとい国民の生命と財産を守り抜くことにあります。ところが、我が国と北朝鮮の間には、日本人拉致疑惑、日本人妻の里帰り問題という悲しくも厳しい現実が依然未解決のまま横たわっているのであります。かの地で祖国日本への望郷の思いに駆られている人々の心には、その愛する祖国に向かってミサイルが発射されたという出来事は一体どのように映ったでありましょうか。いや、もしかして、この出来事そのものすら知らされていないかもしれません。
他国に向けてミサイルを発射するという考えられない事態に対して、我が国が、今回、日朝国交正常化交渉の先送りなどの方針を決定したことは、もちろん当然の措置であります。だがその一方で、この二つの問題の解決がさらに遠のくのではないかという懸念は正直生じます。だからといって、このことにより日本人拉致疑惑問題解決への道を完全に閉ざしてしまうことは絶対にあってはなりません。長い歳月、拉致された我が子の再び帰り来る日を祈り、待ち続ける日本人家族の心情を思えば、なお一層その思いは募ります。
政府は、今回の事態に対する北朝鮮への対応を決定するに当たり、北朝鮮との間で我が国が抱える日本人拉致疑惑、日本人妻里帰り問題という、この二つの問題の扱いについてどのように考えているのか、最後に伺い、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕